• 作成日 : 2025年3月21日

老人ホームの事業計画書の書き方は?テンプレートをもとに記入例を解説

老人ホームを開業・運営するために、事業計画書の提出が求められることがあります。介護保険が適用されるサービスを提供する場合や融資を受ける際には、事業計画書の提出が必要です。

この記事では、老人ホームの事業計画書のテンプレートをもとに、記入例や書き方のポイント、注意点などを解説します。

老人ホームの開業時に作る事業計画書とは

老人ホームの開業・運営をスムーズに進めるためには、入念な事業計画書を作成することが大切です。

事業計画書とは、創業動機・目的や必要な資金と調達方法、事業の見通しなどを記載する計画書のことです。老人ホームの開業・運営にあたって必須の書類ではないものの、提出が求められるシーンもあります。

たとえば、民間企業が運営する有料老人ホームには以下の種類があります。

  • 介護付有料老人ホーム
  • 住宅型有料老人ホーム
  • 健康型有料老人ホーム

介護保険が適用されるサービスを提供する介護付老人ホームを営むためには、都道府県知事や市町村長から介護保険事業者の指定を受けなければなりません。介護保険事業者の申請には、事業計画書の提出が必要です。

また、融資を受ける際にも事業計画書の提出が求められます。金融機関は、事業者の「信用力」「将来性」「計画性」を重視するため、精度の高い分析にもとづいて作成した事業計画書を提出することで信頼を得やすくなるでしょう。

事業計画書を作成することで、事業方針のブレ防止につながるメリットもあります。事業計画書の作成にあたって事業内容を明確にし、将来の見通しを立てることで、従業員を含む全員が事業目的やビジョンを共有しやすくなります。結果として、質の高い介護サービスの提供につながるでしょう。

なお、初期費用など老人ホーム経営に関する基礎知識は、以下の記事を参考にしてください。

老人ホームの事業計画書の書き方・記入例

老人ホームの事業計画書を作成する際「具体的にどのように記入すればよいのだろう?」と、書き方に悩むケースもあるでしょう。

ここでは、マネーフォワード クラウド会社設立が提供する「老人ホーム向け事業計画書のテンプレート」における以下の項目にもとづき、記入例や書き方のポイントを紹介します。

  • 創業動機・目的
  • 職歴・事業実績
  • 取扱商品・サービス
  • 取引先・取引関係
  • 従業員
  • 借入の状況
  • 必要な資金と調達方法
  • 事業の見通し

創業動機・目的

創業動機・目的は、金融機関等から融資を受ける際の審査材料になります。

以下の項目について記載しましょう。

  • なぜ老人ホームを設立するのか
  • 老人ホーム運営を通じて、社会にどのような価値を提供したいか
  • 介護事業に対する想いや熱意

【記入例】

介護職員として20年以上働くなかで、利用者にとってより快適な施設を自分自身の手で作りたいという強い想いを抱くようになった。自分が生まれ育った○○市で老人ホームを経営し、利用者とその家族、従業員が笑顔で過ごせる時間を提供したい。

【ポイント】

読み手の共感につながる内容を意識しましょう。

職歴・事業実績

職歴・事業実績の欄には、創設者や創設メンバーが有する経歴や資格を記入します。経営能力をアピールすることで、社外からの評価アップにつながります。

【記入例】

  • ○○老人ホームで介護福祉士として15年勤務
  • 社会福祉法人○○の管理職として、現場指示やバックオフィス業務に8年従事
  • ○○年より、介護・福祉送迎サービスを提供する会社を経営

【ポイント】

同業種での業務経験や管理職経験、事業の経営経験など、老人ホーム経営に役立つ経歴をアピールすることが重要です。

取扱商品・サービス

取扱商品・サービス欄には、老人ホームで提供する具体的なサービス内容(入浴含む基本の介護サービス、レクリエーションなど)を記入します。あわせて、セールスポイントや利用者のターゲット、競合分析なども記入しましょう。

【記入例】

  • ○○市は全国平均に比べて高齢者率が高い一方、老人ホームをはじめとする介護施設は少ない。
  • ○○市在住の介護を必要とする方をターゲットに、地域の専門家と連携した手厚いサービスを提供する。
  • 充実したレクリエーションと社内教育で、競合他社との差別化を図る。

【ポイント】

必要に応じて表やグラフも活用しながら、統計データなどの資料をまじえて「根拠を示すこと」を意識しましょう。

取引先・取引関係

取引先・取引関係の欄には、老人ホーム経営にあたって必要となる取引に関する以下の情報を記載します。

  • 販売先
  • 仕入先
  • 外注先

【ポイント】

創業時点で仕入先や外注先が未定であれば、記載しなくても問題ありません。

ただし、具体的な販売先や仕入先が決まっていることで、事業の安定性があると判断されやすくなります。たとえば、独自ルートによる介護用品の仕入先があれば、競合他社との差別化をアピールできるでしょう。

従業員

従業員に関する情報を記入します。

  • 常勤役員の人数
  • 従業員数(3ヶ月以上継続雇用者)
  • うち家族従業員数
  • うちパート従業員数

【ポイント】

運営する老人ホームに求められる従業員数の基準を満たす必要がある点には注意が必要です。

たとえば特別養護老人ホーム(特養)の従業員数には、厚生労働省が定める人員配置基準が適用されます。施設長や介護職員、医師などの最低人数が定められているため、事前に確認しておきましょう。

参考:厚生労働省 介護老人福祉施設 (特別養護老人ホーム)

借入の状況

代表者の個人的な借入状況をすべて記入します。

  • 住宅ローン
  • 車のローン
  • 教育ローン
  • カードローン
  • クレジットカードのキャッシング
  • 親族や知人からの借入

【ポイント】

融資の審査で金融機関が借入の状況を調べる際、記載内容と相違があると信用を損なう恐れがあります。借入状況の秘匿や、虚偽の記載は避けましょう。

必要な資金と調達方法

必要資金と調達方法を記入します。

老人ホームの運営には、土地・建物の購入や居室や浴室、洗面設備、介護設備、什器に関わる「設備資金」のほか、以下のような「運転資金」も必要です。

【ポイント】

「必要資金」と「調達資金」は、差し引きしてプラスマイナスゼロになるように作成しましょう。

介護保険報酬はサービス提供から2ヶ月後の入金となるため、3~4ヶ月分程度の運転資金を考慮して計算する必要があります。

事業の見通し

事業の見通しとして、以下を記入します。

【ポイント】

売上高や経費を計算し、「創業当初」と「1年後または軌道に乗った後」に予想される利益をそれぞれ記入しましょう。市場調査にもとづいて利用者数を算出し、再現性の高い収支計画を立てることが大切です。

将来的に利益が増える想定をする場合、「利益が増加する理由」と「どれくらい増えるのか」について根拠を示す必要があります。「同業種の実績を考慮のうえ、利用者数10人増」など、具体的に記載するとよいでしょう。

老人ホームの事業計画書に使える無料テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、老人ホーム向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。

老人ホームの事業計画書を作成するときの注意点

老人ホームの事業計画書を作成するときは、以下の3つのポイントに注意しましょう。

  • 介護サービス事業者の指定基準を満たしておく
  • 施設の安全性をアピールする
  • 専門用語を多用せず客観的に伝える

それぞれの注意点について、詳しく解説します。

介護サービス事業者の指定基準を満たしておく

1つめの注意点は、必要に応じて介護サービス事業者の指定基準を満たす必要がある点です。

老人ホームで介護保険サービスを提供するためには、介護保険法で定められた運営基準や指定基準などの要件を満たし、都道府県知事から介護保険事業者として指定を受ける必要があります。

人員・設備・運営に関する基準を満たしていなければ、事業計画書を提出したとしても、介護保険事業者として指定を受けることはできません。介護サービスの形態(指定居宅介護施設・指定居宅サービス事業者・介護保険施設)によって基準が異なるため、事前の確認が必要です。

また、介護報酬は3年ごとに見直しが行われます。老人ホームの開業を検討する際は、制度の最新情報を把握しておくことが大切です。

参考:厚生労働省 ・介護保険法(◆平成09年12月17日法律第123号)
参考:厚生労働省 介護サービス事業者の指定手続の流れ(居宅サービス事業者の場合)
参考:厚生労働省 令和6年度介護報酬改定について

施設の安全性をアピールする

2つめの注意点は、施設の安全性の確保です。

老人ホームの運営にあたっては、事故や災害といった想定外のトラブルが起こることも考えられます。万が一の事態にも迅速に対応できるように対策を練り、以下に挙げるような項目について事業計画書に盛り込むとよいでしょう。

  • 食事の提供方法
  • スプリンクラーや通報装置の設置
  • 避難経路の確保
  • 事故や災害、感染症蔓延時の対応

「さまざまなトラブルやリスクに対応できる体制を整えた安全性の高い施設」であることをアピールすれば、周囲の信頼を得やすくなります。

専門用語を多用せず客観的に伝える

3つめの注意点は、専門用語の利用です。

事業計画書は、老人ホームに詳しくない融資担当者なども目にする資料です。事業計画書に専門用語を多用することで、意図が正しく伝わらない恐れがあります。介護業界ならではの用語の使用はできる限り控え、わかりやすい言葉で伝えることを意識しましょう。

事業計画書に説得力をもたせるため、客観的な視点を取り入れることも大切です。事業主1人だけで作成するのではなく、複数人の意見を取り入れるとよいでしょう。

ポイントを押さえて老人ホームの事業計画書を作成しよう

老人ホームで介護サービスを提供する場合や、融資を受ける際は、事業計画書の提出が必要です。

関連制度の最新情報をチェックし、必要基準を満たす事業計画を立てましょう。事業計画書を作成する際は、専門用語の多用は避けつつ、施設の安全性や将来性を客観的な視点からアピールすることが大切です。

マネーフォワード クラウド会社設立では、老人ホーム向け事業計画書の無料ひな形・テンプレートを提供しております。ぜひ、ご活用ください。


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