飲食店の開業予定の方は必読!プロから学ぶ資金準備・創業融資の手続きと流れ

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この記事は1年以上前に公開されたものです。法律・制度などに関して、現在とは異なる内容が含まれている可能性があります。

「美味しかったよ。また来るよ!」「ご馳走様。最高のおもてなしをありがとう!」こんな素晴らしい言葉に励まされ、いつかは自分の力で飲食店開業してみたいと、飲食店に長くお勤めの方は1度は思ったことがあるはずです。

飲食店は全ての業種の中で最も新規の開業が多く、毎年数多くの飲食店が開業しています。飲食店を開業するには、通常特別な資格が必要でないため気軽にお店を始められるという理由もあることから人気を集めています。

しかし、飲食店は開業件数が多い反面、残念ながら廃業率が最も高い業種でもあります

一説によると、飲食店開業後2年後には半分のお店が廃業しているとも言われています。味は美味しかったのに潰れてしまったという飲食店も少なくありません。では、なぜ潰れてしまったのでしょうか。

もちろん立地の選定、マーケティングスキル 広告・販売促進等のプロモーションスキルも重要な要素ですが、財務戦略、つまり開業資金のための創業融資、資金繰りは非常に重要な要素となります

今回は、飲食店を開業する前に必ず押さえておくべき資金調達・創業融資の手続きや流れなどの基礎知識について飲食店開業支援で数多くの実績があるITA大野税理士事務所の大野先生に伺いました。

「飲食店の開業時に注意しておけばよかったと感じる事」の第1位は「自己資金が不足していた」

日本政策金融公庫の創業融資の貸出先のうち2割は飲食店の開業融資と言われており、膨大な飲食店の先人のデータが蓄積されています。

アンケートによると、開業した経営者のうち最も多い26.8%が「自己資金が不足していた」と回答しています。

飲食店開業時の注意点
参照:新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+|日本政策金融公庫

自己資金が不足していた、と言う日本政策金融公庫で創業融資をお借入した方の回答の意図としては、開業資金・運転資金をもっと潤沢にもち、精神的に余裕をもって開業できればよかったということだと考えられます。

飲食店の開業資金として必要な費用は大きく「不動産の取得費」「設備資金」「運転資金」に分けられます。

私のところに相談いただく方や飲食店専門雑誌の事例を見ると、自己資金のほとんどを不動産の取得費用(前家賃、保証金、礼金、仲介手数料)に充当し、借入れた多くを設備資金に投資し、運転資金を1ヶ月程度で開業しようとする事業計画書を作成されている場合が多いです。

「なぜ運転資金が1か月分程度しか必要ないのでしょうか」と尋ねると、「飲食店は現金商売だから開店したその日から現金が入ってくるから心配ないよ」と言われますが、そのような安易な考えだけはやめた方がよいです

たしかにOPEN当月は知人の方々がお祝いに来て多額な現金が入ってくるかもしれませんが、2ヶ月目、3ヶ月目も続くかというと、現実はそこまで甘くはありません。前職の時によほどのブランディングと相当豊富な顧客リストでもない限り、初月同様の売上を継続するのは難しいでしょう。

開業した6割の飲食店が軌道に乗せるために半年超かかっている

次にこちらのグラフを見てください、飲食店を開業した後、軌道に乗り始めるまでの期間は64%以上のお店が半年以上かかっています
飲食店が開業後、軌道に乗せるまでの期間

参照:新たに飲食業を始めるみなさまへ 創業の手引き+|日本政策金融公庫

売上が一定期間安定しないと、利益がでず運転資金がどんどん食いつぶされていき精神的にも追い込まれ、考え方もさもしくなり経営及び投資判断もにぶり、最終的には資金ショートと言う最悪の結末を迎えている方も多いという事です。

人により軌道に乗る時期と言うのは異なります、そして経営はバクチではないので開業資金のうち、運転資金を1ヶ月しか持たないという事自体が非常に危険です。

飲食店の開業資金の目安として何カ月分の運転資金を準備すればいいのか

では開業資金のうち、目安として何カ月分の運転資金を準備すればいいのかという事になります。

これは人それぞれの自信に左右されるところは否めませんが、一つの目安として考えられるのは、日本政策金融公庫の統計から、半年以内に軌道に乗る自信があるよと言う方は3ヶ月程度の運転資金の準備、1年以内に軌道にのる自信がある4ヶ月から半年程度の準備と考えていただけるとよいと思います。

軌道に乗る前でも一定程度売上が上がり現金が入ってくることを考慮すると肌感覚でこれくらいかなと思う数字です。あくまでも目安ですので、もちろん準備する金額は業態・実力により異なります。

私の経験上、融資で確保できる運転資金は通常2ヶ月から3ヶ月分程度が一般的です。4ヶ月分の運転資金を所持しておきたい場合には、目安として融資で2ヶ月分、不動産取得費や設備資金を支払った上での自己資金で2か月分を準備する形になります。

飲食店開業時に利用することができる融資制度とは

それでは、実際に飲食店を開業する際に利用することができる融資制度をご紹介します。

融資制度の種類

まず、飲食店を開業する際に受けることができる代表的な融資制度について説明します。

1.新創業融資制度

新創業融資制度とは、日本政策金融公庫が開業予定の方や開業直後の方に無担保、無保証で融資する制度です。融資限度額は3,000万円(うち、運転資金は1,500円)となっています。申請手続きは基本的にご自身で行っていただく形となります。

2.中小企業経営強力化資金

専門家付(認定経営革新等支援機関)融資である「中小企業経営強力化資金」と言う融資制度は、基本的な部分は「新創業融資制度」と同様で、認定経営革新等支援機関である専門家が事業計画や手続きをサポートする点が「新創業融資制度」と異なるポイントです

融資限度額は7,200万円(うち、運転資金は4,800円)となっています。こちらも日本政策金融公庫の融資制度です。

3.保証協会融資(制度融資)

都道府県や市区町村が提供している融資制度になります。信用保証協会による信用保証が必要となります。支払利息が1%未満と低いことが最大のメリットとされていますが、手続きの審査期間が長い、自己資金要件が厳しい等のデメリットもあります。

中小企業経営強力化資金と新創業融資制度の違い

それでは、「中小企業経営強力化資金」と「新創業融資制度」の違いについて見てみましょう。

大きな違いは支払利息です。「新創業融資制度」は年2.3%程度で「中小企業経営強力化資金」は年1.3%と利率が年に1%ほど異なります。

例えば、融資額1,000万円、融資期間7年の場合にはトータルの利息の開きに約50万円くらい利息の差がついていきます。

「中小企業経営強力化資金」は専門家が事業計画をサポートする制度であるため、ご自身で申請手続きする「新創業融資制度」と比較すると信用度が高いため、有利な利率設定となっています。

中小企業経営強力化資金と保証協会融資の違い

次に、「中小企業経営強力化資金」と「保証協会融資」の違いについて見てみましょう。保証協会融資には信用保証料と言うものが存在し、借入の元本に例えば1%程度の年利がかかります。日本政策金融公庫による融資は保証料が必要ないため、実質負担は必ずどちらかが安いとは言い切れません。

融資までの手続きのスピードも異なっており、中小企業経営強力化資金は融資までの期間が1か月程度であるのに対し、保証協会融資は融資までに2ヶ月ほど手続きに時間がかかる場合が多いです。

飲食店開業時に重要なポイントはスピード感

開業する飲食店の方々によくお伝えするのですが、飲食店開業の数百万円、1,000万円規模の融資の場合、利率0.数%の差以上に、創業時はスピード感が重要となってきます。

保証協会融資は機会損失が大きいことがデメリット

保証協会融資については、経験上融資までがかなり遅いです。区役所などに5回から7回お客様が足を運ぶ必要があり、保証協会が忙しい時期だと融資面談設置のスケジュールがかなり遅くなります。そして、融資の結果が出るまでも時間がかかります。

支援させていただいていたお客様のスケジュールの例ですが、3月後半から何度も銀行と打ち合わせをして、4月には計画書を提出し、結果がでたのが6月中旬でした。更に融資実行は営業許可書の提出が条件であるため、飲食店OPEN後に融資実行となり、運転資金が厳しくなってしまいます。

このような事態に陥ると内装屋さんにも手付金などが遅れて迷惑をかけて資金についても不安に陥り、更に飲食店の開業も遅れて機会損失につながります。

つまり、7月1日にOPEN予定だったところが7月31日に変更になった場合、20日分の本来得られた利益、例えば1日5万円なら150万円の利益を失うことになります

中小企業経営強力化資金の活用で、スピーディーな開業が可能です

中小企業経営強力化資金は、我々専門家が事業計画をサポートする制度であるため、ご相談時点で内装設備などの見積り、準備していただくものが揃っていれば、結果報告までのスケジュールは最短で相談から2週間、遅くても1ヶ月以内までには結果報告ができます。

更にお客様が手続きのために日本政策金融公庫へ一度も足をも運ばなくてよいので、飲食店に勤務をしながら融資のお話が進行できます

また、もう一つ私の所に来たお客様のエピソードをご紹介すると、保証協会融資で融資を失敗して、更にこの方は働いていなかったため自己資金も目減りした状態で私の所に相談に来たお客様が、日本政策金融公庫で無事に融資が満額決定したことがありました。しかも、保証協会融資の時より多い融資額を受けることができました

保証協会付き融資で諦めていたら、この方は恐らく今飲食店を開業していなかったでしょう。諦めずに日本政策金融公庫の融資にチャレンジしたからこそ、飲食店を開業することができました。

このように、知っていれば得をするし、知らなければ損する・取り返しがつかなくなることが世の中には沢山存在します。いわゆる、「情報格差」です。

飲食店を開業するには、事前に情報収集→良質な情報の見極めをしっかりして「情報格差」に巻き込まれず、素晴らしいスタートダッシュがきれるようにしましょう。

飲食店を開業予定で、融資を検討中の方は要確認のチェック項目5点

最後に飲食店を開業しようとする方で創業融資をお考えの方、特に東京都で開業しようとお考えの方は次に示すことは必ず準備、チェックをお願いします。

以下の項目は、飲食店開業融資審査がスムーズに進む目安となるような事項であり、クリアできていなからといって必ず融資の審査で不合格になるというものではありません。また、融資額、勤務経験によってかなり左右されます。

①過去5年以内に破産などの債務整理をしたことがないか

5年以内と言うのは絶対的な指針ではないですが、過去に破産、債務整理があった方が融資を受けことはかなり難しいでしょう。

②過去に消費者金融等の利用はないか

金融機関等は、こちらが思っている以上に消費者金融等の利用、もっと言えばお借入したお金の返済の遅滞については厳しい目で見てきます。

過去に遅滞があった方は身綺麗な状態にしてから融資に臨んだ方がよいと思います。また、遅滞があった方はCICで個人の情報を調べてもらうとよいでしょう。

③ライフラインの支払い・税金の滞納はないか

経営したら規則正しく借入金の返済が出来る人か?と言う審査になります。水道光熱費の支払いについては滞納の発生を防ぐため、口座振替又はクレジット支払に切り替え手続きを済ませておいてください。家賃について、特にお振込みの方は遅滞は絶対に厳禁です。

税金関係の支払いは当たり前ですが全て手続きを完了しておいてください。これらについては「自己管理能力」と言うところが見られていると思って下さい。

飲食店開業時は経営と言う実績がないため、飲食店勤務時代の自己管理能力、つまりライフラインの支払い、税金の滞納はないかと言うところがかなり重視されます。

④自分で貯めたお金が100万円以上あるか

飲食店経営・開業の夢を達成するために、100万円程度(金額に細かい根拠はありません)をコツコツ貯金したというアピールは融資審査にプラスの行為だと考えられます。

そして、貯蓄できると言う事は経営が開始してもしっかり利益を留保できる方だなと言う見方もされるでしょう。(親族支援金の金額次第で自己資金が100万円以下でも審査が通過するケースはあります)

⑤親族等からの支援金と自分の貯金が合せて300万円以上ある、かつその合計額で不動産取得費を賄えるか

親族等からの支援金について融資の審査上はプラスになると思ってよいです。現在は連帯保証人制度がないため、日本政策金融公庫としても、本人が飲食店経営に行き詰った時に支えてくれる、応援してくれる人がバックにいると言う見方をしてくれていると考えられます。

また、自分の貯金と支援金の合計で不動産取得費(前家賃、保証金、礼金、仲介手数料)が賄えるかどうかについては、融資の審査のために準備していただきたいという事ではなく、不動産契約を一括契約できる資金も持たずに飲食店を開業しようということが無謀な挑戦に近いと考えているためです。

まとめ

ただ、闇雲に飲食店を開業しようとすると廃業の確率は高くなってしまいます。せっかく美味しい料理・サービスを提供できるのであれば財務戦略で失敗するのはとてももったいないことです。最初のビジネスモデルの設計で飲食店経営は7割決まると言われています。しっかり準備して夢の繁盛店への扉を開けましょう!

飲食店開業時の資金調達方法についてもっと詳しく知りたい方におすすめの本

開業するにはどうしたらよいか、開業のための資金調達・財務について、より詳細をまとめた本です。飲食店開業を検討している方は是非参考にしてみてください。

本「繁盛する飲食店が必ずやっている開業資金の調達方法」
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取材協力
飲食店の開業資金の相談はITA大野税理士事務所大野晃(おおの あきら)氏
ITA大野税理士事務所

事務所の紹介
美味しいお店の開業率向上・廃業率減少をコンセプトに、創業計画書の作成から必要融資額の確保まで、飲食店の開業融資支援を行っている。オーナーの幸せをモットーにスタッフ一同全力で支援している。

 

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※掲載している情報は記事更新時点のものです。

取材協力:大野 晃 (税理士)

ITA大野税理士事務所 税理士
美味しいお店の開業率向上・廃業率減少をコンセプトに、創業計画書の作成から必要融資額の確保まで、飲食店の開業融資支援を行っている。オーナーの幸せをモットーにスタッフ一同全力で支援している。



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