- 作成日 : 2025年5月1日
兄弟経営は難しい?成功のポイントや事例を解説
兄弟経営は確執を生みやすく、成功しにくいといわれています。率直な意見交換がしやすいため、意見が合わないときの衝突が大きくなりやすいことも理由のひとつです。兄弟経営を成功させるためには、役割分担を明確にし、事業ビジョンを共有することが大切です。
本記事では、兄弟経営が難しいとされる理由や成功させるコツを解説します。
目次
兄弟経営とは
兄弟経営とは、兄弟が共同で経営する会社のことです。兄弟経営の形態はさまざまで、兄弟のうちの1人が集中して権限を持ち、ほかは自分の仕事範囲のみに専念しているパターンや、兄弟だけでなく多くの親族が経営に参加しているケースなどが挙げられます。
兄弟それぞれの役割分担が明確な場合はうまくいくケースが多いものの、兄弟経営はうまくいかないケースも少なくありません。特に兄弟の年齢差がなく、経営者としての能力にも差がない場合、意見が合わずに経営がうまくいかなくなる場合も多いでしょう。
兄弟経営が難しいといわれる理由
兄弟経営がうまくいかなかったケースは多く、兄弟経営は難しいといわれています。難しいとされるのは、どのような理由があるのでしょうか。
いくつかの理由をみていきましょう。
兄弟間の確執がビジネスに影響する
兄弟間は幼いころから確執があることが多く、それがビジネスにも影響してうまくいかない可能性があります。
一方が優秀で、もう一方はいつも比較されていたり、いつも意見が衝突していたりといったことが挙げられます。
兄弟ではありがちなことですが、一緒にビジネスを行う場合、このような確執が影響を与えてしまうこともあるでしょう。
家族だからこそ意見の相違で対立が生じやすい
兄弟は率直な意見交換がしやすいため、意見が合わないときには激しい衝突が起こることがあります。他人同士であれば相手に遠慮し、どちらかが譲歩して収拾するような場面でも、兄弟の場合はお互いに曲げないために対立が大きくなることもあります。
兄弟であるためにビジネスで割り切るのが難しいこともあり、修復ができない対立に発展することもあるでしょう。
独裁的な経営体制になりやすい
兄弟経営は外部から指摘を受ける機会が比較的少ないため、独断的な経営になりやすいこともうまくいかない理由です。
トップである兄が強い権力を持ち、反対意見も受け入れずに独断で経営判断を行っているような場合、弟はそれに反発して経営がうまくいかないこともあります。
独断的な経営体制は企業風土に悪影響を及ぼし、ワンマン経営に反対する優秀な人材の離職にもつながるでしょう。
会社が私物化される恐れがある
兄弟経営では、プライベートで使う車や食事代などを経費に計上するなど、会社が私物化される恐れがあります。
親族で経営しているために他者の監視が十分に行き届かず、外部から指摘を受ける機会も少ないため、会社の私物化に歯止めが効かなくなることもあるでしょう。
その結果、経営がうまくいかなくなる可能性があります。
兄弟経営のもたらすメリット
兄弟経営は難しいといわれるものの、兄弟経営ならではのメリットもあります。
兄弟経営がもたらすメリットをみていきましょう。
意思決定が速い
兄弟経営は意思の疎通を図りやすく、率直な意見交換ができるため、意思決定が速いことがメリットです。経営方針の決定や方針転換など、スピーディな意思決定で事業をスムーズに進められます。
素早い意思決定ができれば、ビジネスの機会を失うこともありません。変化の激しい時代に対応しやすく、組織の成長に役立つでしょう。
経営理念や戦略が浸透しやすい
兄弟経営は事業承継で行われることも多く、経営理念や戦略への理解が深いことが特徴です。経営者の考えや経営理念を理解している人が多い環境では、会社全体にも理解が深まりやすいでしょう。
経営理念や戦略が浸透すれば、会社の価値観を従業員全員で共有でき、同じ方向性で仕事に従事できます。従業員はモチベーションを高めて仕事に従事できるため、生産性を高めるでしょう。
兄弟経営を成功させるポイント
兄弟経営を成功させるには、次の3点が重要です。
- お互いの役割を明確にする
- 事業ビジョンを共有する
- ガバナンス体制を強化する
ここでは、兄弟経営を成功させるポイントを解説します。
お互いの役割を明確に分ける
兄弟経営を成功させるには、役割分担を明確にすることが大切です。経営者になるのは兄・弟のどちらでもかまいませんが、どちらか1人に決めて、経営権を集中させるようにします。
もう一方は別の部門を担当し、基本的に経営には口を出さないようにするとよいでしょう。株式会社で経営を安定させるためには、経営者に株を集中させることも大切です。3分の2以上の株を保有しなければ、重要な事項を決定できないためです。
事業ビジョンを共有する
お互いのことをよく知っている兄弟による経営は企業理念や事業ビジョンの浸透を図りやすく、社内でも共有することで、一体感や信頼関係を構築できます。事業運営を進め、企業を成長させる基盤ができるでしょう。
企業理念や事業ビジョンを社内で共有するためには、社内報やSNSなどで発信したり、定期的に企業理念についてメッセージを伝えたりする方法があります。
ガバナンス体制を強化する
兄弟経営を成功させるには、ガバナンス体制の強化も大切です。兄弟経営は公私混同や私物化などが起こりやすいため、業務や財務状況を調査・評価する内部監査の部門を設けるなどの対応が求められます。
社内に客観的評価ができる体制を設けることで、コンプライアンス違反を防ぎ、健全な経営を目指せます。兄弟経営の成功につながるでしょう。
事業承継で兄弟間トラブルを回避する対応策
兄弟を後継者にする事業承継はよく行われますが、トラブルが起こることも少なくありません。後継者の候補が複数いる場合には、後継者争いが起こる可能性があります。
後継者となった者が必ずしも経営者としての適性が備わっているとは限らず、資質のない者が経営者となった場合、経営の存続も危ぶまれるでしょう。
事業承継で兄弟経営を行った場合のトラブルを回避するには、次のような対応策が求められます。
- 後継者の早期選定と育成を実施する
- 事前に親族への説明を行う
- 安心して承継できる状態を作る
まず、後継者を早めに選び、育成に十分な時間をかけます。後継者以外の親族には承継の方針を説明し、納得を得てもらわなければなりません。
また、経営状態や課題を把握して早めに状況改善を行い、安心して承継できる環境を作ることも大切です。
兄弟経営の成功事例
兄弟経営は難しい側面はあるものの、実際に成功させている事例も数多くあります。
ここでは、兄弟経営の成功事例を紹介します。
明確な役割分担
宿泊施設を運営するA社は、兄弟経営に成功した代表例です。兄は営業とマーケティングを担当し、弟は財務と新規案件を担当しています。営業担当の立場からは「売りやすいもの」を求め、財務担当からは「利益が高いもの」を求めるなど、立場の違いから意見が分かれることもあります。
しかし、最終的な判断は、財務全体を厳しく見ている弟の判断に従うということです。兄弟の役割分担が明確で、自分の意見に拘らず、事業の成功のために何が大切かをしっかり認識していることが、兄弟経営に成功している理由といえるでしょう。
企業の成長に応じて経営に参加
生活用品を製造・販売するB社では、兄弟4人が協力しあって事業を成功させています。親から事業承継した経営者は、企業の成長に合わせて必要な機能を補うため、他社で働いていた兄弟3人を会社に呼びました。営業や生産技術、ITなどの役割を兄弟で分担し、企業を成長させています。
多くの兄弟経営では、企業の成長とは関係なく親族を入社させるケースが多いのに対し、B社ではまず機能や役割が先にあり、そこに兄弟を登用させていることが、兄弟経営の成功につながりました。
また、B社では経営者の考えを浸透させるために、企業理念のほかに事業ビジョンも定めています。企業理念やビジョンを社内に浸透させることで、社員の成長につながっています。
兄弟経営を成功させよう
兄弟経営は率直な意見を言いやすいために衝突しやすく、うまくいかないことが多いとされています。しかし、スピーディな意思決定ができ、経営理念や戦略が浸透しやすいというメリットもあります。
兄弟経営を成功させるためには、お互いの役割を明確にすることがポイントです。成功例も参考にしながら、兄弟経営を成功させましょう。
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