• 作成日 : 2025年7月23日

大学生が塾を起業するには?メリットや課題、流れを解説

近年、大学生の起業への関心が高まっています。特に教育分野における塾経営は、自身の受験経験や得意分野を活かせるため、大学生にとって魅力的な選択肢です。急速に少子化が進行する中でも教育への投資意欲は高く、質の高い教育サービスへの需要は減りません。この記事では、塾経営の夢実現に向け、アイデア創出から資金調達、集客戦略、学業との両立まで、大学生が直面する課題と解決策をわかりやすく解説します。

大学生が起業する方法について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

大学生が塾を起業するメリットと課題

大学生が塾を起業する際に享受できる恩恵と、成功のために乗り越えるべき現実的なハードルについて解説します。

学生ならではの強みを最大限に活かす

大学生は生徒の悩みを理解しやすく、自身の受験経験や得意科目を活かせます。大学の人脈や柔軟な発想力も武器です。現役大学生という立場は「身近なロールモデル」として信頼を得やすく、共感的な指導は生徒のモチベーション維持や保護者の信頼獲得に繋がります。最新の学習トレンドを取り入れ、差別化を図ることも可能です。

低リスク・低コストで挑戦できる可能性

オンライン塾なら初期投資を抑えられ、自宅開業も可能です。学生は生活費の支援がある場合も多く、身の丈にあった起業ならば、失敗時のリスクは社会人より低い傾向にあります。ただし参入障壁の低さは競合増を意味するため、価格以外の付加価値で差別化が必要です。

将来のキャリアに繋がる貴重な経験とスキル

塾経営は事業計画、マーケティング、財務管理など多様なスキルを実践的に学べ、学生時代の起業経験が就職活動で有利になる可能性があります。自己理解も深まり、将来のキャリア選択の指針となります。

学業との両立や資金面での注意点

学業との両立は大きな課題です。塾経営には多くの時間が必要で、学業への影響が懸念されます。自己資金が少なく、資金調達も難しい現実があります。優先順位を明確にし、無理のない計画と周囲の理解が重要です。

大学生の塾起業メリット・デメリット一覧

メリットデメリット
  • 同年代のニーズをリサーチしやすい
  • 失敗してもリスクを抑えやすい
  • ビジネスにかける時間を作りやすい
  • 学生向けの支援サービスを受けられる
  • 起業経験がアドバンテージになる
  • 低コストで始められる可能性がある
  • 自身の受験経験や学習ノウハウを活かせる
  • 最新の教育トレンドへの感度が高い
  • 経験や知識不足で挫折しやすい
  • 学業との両立が難しくなる
  • 自由な時間が少なくなる
  • 資金調達が難しい
  • 社会的信用が得にくい

大学生が塾を起業する流れ

ここでは、アイデアの種を見つける段階から、実際に塾を開業し運営を始めるまでの具体的な道のりを、大学生が無理なく進められるようステップごとに丁寧に解説します。

アイデア発想と勝てるコンセプト設計

自身の強みと市場ニーズを掛け合わせることが重要です。家庭教師や個人塾、オンライン家庭教師、スキル活用型も検討できます。現役大学生であることの優位性を活かし、「〇〇大学特化型」「不登校経験者が運営」など独自性を出すと大手塾と差別化できます。

コンセプト設計アイデア例
  • 現役生による〇〇大学特化受験サポート塾
  • 特定科目深掘り専門塾
  • 大学生向け履修・学習相談オンライン塾
  • 地域の子供向けプログラミング・STEAM教室
  • オンライン自習室兼質問対応サービス

自身の経験を振り返りながら棚卸しして、顧客ニーズを深堀りすることが第一歩です。

説得力のある事業計画書の作成

事業計画書は目的、アイデア、売上目標などを整理し、資金調達や自己評価に不可欠です。学生は社会経験不足と見られがちなため、綿密な事業計画書で具体性、データ、本気度を伝えることが重要です。金融機関の融資担当者は、事業内容、経営者の経験、競争優位性、資金計画の妥当性などを見ます。

学習塾の事業計画書では、創業動機、サービス内容(差別化ポイント含む)、市場分析、集客戦略、収支見通し、資金調達計画が重要です。大学生ならではの強み(教育の最新情報提供など)を盛り込みましょう。特に、大学生の事業計画書は「学びと成長の計画書」として、事業を通じた成長ビジョンを示すと効果的です。

必要な手続きと法律知識

法的手続きと関連法規の遵守は不可欠です。

開業手続き

個人事業主なら税務署へ「開業届」を提出します。屋号の記載は任意ですが、法人でいうところの「会社名」ですので、屋号を持つことで信頼性や認知度向上に繋がります。法人設立の場合は、定款作成や設立登記が必要です。

特定商取引法

学習塾の契約で、契約期間2ヶ月超かつ総額5万円超の場合、特定商取引法上の「特定継続的役務提供」に該当し、クーリング・オフ制度の対象となります。契約書面の交付義務があり、クーリング・オフに関する記載は目立たせる必要があります。

法的手続きをきちんと行うことは、事業への真摯な姿勢を示し、保護者の信頼を得る上で不可欠です。

大学生でも活用できる資金調達方法

自己資金が潤沢でなくても、活用できる資金の調達方法は複数あります。

自己資金(アルバイト等での貯蓄)

自己資金は、事業の基盤となる最も基本的な要素です。自身で貯めた資金があることは、事業への真剣さを示すことになり、金融機関からの融資審査においても非常に有利に働く場合があります。計画的な貯蓄は、将来の事業展開において大きな強みとなるでしょう。

日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」

日本政策金融公庫が提供する「新規開業・スタートアップ支援資金」は、創業間もない事業者を対象とした融資制度です。学生の方でも、しっかりとした事業計画を策定していれば利用が可能です。特に、地域の商工会議所などが実施する創業塾を修了した場合は、融資の際に優遇措置を受けられる可能性もあります。

クラウドファンディング

クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人々から資金を募る方法です。学生ならではのユニークな挑戦や、教育・社会貢献に対する強い想いは、多くの人々の共感を呼びやすく、資金調達に繋がることが期待できます。クラウドファンディングの成功には、プロジェクトの魅力を最大限に伝え、支援者との良好な関係を築くことが不可欠です。

大学・自治体のビジネスコンテスト

大学や自治体が主催するビジネスコンテストは、賞金や事業支援金を得る絶好のチャンスです。資金獲得だけでなく、経験豊富な専門家からのフィードバックやアドバイスは、事業計画を練り上げる上で非常に貴重な機会となります。また、入賞することで、事業の知名度向上や、新たなネットワーク構築にも繋がるでしょう。

大学のインキュベーション施設・起業支援プログラム

大学によっては、学生の起業を後押しするためのインキュベーション施設や起業支援プログラムが用意されている場合があります。これらの施設やプログラムでは、資金援助、オフィススペースの提供、起業家や専門家によるメンター紹介、法務や会計に関するアドバイスなど、多岐にわたる支援を受けることが可能です。

親族・知人からの借入・出資(エンジェル投資)

親族や知人からの借入や出資は、比較的スピーディーに資金を調達できる方法の一つです。ただし、後々のトラブルを避けるためにも、金利や返済条件、出資比率など、契約条件を明確にし、慎重に進める必要があります。また、個人投資家であるエンジェル投資家からの出資も選択肢となります。彼らは資金提供だけでなく、経験や人脈を提供してくれる場合もあるため、あなたの事業にとって強力なパートナーとなり得ます。

大学生起業におすすめの塾形態

大学生が自身のスキル、リソース、ライフスタイルに合わせて選択できる、多様な塾の経営スタイルを具体的に紹介します。

個別指導塾・集団指導塾

個別指導は生徒一人ひとりに合わせやすく、集団指導は収益効率が高い可能性があります。学生講師は、生徒把握やカリキュラム調整がしやすい個別指導から始めることが多いようです。自身の指導スタイルや得意科目、準備時間などを考慮し、体験授業などで試してみるのがおすすめです。

オンライン塾の立ち上げと運営のコツ

オンライン塾は初期投資を抑えられ、場所を選ばず全国の生徒を対象にできます。時間や場所の制約を受けにくく、大学生にとって大きなメリットです。オンライン塾を運営する際は、次のようなポイントを押さえましょう。

  • チャットツール活用や定期的な面談で、生徒が質問しやすい雰囲気作りをする。
  • 安定したネット回線、クリアな音を拾えるマイク、高画質カメラなど配信環境に配慮する。
  • キャンセルポリシー、遅刻対応など事前に明確なルールを設定し共有する。
  • 定期的な進捗報告を通じて、保護者とも信頼関係を築く。

オンライン塾の成功には、「デジタル空間における人間関係構築力」が必要です。

「〇〇専門塾」でニッチ市場を狙う戦略

大手塾との差別化として、得意分野を活かした「〇〇専門塾」が有効です。難関大学・特定学部に特化した受験対策、医学部受験専門、特定科目特化などは、専門性の高さから高単価も可能です。実際に受験を経験した学生の「最新知識」や「合格体験」が、強力な武器となります。

自宅開業のメリット・デメリットと注意点

自宅開業は賃料不要で初期費用を抑えられます。しかし、立地を選べず、塾に通う生徒や保護者に抵抗感がある可能性も忘れてはいけません。また、プライベートとの区別も課題です。

自宅開業時の注意点
  • 生活感を出さず、静かで明るい学習環境を整備する。
  • 個人情報管理を徹底して、セキュリティ確保に努める。
  • 家族と同居している場合は、事前説明と協力依頼が不可欠となる。
  • 賃貸物件やマンションの場合、規約違反にならないか確認する。

自宅開業は手軽ですが、「プロ意識」が一層求められます。

大学生が塾を成功させる経営方法

大学生というユニークな立場を最大限に活用し、塾経営を成功へと導くための具体的な戦略やアイデアを、集客から指導法、講師マネジメント、保護者対応、そして学業との両立に至るまで、多角的に探求します。

効果的な集客戦略とSEO対策入門

集客にはオフライン(チラシ、看板)とオンライン(HP、ブログ、SNS、Web広告)があります。大学生はオンライン集客に強みを発揮しやすく、SNSや口コミは初期集客に有効です。HPやブログはSEO対策することで、長期的な集客効果が期待できます。

大学生向け集客アイデア
  • Instagram、TikTok、X、YouTubeなどで情報発信しファンを獲得する。
  • ブログやnoteを運営して、受験体験記や勉強法を発信し、専門性と共感性をアピールする。
  • 口コミや紹介制度を促進し、満足した生徒・保護者からの紹介を得る。紹介制度で拡大を促す。
  • 学生運営サイト、イベントで告知する。
  • 近隣学校行事でのチラシ配布や地域イベント出展で認知度の向上を測る。

生徒を惹きつける教材作成と指導法

質の高い教材選定と生徒を惹きつける指導法が不可欠です。教材は教科書準拠、問題量豊富、解説が分かりやすいものが基本です。デジタル教材との組み合わせも注目されています。指導は個別最適化が求められます。大学生は自身の受験経験から、効果的な教材や指導法を開発しやすいです。

大学生ならではの教材・指導法の工夫
  • 最新の入試傾向の反映
  • デジタルツールの積極活用
  • 「なぜそうなるのか」を重視する指導
  • 学習計画・進捗管理の個別サポート

大学生講師の強みは、「学ぶ姿勢そのものを伝える」ことができる点です。

講師の採用とマネジメント(学生講師を雇う場合)

事業拡大に伴い他の学生講師を採用する場合、講師の質は塾の評判に直結します。採用基準の明確化、研修実施、シフト管理、指導クオリティ維持、良好なコミュニケーション体制構築が重要になるでしょう。労務管理にも注意が必要です。

学生講師マネジメントのポイント
  • 明確な採用基準を設定する。学力に加え、コミュニケーション能力、責任感、教育への熱意なども考慮する。
  • 研修制度を導入し、指導方針、教材特性、コミュニケーション方法などを共有する。
  • 定期的なミーティングを実施することで、情報共有や課題相談の場を設け、塾全体の一体感を醸成する。
  • 業務範囲の明確化と適切な対価で、授業準備なども含めた適切な給与体系を設定する。
  • 良好な労働環境の提供するため、学業との両立に配慮したシフト調整や、講師間でも相談しやすい環境作りを行う。

保護者からの信頼を勝ち取るコミュニケーション術

保護者は塾の重要な顧客です。学生起業家は年齢や社会経験不足で不安視される可能性もあるため、誠実なコミュニケーションで信頼構築が不可欠です。

保護者とのコミュニケーションのポイント
  • 生徒の状況や期待を丁寧にヒアリングし、塾の方針や料金を明確に説明する。
  • 授業内容、生徒の様子、課題進捗などを定期的に報告する。学習カード活用も効果的。
  • 問い合わせや相談に迅速かつ誠実に対応する。
  • 定期テスト結果や模試成績などを共有し塾の価値を示す。
  • 成績だけでなく、学習態度や生活面の成長も伝える。

塾経営と学業をスマートに両立させる時間管理術

学業との両立は大きな課題です。塾経営は授業以外にも多くの業務時間を要します。徹底した時間管理と業務効率化が不可欠です。

学業と塾経営を両立させるための時間管理
  • 学業を最優先し、事業タスクを計画的に組み込む。
  • 通学中や空きコマなどの隙間時間を有効活用する。
  • スケジュール管理アプリ、会計ソフト、塾運営システムなどを活用し、事務作業時間を削減する。
  • ルーティン業務はマニュアル化し、可能なら外注化や委任も検討する。
  • 質の高い活動継続のため、意識的に休息時間を確保する。

大学在学中の塾起業を成功させよう

大学生が塾を起業することは、学業との両立や経営知識の不足といった課題を抱える一方で、自身の経験や強みを活かし、大きなやりがいと成功を掴む可能性を秘めています。

この挑戦には、自身の学習経験をダイレクトに活かせるという大きなメリットがあります。受験の苦労や成功体験は、生徒にとって最高のロールモデルとなり、共感を呼びやすいでしょう。また、学業との兼ね合いを考慮し、柔軟な働き方が可能である点も魅力です。

授業や試験に合わせて自分のペースで事業を進められるため、無理なく両立を目指せます。さらに、自宅やオンラインでの開講など、工夫次第で初期費用を抑えやすいため、資金面のハードルを下げてスタートを切ることができます。そして何より、生徒の成長を間近で感じられる喜びは、何物にも代えがたい社会貢献と自己成長の機会となるでしょう。


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