• 作成日 : 2025年3月21日

セレクトショップの事業計画書の書き方は?テンプレートや記入例も紹介

セレクトショップを開業する際に必要な事業計画書とは、資金調達の方法や事業の見通し等を記載した書類です。内容次第では融資の可否にも影響するため、融資担当者を説得させる具体的かつ実現可能性の高い事業計画書を作成することが重要です。

本記事では、セレクトショップの事業計画書の書き方や記入例を解説します。

セレクトショップの開業時に作る事業計画書とは

セレクトショップの開業時に必要な事業計画書とは、事業計画を記載した書類です。具体的には、創業動機や資金調達方法、事業の見通し等を詳しく記載します。事業計画書は法的な作成義務はありませんが、安定した事業運営を実現するには事業計画書の作成が重要です。

セレクトショップの開業時は、初期費用や運営資金など多額の資金を用意しなければいけません。資金調達の方法として金融機関から融資を選択する場合は、融資担当者が審査する際の判断材料になる事業計画書の提出が求められます。

事業計画書の内容に基づいて融資可否が決まるため、綿密に作成する必要があります。

セレクトショップを開業する方法については、以下の記事を確認してください。

セレクトショップの事業計画書の書き方・記入例

ここでは、セレクトショップの事業計画書の書き方・記入例について解説します。

創業動機・目的

事業計画書で融資担当者が一番初めに目にするのが、「創業動機・目的」の欄です。

融資担当者が創業動機・目的を通して知りたいのは、事業への熱い想いや事業継続力です。開業当初は、想定した収益に届かず、厳しい経営状況に陥る場合があります。融資担当者は、創業者が困難な状況でも事業を続ける力があるのかを重要視しています。

これまでの業界の経験年数や経験を踏まえ、創業動機・目的を明確に記載することが重要です。文章を作成する前に業界の経験年数やマネジメント経験を振り返り、自分の強みを整理してみましょう。自分の強みを盛り込むことで説得力が増し、融資担当者に良い印象を与えられます。

【記入例】

創業動機・目的

学生時代からファッションに興味があり、服飾専門学校で洋裁の知識や技術を習得しました。卒業後はアパレル会社で〇〇年間働き、最後の〇〇年間はエリアマネージャーを経験し、店舗管理にも携わりました。独立開業に向けて自己資金の準備の見通しが立ち、この度の創業を決意致しました。

職歴・事業実績

事業計画書の「職歴・事業実績」欄には、創業者の職歴や実績を具体的に記載します。

【記入例】

職歴・事業実績(勤務先・役職・経験年数・資格等)
令和〇年〇月〇〇高校 卒業
令和〇年〇月株式会社〇〇に入社 店長
令和〇年〇月株式会社〇〇に入社 エリアマネージャー
令和〇年〇月独立して創業予定

古物商許可を取得している場合は、「取得資格」欄にその旨を記載しましょう。

古物商許可とは、古物営業法に規定される中古商品を売買する際に必要な許認可です。古物営業法に違反すると、罰金刑を科されたり、許可取り消しなどの行政処分を受けたりする可能性があります。古物商許可がない状態での開業は難しいため、金融機関等の融資審査は基本的に通りません。中古商品を取り扱う場合は、融資申請前に必ず取得しましょう。

古物商許可は、管轄の警察署から都道府県の公安委員会に許可申請する必要があります。

参考:古物営業法

取扱商品・サービス

事業計画書の「取扱商品・サービス」欄には、事業の特徴や強みの根拠を記載します。

【記入例】

項目記載内容
取扱商品・サービスの内容客単価や1日の売上を明確にするために、商品単価や見込み数量を記載します。

  • 婦人服 50点(価格 5,000円~3万円)
  • 子供服 30点(価格 3,000円~1万5,000円)
  • 小物類(価格 3,000円~)
セールスポイント

販売ターゲット・戦略

【セールスポイント】

セールスポイントでは、自社ブランド・商品の強みや特徴を記載します。

  • 親子でペアルックを楽しめる商品を揃える
  • オーガニックコットンやリネンなど、肌に優しい天然素材を使用した商品を提供する
  • トータルコーディネートが完成するようにアイテムごとの組み合わせを重視した商品を展開する

【販売ターゲット・戦略】

販売ターゲットには、性別や年齢層、住所地域等の属性を記載します。顧客を詳細に絞り込むことで、マーケティング戦略の効果を高められます。

  • 子育て世代の30代前後の女性
  • 肌に優しい素材を好む女性
  • 親子ペアルックを楽しみたい女性

販売戦略には、集客の仕組みを具体的に記載します。一時的な販促策や広告ではなく、継続的な売上が見込める仕組みであることが重要です。

  • 新作やコーディネート例等をSNSで発信する
  • 継続的なSNS・ネット広告で認知度を上げる
  • ウィンドウディスプレイで世界観を演出する
競合・市場などの状況市場動向や地域特性、競合他社の存在等を記載します。競合他社との差別化、独自アイデアで付加価値を高めていることがあれば記載しましょう。

  • 子育て世帯が多く集まる地域に店舗を構える
  • 天然素材の洋服は値段が高くなる傾向にあるが、高品質で低価格の商品を提供する
  • 仕事や家事に忙しい子育て世帯のために、自宅で試着できる「試着サービス」を提供する

取引先・取引関係

事業計画書の「取引先・取引関係」欄には、販売先や仕入先を記載します。取引期間が長い販売先や仕入先がある場合は、優先的に記載していきましょう。

【記入例】

取引先名シェア掛取引の割合回収・支払の条件
販売先一般個人(現金)70%0%即金
一般個人(クレジット・電子マネー)30%100%末 日〆 翌月末 日回収
仕入先株式会社〇〇50%100%末 日〆 翌月末 日支払
株式会社〇〇50%100%末 日〆 翌月末 日支払

販売実績がある場合は、販売実績を一覧表にまとめたリストを作成しましょう。

事業計画書と一緒に提出すれば、販売を予定している商品に高い顧客ニーズがあることや、一定の売上を確保できる根拠を示せます。

従業員

事業計画書の「従業員」は、事業の運営体制を記載する欄です。3カ月以上継続雇用を予定している従業員数や採用予定の従業員数を記載します。

【記入例】

常勤役員の人数0人従業員数1人うち家族従業員 0人

うちパート従業員 1人

従業員数は採用費や人件費に直結するため、収益との兼ね合いを考えながら事業計画を立てましょう。

借入の状況

事業計画書の「借入の状況」欄には、既存借入を記載します。

借入件数や借入残高は、融資担当者が返済能力を判断するための重要な要素です。消費者金融から借入がある場合、借り換えを懸念されて融資審査に影響する可能性があります。

借入がない場合は、空欄のまま提出しても問題ありません。

【記入例】

借入先名お使いみちお借入残高年間返済額
〇〇銀行□事業 □住宅 ✓車 □教育 □カード □その他300万円50万円

なお、事業に直接関わらない個人的な借入についても申告しなければいけません。事業以外の個人的な借入には、以下のようなものがあります。

  • 住宅ローン
  • 自動車ローン
  • カードローン
  • 学資(教育)ローン
  • ブライダルローン

必要な資金と調達方法

事業計画書の「必要な資金と調達方法」欄には、借入希望額と資金用途を記載します。

【記入例】

項目記載内容
必要な資金設備資金設備資金とは、開業時に購入が必要な設備費用です。

【設備資金の記載例】

レジ・パソコン・マネキン・看板・洋服棚など

運転資金運転資金とは、事業を運営する際にかかる費用です。

【運転資金の記載例】

人件費・家賃・広告費・水道光熱費通信費など

調達方法「調達方法」欄には、資金の調達先や金額を記載します。

【調達方法の記載例】

  • 自己資金 〇〇円
  • 親、兄弟、知人、友人等からの借入 〇〇円
  • 日本政策金融公庫、国民生活事業からの借入 〇〇円
  • 他の金融機関等からの借入 〇〇円

開業直後は集客が難しく、想定した売上に届かないことも多いです。赤字の期間も資金不足に陥らないように、余裕を持たせた資金計画を立てる必要があります。

事業の見通し

事業計画書の「事業の見通し」欄には、創業から軌道に乗るまでの売上高や売上原価、経費などを記載します。

【売上高の記入例】

項目記載内容
創業当初売上高:206万円

  • 平日:平均客単価5,000円×10人×22日=110万円
  • 休日:平均客単価8,000円×15人×8日=96万円
創業1年後売上高:288.5万円

  • 同業種の実績を考慮し、創業当初の約1.4倍に増加見込み

「売上高」欄には、売上の根拠が分かるように計算式(売上高予測:平均客単価×来店客数×営業日数)を用いて詳細に記載する必要があります。

参考:日本政策金融公庫 国民生活事業

セレクトショップの事業計画書に使える無料テンプレート

マネーフォワード クラウドでは、セレクトショップ向けの事業計画書のひな形・テンプレートをご用意しております。事業計画書作成の参考として、ぜひダウンロードしてご活用ください。

セレクトショップの事業計画書を作成するポイント

セレクトショップの事業計画書は、融資審査の通過可否に影響する重要な書類です。ここからは、審査の通過率を上げるためのポイントについて解説します。

セレクトショップのコンセプトを明確にする

競争が激しいアパレル業界で生き残るには、コンセプトの明確化が必須です。

融資担当者もコンセプトを重要視しており、内容次第では融資審査に影響する場合があります。多様化する消費者のニーズを調査し、自店のコンセプトを明確に打ち出しましょう。

【コンセプトの作成手順】

  1. 競合と市場の調査
  2. ターゲットの選定
  3. 課題を抽出
  4. 解決策の洗い出し

ターゲット設定では、年齢や性別、職業、居住地など詳細に条件を決めましょう。曖昧な設定では方向性が定まらず、ブランドや商品の価値を打ち出しづらくなります。無駄なマーケティングコストもかかるため、競合や市場の調査を参考に詳細に絞り込むことが重要です。

ターゲットに合わせた販売チャネルを設定する

販売チャネルは、設定したターゲットに合わせて検討しましょう。販売チャネルとは、自社の商品・サービスを販売するための経路です。

セレクトショップの場合、以下のような販売チャネルがあります。

  • 小売店
  • ECサイト
  • SNS

どの販売チャネルが最適かは、想定するターゲット層で変わります。たとえば、若い世代が対象の場合は、SNSを通じた広告・宣伝が効果を発揮してくれる可能性が高いです。対象がシニアの場合は、従来型のチラシ広告や実店舗での販売強化が適しています。

仕入先との信頼関係の構築も事業計画に含める

仕入先との信頼関係の構築方法も事業計画に含めましょう。

アパレルの仕入れを成功させるには、自社の顧客に好まれる商品を展開する優良な仕入先の確保が必須です。また、質の高い商品を継続的に仕入れるためには、仕入先と信頼関係を築いて長期的なパートナーシップを構築することが求められます。

信頼関係の構築で重要なのは、仕入先の意見や要望に対して真摯に向き合うことです。相手の意見や要望を尊重して理解しようとする姿勢は安心感を与えるため、信頼関係が深まります。問題やトラブルが発生した場合には、迅速に対処することも大切です。

メルマガや会員制サービスなどの施策も検討する

セレクトショップの売上を安定化させるには、リピーターの獲得が重要です。

企業が抱える顧客全体のうち、約2割の優良客が売上の8割を生み出しているといわれています。開業直後は新規顧客獲得に向けた施策が重要ですが、安定した運営を継続するにはリピーターの獲得方法も合わせて検討することが必要です。

具体的には、顧客との接点を増やすメルマガや会員制サービス等の施策が挙げられます。それらの施策を、経営戦略として事業計画書に具体的に記載しましょう。

セレクトショップの事業計画書は根拠に基づいて作成しよう

セレクトショップを開業する際は、設備資金や運営資金など多額の資金が必要です。

事業計画書の作成に法的な義務はありませんが、金融機関等の融資を受けたい場合は提出を求められる場合があります。内容次第では融資審査に落ちる可能性もあるため、綿密な計画を立てて事業計画書を作成する必要があります。

融資担当者を納得させる、具体的かつ実現可能な事業計画書を作成しましょう。


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