• 作成日 : 2025年5月16日

沖縄県で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説

沖縄県で起業をする場合、特定創業支援等事業や補助金・助成金など様々な支援制度を利用することができます。この記事では、沖縄県で起業を考えている方が利用できる様々な支援制度について、その内容や活用方法を詳しく解説します。

沖縄県の特定創業支援等事業

沖縄県内では、産業競争力強化法に基づき、県や各市町村が連携して「特定創業支援等事業」と呼ばれる、創業を志す人々を対象とした継続的な支援プログラムを実施または認定しています。

これらの事業は、創業に必要な知識、すなわち経営、財務、人材育成、販路開拓に関するノウハウを体系的に習得できるよう設計されています。通常、これらのプログラムは1ヶ月以上の期間にわたり、複数回の講座や相談を通して提供されます。

参考:創業支援等事業計画認定|沖縄総合事務局

各市区町村ごとの特定創業支援等事業

県内各地で、特色ある特定創業支援等事業が展開されています。

那覇市

那覇市では、「なはし創業・就職サポートセンター」を中心に、窓口での経営相談を4回以上実施し、上記4分野に加えて開業に伴う手続きなどのノウハウも指導しています。また、創業に関する基礎知識を習得するための創業塾も開催されており、体系的かつ実践的な学びの場を提供しています。

参考:なはし創業・就職サポートセンター|那覇市

石垣市

石垣市では、石垣市商工会と連携し、創業に必要な経営、財務、販路拡大、人材育成の4つの基礎知識を集中的に学べる創業支援セミナーや個別創業面談を実施しています。

浦添市

浦添市では、「浦添市産業振興センター結の街」において、低賃料でのオフィス提供と共に、浦添商工会議所やインキュベーションマネージャーによる継続的な相談支援を行っています。

沖縄市

沖縄市では、Lagoon KOZAが特定創業支援等事業の認定を受けており、4回以上の創業相談や、全6回の創業スクールへの参加がプログラムの対象となります。

特定創業支援等事業を利用するメリット

これらの特定創業支援等事業に参加した起業家は、様々な利点を享受できます。

登録免許税の軽減措置

その中でも特に重要なのが、会社設立時の登録免許税の軽減措置です。沖縄県内で株式会社または合同会社を設立する際、通常は資本金の0.7%かかる登録免許税が、これらの支援を受けた創業者に対しては0.35%に軽減されます。例えば、株式会社の最低税額は15万円から7.5万円に、合同会社の最低税額は6万円から3万円に減額される可能性があります。この税制上の優遇措置は、創業時の初期費用を大幅に削減する効果が期待できます。

創業関連保証の特例

また、資金調達の面では、創業関連保証の特例が利用しやすくなります。沖縄県信用保証協会による創業関連保証は、通常、事業開始の2ヶ月前から利用可能ですが、特定創業支援等事業を受けた場合は、事業開始の6ヶ月前から利用できるようになります。さらに、保証枠も拡大される可能性があり、これにより、担保や実績が少ない創業期においても資金調達が容易になることが期待されます。

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫の融資制度においても優遇措置があります。特定創業支援等事業による支援を受けた場合、「新創業融資制度」における自己資金要件(通常、創業資金総額の1/10以上が必要)が充足されたものとみなされます。加えて、「新規開業資金」の貸付利率が引き下げられるといった優遇も受けられる場合があります 。

必要な自己資金の引き下げ

沖縄県独自の支援として、沖縄県「創業者支援資金」においても、特定創業支援等事業を受けた創業者に対して自己資金要件が緩和され、通常20%以上必要な自己資金が10%以上に引き下げられます。

補助上限額の引き上げ

さらに、小規模事業者にとっては朗報として、小規模事業者持続化補助金の「創業枠」における補助上限額が、特定創業支援等事業による支援を受けた場合、50万円から200万円に引き上げられる可能性があります。また、浦添市では、独自の産業振興補助金により、特定創業支援等事業を活用した創業者に対して、特定の費用の残りの半額相当額を支援する制度も設けています。

これらの特定創業支援等事業への参加資格は、一般的に、これから創業を予定している個人(事業を営んでいない個人)または創業後5年未満の個人または法人となっています。一部のプログラムでは、居住地の要件が設けられている場合もあります。申請方法としては、まず各市町村または認定を受けた事業者が提供するプログラム(セミナーや相談など)を修了した後、それぞれの自治体の窓口に修了証明書の発行を申請し、その証明書を各種優遇措置の申請時に提示するという流れが一般的です。

これらの特例を受けるためには、信用保証協会または金融機関へ証明書を提出し、審査を受ける必要があります。

沖縄県内で利用できる補助金・助成金

沖縄県内で起業する際には、「特定創業支援等事業」による優遇措置だけでなく、様々な補助金や助成金も活用できます。

沖縄県スタートアップ起業支援金

沖縄県が独自に提供している沖縄県スタートアップ起業支援金は、地域再生計画に定められた社会的事業の分野において、デジタル技術を活用して起業する者を対象に、最大200万円(補助率50%まで)の資金援助を行っています。

この補助金は、地域社会の課題解決に貢献する事業を支援することを目的としており、沖縄県内での法人登記や居住のほか、沖縄県が地域再生計画に定める社会的事業の分野において、デジタル技術を活用した起業であることなどが要件となっています。

小規模事業者持続化補助金

国の機関による補助金も、沖縄県内で起業する際に利用できます。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する制度であり、「特定創業支援等事業」を受けた創業者には、補助上限額が通常よりも高く設定された「創業枠」が用意されています。

IT導入補助金

また、IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者の業務効率化を目的としたITツール導入を支援するものであり、沖縄県内の事業者も申請可能です。

補助上限額は、導入するITツールや事業規模などによって異なります。

参考:IT導入補助金|独立行政法人中小企業基盤整備機構

補助金・助成金の申請条件

これらの補助金や助成金の申請条件はそれぞれ異なります。「沖縄県スタートアップ起業支援金」では、沖縄県内での法人登記や居住、社会的事業かつデジタル技術の活用などが求められます 。

小規模事業者持続化補助金(創業枠)では、「特定創業支援等事業」の修了や創業後3年以内であることが条件となる場合があります。IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者全般が対象です 。

補助金額も制度によって異なり、「沖縄県スタートアップ起業支援金」では最大200万円、「小規模事業者持続化補助金(創業枠)」では最大200万円(インボイス特例適用で250万円の可能性あり)、「IT導入補助金」では最大450万円となっています。申請期間も各補助金・助成金によって定められており、小規模事業者持続化補助金は年間を通して複数回募集があり、IT導入補助金も同様に複数回の締切が設定されています。

補助金・助成金名実施主体補助上限額補助率主な申請条件申請期間
沖縄県スタートアップ起業支援金沖縄県200万円1/2県内法人登記、居住、社会的事業、デジタル技術活用終了 (R6年度第2期)
浦添市産業振興補助金浦添市(費用残りの半額)特定創業支援等事業活用者要確認
小規模事業者持続化補助金(創業枠)200万円 (最大250万円)2/3特定創業支援等事業修了、創業3年以内年間複数回
IT導入補助金450万円 (上限)1/2~4/5中小企業・小規模事業者年間複数回

沖縄県で利用できる融資制度

沖縄県内で起業する際に資金調達の有力な手段となるのが融資制度です。県内には、地方銀行や信用金庫、信用組合といった金融機関が提供する起業家向けの融資制度に加えて、日本政策金融公庫や沖縄県信用保証協会による保証制度など、多様な選択肢があります。

沖縄県内の金融機関

沖縄県内の金融機関では、沖縄県創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)が、創業予定者や創業後5年未満の事業者を対象に、最大2,000万円までの融資を提供しています。

この融資制度の魅力の一つは、低い融資利率(年1.70%)が設定されている点です。また、「特定創業支援等事業」による支援を受けた創業者に対しては、自己資金要件が緩和される措置も用意されています。コザ信用金庫など、地域に根差した金融機関も、創業支援に力を入れており、個別の相談に応じて融資プランを提案してくれる可能性があります。琉球銀行や沖縄銀行、沖縄海邦銀行、沖縄県農業協同組合なども、事業ローンなど、創業者が利用できる融資商品を提供しています。

参考:創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)|沖縄県

日本政策金融公庫の融資制度

日本政策金融公庫は、創業者にとって非常に重要な資金調達のパートナーです。「新規開業・スタートアップ支援資金」は、新たに事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方を対象に、最大7,200万円までの融資を行っています。

この融資制度では、女性や35歳未満・55歳以上の方、特定創業支援等事業を受けた方などに対して、優遇金利が適用される場合があります 。また、特定創業支援等事業を修了することで、自己資金要件が免除されるといったメリットもあります。

さらに、「中小企業経営力強化資金」も、一定の条件を満たす創業者にとって選択肢の一つとなり得ます。

融資制度をサポートする沖縄県信用保証協会

沖縄県信用保証協会は、創業者が金融機関から融資を受ける際に、信用保証を提供することで資金調達を支援しています。「創業関連保証」では、最大3,500万円までの保証を受けることが可能です。また、特定の条件下では、代表者以外の連帯保証人が不要となる「スタートアップ創出促進保証」も提供されています。

特定創業支援等事業を修了した創業者に対しては、保証の利用開始時期が通常よりも早まる(事業開始6ヶ月前から)といった特例措置もあります。保証料は、例えば創業者支援資金の場合、年0.60%となっています 。

参考:創業支援制度|沖縄県信用保証協会

これらの融資制度を利用するためには、事業計画書の作成が不可欠です 。自己資金の要件や金利、保証料などは、制度や金融機関によって異なりますので、事前にしっかりと確認することが重要です。

沖縄の主な融資制度一覧

融資制度名融資主体融資限度額金利 (目安)自己資金要件保証人
沖縄県創業者・事業承継支援資金(創業者支援貸付)沖縄県、取扱金融機関2,000万円年1.70%所要資金の10%以上 (特定支援事業修了者)原則、法人の代表者以外不要
日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金日本政策金融公庫7,200万円 (運転資金4,800万円)基準利率 (優遇あり)原則不要 (特定支援事業修了者)要相談
沖縄県信用保証協会 創業関連保証沖縄県信用保証協会、取扱金融機関3,500万円金融機関所定利率金融機関・保証協会による原則、法人の代表者以外不要

沖縄県の起業に関する相談窓口

沖縄県内には、起業に関する様々な相談に対応してくれる窓口が数多く存在します。

沖縄県中小企業支援センター

沖縄県庁をはじめとする公的な機関では、沖縄県中小企業支援センターが、創業に関する相談を含め、経営全般に関する総合的な相談窓口を開設しています。電話やオンラインでの相談も可能で、県内全域の起業家にとってアクセスしやすい支援拠点となっています。

参考:経営相談窓口|沖縄県中小企業支援センター

内閣府沖縄総合事務局 / なはし創業・就職サポートセンター

内閣府沖縄総合事務局も、各種支援プログラムや補助金に関する情報を提供しています。那覇市にお住まいの方であれば、なはし創業・就職サポートセンターが、創業に関する具体的な相談や情報提供を行っており、インターネットや書籍などの情報収集ツールも利用できます。

浦添市や石垣市においても、それぞれの産業振興課が、地域に特化した起業支援に関する情報提供や相談窓口となっています。

商工会議所・商工会

商工会議所や商工会も、起業家にとって頼りになる存在です。那覇商工会議所は、創業相談をはじめ、創業塾や事業計画作成支援など、幅広いサポートを提供しており、「特定創業支援等事業」の中核的な役割を担っています。石垣市や浦添市など、他の地域の商工会議所・商工会も、それぞれの地域特性に合わせた創業支援活動を展開していると考えられます。

創業支援施設

県内には、創業を支援するための様々な施設も整備されています。浦添市産業振興センター結の街は、低賃料のオフィス提供と継続的な相談支援を行っており、Lagoon KOZA(沖縄市)は、創業相談やスクール、コワーキングスペースの提供を通じて起業家を育成しています。OISTイノベーションインキュベーターは、科学技術分野の研究開発型スタートアップに特化した支援を提供しています。

NPO・民間コンサルタント

その他、NPO法人や民間のコンサルタントも、起業に関する相談を受け付けています。一般社団法人アントレプレナーシップラボ沖縄(ESLO)は、起業家向けのセミナーなどを開催しています 。株式会社うむさんラボは、沖縄県スタートアップ起業支援金の運営に関わっており、相談にも対応しています。

沖縄県の主な相談窓口一覧

相談窓口名所在地電話番号ウェブサイト主な相談内容
沖縄県中小企業支援センター那覇市字小禄1831-1 沖縄産業支援センター4階098-859-6237okinawa-ric.jp/consultation/経営全般、創業支援、補助金情報など
なはし創業・就職サポートセンター那覇市銘苅2-3-1 なは市民協働プラザBコア地下1階098-988-3163city.naha.okinawa.jp/business/kigyoaogyo/kigyosogyosien/sougyousiennmadoguti.html創業・起業に関する相談、融資・助成金情報、手続きなど
石垣市商工振興課石垣市字大川289番地0980-82-1533city.ishigaki.okinawa.jp/soshiki/shoko_shinko/nintei-sinsei/8092.html石垣市における創業支援全般
浦添市産業振興課浦添市安波茶一丁目1番1号 本庁5階098-876-1245city.urasoe.lg.jp/doc/6225afaa86469919b608ac38/浦添市における創業支援全般
那覇商工会議所那覇市久米2丁目2番10号098-868-4604nahacci.com創業相談、事業計画作成支援など
Lagoon KOZA沖縄市中央1丁目7-8080-4651-6900lagoon-koza.org創業相談、事業計画、資金調達など
OISTイノベーションインキュベーター恩納村字谷茶1919-1098-966-8755groups.oist.jp/ja/innovation/oist-innovation-incubator研究開発型スタートアップ支援
沖縄県信用保証協会 経営支援部創業支援課那覇市前島3-1-20 本所3階098-863-5303okinawa-cgc.or.jp/establishment/founding-consultation/創業に関する保証制度の相談
沖縄振興開発金融公庫 融資第二部生衛・創業融資班那覇市おもろまち1丁目2番12号098-941-1830okikou.go.jp創業融資に関する相談

沖縄県で活用できるその他の支援制度

沖縄県では、上記の主要な支援制度以外にも、起業を志す人が知っておくと役立つ様々なサポート体制が用意されています。

セミナーやイベント情報

起業家向けのセミナーやイベント情報は、各支援機関のウェブサイトなどで積極的に発信されています。なはし創業・就職サポートセンターやLagoon KOZA、公益財団法人沖縄県産業振興公社、琉ラボなど、様々な団体が、起業に関する知識やノウハウを学べるセミナーや、起業家同士の交流を促進するイベントなどを開催しています。これらのイベントは、最新の起業トレンドや成功事例を学ぶだけでなく、同じ志を持つ仲間や、事業を成長させるための貴重な人脈を築く絶好の機会となります。

メンター制度

メンター制度も、起業家にとって大きな助けとなるでしょう。BoostUp OKINAWAでは、経験豊富なメンターがスタートアップを支援するプログラムを提供しています。沖縄県「おきなわスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム」も、メンター制度の構築に取り組んでいます。

参考:おきなわスタートアップ・エコシステム・コンソーシアム

インキュベーション施設・コワーキングスペース

事業を始めるための拠点となるインキュベーション施設やコワーキングスペースも充実しています。浦添市産業振興センター結の街やLagoon KOZA、OISTイノベーションインキュベーターなどがインキュベーション施設として機能しており、低賃料でのオフィス提供や、入居者同士の交流、専門家による相談支援などを行っています。

コワーキングスペースとしては、Lagoon KOZAやみやざきSTARTUP HUB(宮崎県の例ですが、沖縄にも多数存在します)、O2 OKINAWA OFFICE、リージャス、TOYOPLAなど、県内各地に多様な施設があり、起業家のニーズに合わせた働き方を提供しています。

沖縄県の創業支援制度を積極的に活用しよう

沖縄県では、資金面でのサポート、経験豊富なメンターによる指導、事業展開の拠点となる施設、そして様々な相談窓口に至るまで、多岐にわたる支援が用意されています。

これらの支援制度を積極的に活用することで、沖縄県での起業はより現実的で成功の可能性の高いものとなるでしょう。創業を検討されている方は、まず自身の事業計画や状況に合わせて、利用可能な支援制度を詳しく調べ、それぞれの窓口に相談してみることをお勧めします。


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