- 作成日 : 2025年5月16日
茨城県で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説
茨城県で起業をする場合、特定創業支援等事業や補助金・助成金など様々な支援制度を利用することができます。この記事では、茨城県で起業を考えている方、創業を志す方々が利用できる様々な支援制度について、その内容や活用方法を詳しく解説します。
茨城県の特定創業支援等事業
茨城県では、これから創業を目指す方々や創業間もない事業者の方々に向けて、「認定特定創業支援等事業」という、国が認めた特別な支援プログラムを提供しています。これらのプログラムは、創業に必要な知識やノウハウを体系的に習得できるよう設計されており、参加することで様々なメリットが得られます。
認定特定創業支援等事業の内容
これらの支援プログラムの中核となるのは、事業を成功に導くために不可欠な四つの主要な要素です。
具体的には、事業を円滑かつ戦略的に運営するための経営、健全な財務状況を維持し資金を適切に管理するための財務、優秀な人材を育成し組織を活性化するための人材育成、そして、製品やサービスを顧客に届け、売上を拡大するための販路開拓です。これらの要素は、事業の持続的な成長にとって根幹となるものであり、茨城県はこれらの知識やスキルをしっかりと身につけられるよう支援を行っています 。
これらの指定された支援プログラムに参加し、一定の要件を満たすと、「証明書」が交付されます 。この証明書を取得することで、様々な優遇措置を受けることができるようになります。
参考:産業競争力強化法に基づく「茨城町創業支援等事業計画」|茨城町
認定特定創業支援等事業を活用するメリット
1. 登録免許税の軽減
この証明書によって得られる主なメリットの一つが、会社設立時の登録免許税の軽減です 。例えば、株式会社や合同会社を設立する際、通常は資本金の0.7%かかる登録免許税が、この証明書を提示することで0.35%に軽減されます 。
これは、初期費用を抑えたい創業者にとって非常に大きなメリットとなります。つくば市では、この登録免許税だけでなく、定款認証にかかる手数料についても最大5万円の補助金制度があるなど、更なる支援策も用意されています 。
2. 創業関連保証の特例措置
また、創業関連保証の特例措置も利用できるようになります。通常、融資を受ける際には担保や第三者の保証人が必要となる場合がありますが、この証明書があれば、無担保かつ第三者保証人なしで創業関連保証を利用できる可能性があり、事業開始の6ヶ月前から申し込むことも可能です。これは、創業間もない方や担保となる資産が少ない方にとって、資金調達への大きな後押しとなります。
3.「新規開業・スタートアップ支援資金」の貸付利率引き下げ
さらに、日本政策金融公庫が提供する「新規開業・スタートアップ支援資金」の貸付利率が引き下げられる可能性もあります 。
この制度を利用することで、より低い金利で融資を受けることができ、創業時の資金繰りの負担を軽減することができます。ただし、この金利引き下げの特典は、証明書を発行した自治体内で創業する場合に限られることがあるため注意が必要です。
特定創業支援等事業を提供している団体
茨城県内では、様々な団体がこの「特定創業支援等事業」を提供しています。例えば、つくば市では、つくばスタートアップパーク、つくば市商工会、つくば研究支援センター、日本政策金融公庫土浦支店、常陽銀行、産業技術総合研究所、筑波大学などがこれらのプログラムを実施しています。
水戸市においても、水戸市商業・駐車場公社、水戸商工会議所、茨城県信用保証協会、水戸信用金庫、日本政策金融公庫、常陽銀行などが支援を行っています。このように、多岐にわたる機関が創業をサポートしており、それぞれのニーズや事業内容に合わせて最適なプログラムを選ぶことができます。
茨城県での起業で使える補助金・助成金
茨城県では、初期投資や運営にかかる費用を支援する様々な補助金や助成金制度が用意されています。
地域課題解決型起業支援事業
特に注目すべきは、「地域課題解決型起業支援事業」です。この事業は、地域が抱える課題の解決に資する起業や、Society 5.0関連業種といった付加価値の高い産業分野での事業承継や第二創業を行う方に対して、最大200万円の補助金を交付するものです。デジタル技術を活用した革新的なビジネスモデルで地域社会に貢献しようとする創業者にとって、力強い支援となるでしょう。
市区町村での補助金・助成金
県内各地の自治体も、地域経済の活性化を目指し、独自の補助金制度を設けています。
笠間市
「笠間市創業支援事業補助金」として、市内で創業する方を対象に、店舗の新築・改装費、設備費、販売促進費などに対して創業支援事業として最大50万円、販売促進支援事業として最大10万円の補助を行っています。
水戸市
「水戸市創業期支援補助金」という制度があり、創業後5年以内の市内事業者を対象に、創業期の販売促進活動にかかる費用の一部を補助しています。創業初期における集客や認知度向上を支援することで、事業の安定化を後押ししています。
龍ケ崎市
「龍ケ崎市創業促進事業補助金」を通じて、市内での新たな事業展開を支援しています。具体的な補助金額や対象経費については自治体から出ている情報を確認してください。
これらの情報を整理すると、茨城県で起業する際に活用できる主な補助金・助成金は以下の通りです。
補助金・助成金名 | 実施主体 | 目的 | 上限金額 | 主な対象要件 |
---|---|---|---|---|
地域課題解決型起業支援事業 | 茨城県 | デジタル技術を活用した地域課題解決またはSociety 5.0関連事業 | 200万円 | デジタル技術を活用、地域課題解決、Society 5.0関連分野 |
笠間市創業支援事業補助金 | 笠間市 | 市内での創業における新築・改装、設備、販促費 | 50万円 | 市内で新たに事業を開始または第二創業を行う事業者 |
水戸市創業期支援補助金 | 水戸市 | 創業後5年未満の市内事業者の販売促進活動 | 要調査 | 創業後5年未満の市内店舗等開設者 |
龍ケ崎市創業促進事業補助金 | 龍ケ崎市 | 市内での新たな事業展開の促進 | 要調査 | 市内で新たに事業を開始する者 |
(参考)川俣町空き店舗活用事業補助金 | 川俣町 (福島県) | 空き店舗を活用した創業の支援 | 要調査 | 川俣町内の空き店舗を活用する事業者 |
茨城県で融資を受けるには?
茨城県では、創業を支援するための様々な融資制度を用意しています。これらの制度を活用することで、事業に必要な資金を比較的有利な条件で調達することが可能です。
以下で注目すべき融資についてそれぞれ解説します。
茨城県創業支援融資を利用する
まず注目すべきは、「茨城県創業支援融資」です。この融資制度は、県内で新たに事業を開始する方や、事業開始後5年未満の方を対象としており、最大3,500万円までの融資を受けることができます。
融資利率は年1.2%から1.5%と低く設定されており、創業時の資金調達を力強くサポートします。さらに、「創業支援2号」という区分では、経営者保証が不要となる場合があることも魅力です。
この融資を申し込む際には、地域の商工会議所や商工会に相談し、推薦を受けることが一般的な流れとなっています。
参考:創業支援融資|茨城県庁
茨城県女性・若者・障害者創業支援融資を利用する
また、茨城県では、「茨城県女性・若者・障害者創業支援融資」という、特定の層に向けた融資制度も用意されています。この制度は、女性、35歳未満の若者、そして障害のある方が創業する際に、同様に最大3,500万円までの融資を、年1.2%から1.5%の低い金利で提供するものです。
こちらの制度でも、保証料の減免措置が通常の創業支援融資よりも手厚い場合があり、「創業支援2号」を利用すれば経営者保証が不要となる可能性があります。
日本政策金融公庫を利用する
県制度の融資に加えて、日本政策金融公庫も創業者向けの様々な融資制度を提供しています。
「新創業融資制度」や「新規開業・スタートアップ支援資金」などがあり、これらの融資制度は、担保や保証人が不要な場合があるなど、創業者が利用しやすい条件となっています。特に、「新規開業・スタートアップ支援資金」については、「特定創業支援等事業」による支援を受けた方は、貸付利率の引き下げの対象となることがあります。
その他にも、小規模企業向けの「小規模企業支援融資」、再チャレンジを目指す方向けの「再挑戦支援資金」、新たに事業を始める方全般を対象とした「新規開業資金」など、様々な融資制度が存在します。自身の事業計画や状況に合わせて、最適な融資制度を選ぶことが重要です。
茨城県の起業について相談できる窓口
茨城県内には、創業に関するあらゆる相談に対応してくれる専門機関や窓口が多数あります。そのうちのいくつかをご紹介します。
茨城県信用保証協会
まずご紹介したいのは、茨城県信用保証協会です。こちらは、創業資金の融資に関する保証だけでなく、創業前の悩みや事業計画の作成についても無料で相談に乗ってくれます。
特に、融資制度や保証制度に詳しい担当者がいるため、資金調達に関する不安を解消するのに役立ちます。「経営支援部創業支援課」が専門の窓口となっています。
つくばスタートアップパーク
テクノロジー分野での起業を考えている方には、つくばスタートアップパークがお勧めです。
こちらは、スタートアップに関する総合的な相談窓口となっており、事業アイデアの実現やビジネスプランのブラッシュアップなど、様々な段階に応じた支援を受けることができます。
各市区町村の商工会議所・商工会
地域に根差した相談窓口としては、各市町村の商工会議所・商工会があります。
つくば市商工会や水戸商工会議所など、地域の経済事情に詳しい担当者が、一般的な創業に関する相談や、地域の情報、他の支援機関との連携など、幅広いサポートを提供してくれます。水戸商工会議所では、中小企業診断士による無料相談も実施しています。
茨城県よろず支援拠点
茨城県よろず支援拠点も、中小企業や小規模事業者、そして創業を考えている方にとって頼りになる存在です。こちらは、経営全般に関する様々な相談に無料で対応しており、販路開拓、資金調達、経営改善など、あらゆる悩みを相談することができます。
参考:茨城県よろず支援拠点|公益財団法人 いばらき中小企業グローバル推進機構
日本政策金融公庫
資金調達について直接相談したい場合は、日本政策金融公庫も相談窓口を設けています。創業融資制度に関する詳しい説明や、事業計画の作成に関するアドバイスなどを受けることができます。日本政策金融公庫では、ビジネスプラン作成のサポートも行っています。
茨城県中小企業診断士協会
茨城県中小企業診断士協会も、茨城県立図書館などで無料の経営・創業相談会を実施しており、専門家からのアドバイスを受けることができます。
その他の茨城県の創業支援制度
茨城県では、資金援助や相談窓口の他にも、創業を支援するための様々な制度が用意されています。これらの制度を活用することで、事業の成長をさらに加速させることが可能です。
インキュベーション施設
創業間もない企業にとって重要なのは、事業を行うための拠点です。茨城県内には、インキュベーション施設がいくつか存在し、低価格でオフィススペースを利用できたり、他の創業者との交流や専門家からのアドバイスを受けられたりする環境が提供されています。
水戸信用金庫が運営する「夢ぷらざ」や、つくば市の「つくば研究支援センター」 などがその例です。福島県の例ではありますが、郡山地域テクノポリスものづくりインキュベーションセンター のような施設も参考になります。これらの施設は、創業初期の企業にとって、コスト面だけでなく、事業運営に関するノウハウやネットワークを得る上でも非常に有益です。
創業セミナーやイベント
また、創業に関する知識やスキルを習得するための創業セミナーやイベントも頻繁に開催されています。茨城町で開催される創業支援セミナーや、水戸市で開催されるみと創業支援塾、水戸商工会議所主催の起業・スタートアップセミナーなど、様々なテーマや形式のセミナーが用意されています。これらのセミナーに参加することで、最新のビジネス動向や成功事例を学ぶことができ、自身の事業計画をより具体的にすることができます。
その他の支援制度
その他、自身の事業プランを発表し、資金調達や事業提携の機会を得るためのビジネスプランコンテストも開催されています。水戸市では、常陽銀行が主催するビジネスプランコンテストが開催されており、優れたプランには賞金や事業化支援などの特典が与えられます。
茨城県の創業支援制度を積極的に活用しよう
茨城県では、国が推進する「特定創業支援等事業」をはじめ、県や各市町村が独自の補助金や融資制度を用意しており、創業時の資金調達を多角的にサポートしています。
また、相談窓口も充実しており、経験豊富な専門家から事業計画の作成、資金調達、経営に関するアドバイスを気軽に受けることができます。さらに、インキュベーション施設の提供やセミナー・イベントの開催、ビジネスプランコンテストの実施など、多岐にわたる支援策が、創業者の成長を後押ししています。
茨城県で創業を検討されている方は、まずご自身の事業計画や状況に合わせて、利用可能な支援制度を詳しく調べ、それぞれの窓口に相談してみることをお勧めします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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