• 作成日 : 2025年5月15日

マンション管理組合の法人化とは?メリットや手続き、節税を解説

マンション管理組合の法人化とは、管理組合が法人格を取得し法人組織として活動することです。管理組合法人になると、組織運営の安定化や理事長の負担軽減、社会的信用の向上など多くの利点があります。

一方で、登記申請の費用や手間が増えるといった懸念点があるのも事実です。今回は、管理組合を法人化するメリットやデメリット、登記申請の手続きを解説します。

マンション管理組合の法人化とは?

マンション管理組合の法人化とは、管理組合が法人格を取得し法人組織で物件を維持・管理することです。

管理組合を法人化するには、区分所有者総数および議決権総数4分の3以上の賛成による、総会の議決が必要です(建物の区分所有等に関する法律47条)。その際に法人名称や事務所を定めた上で、法務局に登記申請すると法人格を取得できます。

参考:e-GOV 法令検索 建物の区分所有等に関する法律

マンションの管理組合と管理組合法人の違い

マンション管理組合と管理組合法人の仕事内容に大きな違いはありません。ただし、管理組合法人を設立すると、管理組合名義での登記が認められています。

なお、マンション管理組合と管理組合法人に課される法人税・法人住民税の取り扱い方もほぼ同じです。マンション管理組合は法人格を持ちませんが、法人税法上は公益法人と見なされるため、収益事業から生じた所得に対しては管理組合法人と同じく法人税・法人住民税が課されます。

参考:総務省 法人住民税
参考:e-GOV 法令検索 法人税法

マンション管理組合を法人化するメリット

マンション管理組合を法人化するには、さまざまな手続きが必要です。ただし、法人格を持つことで得られるメリットは多くあります。

ここでは、管理組合を法人化するメリットを見ていきましょう。

管理組合法人名義で不動産の登記が可能

マンション管理組合を法人化すると、管理組合法人名義で登記申請できます。

たとえば、法人化していない管理組合が不動産を購入した場合、理事長名義での登記が必要です。理事長が変更する度に名義変更登記が必要になり、都度登記費用が発生します。

管理組合法人名義で不動産を登記できれば、名義変更登記の手間や費用を抑えることが可能です。

団体と個人の財産を区別できる

マンション管理組合を法人化すると、管理組合の所有財産と個人財産を別で管理できます。

法人格を持たない管理組合は、理事長の個人名義で口座開設するのが一般的です。法律上は理事長の財産になるため、その財産を個人的な目的で不正利用されるリスクがあります。法人化すれば管理組合名義での口座開設が可能なため、不正利用の早期発見に役立ちます。

信用力向上で資金調達が容易

管理組合を法人化すると、信用力が向上して比較的容易な資金調達を実現できます。

法人格を持たない管理組合の場合、理事長や理事全員の連帯保証を求められるなど手続きが複雑になることが多いです。大規模修繕工事や新規不動産購入等で金融機関から借入したい場合は、管理組合を法人化することで融資を受けやすくなります。

訴訟手続きを迅速化できる

マンション管理組合を法人化することで、訴訟手続きを迅速化できます。

管理組合と住民側でトラブルが起きた場合、裁判に発展する可能性があります。法人格を持たない管理組合の場合、訴訟当事者は業務を統括する理事長です。

管理組合を法人化すれば、管理組合法人が訴訟当事者になるため、調停や訴訟等の法的措置の実行を迅速化できます。訴訟当事者になる理事長の負担軽減につながるのもメリットです。

マンション管理組合の法人化のデメリット

管理組合法人を設立するメリットが多くある一方、いくつか懸念点があります。ここからは、マンション管理組合を法人化するデメリットを見ていきましょう。

登記関連の費用がかかる

理事長が任期満了で再任した場合、改めて役員の変更登記が必要です。

管理組合法人の役員任期は原則2年ですが、規約で最長3年以内の期間を定めることが可能です(建物の区分所有等に関する法律第49条)。役員が再任する度に役員の変更登記が必要になるため、数年おきに登記申請費用が発生してしまいます。

参考:e-GOV 法令検索 建物の区分所有等に関する法律

登記手続きの手間が増える

マンション管理組合を法人化する際、法務局での登記申請が必要です。

登記申請は、各種書類の手配や作成など意外に手間がかかります。登記事項に変更が生じた場合は、都度法務局で変更登記も必要です。これらの登記手続きを司法書士に依頼することも可能ですが、司法書士報酬の支払いが発生するため、金銭的負担が大きくなります。

参考:法務局 商業・法人登記の申請書様式

マンション管理組合の法人化が向いているケース

隣接する土地を購入したり、集会所を立てたりするなど、マンション管理組合が不動産を取得する場合に法人化が検討されています。

法人化が検討されるのは、不動産登記の名義人が権利・義務の主体となり得る自然人と法人に限られているためです。法人格を持たない管理組合名義では不動産登記できないため、不動産を取得する場合に法人化を検討するマンション管理組合が多い傾向にあります。

参考:総務省 地縁団体名義への不動産移転登記手続の改善促進

マンション管理組合の法人化に適した会社形態とは?

マンション管理組合を法人化する場合、新たに会社を設立するわけではありません。

区分所有者全員が共同でマンションを適正に維持・管理するために「管理組合法人」を設立します。管理組合法人は、株式会社や合同会社等と同じく法人格を持つため、法人名義で口座を開設したり、不動産を所有権登記したりすることが可能です。

管理組合法人の業務執行機関は「理事会」で、区分所有者から選任される理事で構成されています。マンション管理組合の理事長が、管理組合法人の理事に就任するのが一般的です。

マンション管理組合の法人化にかかる費用や税金

マンション管理組合の法人化に伴う費用や年間でかかる維持費、税金について解説します。

法人設立時に発生する費用

マンション管理組合を法人化する場合、法人登記の申請費用がかかります。司法書士に法人登記に必要な書類作成や申請を依頼する場合は、司法書士報酬の支払いも必要です。

法人化後に継続してかかる費用

管理組合を支援する公益財団法人「マンション管理センター」に登録する場合、1管理組合あたり年間5,230円(税込)の登録維持費が必要です。

マンション管理センターは任意登録制ですが、登録すると電話・面談による無料相談や管理組合運営に役立つ情報提供などさまざまな特典を受けられます。

なお、理事長が任期満了で再任した場合であっても役員変更登記(​​理事の重任)が必要なため、役員が再任する度に法務局に「管理組合法人変更登記申請書」を提出し、登記申請費用を支払わなければいけません。管理組合法人の役員任期は原則2年、または規約で最長3年以内の期間を定められるため、数年おきに登記申請費用の支払いが発生します。

参考:e-GOV 法令検索 建物の区分所有等に関する法律
参考:公益財団法人マンション管理センター 管理組合登録

法人化によりかかる税金

管理組合法人とマンション管理組合は、法人税・法人住民税の取り扱い方がほとんど同じです。マンション管理組合は法人格を持ちませんが、法人税法上は公益法人と見なされるため、収益事業から生じた所得に対して法人税・法人住民税が課税されます。

法人住民税は、法人税額に応じて課される「法人税割」と、資本金等の額や従業者数に応じて定額が課される「均等割」で構成されています。収益事業を行わない管理組合法人とマンション管理組合の場合は、「均等割」のみ課税される仕組みです。

法人税は所轄する税務署に、法人住民税は都道府県・市町村(東京23区は都)に申告する必要があります。

参考:総務省 法人住民税
参考:国税庁 C1-1 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)

マンション管理組合の法人化の流れ

ここからは、マンション管理組合の法人化の流れを確認していきましょう。

1. 集会の召集

管理組合法人の設立に関する集会を招集するのは、理事長や管理者等です。

招集者は、会日より少なくとも1週間前に各区分所有者に招集通知を出します。招集通知には、開催場所や日時だけでなく、会議の目的となる事項を示すことが必要です。

参考:e-GOV 法令検索 建物の区分所有等に関する法律

2. 総会での議決

​​管理組合を法人化するには、区分所有者総数および議決権総数の4分の3以上の賛成による議決が必要です(建物の区分所有等に関する法律47条)。

総会で決議するのは、主に以下の項目です。

  • 法人となる旨
  • 法人の名称
  • 事務所の所在地
  • 法人の理事
  • 法人の目的・業務

なお、集会の議事については、議長となる理事長が議事録を作成しなければいけません。議事の経過の要領や決議結果を記載した議事録には、理事長や集会に参加した区分所有者2人の署名押印が必要です(建物の区分所有等に関する法律42条)。

参考:e-GOV 法令検索 建物の区分所有等に関する法律

3. 法人の登記

法人化が決定したら、2週間以内に事務所の所在地を管轄する法務局に登記申請する必要があります。

申請者名義は管理組合法人で問題ありませんが、手続きは法人の代表者となる理事長が行います。委任状(代理権限証書)の用意や報酬の支払いが必要になりますが、登記申請に関する手続きを司法書士に依頼することも可能です。

4. 法人名の口座開設、各種届出など

管理組合法人名義の口座開設やマンション管理センターへの登録手続きを行います。

マンション管理センターは、任意登録制です。1管理組合あたり5,230円(税込)の維持費がかかるため、年間の費用負担を考慮して登録するかどうかを検討しましょう。

マンション管理組合の法人化での経費や節税について

区分所有者は、規約または集会決議で決められた管理費を管理組合に毎月支払わなければいけません。区分所有者から支払われた管理費は、マンションの共用部分や不動産の管理業務に要する費用を処理する「管理費」の勘定科目で仕訳することが必要です。

管理組合法人は、法人税法上の収益事業から生じた所得に法人税・法人住民税が課税されます。法人住民税は法人税割と均等割で構成されていますが、資本金等の額や従業者数に応じて定額が課される「均等割」は、収益事業を行っていなければ都道府県や市町村の条例で減免される場合があります。

マンション管理組合の法人化はメリットが多い

マンション管理組合を法人化することで、法人名義での登記申請が可能です。

法人名義での口座開設も可能で、管理組合の所有財産と個人財産を分けて管理できるため、不正利用の早期発見に役立ちます。代表者個人ではなく、法人組織で物件を維持・管理したいなら、マンション管理組合の法人化を検討しましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事