- 作成日 : 2025年3月21日
部活の法人化とは?メリット・デメリットや成功事例を解説
部活の法人化とは、学校の部活動を運営するための法人を立ち上げることです。一般社団法人として法人化するケースがあり、近年では大学の部活動が法人化する事例も見られます。
本記事では、部活を法人化するメリットや注意点、法人化の事例を中心にご紹介します。
目次
部活の法人化とは
部活の法人化とは、運動部などの部活を運営するために法人格を取得することを意味します。近年は有名大学の運動部が法人化を進めているケースが見られ、寄付金などの手段によって資金調達を行うことで部活動のよりよい運営に役立てています。ここでは法人化した大学運動部の事例を以下の通りまとめました。
- 京都大学アメリカンフットボール部
- 東京大学アメリカンフットボール部
- 慶応義塾大学ラグビー部
- 明治大学サッカー部
- 明治大学競走部
- 中央大学サッカー部
- 中央大学バスケットボール部
なぜ今になって部活動の法人化が話題になっているのか、法人化することでどのような変化があるのか、考えていきましょう。
部活の法人化が進む背景
部活は任意団体(法人格を持たない団体)であるため、有名大学の部活であっても社会的信用が低く、収益を得ることもできず資金調達が難しいという実情があります。そのため、新たな設備が必要になった場合、資金の調達ができないという問題が各大学で発生しているのです。
部活を法人化するメリット
部活を法人化するメリットとしては、社会的信用力の向上やガバナンスの強化などが挙げられます。
社会的信用力が向上し、資金調達しやすくなる
先ほども触れたように、大学の部活動は「任意団体」として判断されます。任意団体とは、部活動、サークル、研究会など、個人が集まって自由に作れる団体のことですが、法務局への登記など法律上の手続きを行わずに設立できるため、自由度が高い反面、社会的信用力が低いという難点があります。任意団体は法人格を持たないため、その名義で銀行口座を開設できず、企業と直接契約を結ぶことも困難です。
一方、一般社団法人は営利目的ではない法人格です。2名以上が集まれば設立でき、法人格を取得することで社会的信用力が向上します。なお、ここでの「営利」とは、事業によって利益を出すことではなく、株式会社のように剰余金を分配する行為です。そのため、一般社団法人として、事業収益を得ることや、役員・従業員に報酬を支払うことは問題ありません。また、大学が議決権を保有していれば、部活の法人化後も大学と分離するなどのトラブルを防止できるという利点もあります。
ガバナンスが強化される
部活を法人化することのメリットの2つ目は、「ガバナンスの強化」です。運営方針や人事、予算について明確なルールが定められておらず、その結果、部活運営がうまくいかないケースもあります。
法人化すると、事業年度ごとに事業報告や会計報告を行う義務が生じます。そのため、人事、予算、資金集め、部活の方針など、運営に関わる課題を整理し、権限を持つ者やその範囲を明確にしなくてはなりません。こうした仕組みを整えることで、ガバナンスの強化と安定した部活の運営につながります。
部活を法人化するときの注意点
部活を法人化する場合、事務作業や会計業務などの負担が増加するため、この点を注意しながら諸手続きを進める必要があります。具体的には、構成員の決定や定款の作成を行い、公証役場で定款認証を受けたあとに法務局で登記申請を行うなどの手続きが必要です。これらを全て自分たちで担うのは難しいため、専門家に依頼するコストも発生することも考えられるでしょう。
さらに、法人化にしたあとも、銀行口座の管理、税金、社会保険の手続き、財務諸表の作成、事業報告、会計監査が義務づけられているため、事務手続きの負担が大きくなります。
部活の法人化に成功した事例
ここからは、実際に部活の法人化に成功した事例をご紹介します。
京都大学アメリカンフットボール部
全国でもいち早く部活の法人化に踏み切った京都大学のアメリカンフットボール部は、日本一決定戦にあたるライスボウルでは過去に4度の優勝実績を持つ名門チームです(※2025年2月時点)。学業との両立、必要な人材・資金の不足、体育会系ならではの過度な上下関係による弊害など、強豪運動部にありがちな問題の解決策として法人化というモデルを提示し、多くの部活がこれに続いています。
東京大学アメリカンフットボール部
東京大学アメリカンフットボール部「ウォリアーズ」は、2018年に一般社団法人「ウォリアーズクラブ」を設立しました。法人化の目的は、部内のガバナンス改善、一般企業や個人からのサポートを受けるための環境整備、資金調達でした。同法人代表理事の好本氏が運営するブログでは、法人化に至るまでの流れや課題、組織づくりについて詳しく解説されており、法人化のプロセスを知る貴重な資料となっています。
中央大学バスケットボール部
中央大学バスケットボール部は、法人化後に積極的な資金調達を実施していることで知られています。2022年の法人化後、民間企業とスポンサー契約を結び、トレーニング設備や栄養食品の購入に充てる収入を確保しました。また、オンラインで特典つき「トークン」を販売するなど、時代に合わせた新たな資金調達の道を切り開いています。
部活の健全な運営をするなら法人化も手段の一つ
部活の法人化は、資金面の問題解決だけでなく、ガバナンスの強化や運営体制の整備など、組織の健全化にも寄与すると考えられています。日本の大学スポーツは、市場規模としてまだ伸びしろがあると期待されており、若くして前例のない活躍を見せるアスリートが増加している今こそ、改革のときと言えるでしょう。
法人化は部活を存続させ、今後発展させていくためのひとつの選択肢です。資金調達やモラルの低下、部員不足などの課題があれば、法人化も手段の一つとして検討してみましょう。
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