- 作成日 : 2025年5月15日
マツエクサロンの資格や許認可は?自宅開業の美容所登録や流れを解説
マツエクサロンを開業するには、どのような準備が必要なのか知りたい方もいるでしょう。開業するには、いくつかの免許や登録が必要で、美容師法などに違反しないよう準備する必要があります。
本記事ではマツエクサロンの開業に必要な資格や許認可、開業資金の目安、手続き方法を解説します。開業に興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
マツエクサロン開業のための資格や許認可
マツエクサロンを開業するには、以下の免許や登録手続きが求められます。
美容師免許・管理美容師免許
マツエクサロンを開業する場合、施術を行うスタッフは美容師免許の取得が必須です。美容師免許は国家資格で、筆記と実技があり、合格率は60%~80%程度といわれています。受験できる方は、美容師養成施設での課程を修了した方、あるいは美容師通信課程を修了した方です。
アイリストが2人以上の場合は、管理美容師が求められます。取得できるのは美容師免許を取得したうえで一定期間の実務経験がある方です。管理美容師講習を受講し、修了試験に合格すれば取得できます。
美容所の登録
マツエクサロンを開業する際に、サロンの所在地を管轄する保健所へ美容所の開設届を提出する必要があります。提出後には保健所からの現地調査を受け、基準を満たしていると認められれば営業が許可されます。
許可の基準は都道府県によって異なるため、注意が必要です。登録のくわしい手順は次の章で解説しますので、そちらもご覧ください。
アイリスト向けの講習
サロンを開業するのに必須ではありませんが、アイリストとしてのスキルアップを目的として民間資格を取得するのもおすすめです。たとえばJEA(日本アイリスト協会)の試験があります。
JEAの技能検定試験には、まつ毛エクステンションの検定試験、まつげカールの検定試験があります。どちらも2級と1級があり、高レベルな施術をするため1級の取得を目指すのもよいでしょう。
マツエクサロンの美容所登録の条件や必要書類
美容所として登録するための条件や手続き、必要書類を解説します。
美容所開設届の提出
美容所開設届を、サロン所在地にある保健所へ提出します。提出後に店舗における現地検査が行われ、各自治体が設定している安全・衛生基準に関してチェックされます。
具体的な基準は各自治体によって異なり、たとえば東京都渋谷区の基準の一部をあげると、以下のとおりです。
- 作業室の面積は1室あたり内法で13平方メートル以上であること
- 客待場所は、入口付近で作業室を通過しない場所に設け、作業室との間に区画などを設けること
- 流水式の洗髪設備を設けること
- 消毒場所として流水設備のある洗い場を設けること(トイレの手洗設備及び洗髪設備とは別に設けること)
- 床や腰板には不浸透性材料(コンクリート、タイル、リノリウム、板等)を使用すること
- 採光・照明・換気を充分にすること(作業面照度:100ルクス以上、室内炭酸ガス濃度:0.5%以下)
開業届の提出
店舗を開業したら、原則として1ヶ月以内に開業届を税務署まで提出します。開業届を提出しておくと「屋号付きの銀行口座を作れる」「最大65万円の所得控除を適用できる」といったメリットを享受できます。
なお、所得控除の適用を受けるには、所定期限までに青色申告承認申請書の提出も必要なため、開業届と合わせて提出しておきましょう。
マツエクサロンで独立・開業する方法
マツエクサロンの営業形態には、自宅やマンションの一室、店舗、フランチャイズなどがあります。
自宅サロン
創業者が居住している自宅で、サロンを開くことが可能です。自宅で開業するなら家賃を別途支払う必要はなく、開業コストを抑えられる点がメリットです。
しかし、美容所として登録するには、先ほど解説したように構造設備などが条件を満たす必要があります。事前に自治体の情報を確認し、基準に合致するかどうか確認しなくてはなりません。
マンションの一室
マンションの一室を借りてサロンを開業する方法です。店舗を借りるよりも開業費用が比較的安く済み、自宅サロンと比べてプライベートと両立しやすいのもメリットです。
ただし、自宅サロンと同様、美容所として開業できる物件かどうかを慎重に確認しなければなりません。自宅以外の家賃も発生するため、自宅開業よりはコストがやや高くなります。
店舗型サロン
店舗用の物件を借りてサロンを開業する方法です。テナントを借りると立地を自由に選べるうえ、内装工事も比較的自由に行えます。このため、自宅やマンションの一室などに比べて、美容所としての登録条件を満たしやすいです。
一方で店舗物件を借りると賃料は高く、保証金も支払う必要があります。毎月の家賃負担に耐えられるだけの売上・利益をあげられるかが重要です。
フランチャイズ
フランチャイズとは、会社のブランドやロゴといった商号・商標を使用する代わりに、本部へロイヤリティなどを支払う仕組みのことです。フランチャイズの代表例としてコンビニエンスストアが有名ですが、マツエクサロンでもフランチャイズを展開している企業があります。
フランチャイズでは本部による店舗運営のノウハウなどのサポートが受けられる一方、初期加盟料、保証金、ロイヤリティの支払いが必要です。
マツエクサロンの開業資金
マツエクサロンの開業で必要な資金は、サロンの大きさ、物件、オープンする場所などにより変わります。
マツエクサロンの開業資金の目安
物件取得費・内装費など、金額の目安を以下の表にまとめました。
費用 | 金額の目安 |
---|---|
物件取得費 | 約30万~300万円 |
内装工事・外装工事費 | 約30万~150万円 |
家具や照明費用 | 約10万~50万円 |
備品費用(エクステ・ツイーザーなど) | 約10万~20万円 |
広告宣伝費 | 約10万~30万円 |
安い場合だと80万円程度、高い場合は500万円以上かかります。なお、物件取得費は自宅開業なら不要です。
マツエクサロンの資金調達方法
開業資金の調達方法として代表的なのは以下の4つです。
- 融資
- 出資
- 補助金(ただし後払い)
- クラウドファンディング
融資で有名なのは日本政策金融公庫です。民間の金融機関より金利が安く、毎月の返済負担を抑えられます。融資を受けるには審査に通る必要があるため、事業計画書を丁寧に作りこみ、自己資金を十分に用意しておくことをおすすめします。
マツエクサロンの開業に必要な届出・手続き
サロンの開業までに必要な手続きを、以下の順番で進めていきます。
- 開業までの計画や物件の選定
- 資金の調達
- 内外装の工事や設備の準備
- 保健所への「美容所登録」
- 開業届の提出
- 必要な保険に加入
- お店オープンの広告
1. 開業までの計画や物件の選定
サロンでお客様にどのような価値・サービスを提供するのか、どのような運営方針にしたいのかといったコンセプトを決め、開業計画を作成します。他店と差別化するうえでも、開業計画は重要です。
物件選びでは、「美容所」として登録ができる要件を満たす必要があります。あらかじめ自治体が公開している情報を確認しましょう。
2. 資金の調達
作成した事業計画を基に、開業資金を準備します。自宅開業の場合、それほど費用はかかりませんが、テナントを借りると数百万円単位の費用がかかることもあるでしょう。
一般的な資金調達方法は融資を受けることですが、審査を受ける必要があり、金銭管理がしっかりとしているかも問われます。したがって、自己資金もある程度用意しておくのが望ましいでしょう。
3. 内外装の工事や設備の準備
物件が決まったら、専門業者に店舗の内装と外装の工事をしてもらいます。ここでも事業計画やお店のコンセプトを意識し、相応しい内装に仕上げることが重要です。
店内に設置する椅子などの家具についても、お店のコンセプトや内装に合うものを選ぶことが必要です。インテリア専門店で探すと、ピッタリな家具が見つかるかもしれません。
4. 保健所への「美容所登録」
地域を管轄する保健所へ美容所開設届を提出して、美容所として登録をします。事前に美容所登録の条件を確認していないと、提出の際に自治体が定める条件を満たしていないことが判明し、登録できない事態に陥る可能性があるため要注意です。
各自治体では、店内の構造や衛生環境に関して細かく規定を設けています。疑問や不安がある場合、物件選びの段階で保健所に相談するのもよいでしょう。
5. 開業届の提出
美容所登録が完了したら、税務署へ開業届を提出しましょう。個人事業主の場合、開業届を提出しなくてはなりません。
青色申告をするなら、青色申告承認申請書も提出が必要です。青色申告をすると、最大で65万円の所得控除を受けられるため、所得税や住民税の負担軽減に役立ちます。
開業届の提出方法は、税務署の窓口で用紙に記入・提出、郵送、スマホアプリ経由で提出などがあります。
6. 必要な保険に加入
アイリストは目元というデリケートな部分を施術するため、もしものトラブルに備えて保険への加入も必要です。まず「施設所有(管理)者賠償責任保険」は施術中のトラブルによりお客様にケガなどをさせてしまった場合のための保険です。
「事業活動総合保険」は泥棒の侵入や火災などにより、サロンに損害が出た場合に補償を受けられます。「従業員災害補償」は、従業員が通勤中や業務中にケガなどをした場合に保証される保険です。
7. お店オープンの広告
お店をオープンする前に、開店の告知と集客を行うことも必要です。告知や宣伝をしていないと、オープンしてもお客様がなかなか来ないかもしれません。
広告・宣伝の方法はさまざまで、地域情報誌への掲載、チラシ・ティッシュの配布、SNSでの宣伝、オンライン予約システムの活用などがあります。サロンのターゲット層に刺さりやすい方法を選ぶことが重要です。
マツエクサロンは儲かる?開業後の年収の目安
マツエクサロンは原価率が低く、利益が出やすいビジネスモデルです。サロンの規模や運営方針、物件の家賃やスタッフの人数などにより変動しますが、一般的に年収はおよそ200万〜450万円が目安です。
高い評判を得て人気サロンとなり、お客様の人数を増やせば、さらに年収を伸ばせます。良いサービスを提供して顧客満足度を上げるよう、経営努力を続けることが重要です。
マツエクサロンに活用できる助成金・補助金
マツエクサロンの開業で活用可能な助成金の制度を4つ紹介します。
キャリアアップ助成金
非正規雇用の労働者のキャリアアップ促進に取り組む事業主が、助成を受けられる制度です。正社員化コースと処遇改善コースの2つがあり、受給金額は従業員1人当たり最大50万円となっています。
キャリアアップ計画書を作成し、計画に沿って実行できれば、審査のうえで助成金を受け取れます。これからサロンの従業員を増やしたい方や、賃上げを検討している方におすすめです。
人材開発支援助成金
労働者に対して、事業主などが職務関連の専門知識や技能を習得させるための訓練などを実施した場合に、訓練の経費や賃金の一部などを助成する制度です。従業員の教育・育成・休暇などに関わる資金を支援してもらえます。
複数のコースがあり、マツエクサロンでは、人材育成支援コースや教育訓練休暇等付与コースなどを利用可能です。
地域雇用開発助成金
地域の雇用拡大を目的として作られた助成金で、厚生労働省が指定している地域に、マツエクサロンを開業した場合に受給できます。施設の設備を設置・整理したうえで従業員を雇い入れた事業主が対象です。
受給するには施設・設備の設置、計画書の提出などが必要です。受給額は設備費用や労働者の増加人数によって変動します。
両立支援等助成金
仕事と育児の両立を支援する助成制度です。育児や出産、介護を行う従業員に対し、働きやすい環境を提供するための助成金です。
たとえば子育てや介護をしている従業員に向けて時短勤務制度を導入することで、助成を受けられます。受給額は、たとえば介護離職防止コースの場合は休業取得時に30万円、職場復帰時に30万円です。
マツエクサロン開業に役立つひな形・テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、マツエクサロンの独立・開業(会社設立)に役立つひな形やテンプレートを提供しています。下記リンクから無料でダウンロードできますので、自社に合わせてカスタマイズしながらご活用ください。
マツエクサロンの許認可を得て事業を成功させよう
マツエクサロンを開業するのに必要な許認可、申請の流れ、開業資金の目安などについて解説しました。開業するには美容師免許や管理美容師免許、美容所登録が必要になります。
開業資金は自宅開業やテナントの借り入れなど、開業方法によって金額が大きく変わるため、どの方法にするかを決めることが重要です。マツエクサロンの許認可をスムーズに得て、事業を成功に導きましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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