- 作成日 : 2025年5月1日
ボードメンバーとは?経営における役割や責任、選び方のポイントを解説
ボードメンバーとは、企業や団体における取締役会のメンバーのことです。ボードメンバーには、常勤ボードメンバーと非常勤ボードメンバーが存在します。
本記事では、ボードメンバーの概要や経営における役割や責任、選び方のポイントを解説します。
目次
ボードメンバーとは
ボードメンバーについて解説します。
ボードメンバーは取締役会の一員として経営に関与する
ボードメンバーとは、企業・団体における取締役会のメンバーのことです。ボードメンバーは取締役会の一員として、経営に関与し企業の方向性や経営戦略の決定などを行います。
英語では、取締役会のことを「Board of directors」と呼びます。それでは、ボードメンバーのboardの意味は何なのでしょうか?
言葉の起源は、16世紀までさかのぼります。16世紀において、重要なメンバーが集まって開催される会合(ミーティング)では、大きなテーブルを囲むように人々は座っていました。このタイプのテーブルでは大きな板が用いられており、それを引用する形でボードメンバーのことをBoardと呼んでいました。
ただし、現在は会合を行う際に大きな板のテーブルを必ず用いるわけではないため、元々の意味は薄れてきているといえるでしょう。
ボードメンバーの構成
ボードメンバーを構成するのは、次の2つです。
- 常勤ボードメンバー
- 非常勤ボードメンバー
常勤ボードメンバーとは、文字通り日常的に企業の経営にかかわるメンバーのことです。直接企業の業務運営や戦略などに関わり、意思決定を行います。常に企業の経営状況をチェックし、問題がある場合には迅速な対応が求められます。
一方で、非常勤ボードメンバーは、外部から招かれた経験者や専門家のことです。常勤ボードメンバーとは異なり、会議へは定期的に出席し必要に応じて経営陣へアドバイスを行う役割が求められています。
非常勤ボードメンバーは日常業務には関与せず、企業に対して新たな知識・視点をもたらすのが大きな役割です。
ボードメンバーが経営において果たす役割
ボードメンバーが経営において果たす役割について、解説します。主な役割は、次の4つです。
- 長期ビジョンや戦略の策定
- 意思決定
- リスク管理
- 財務管理
それぞれ詳しく見ていきましょう。
長期ビジョンや戦略の策定
ボードメンバーの役割のひとつが、企業における長期ビジョンや戦略の策定です。役割には、計画の策定やリソースの配分、部門間調整なども含まれます。
長期ビジョンや戦略を策定するボードメンバーには、チームをまとめるスキルや業務を円滑に遂行するスキルなどが求められます。
意思決定
ボードメンバーには、企業の問題・課題解決に向けた意思決定を行う役割もあります。かかわる意思決定には、資金調達方針や新規事業の立ち上げといったような、企業の将来を左右するものもあります。そのため、意思決定を行う際には、市場動向や競合他社の把握、自社の強み・弱みなど組織内外から情報が収集されます。その情報をもとに総合的に判断することもボードメンバーの重要な役割です。
リスク管理
リスク管理もボードメンバーに求められる役割です。リスク管理する際は、危機管理やリスク軽減などの方針・体制を策定し、実行することが求められます。そのため、前述した長期ビジョンや戦略を策定したうえでの意思決定がリスク管理にとって重要なフローとなってきます。
また、ボードメンバーは法的責任を負う立場であるため、法律面や倫理的な側面も考慮したうえで実行することが大切です。企業が法的トラブルに巻き込まれるリスクを最小限に抑えられるようにリスク管理することが求められます。
財務管理
経営戦略を遂行していくうえでは、企業の財務状況の管理も欠かせません。ボードメンバーは、財務状況を適切に把握・評価し、財務管理が適切に行われているかを監督する責任があります。
また、企業の持続可能な成長において健全な財務は不可欠です。透明性のある財務諸表は、ステークホルダーに対する企業の信頼性や安定性の向上につながります。
ボードメンバーの負う法的責任範囲
ボードメンバーは、経営判断に対して法的責任を負います。ボードメンバーは企業利益を最優先事項として捉え、株主をはじめとしたステークホルダーに対して誠実な行動が求められます。これに違反した場合は、次のような訴訟を受けるリスクがあるため注意が必要です。
- 任務懈怠責任
- その他の責任
任務懈怠責任とは、ボードメンバーが自分の任務を怠ったことで会社に損害を与えた場合、その損害を賠償する責任のことです。任務懈怠には抽象的法令違反と具体的法令違反の2種類が存在します。
- 抽象的法令違反:ボードメンバーは会社に対して善管注意義務や忠実義務を負っており、これらに違反した場合が該当する
- 具体的法令違反:法令に違反する行為のこと。カルテル禁止規定に反するような行為や取締役会決議を経ずに重要な業務執行の決定を行う行為など
そのほかにも、株主の権利行使に関して利益供与をした場合なども訴訟対象に該当します。
ボードメンバーの選任方法
ボードメンバーは、株主総会で選出されるのが一般的です。
ボードメンバーは、企業の経営方針や戦略に大きな影響を与える人物です。そのため、ボードメンバーを選ぶ株主は、候補者を慎重に選ぶ必要があります。また、ボードメンバーを選ぶ際には、候補者の経歴はもちろん専門性や業界経験などをしっかりと確認することが重要です。
なお、ボードメンバーの任期は、企業の規模や種類によって異なります。1年から3年程度の任期となっている企業が多いようです。任期を設定することで、企業は常に新しい考え方や視点を取り入れる機会を持てるようになります。
任期満了後はボードメンバーの実績や企業の状況によって評価が下され、実績に応じて再任となる場合もあります。
ボードメンバーに求められるスキルと選ぶポイント
ボードメンバーに求められる代表的なスキルは、次の5つです。
- コミュニケーションが得意
- 柔軟な発想ができる
- リーダーシップがある
- 意思決定力が高い
- 危機管理に優れている
それぞれのスキルについて詳しく見ていきましょう。
コミュニケーションが得意
ボードメンバーには、コミュニケーションスキルが欠かせません。企業の方向性を決定する際には、異なるキャリアを持つメンバーと意見交換したり、ステークホルダーと対話したりする必要があります。ボードメンバーを選ぶ際には、異なる視点や意見を踏まえた意見や示唆を見出すことができるかどうかに注目しましょう。また、社内外において信頼を築くためには誠実さも重要な要素です。
柔軟な発想ができる
ボードメンバーには、柔軟な発想が求められます。イノベーションを推進するためには柔軟な発想力が欠かせません。そのため、既存の枠組みにとらわれない斬新なアイデアや技術を評価できる人材であるかどうかをチェックしてください。
柔軟な発想を持ちつつ、自らが率先して行動を起こせる人材であれば、企業の未来もさらに明るくなることでしょう。
リーダーシップがある
企業を引っ張るボードメンバーには、リーダーシップも必要です。明確にビジョンを示したうえでチームを動かす力や、メンバーを鼓舞してチーム全体をまとめる力があるかどうかがカギになってきます。
リーダーには、危機管理能力や冷静な判断力も必要です。物事の状況を把握しつつ、チーム全体を前進させられる人材がボードメンバーには適しています。
意思決定力が高い
ボードメンバーは経営判断を下す立場であるため、高い意思決定力も求められます。ビジネスにおいては、チャンスをものにすることが重要です。状況を冷静に捉え、どういった選択肢をとるのが最良なのか判断できる決断力がある人物かどうかを見極めましょう。
また、適切な経営判断を下すためには、洞察力や広い視野も求められます。
危機管理に優れている
ボードメンバーは、経営判断に対して法的責任を負うため危機管理能力にも長けている必要があります。企業を管理する立場にあるにもかかわらず、企業が法的トラブルに巻き込まれては元も子もありません。リスクを最小限に抑えるためにも、優れた危機管理能力が求められます。あわせて、会社運営に関連する法律の理解があるかも確認しておきましょう。
財務会計面においての危機管理も同様です。不正会計や粉飾がなく、適切に財務会計管理が行われているかどうか、確認できなければなりません。そのためにも、財務諸表を正確に理解する能力が求められます。また、事業運営においても自社が置かれている状況を把握し、経営に反映できる能力が求められます。そのような能力があるかも確認しましょう。
経営を左右するボードメンバーの役割を正しく理解しよう
ボードメンバーとは、企業・団体における取締役会のメンバーのことです。取締役会の一員として長期ビジョンや戦略の策定や意思決定、リスク・財務管理などの経営に関与する重要な役割をになっています。
ボードメンバーに求められるスキルは、コミュニケーション能力や柔軟な発想力、リーダーシップなどです。ボードメンバーを選ぶ際には、これらの能力があるかどうかを確認しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
デザイン経営とは?効果や具体的な方法、中小企業の導入事例まで解説!
デザイン経営とは、デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活⽤する経営手法です。ブランド力向上やイノベーションの実現といった効果があります。デザイン経営の定義やデザイン思考を理解し、デザイナーや専門人材を確保して実践しましょう。今…
詳しくみる「事業承継ガイドライン」から学ぶ事業承継の進め方
経営者が高齢化していることを背景に、これから事業承継のタイミングを迎える中小企業が増えると予想されています。 中小企業庁は平成28年12月に、事業承継をスムーズに進めるための指針として「事業承継ガイドライン」を策定しました。 ここでは、「事…
詳しくみる経営組織とは?経営組織論の種類・バーナードの3要素も紹介
何らかの事業を遂行するために組織を立ち上げる場合、どのような組織をどのようなリソースや要素で構成すべきなのか。最も合目的的で効率的、そしてモチベーションにあふれた組織をどうすれば作れるのか。およそ経営を担う人であれば昔から悩んできたテーマが…
詳しくみる個人事業主はどの電子契約サービスを使うべき?おすすめの選び方を解説
個人事業主やフリーランスが電子契約を導入するメリットは、製本や押印、郵送などの手間を省ける点です。ただし、利用にはコストがかかるため、費用対効果を考えなければなりません。 無料お試しで利用できるサービスを選ぶのが、おすすめの選び方のひとつで…
詳しくみる経営コンサルタントとは?資格や必要性を解説!
企業が直面するさまざまな課題に対し適時適切な助言を行うこと。社長を筆頭とする経営陣や現場の社員に対し、戦略立案、マーケティング、財務会計、製造、調達、人事、法務などの企業運営のための重要なファンクションにおける各種のソリューションを提供する…
詳しくみる関連会社とグループ会社の違いとは?定義や範囲、会計、確認する方法
関連会社とグループ会社はいずれもなんらかの関係性を持つ会社のことを指します。同じような言葉で混同して使われているケースもありますが、実は両者には明確な違いがあるのです。 この記事では関連会社とグループ会社の定義や違い、会計処理のポイントや見…
詳しくみる