- 作成日 : 2025年4月24日
創業融資の審査に通るには?事業計画書と面談のコツ、個人法人の違いを解説
創業融資の審査に通るには、根拠のある具体的な内容の事業計画書と、現実的な返済計画が不可欠です。面談では根拠ある数値説明がポイントになり、個人・法人の特性に応じた準備で審査通過率が上がります。
本記事では、創業融資の審査において重要度の高い事業計画書と面談のコツ、法人と個人との審査の違いについて解説します。
目次
創業融資の審査に通る割合は?
創業融資は、起業時に必要となる資金を公的機関や金融機関から借り入れる制度です。日本政策金融公庫が代表的な貸し手であり、個人・法人を問わず多くの事業者が利用しています。
一般的に、創業融資の審査通過率はおおむね50〜60%ほどといわれていますが、時期や業種、経済状況によってこの数字は変動します。なお、弁護士や税理士など専門家に相談して事前準備を行うと、審査の通過率が上がる傾向があります。
創業融資の審査に落ちる理由
創業融資の審査に落ちる理由は、さまざまです。個人事業主と法人では事業形態や資金管理の仕組みが異なるため、審査で着目されるポイントにも若干の違いがあります。ただし、基本的には以下の点が審査落ちの原因になるケースが多い、といわれています。
- 提出書類の不備
- 事業計画書の甘さ
- 信用力や自己資金の不足
- 面談での説明が不十分
- 過剰な融資額の申請
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
提出書類の不備
創業融資において多い失敗要因のひとつが、提出書類の不備です。特に、事業計画書(創業計画書)における数値の根拠を示す資料が添付されていない、あるいは記入漏れ・誤字脱字があるというケースは少なくありません。日本政策金融公庫などの公的機関や金融機関は、提出書類の整合性を非常に重視します。
書類不備において、特に問題視されるのは以下の点です。
- 収支計画・資金計画に関する計算ミスや根拠資料の不足
- 個人事業主の場合、経歴や事業内容を明確に説明できる書類がない
- 法人の場合、設立経緯や株主構成が不透明
事業計画書の甘さ
事業計画書の甘さ、つまり計画内容があいまいで実現可能性が不明確な状態では、審査を通過することは難しいでしょう。
売上予測に根拠がなかったり、競合分析が不十分だったりすると、審査担当者は「本当に返済できるビジネスなのか?」と疑問を抱きます。特に、飲食業やサービス業などの競合が激しい分野では、ターゲット客層や売上シミュレーションなどを詳細に説明することが重要です。
信用力や自己資金の不足
創業融資の審査では、自己資金がどの程度用意できているかが大きなポイントになります。自己資金=創業者がどれだけ本気で事業に取り組むかの指標と見なす金融機関も多く、自己資金が一定の基準に達していなければ熱意を疑われることに加え、返済能力にも疑問を抱かせることになりかねません。
また、過去の借入状況やクレジットカードの利用履歴などの個人信用情報もチェックされ、延滞や多重債務があると大きなマイナス要因です。法人の場合、代表者個人の信用情報だけでなく、会社の営業実績・取引先の安定度なども判断材料になります。
面談での説明が不十分
書類だけでなく、面談(ヒアリング)での説明が不十分な場合も審査落ちの原因です。金融機関の担当者は、面談のやり取りを通して「この事業を本当に理解しているのか」「将来の見通しをどれだけ明確に描いているのか」を判断します。
融資担当者からの質問に対してあいまいな返答をしたり、競合や顧客ターゲットに関する質問に答えられなかったりすると、不信感を与えることになるでしょう。また、説明が事業計画書と矛盾している場合も同様です。特に個人事業主の場合は、自身が経営者兼実務担当となるため、事業全体をしっかりと把握していることが求められます。
過剰な融資額の申請
過大な融資申請をすると、返済能力を超える借入になる可能性が高いと判断され、審査に落ちるケースが増えます。特に創業時点では売上が安定しないため、現実離れした融資額を希望してしまうと、金融機関から危険視されるでしょう。
自己資金とのバランスや、創業直後のキャッシュ・フローの見通しを踏まえたうえで、無理のない融資額を設定することが重要です。
創業融資の審査に通るためのコツ
創業融資で審査を突破するには、上記で挙げた落ちやすい要因をクリアする必要があります。
個人事業主・法人それぞれの特性に合った対策を講じることで、融資の可能性を高められるでしょう。ここでは、審査官が注目するポイントと効果的なアプローチを解説します。
これまでの業務経験や能力
創業融資では、これまでの業務経験や経営のノウハウが極めて重視されます。
- 実務経験の長さや内容
- 関連する資格の有無
- 同業種での実績
こうしたバックグラウンドは、事業継続性の根拠にもなります。たとえば、飲食店を開業するなら調理経験や店舗運営の経験があることが好印象につながります。法人の場合は、経営陣全員の経歴や専門性が評価対象となるため、各メンバーの強みをわかりやすくアピールしましょう。
根拠のある事業計画書を作成する
創業融資では、事業計画書(創業計画書)が特に重視されます。
- 売上予測:客単価×来店客数×営業日数、といった計算式を示し、季節変動や集客方法も具体的に記載
- 経費の内訳:人件費・家賃・仕入原価・広告費など、細かい項目ごとの見積もり
- 競合分析:同エリア・同業態の店舗数、差別化戦略
こうした点を明確に提示し、なぜこの数字になるのかの根拠をはっきりと説明できるようにしておきましょう。公的統計(総務省や経産省のデータなど)を引用すると、より信頼性が高まります。
自己資金は多いほど良い
金融機関にとっては、自己資金が潤沢にあるほど貸し倒れリスクが低いと判断できます。特に、日本政策金融公庫の創業融資では「総事業費の3割程度の自己資金」が目安です。また、自己資金の多寡は「どれだけ時間をかけて事業準備に取り組んできたか」という姿勢を示す材料にもなります。
資金使途を明確にする
創業融資では、資金の使い道も重要です。融資担当者は「資金がどの用途に、いつ、いくら必要か」を明確に把握していないと、貸し倒れのリスクを判断できません。設備投資・内装工事費に関しては見積書を用意する、仕入れ費用や広告費には具体的な業者の見積もり、プランを提示するなどの対策をとりましょう。
また、個人事業主の場合は生活費と事業資金を混同しないことが大切です。法人の場合は法人名義での見積書や請求書を整えるなど、法人口座を活用して資金使途を管理する姿勢を見せましょう。
資金の返済能力をアピール
返済能力の証明は、融資審査において最も重要な要素のひとつといっても過言ではありません。
長期的な返済プランを提示することで、創業時の不安定な時期を乗り越えられる可能性を審査担当者に示せるでしょう。特に長期融資の場合は、キャッシュ・フローが年間返済額を上回る見込みを示すことが重要です。
創業融資の審査に通るための事業計画書の書き方
事業計画書(創業計画書)は、融資を受けるうえで非常に重要な役割を果たします。事業の見通しなど必要事項を漏れなく記載し、数字の根拠を示すことがポイントです。
テンプレートを活用して作成すれば、項目漏れを防ぎつつスムーズに書き上げられます。マネーフォワード クラウド会社設立では事業計画書・創業計画書の業界別のテンプレートをご用意しています。
創業融資の審査で好印象を与える面談の答え方
書類審査を通過しても、面談で失敗すると融資を受けられないケースが少なくありません。融資担当者は面談を通じて、書面ではわからない熱意や具体性、経営者としての資質を見極めます。
以下のポイントを押さえて、好印象を与えましょう。
基本的な回答姿勢
質問には要点を絞って簡潔に答え、聞かれていないことまで深追いして話さないのが原則です。「だいたい」「おそらく」などのあいまいな表現は避け、できるだけ具体的な数値や事実を用いて話すようにしましょう。
また、相手が求めている情報を的確に理解し、丁寧かつ冷静に応対することが大切です。
事業計画の説明方法
事業計画書に記載されている内容と、面談での説明が食い違っては信頼を損ねます。専門用語を多用せず、誰にでも理解できる言葉で説明しましょう。また、説明の際には、以下の点に注意します。
- 基本情報:ビジネスのコンセプト、ターゲット市場、競合優位性
- 売上予測の根拠:客単価や来店客数の具体的な想定、広告戦略の効果予測
- 経費計画:家賃や仕入れ、人件費などのコスト試算
要点を押さえて計画書とリンクさせながら説明することで、一貫性と説得力を高められます。
返済計画の説明
返済原資はどの程度の利益を前提としているか、そして月々の返済額を支払ったあとでも事業継続が可能なキャッシュ・フローを確保できるかを明確に示す必要があります。特に、長期返済プランの場合は、将来的な売上増減や設備更新のタイミングなども考慮して、無理のないシミュレーションを提示しましょう。
想定リスクへの対応
創業期には、思わぬトラブルや景気変動に見舞われる可能性があります。一般的に想定されるリスクとしては、以下のような事例が挙げられるでしょう。
- 近隣での競合店の出店
- 主要取引先の倒産
- 社会的インパクト(経済情勢の変化など)
こうしたリスクに対して、どのように対応するのかの対策を示せれば、面談担当者の安心感につながります。過度に楽観的な見通しではなく、現実的かつ建設的な準備があることをアピールしましょう。
創業融資の審査に落ちてしまった場合の対処法
創業融資の審査に落ちても、すぐに諦める必要はありません。再度のチャレンジに向けて改善策を講じることで、次の審査に通る可能性を高められる可能性があります。
審査落ちの原因分析
金融機関は審査落ちの具体的な理由を教えてくれないケースがほとんどです。そのため、自分で不備や問題点を振り返る必要があります。
- 書類の整合性:数値の整合が取れていたか、根拠となる資料を十分に添付していたか
- 信用情報:過去の延滞や多重債務がなかったか
- 事業の妥当性:市場調査やターゲット設定が弱くなかったか
こうした点を主に見直し、改善を図りましょう。
2回目の創業融資の申し込みについて
一度審査に落ちると、一般的には半年程度の期間を空けなければ再申請が難しいとされています。その間に、以下のような改善策を講じることをおすすめします。
- 売上や利益の向上:既に事業を開始している場合、短期的でも実績を積み上げる
- 自己資金の増強:できるだけ資金を貯める、あるいは出資を募る
- 専門家の活用:税理士や弁護士、社労士などに相談して書類や計画を練り直す
こうした取り組みを経て、数値面や計画面の整合性を高めることで再審査での通過率を高められるでしょう。
創業融資の審査をクリアするために
創業融資の審査を突破するには、明確な事業計画と返済計画、そして説得力のあるプレゼンテーションが欠かせません。個人事業主と法人では資金使途や信用力の確認方法などが異なるため、それぞれの特性に合わせて準備を整えることが重要です。
もし審査に落ちても、その原因を把握して着実に改善を重ねれば、再度の申請で融資獲得の可能性は十分に高まります。専門家のサポートや公的機関の情報を活用しながら、ぜひ理想の事業スタートを実現してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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