- 更新日 : 2025年6月3日
中小企業診断士の事業計画書の書き方は?テンプレートや記入例を紹介
中小企業診断士の事業計画書は、創業時の資金調達や補助金申請に欠かせない重要書類です。そのため、ポイントを押さえて不備のないように作成する必要があります。本記事では、具体的なテンプレートや記入例を交えながら、実践的な書き方をわかりやすく解説します。
目次
中小企業診断士の起業時に作る事業計画書とは
中小企業診断士の事業計画書は、起業時に必要な目的や戦略を明確に示すための重要な文書です。創業時には融資や補助金の申請が必要となるケースが多く、事業計画書をきちんと作成しておくことで金融機関・支援機関に対して説得力をもって事業の可能性を示せます。
さらに、自分自身や従業員が事業の進む方向性を共有するための「設計図」としての役割も担っており、経営方針がぶれにくくなる利点があります。
中小企業診断士の事業計画書の書き方・記入例
中小企業診断士としての専門知識を活かし、自社の事業計画書を作成する際には、以下の項目をしっかりと押さえることが重要です。ここでは、一般的なテンプレートに沿って具体例を示しながら、各記入項目のポイントを解説します。
創業動機・目的
創業動機は、事業計画書の根幹を成す部分です。中小企業診断士としての実務経験や専門知識をどのように活かし、新しい事業をどの方向へ導きたいのかを明確に示します。
なぜ起業しようと思ったのかという経緯やコンセプトをはじめ、中小企業診断士としてのこれまでの知見を活かして、どのように事業を進めていくのかを記載しましょう。
職歴・事業実績
事業計画書を読む金融機関や支援機関にとって、経営者の経歴は「事業を遂行する力があるか」を判断する材料となります。特に中小企業診断士の場合、過去の実務実績や得意分野、保有資格が大きな強みです。
どのような業種・業態の企業支援を行い、どんな成果を上げたのか具体例を挙げると説得力が増します。たとえば「製造業のコスト削減支援で利益率5%向上に貢献」「サービス業の新規顧客獲得施策で売上20%増を達成」など、数値とともに記載すると評価されやすいでしょう。
中小企業診断士以外にも、経理やIT関連などの有用な資格を持っている場合は積極的にアピールします。
取扱商品・サービス
この部分では「経営戦略策定支援」「財務改善サポート」「新規事業立ち上げ支援」など、自社が提供する具体的なコンサルティングサービスの内容や価値をわかりやすく説明します。顧客に与えられる価値やメリットは、しっかりとアピールしましょう。
なお、同じく中小企業診断士の資格を持つコンサルタントは多く存在します。そこで、「ITシステムと経営改善を一体的に提案できる」「現場の改善指導に強みがある」など、独自性を前面に押し出すことが大切です。サービスごとの料金体系や契約形態も記載します。
取引先・取引関係
事業計画書には、どのような企業や機関と取引・連携する予定があるのかを明示すると、信用力が高まります。
取引が決まっている企業名や、見込顧客として想定している業界・業種などを挙げましょう。法務や税務などの専門家と連携する場合は、それもアピール要素になります。また、顧客獲得のための営業チャネル(オンライン、セミナー、SNS発信、既存の人脈活用など)を整理し、どのように効率的かつ効果的に認知拡大を図るのかを示します。
従業員
独立当初は代表ひとりでのスタートが多いかもしれませんが、将来的なビジネス展開を考慮すると人員計画は非常に重要です。事業開始時の体制はもちろん、事業が軌道に乗り、拡大していく段階でどのように人員を増やしていくのか、何を基準に採用を行うのかを示しましょう。
税理士や社労士などの資格を有した専門性の高いスタッフの増員計画があると、事業の発展可能性が高く評価されやすいです。
借入の状況
創業融資を受けようとする場合、既存の借入やローンの状況は金融機関が特に注目するポイントです。返済能力の有無を客観的に判断するために、情報を正確に開示する必要があります。
クレジットカードのリボ払いや住宅ローン、自動車ローンなど、事業と直接関係ない借入でも、融資審査時には影響を及ぼすことがあります。正直に記載しましょう。
必要な資金と調達方法
開業当初に必要な資金を明確にし、その調達方法を整理しておくことは、事業計画の実現性を高めるうえで欠かせません。事務所開設費用、ITシステム導入費、広告宣伝費、書籍購入費など、設備投資・運転資金の内訳項目ごとに金額と用途を示します。
また、自己資金がどの程度投入されるのか、融資や投資を含む外部調達はどれくらいかなどを記載し、資金計画の信頼性をアピールしましょう。
事業の見通し
事業計画書を評価するうえで、最も重視されるのが「事業の将来性」と「実現可能性」です。特に中小企業診断士としての収益モデルを整理し、継続的に黒字を確保できるプランを示す必要があります。
最低3年分、可能であれば5年分の売上予測と費用項目(人件費・外注費・広告費など)を算出し、毎期の利益計画を示します。根拠として「業界平均の単価」「想定客数」「過去の実績」などを盛り込みましょう。想定外の景気変動や競合の台頭など、リスク要因とその対策も記載します。リスク分析が丁寧に行われていると、計画の信憑性が高まります。
中小企業診断士の事業計画書に使える無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、中小企業診断士向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。
中小企業診断士が事業計画書を作成するポイント
中小企業診断士は、通常クライアント企業の経営計画をサポートする立場です。そのプロとしての知見を、自らの事業計画書にどう活かすかが成功の鍵となります。
専門家としての客観的視点の活用
クライアントの事業計画書を分析・作成支援する際、中小企業診断士は市場調査や収支分析を客観的なデータに基づいて行います。自身の事業となると、主観が強くなりがちですが、ここでも第三者的な目線を持ち続けることが重要です。
収支計画について、期待値を過大に盛り込んでいないかを定期的に確認しましょう。自らが審査側に立った気持ちで、保守的かつ合理的な数字かどうか検証することが必要です。
また、クライアント支援では綿密な市場調査を実施する一方、自社ビジネスの分析を甘く見てしまうケースは少なくありません。業界動向や地域特性、ライバルの動向まで客観データを集め、冷静に判断しましょう。
独自の専門性と実績の明確化
中小企業診断士には、それぞれ得意分野や強みがあります。自社の事業計画書では、それをどのように活かすかがポイントです。専門性は詳細に記載し、競合との差別化につなげましょう。
過去に支援したクライアント企業の成功事例は、自身のコンサル能力を客観的に示す重要な証拠です。数値的成果(売上や利益の増加、コスト削減率など)を含め、クライアントからの推薦状や感謝の声があれば、抜粋して事業計画書の中で紹介するのも有効です。金融機関や投資家にとっては、サービスの信頼性を判断するうえで大きなプラス要素となります。
現実的な収益モデルの構築
中小企業診断士は多くの中小企業の決算書やビジネスモデルに触れ、業界の相場感や収益構造を理解しています。その強みを活かし、説得力のある収益モデルを提示しましょう。
創業直後は売上が不安定になりやすいため、固定費を極力抑える計画を練ることが重要です。オフィスを最小限にする、クラウドサービスを活用してITコストを削減するなどの施策が考えられます。
コンサルティング報酬だけでなく、研修やセミナー講師、補助金申請代行手数料、顧問契約など、収益軸を複線化することでリスクを分散できます。中小企業診断士としての幅広い知識を、さまざまなサービス形態に落とし込むことを検討しましょう。
中小企業診断士ならではの強みを活かして作成しよう
中小企業診断士が自らの事業計画書を作成する際には、普段クライアント企業に提供している視点と同じか、それ以上に厳密な分析と計画策定が求められます。
専門家としてのノウハウを存分に活かしつつ、説得力のあるデータと具体的な戦略を織り交ぜることで、説得力と実現性の高い事業計画書を完成できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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