- 作成日 : 2025年7月18日
60歳からの起業を目指す女性は必見|おすすめの業種・資金計画・成功法を解説
定年を迎えた60代から、起業という新たな挑戦を選ぶ女性が増えています。しかし「今からでも遅くない?」「資金や体力に不安がある」という疑問や不安の声もあるでしょう。
本記事では60歳からの起業を目指す女性に向けて、成功のポイントや向いている業種、資金計画やよくある課題の乗り越え方について解説します。
目次
女性は60歳からでも起業できる?
定年を迎える60歳以降に、起業を目指す女性が増加しています。公的な統計でもその動きは数字に表れており、今や60歳からの起業は特別なことではありません。ここでは、シニア女性起業家の現状と社会的背景について整理します。
シニア女性の起業は一定数ある
日本政策金融公庫の調査によると、開業時の年齢が「60歳以上」の起業家は全体の約6.3%を占めており、開業時の平均年齢は上昇傾向です。
また、帝国データバンクの「新設法人調査」では、新設法人のうち約13.2%が60代の代表者であり、50代(25.2%)に次いで高い割合となっています。
こうした数字は、中高年層が起業市場において確実に存在感を高めていることを示しています。
女性起業家の数も増え続けている
東京商工リサーチの調査によると、2024年の全国女性社長数は64万人を超え、2010年から14年間で3倍以上に増加しています。また、全国の社長数に占める女性社長の割合も過去最高を記録しています。
出典:2024年の全国の女性社長64万9,262人 「女性社長率」は15.24%、14年間で3倍増
日本政策金融公庫総合研究所の「新規開業実態調査」によると、開業者に占める女性の割合は、調査を開始した1991年度の12.4%から、2022年度には24.5%と倍近くに増加し、過去最高を記録しています。2023年度には24.8%、2024年度には25.5%とさらに上昇傾向にあります。
健康寿命の延伸が後押しに
厚生労働省のデータによると、2022年時点での日本人女性の健康寿命は75.45歳です。
60歳時点でも平均して15年近く、心身ともに自立して活動できる期間があるとされています。これにより、「起業は若い人のもの」という時代から、「人生後半の充実の手段」としてシニアの起業が再評価されています。豊富な人生経験や人脈を活かし、無理なく小さく始めて育てるビジネスモデルが、60歳からの起業を後押ししているのです。
女性の60歳からの起業におすすめの業種・ビジネスモデル
60歳から起業を考える女性にとって大切なのは、自分の経験や体力、ライフスタイルに合った事業を選ぶことです。ここでは、シニア女性が無理なく取り組みやすく、かつ社会的にもニーズが高い業種を紹介します。
サービス業全般:経験と人脈を活かした分野
日本政策金融公庫の調査によれば、女性起業家全体のうちサービス業で開業する割合が最も多いです。とりわけ、長年の職務経験を活かした経営コンサルタント業やセミナー講師、人材育成、営業支援などは、体力的な負担が少なく、知見をそのままビジネス化できるため人気です。これまでのキャリアで培ったスキルや人脈をベースにした、コンサルティング業やコーチング業、教育研修事業などは、初期投資も比較的少なく、年齢に関係なく信頼されやすい業種といえます。
教育・カルチャースクール:趣味と特技を教える
60歳までに磨いた趣味や特技を、教室ビジネスに活かす起業スタイルも定番です。料理教室、手芸・工芸、生け花や書道、ピアノや茶道など、文化的要素を含む分野は人気があり、自宅やレンタルスペースで小規模に始められる点も魅力です。対面の教室運営に加えて、オンライン講座として配信すれば全国の受講者に対応でき、地理的制約がなくなります。「先生」として教えることは、社会との接点にもなり、ライフワークとして長く続けやすいという利点もあります。
生活支援サービス:日常の知恵を仕事にする
長年の主婦経験や家庭運営スキルを活かせる、家事代行、ハウスクリーニング、介護補助、シニア支援サービスなどの生活密着型ビジネスも好相性です。買い物代行、安否確認、配食サービスなど、社会的ニーズが高い分野では、「おせっかい力」が大きな武器になります。ただし、体力を使う業務も多いため、無理のない範囲でサービス内容を絞ることがポイントです。仲間と協力して地域単位で活動する、NPOや見守りボランティアと連携する、といった柔軟な働き方も可能です。
小売・飲食・サロン経営:夢を形にする業種
「自分の店を持つ」という長年の夢を実現できるのが、雑貨店、カフェ、軽飲食店、エステ・ネイルなどのサロン系ビジネスです。センスや接客スキルを活かせる上に、地域の人とつながる場としても魅力があります。ただし、物件取得・内装・仕入れなど初期費用がかかるため、資金計画や収支予測をしっかり立てる必要があります。スモールスタートとして、週末営業やテイクアウト専門、予約制での運営から始めることで、リスクを抑えながらチャレンジできます。
オンラインビジネス・在宅起業:柔軟な働き方を実現
パソコン操作に抵抗がなければ、ネットショップ、ブログ・YouTubeなどの情報発信、有料オンラインサロンの運営など、在宅でできる起業スタイルも有望です。ハンドメイド商品の通販、資格を活かした知識教材の販売など、初期費用が少なく済む点が大きな魅力です。SNSやECサイトの運用には多少の学習が必要ですが、周囲にデジタルに強い家族や若者がいればサポートを受けながら取り組むこともできます。自分のペースで働けるので、体力面や家庭との両立がしやすい点もメリットです。
フランチャイズ加盟:未経験でも始めやすいモデル
全くの未経験分野でも、安定したビジネスモデルのもとで起業できるのがフランチャイズ制度です。本部からの研修や運営サポート、商品・サービスの提供があるため、「一人では不安」という方にも安心の仕組みです。最近では、高齢者向け配食サービスや見守り支援、介護用品のレンタルなど、社会性と収益性を両立したフランチャイズも増えています。ただし、加盟金やロイヤリティが発生するため、契約条件や収益配分は必ず確認しておきましょう。信頼できる本部かどうかを見極めることも成功のカギです。
60歳から起業する女性の資金計画と調達方法
60歳から起業を考える女性にとって、もっとも大きな不安の一つが資金面です。定年後の蓄えを使って事業を始める場合、生活資金と事業資金のバランスを意識しながら慎重に計画を立てることが求められます。ここでは、起業にかかる費用の目安と、利用できる資金調達方法について解説します。
起業にかかる費用の目安
日本政策金融公庫の調査(2022年度新規開業実態調査)によると、女性起業家の平均開業資金は約744万円、男性よりやや少ない傾向にあります(男性は約947万円)。
出典:女性による新規開業の特徴~「2022年度新規開業実態調査(特別調査)」結果から~
しかしすべての起業がこの金額を必要とするわけではありません。事業の内容や規模によって大きく異なり、比較的少ない資金で開業する起業家も多く存在します。小規模・低リスクのスモールビジネスが増えており、「資金が少ないから起業できない」と考える必要はありません。
むしろ60代での起業では、老後資金を圧迫せずに始められるミニマムなスタートが現実的かつ安全です。必要な設備・仕入れ・販促などを最小限に抑え、事業が軌道に乗ってから段階的に拡大する方法が効果的です。
自己資金+公的融資の活用
資金が不足する場合は、公的な融資制度を積極的に検討しましょう。日本政策金融公庫では、「女性、若者/シニア起業家支援資金」という制度を提供しており、女性や55歳以上のシニア層を対象に、低金利で融資が受けられる内容になっています。新たに事業を始める方や、事業開始後税務申告を2期終えていない方は無担保・無保証人でも融資可能であり、60代からの起業者にとっては大きな後押しになります。日本政策金融公庫は申込前の相談体制も充実しているため、早めに相談することをおすすめします。
助成金・補助金の活用
返済が不要な助成金や補助金も、ぜひ視野に入れておきたい支援策です。各自治体が提供する創業助成制度(例:東京都の「創業助成事業」)や、国の「小規模事業者持続化補助金」など、定期的に募集される補助金もあります。いずれも公募制で審査がありますが、返済義務がない点で魅力があり、資金負担の軽減につながります。事前準備や計画書の作成が必要なため、早めにスケジュールを把握し、応募要件を満たしているか確認しておくとよいでしょう。
制度融資や民間ローンも選択肢に
地方自治体と金融機関、信用保証協会が連携する制度融資もあります。例えば東京都の「女性・若者・シニア創業サポート2.0」では、都内の信用金庫・信用組合を通じて低利・原則無担保で融資を受けられる制度があり、経営支援アドバイザーによるフォローもセットになっています。このような制度は地域ごとに名称や内容が異なるため、地元の商工会議所や中小企業支援センターに相談することで、最適な制度を紹介してもらえます。また、民間の信用金庫や銀行でも、女性・シニア向けの創業ローンを用意している場合があるため、条件を比較しながら活用を検討しましょう。
クラウドファンディングや家族からの支援も視野に
事業アイデアに独自性や社会的価値があれば、クラウドファンディングによる資金調達も可能です。インターネット上で共感を得た支援者から少額ずつ資金を集める仕組みで、事前の広報活動やプレゼン資料の準備が必要ですが、支援と同時に将来の顧客基盤を築く手段にもなります。また、信頼できる家族や親族から出資や借入をするケースもありますが、口約束ではなく借用書などを用意し、関係性を保つ工夫が不可欠です。
60歳からの起業を成功させるポイント
60歳からの起業は、体力や資金、家庭との両立といった制約がある一方で、豊富な人生経験や人脈、社会的信用などを活かせる大きなチャンスでもあります。ここでは、60代女性が起業を成功させるために押さえておきたいポイントを整理します。
自分の強みと目的を明確にする
起業を成功に導くための出発点は、「なぜ起業したいのか」「何を実現したいのか」を明確にすることです。年齢を重ねたからこそ見える視点や、自分にしか語れない経験を武器に、強みを活かせる分野を選ぶことが鍵になります。事業の目的が明確であれば、ブレずに継続でき、顧客や支援者にも信頼感を与えることができます。
スモールスタートで無理なく始める
60代からの起業では、無理のない規模で始めることが成功のコツです。資金や体力に過度な負担をかけずに、小さな規模から少しずつ実績を積み上げていく「スモールスタート」型の起業は、リスクを抑えながら柔軟に事業を育てることができます。最初は副業的に始め、徐々に本格化していくスタイルも有効です。
健康と生活とのバランスを考慮する
起業に集中するあまり、健康や家庭を犠牲にしてしまっては本末転倒です。60歳以降の起業では、無理をせず、自分の体調やライフスタイルに合った働き方を設計することが大切です。スケジュールに余白を持ち、家族との時間や自分の健康管理を重視した「持続可能な起業」を心がけましょう。
周囲の支援や制度を活用する
一人で抱え込まず、公的な支援制度やネットワークを積極的に活用しましょう。各地の創業支援センター、商工会議所、女性起業家支援機関などでは、相談窓口やセミナー、メンターの紹介、助成金情報の提供など、さまざまなサポートを受けられます。また、同世代の起業仲間やOB・OGとのつながりも、心強い支えになります。
60歳からの起業について相談できる窓口
60歳からの起業を目指す女性は、専門的な知識や経験を持つ支援機関に相談することで、安心して準備を進めることができます。まず代表的なのが、全国に設置されている日本政策金融公庫(日本公庫)の創業支援窓口です。創業計画の立て方や融資相談など、個別対応が受けられます。
また、各都道府県にあるよろず支援拠点や商工会議所では、起業準備、資金調達、販路開拓などについて無料で専門家のアドバイスを受けられます。東京都なら「TOKYO創業ステーション」がシニア向け支援を行っており、創業セミナーや個別相談が充実しています。
さらに、女性向けには各自治体や中小企業支援機関が提供する起業支援サイトや相談窓口があり、全国の女性起業家支援機関を紹介しており、年代や業種に合わせた相談先を探すことも可能です。
60歳から起業する女性が直面しがちな課題の対処法
60代で起業を目指す女性は、健康面や家庭の役割、資金面など、若い世代とは異なる複合的な課題に直面しやすくなります。ここでは、起業を持続可能にするために、意識すべき4つの視点と対策について解説します。
健康を優先して働く
体力の衰えや慢性疾患を抱えるリスクが高まる60代では、「無理をしない働き方」を選ぶことが欠かせません。長時間働かずに成果を上げられるよう、業務を絞り、休息を取りながら働ける環境を整えましょう。自宅を拠点とするオンライン事業にすれば、移動や肉体労働を最小限に抑えることができ、体への負担も軽くなります。健康診断を定期的に受け、体調不良時に業務を代行できる体制も事前に整えておくことが重要です。
家族と両立できる体制を整える
60代の女性は、親の介護、配偶者の健康管理、孫の世話など家庭内の役割も重なりやすくなります。無理のないスケジュールを組み、在宅で対応できる業務や、急な用事に備えた柔軟な働き方を選びましょう。また、家族にも起業の目的や計画を共有し、理解と協力を得ることで、家庭と事業の両立がしやすくなります。介護サービスやファミリーサポートなど、公的・地域の支援も積極的に活用しましょう。
孤独を防ぎモチベーションを維持する
起業は孤独になりやすく、相談相手がいないと不安が積もりがちです。起業仲間をつくり、コミュニティやセミナーに参加して、人とのつながりを持ち続けることが大切です。シニア女性向けの起業支援ネットワークや勉強会に参加すれば、同じ悩みを共有でき、助け合える関係が築けます。また、自分が「なぜ起業したいのか」という目的意識を明確に持ち続けることで、困難な局面でも前向きな気持ちを保ちやすくなります。
資金と生活のバランスを保つ
起業に夢中になるあまり、老後の生活資金を使いすぎてしまうことは避けなければなりません。起業資金は総資産の一部にとどめ、生活資金と明確に分けて管理することが基本です。年金収入や今後の医療・介護費を見据え、必要以上の投資は控えましょう。事業は小さく始めて育てるスタイルが安心です。不安がある場合は、副業やフランチャイズなど、リスクを抑えた手段を検討すると良いでしょう。
60歳からの起業こそ今までの経験を活かせる
60歳からの起業は、人生経験や人脈、専門性を活かして自分らしい働き方を実現できる魅力ある選択肢です。体力や資金面の不安はありますが、スモールスタートや在宅起業など、無理のない形で始める方法も多くあります。起業を通じて社会とのつながりを持ち、第二の人生に充実感を与えることができる時代になっています。60歳からの起業は、決して遅すぎる挑戦ではありません。これまでの人生で培ってきた経験や人脈、あなたらしさこそが、ビジネスの大きな強みになるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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