- 作成日 : 2025年3月21日
酒屋の事業計画書の書き方は?無料テンプレート・見本をもとに記入例を解説
事業計画書は、酒屋の開業時に必要な酒類販売業免許の取得や資金調達、税率特例措置の適用など、さまざまな場面で重要な役割を果たします。
本記事では、酒屋経営に不可欠な事業計画書の作成方法について、テンプレートを参照しながら解説します。
目次
酒屋の開業時に作る事業計画書とは
事業計画書とは、日々の運営方針から将来の事業展開まで、経営に関わるすべての要素を具体的に文書化したものです。
また、経営者だけでなく従業員とのコンセプト共有や、対外的なコミュニケーションツールとしても重要な役割を果たします。
酒屋を開業する際は、通常の事業計画に加え、酒類の販売や製造に特化した専門的な計画の立案も欠かせません。
酒屋の開業や資金調達に必要な事業計画書
事業計画書は、酒屋の開業において重要な役割を果たすものです。資金調達を目的に国や自治体、金融機関に提出する際、事業の内容や収支計画を明確に示す必要があります。
各機関は異なる審査基準を持っていますが、共通して「この事業に融資したい」と思わせることが重要です。
家族や知人から出資を受ける場合も、事業計画書がある場合には説得力が増します。事業の目標や計画を明確に伝えることで、相手の理解と協力を得やすくなるでしょう。
酒類の販売業免許申請時に税務署へ提出する事業計画書
酒販免許の申請には、酒税法に則った事業計画書の提出が必須です。通常の事業計画書と異なり、計画書内には詳細かつ具体的な情報の記載が求められます。
年間の販売予定数量や販売予定数量に対する取引先の承諾状況、取り扱う酒類の種類など運営に関する情報を明確に示し、各項目について具体的な根拠を添える必要があります。
酒税の税率特例措置を適用する場合の事業計画書
酒類製造者が、酒税の税率特例措置の承認を得る際にも事業計画書が必要です。
申請書や誓約書が、事実関係を記載するのみで済むのに対し、事業計画書は酒類業の発展に資する取り組みや目標、計画期間などを詳細に示す必要があります。
そのため、企業の将来像を具体的に描くための綿密な分析と戦略が求められ、作成の難易度は高めです。
酒屋の事業計画書の書き方見本・記入例
事業計画書に記載する主な項目は、以下のとおりです。
- 創業動機・目的
- 職歴・事業実績
- 取扱商品・サービス
- 取引先・取引関係
- 従業員
- 借入の状況
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
それぞれ見ていきましょう。
創業動機・目的
酒屋の事業計画書には、創業の動機や目的を具体的に記載し、事業への情熱や実現可能性を示しましょう。
例えば、「地域に根ざした酒屋を目指す」「特定の種類の酒を専門に扱う」など、独自の視点を盛り込むことで他店との差別化が図れます。
さらに、単なる利益追求ではなく、顧客にどのような価値を提供するのかの明確化により、金融機関や税務署の担当者にも事業の意義が伝わりやすくなります。
職歴・事業実績
過去の職務経験や事業実績は、酒屋経営の基礎となる重要なポイントです。
酒類業界での経験がある場合は、仕入や販売にマーケティング、店舗運営などの具体的な知識や経験を事業計画書に詳しく記載し、事業運営に活かせる点をアピールしましょう。
また、過去に事業を立ち上げた経験があれば、その実績を示すことで、事業運営能力の高さを証明できます。
取扱商品・サービス
事業計画書の「取扱商品・サービス」の項目では、販売する酒類の種類や特徴を具体的に記載することが重要です。例えば、地酒や輸入酒に特化する場合は、その選定理由やターゲットとなる顧客層を明確に示しましょう。
また、試飲会やイベントの開催、酒に合う食品の提供など、付加価値を高める取り組みについても記載すると事業の魅力や競争力がより伝わります。輸入酒を扱う場合には、輸送費や通関手続きなどの具体的な計画も盛り込むことで、実現可能性を高められます。
取引先・取引関係
「取引先・取引関係」では、仕入先の詳細を明確に記載する必要があります。問屋との契約による幅広い商品ラインナップや、酒蔵との特約店契約による独自性の強調など、取引形態を具体的に記載しましょう。
また、事業計画書には、取引先名や仕入額の割合、支払い条件などを詳細に盛り込むことで計画の信ぴょう性を高められます。
従業員
従業員に関する記載では、雇用形態や役割を明確に示すことが重要です。酒類販売業では、法令遵守のため酒類販売管理者の選任が必須となります。
酒類販売管理者は、販売場ごとに選任され、業務が法令に従って適切に行われるよう指導や助言を行います。また、税務署が申請内容を確認する際、申請者や管理者が来署を求められる場合もある点に留意しておきましょう。
借入の状況
事業に必要な資金をどのように調達するのか、具体的な計画を記述します。自己資金の額や借入予定額、借入先(金融機関など)を明記し、借入の条件(金利や返済期間など)についても記載しましょう。
金融機関からの融資を受ける場合は、銀行により発行された融資証明書が必要です。また、事業計画に見合った資金があることを示すために、預金通帳のコピーなどの提出が求められる場合もあります。
必要な資金と調達方法
事業計画を立てる際は、必要な資金とその内訳を具体的に示すようにしましょう。
まず、開業に必要な費用として、店舗の賃料や酒類の仕入費用、人件費、光熱費、通信費、宣伝費などの詳細を明記する必要があります。これらを具体的な金額で示すことで、必要資金の全体像が明確になります。
次に、これらの必要資金をどのように調達するかの明示が必要です。自己資金の場合は、銀行の残高証明書や預金通帳のコピーの提出を求められる場合があります。また、融資を受ける場合は、融資金額と返済条件を具体的に記載しましょう。
事業の見通し
売上予測や利益計画など、事業の将来的な見通しを具体的に記載することが重要です。年間の販売数量・販売額・利益額を予測し、その根拠となるデータを明確に提示しましょう。
地域の人口データや競合店の状況、過去の販売実績などを基に売上予測を立てることで、計画の信頼性を高められます。事業が十分な利益を上げられるかを重視するため、具体的な数値とその裏付けが必要です。
さらに、計画に見合った資金を確保することも不可欠です。事業計画書は審査時に詳細にチェックされるため、内容を緻密に整え、実現可能性を示すための準備を怠らないようにしましょう。
酒屋の事業計画書に使える無料テンプレート
マネーフォワード クラウドでは、酒屋向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。
酒屋の事業計画書を作成するポイント
酒屋の事業計画書を作成するポイントとして、経営理念やコンセプトを明確にすることが大切です。自社の強みを洗い出し、将来像を具体的に描くことで計画に一貫性を持たせましょう。
酒屋の経営理念やコンセプトを明確にする
経営理念とコンセプトは、事業の根幹をなし、目標設定や具体的な取り組みを検討する際の指針となります。
消費者の視点に立ち、どのような価値を提供するのかを示すことで、競争力のある店舗の実現を目指しましょう。
例として、利便性を重視した宅配サービスや特定の酒類に特化した専門店としての展開など、顧客ニーズに応じた差別化などが挙げられます。
地域とのつながりや商品の品質など、他社にはない強みを洗い出し、それらを活かした独自の価値提案を検討しましょう。
客数や客単価をもとに売上予測を計算する
売上予測を計算することは、計画の実現可能性を評価し、目標設定を行ううえで重要です。
まず、月額固定費(賃料・仕入・人件費など)を把握し、その数値をベースに月間売上目標を設定します。その後、見込み客数や客単価を分析し、競合や市場環境を調査することで、収益性を確保するための具体的な施策を事業計画書に落とし込みましょう。
酒屋を開業するときの資金調達方法
酒屋を開業する際には、資金の使途と必要額を明確にし、それらに応じた調達方法の検討が必要です。
融資は安定的な資金確保が可能な反面、返済義務があります。
出資は返済不要である反面、原則として経営権の一部共有が必要です。補助金や助成金は、返済義務はないものの、申請や受給に時間がかかる点も考慮すべきでしょう。
クラウドファンディングは資金調達と同時に宣伝効果も見込めますが、目標額に達しないリスクもあります。
また、自治体の創業支援や日本政策金融公庫の融資制度を活用することも重要です。計画的な情報収集と選択を進めましょう。
綿密な事業計画書を作成し、理想の酒屋経営を実現しよう
酒屋の開業には、事業計画書の作成が不可欠です。事業計画書は、酒販免許の取得や資金調達に必要であり、経営の指針となる重要な文書です。
経営理念やコンセプトを明確にし、実現可能な売上予測を立て、具体的な数値と根拠を示しましょう。事業計画書は、酒屋の成功への第一歩です。計画を綿密に練り上げ、夢の実現に向けて着実に歩みを進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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