- 作成日 : 2025年4月24日
住宅ローン利用中の創業融資は難しい?審査への影響や通るコツを解説
住宅ローン利用中の創業融資は、申し込み自体は可能です。銀行をはじめとする各金融機関では、住宅ローン契約の有無だけで融資を断られるわけではありません。ただし審査への影響はゼロではないため、注意点もあります。
本記事では、住宅ローン中の創業融資の審査を通すコツや注意点について、詳しく解説します。
目次
住宅ローン利用中の創業融資は難しい?
住宅ローンの利用自体は創業融資の申し込みを妨げる要因とはならないケースがほとんどです。ただし、金融機関は返済能力と事業計画の実現可能性を総合的に判断するため、状況によって審査の難易度は大きく異なります。
住宅ローン利用中でも融資の申し込みは可能
住宅ローンを抱えていても、銀行や日本政策金融公庫など金融機関の融資あるいは各地方自治体の制度融資などに申し込むことは可能です。住宅ローン利用中である、ということのみを理由に融資申し込みを断られることはありません。
なお、住宅ローン以外のカードローンなどの借金がある場合も融資の申し込み自体は可能ですが、審査に通るかどうかは別問題です。
住宅ローン以外にもカードローンや消費者金融からの借入がある場合は、融資審査の重要項目である返済負担率が高くなります。申し込み自体は可能でも、返済能力と事業計画との整合性が取れていないと判断されれば、希望額の融資を断られることになります。
住宅ローンが創業融資の審査に与える影響
住宅ローンは、各種ローンの中でも比較的金額の大きいローンといえます。そのため住宅ローンを抱えていること自体が融資の妨げになるのか、気になることもあるでしょう。
ここでは、住宅ローンが創業融資の審査にどのような影響を与えるのかについて、見ていきます。
住宅ローンは審査にマイナスの影響はないケースが多い
住宅ローンを組んでいることそのものが、大きな審査のマイナス要素になるわけではありません。むしろ、長期にわたって遅延や延滞なく返済を続けている場合には、計画性や安定的な収入基盤を証明する材料となります。
ただし、カードローンや消費者金融の借入が多い場合は、融資希望額を含め総返済額が膨らむことで返済負担率の面で不利になります。カードローンなど金利が高く自由度の高い借入がある状態では、金融機関から「融資実行後に返済が滞るリスクが高い」と判断される恐れがあるため、申し込み前に整理することが望ましいでしょう。
融資の審査でチェックされるポイント
創業融資の審査では、主に以下のポイントが重視されます。
- 返済負担率:年収や事業収益に対する借入返済額の割合
- 信用情報:過去の延滞や債務整理など、金融事故の履歴がないか
- 自己資金比率:創業資金のうち、自己資金がどの程度占めるか
これらの要素は総合的に判断されます。返済負担率は30~35%程度が上限ラインといわれており、これを超えると融資は難しくなる可能性が高まります。
なお、金融事故の記録が信用情報機関に登録されている場合は、完済から最低5年間は新たな借入に関する審査に通る可能性は低いでしょう。
住宅ローンに関しても返済に遅れることがないよう、返済実績を積み上げる必要があります。それ以外のローンやクレジットカードの利用状況など、過去の返済履歴に不安があれば、融資を申し込む前にご自身の信用情報について情報開示されることをおすすめします。
住宅ローンで創業融資の審査が通りにくいケース
住宅ローンは創業融資の審査にマイナスの影響を与えにくいとはいえ、状況によってはそうではないケースもあります。
特に、以下のようなケースは要注意です。
返済の負担率が高い
すでに返済負担率が高い状態の場合、新規の融資審査が厳しくなる可能性があります。一般的に、金融機関が安全とみなす返済負担率の上限は30〜35%程度です。これを大きく超えていると、住宅ローンや他の借入の支払いが家計や事業運営を圧迫するリスクが高いと判断されます。
特に、住宅ローンのほかに消費者金融やカードローンの借入がある場合、月々の返済額合計が増えやすく、結果として返済負担率が上昇します。創業直後は事業収益が安定しないことも多いため、金融機関は「このまま追加融資をしても返済しきれないのではないか」という懸念を抱きやすいです。
住宅ローンを組んですぐ
住宅ローンを組んだ直後の創業は、融資審査でより慎重に判断されることがあります。これは、住宅ローンの返済実績が少ないうえ、創業後の事業収益が不確定な段階で新たな借入をするとなると、貸し倒れリスクが高いとみなされやすいためです。
さらに、会社員としての給与所得から事業所得に転身する場合、起業後すぐに安定した利益を確保できるかどうかを証明することは難しいのが実情です。金融機関としては「住宅ローンの返済すら十分な実績がないのに、事業の資金まで追加融資するのは危険」と判断することが少なくありません。
少なくとも半年~1年程度は住宅ローンの返済を無理なく続け、家計を安定させてから融資を申し込むほうが創業融資の審査には通りやすいでしょう。
住宅ローンを滞納したことがある
過去に住宅ローンの返済を滞納した履歴がある場合、滞納が2ヶ月以上続くと信用情報機関に事故情報が登録される可能性が高いといえます。信用情報はCICやJICC、全国銀行個人信用情報センターなどの機関に一定期間記録が残り、金融機関は必ずこれらを参照して審査を行います。
長期滞納や複数回の延滞が認められると、返済能力や返済意思に問題があるとみなされ、創業融資の審査に大きなマイナスとなるでしょう。
滞納履歴がある場合は、まず延滞を完済したうえで、しばらく滞納なく返済を続けた実績を積むことが重要です。信用情報機関に登録された事故情報は時間経過とともに消えますが、記録から5年間程度は審査に通りにくい状態が続くため、焦って融資を申し込むのは避けましょう。
自己資金が不足している
創業融資の審査では、自己資金の有無や金額が大きく影響します。自己資金が融資希望額の10%にも満たないような状態では、「経営に対する本気度が足りない」と判断されやすい傾向があります。
一般的には、融資を希望する額の3分の1から2分の1を自己資金として用意することが望ましいでしょう。住宅ローンの存在に加えて自己資金が不足していると、返済負担率の面でもかなり厳しい判断をされるため、融資希望額を適正に設定することも大切です。
住宅ローン利用中でも創業融資の審査に通るコツ
住宅ローン利用中に創業融資を成功させるためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があります。
返済能力を証明する
長期間にわたって住宅ローンを遅れなく返済している事実は、創業融資を申し込むうえで強いアピールポイントになります。また、クレジットカードの支払い、公共料金や携帯電話料金の支払いなど、日常的な債務をしっかり期日通りに履行していることも信用力を高める材料です。
加えて、住宅ローン以外の借入が少なければ、返済能力にまだ余裕があると判断される可能性が上がります。特に、カードローンやリボ払いの残高が多い方は、審査前にできる限り圧縮しておくと良いでしょう。また、クレジットカードのキャッシング枠は利用がなくても借入とみなされますので、キャッシング枠をゼロに設定するのも審査には有効な方法です。
事業計画書を充実させる
創業融資の審査では、事業計画書が最大のポイントといっても過言ではありません。売上や利益の見込み、資金使途の明確化、目標達成のための具体的な方法などを、数字の根拠を交えつつ丁寧に示す必要があります。
たとえば、既に取引先や顧客となる見込みのある企業との契約書類や、取得が必要な許認可の資料をあらかじめ揃えておくと、計画の実現可能性を強くアピールできます。また、開業後のランニングコストやキャッシュフローの試算も重要です。住宅ローンを返済しながら事業を進める場合、どの程度の売上があれば経営が安定するのかを具体的な数字で示せると、金融機関に対して信頼度が増します。
専門家に依頼する
創業融資の申請には、多くの書類や資料の準備が必要です。税理士や司法書士、中小企業診断士などの専門家に依頼すれば、書類の不備を防ぎ、融資面接対策などを含めた総合的なサポートを受けられます。公庫との連絡調整や質問への対応もスムーズになるため、時間と手間を大幅に削減できるでしょう。
また、社会保険労務士に相談すれば、雇用保険や健康保険などの労務管理、助成金の活用など、起業後に不可欠となる雇用手続きや制度の情報を得られます。住宅ローンを抱えながら創業する場合でも、専門家の知見を生かして事業計画や返済計画をブラッシュアップすることで、審査に通る可能性を高められるでしょう。
住宅ローン利用中に創業融資を申請する注意点
実際に住宅ローンを利用中であっても、適切なタイミングと準備を行えば創業融資を受けられる可能性は十分にあります。ただし、以下のような点には特に注意が必要です。
住宅ローンの申し込んですぐの申請は避ける
住宅ローン契約を締結して間もない段階で創業融資を申し込むと、返済実績が不十分と判断される恐れがあります。少なくとも半年から1年程度は安定して返済を続け、滞納のない実績を示すことが大切です。
起業後の事業収益が安定するまでの間の生活費や運転資金を、どの程度自己資金でカバーできるかも重要なポイントになります。
追加の書類を求められることがある
金融機関によっては、住宅ローンの返済予定表や残高証明書など、追加の書類を要求されることがあります。これは、現在の借入残高や月々の返済額を正確に把握し、無理のない返済計画が立てられているかどうかを判断するためです。
手元にすぐ用意できるよう、事前に準備を整えておくとスムーズに手続きが進みます。
住宅ローンがあっても創業融資は申し込める
住宅ローンを抱えていても、創業融資を受ける道は十分に開かれています。長期返済を遅延なく続けている実績があれば、むしろ信用力をアピールできる場合もあるでしょう。
大切なのは、返済負担率や自己資金比率、そして事業計画の具体性を意識して準備を進めることです。住宅ローンの存在を理由に諦めるのではなく、入念な計画と専門家のサポートを得て、創業の一歩を踏み出してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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