• 作成日 : 2025年4月25日

自己破産後の資金調達方法は?日本政策金融公庫の再挑戦支援資金などを解説

自己破産は法的に認められた債務整理のスキームであり、事業や生活の再建のための具体的な手法です。事業を立ち上げたものの頓挫してやむを得ず自己破産をしたという人は少なくありません。

本記事では、自己破産後の資金調達の方法や成功させるポイントなどについて解説します。

自己破産後の資金調達は難しい?

自己破産した場合、各種の信用情報機関に「事故情報」として登録され、原則的に新たな借入れができなくなります。そのため、自己破産後の資金調達はできません。

通常は7年から10年間程度「事故情報」が登録され、登録が抹消されるまでブラックリストに掲載された状態が続きます。この期間は、返済が滞った銀行などからの借入れをはじめ、住宅ローンや自動車ローンなどの利用、クレジットカードの新規発行などができません。

また、返済が滞った銀行からの借入れについては、10年経過しても利用できなくなる場合があるでしょう。

このように、自己破産をすることで、通常の銀行などの金融機関からの新規借入はほぼ不可能となり、資金調達の選択肢は制限されます。

自己破産後も可能な資金調達方法

自己破産をすると、銀行からの借入などの一般的な手法による資金調達は困難になり、結果的に資金調達の選択肢は大幅に制限されます。しかし、最近は自己破産などの経験者に再起を促すことを目的とした制度融資なども整備されつつあり、一度失敗した起業家を支援する社会的な風潮も広がりつつあります。日本政策金融公庫の制度融資などを、自己破産を経験した方でも利用できる可能性がある資金調達スキームをご紹介します。

日本政策金融公庫の再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)

再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)は、日本政策金融公庫が提供している制度融資です。公式ホームページによると、以下の主旨を掲げています。

一旦事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込みなどを評価することにより、再起を図るうえで困難な状況に直面している方の再挑戦を支援します。

引用:日本政策金融公庫|再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)

この制度は、自己破産を含む廃業した履歴を持つ個人または経営者が営む法人による利用が可能であり、設備資金または長期運転資金を据置期間が最大2年間で最大7億2,000万円までが申込みできます。

日本政策金融公庫の創業融資

自己破産の申立てから7年から10年程度経過し、信用情報機関の「事故情報」が抹消された方であれば、日本政策金融公庫の創業融資を利用できます。

創業融資は、新たに事業を始める方または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象で、原則無担保・無保証人で利用可能です。設備資金または長期運転資金を据置期間最大5年間で申込みができ、創特に「新規開業・スタートアップ支援資金」は、廃業して経験があり創業に再チャレンジする方を対象にしています。

自治体の助成金や融資制度

再チャレンジで起業するためにまとまった資金を調達したいという以前に、まずは当面の生活資金が必要という場合は、自治体の融資制度などを利用することを検討しましょう。

各自治体に設置されている社会福祉協議会では、生活困窮者向けに生活福祉資金貸付制度として総合支援資金(生活支援費)や福祉資金(緊急小口資金)を貸付けています。いずれも自己破産を申立てて免責が確定した方であれば利用可能です。貸付額や返済方法などの詳細については、各自治体の社会福祉協議会に問い合わせてください。

資本(エクイティ)による資金調達

借金などのデットによる資金調達スキーム以外に、資本(エクイティ)による資金調達も可能です。自己破産を申立てて法人を消滅させてしまったケースなどでも、新たに法人を設立してスポンサーなどに出資してもらうことが可能です。

近年では、スタートアップ企業に小口の資金を出資するベンチャーキャピタルやエンジェル投資家もいるため、ビジネスモデルや事業計画に自信がある方は、資本による調達にチャレンジするのも一つの手です。

自己破産後の資金調達を成功させるポイント

自己破産後の資金調達を成功させるポイントの一つとして、失敗した原因を解明することが挙げられます。物事の失敗には必ず原因があります。

失敗は、何らかの原因があったからこそ避けられなかったものであり、その原因を明らかにすることで、次の失敗を防ぐ可能性を高めることができます。そのうえで、以下のポイントを守り、徹底することで自己破産後の資金調達の成功率を高めることが可能となるでしょう。

信用情報の回復を待つ

先述の通り、自己破産して各種の信用情報機関に「事故情報」が登録されると、7年から10年間程度「ブラックリスト」に載り、その期間中借入などができなくなります。しかし、7年から10年が経過すると「事故情報」は抹消され、信用情報が回復します。自分の信用情報が「ブラックリスト」に載っている間は無理に借入の申込みなどをせず、信用情報の回復を待ちましょう

自己資金を準備する

事業資金を金融機関などからの借入に依存せず、自己資金を準備して充当するのも重要なポイントです。自己破産の原因の一つは借入などによる過剰債務ですが、自己破産をするということは、他人のお金に依存するビジネスモデルが失敗したということでもあります。

他人のお金に依存せず、自分で稼いだお金をベースに事業を展開することが重要です。自己破産後の再チャレンジでは、なるべく自己資金で展開できるビジネスを考えていきましょう。

事業計画書を作成する

再チャレンジをするには、事業計画書を作成することも必要です。破綻した事業の多くは事業計画や事業計画書がない状態で展開され、経営の方向性が曖昧な状態で頓挫しています。

事業計画書がない状態で事業を展開することは、地図なしで旅に出るようなものです。あらかじめ明確な計画を立て、それに沿って進めることで、リスクを減らし、成功の可能性を高めることができるでしょう。

小規模な資金調達から始める

自己破産後の再チャレンジでは、できるだけ少ない資金で事業を始めることが大切です。少ない資金で事業を始め、顧客ニーズや事業環境の変化に合わせて柔軟に事業を展開する「リーンスタートアップ」方式で展開するのが効果的といえます。設備投資やまとまった在庫でそれなりの資金が必要な事業よりも、自分一人でも始められるような事業を展開するのが適切です。

資金調達の専門家に相談する

一般的に自己破産後の資金調達は難しいですが、先述の日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」など、再起を後押しする制度などもあり、一定の条件を満たしていれば利用可能です。

一方で、そうした制度融資などを利用する際には、事業計画の内容や具体的な返済計画などの記載と提出が必要です。不明な点があれば、専門家に相談することで成功の可能性を高めることができるでしょう。

自己破産後の資金調達は返済計画をより確実に

自己破産後の資金調達は困難とも言われていますが、決して不可能ではありません。多くのケースに当てはまる重要なポイントは、自己破産後の資金調達においては返済計画をより確実にして根拠とともに示すことです。特に、返済の根拠となる事業計画やキャッシュフロー計算書などを準備し、返済が確実に行えることを数字で示すことが重要です。また、事業計画を支える売上の根拠なども提示できるように用意してください。


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