- 更新日 : 2025年8月21日
スタートアップ支援資金とは?日本政策金融公庫の融資制度について解説
スタートアップ支援資金とは、スタートアップ企業のうちイノベーションに関わる企業を対象とした融資制度のことです。日本政策金融公庫が提供しており、適用条件を満たすのは容易ではないものの融資限度額や融資期間などの面で多くの利点を持っています。本記事では、スタートアップ支援資金の概要や制度、申込方法などといった詳細を解説します。
目次
日本政策金融公庫のスタートアップ支援資金とは
日本政策金融公庫の「スタートアップ支援資金」とは、日本経済の成長や社会課題の解決に貢献すると見込まれるスタートアップ企業を支援するための融資制度です。経済を大きく発展させて日本を世界のイノベーション拠点とするため、ユニコーン企業(設立してから10年以内であり、かつ企業評価額が10億ドル以上の非上場テクノロジー企業が対象)を多く輩出することを目指しています。高い技術力や優れたアイデアを持っていながら、資金面に懸念点がある起業家の方におすすめの制度と言えるでしょう。
利用条件
スタートアップ支援資金を利用するには、まず「事業計画書を策定し、事業の成長を図る企業」に該当しなくてはなりません。
利用条件は、以下のいずれかに該当している方です。
- 特定の投資機関からの出資を受けている
以下いずれかの投資機関からの出資(通常の株式出資や新株予約権、新株予約権付社債など)がなされていることを指す。- 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の会員
※賛助会員は除く。 - 中小企業基盤整備機構(中小機構)または株式会社産業革新投資機構(JIC)が出資する投資事業有限責任組合
- 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の会員
- 「J-Startupプログラム」または「J-Startup地域版プログラム」に選定された
J-Startupプログラムは、経済産業省が立ち上げた、国内のスタートアップ企業を育成するための官民一体型の支援プログラムのこと。国内外でのPR支援や海外展開の支援、補助金などによる支援が受けられる。J-Startup地域版は、地域に特化したプログラムとなっており、全国各地で展開されている。これらのプログラムに応募し、審査を経て、一定以上の成長性や先進性、独創性などが高く評価されることによって選定される。
融資限度額
同制度の融資限度額は「20億円」です。同制度は中小企業事業の一つであり、「20億円」という金額は他社の融資制度と比べても極めて高額と言えるでしょう。例えば、同じく事業立ち上げ間もない事業者向けに新事業育成資金や女性、若者/シニア起業家支援資金制度の融資限度額は、「7億2,000万円(直接貸付の場合)」です。
金利
金利に関しては、2.5%を上限に借入期間や信用リスクなどに応じた値が適用されます。日本政策金融公庫が金利情報についてのページを公開していますので、こちらから最新情報が確認できます。
※同制度において適用される金利は「特別利率②」または「基準利率」。
返済期間
返済期間は、設備資金・運転資金ともに「20年(うち据置期間10年以内)」です。特に運転資金は、他の制度よりも比較的長く期間が定められています。据置期間も長めに設定されているため、初期投資の負担が返済期間の面からも軽減されています。
担保・保証人
同制度では、経営者個人に大きな負担がかからないよう、「保証人は不要」としています。担保に関しても柔軟な対応をしており、その有無については個別に相談して決定するものとされています。企業の状況に応じて判断してもらえるでしょう。新株予約権を日本政策金融公庫が取得することで無担保とする運用も行われています。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
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スタートアップ企業向けの各種支援制度が拡充
スタートアップ支援資金のほかにも日本政策金融公庫はスタートアップ企業に向けた支援を行っています。
「新規開業資金」から「新規開業・スタートアップ支援資金」に
これまで多くの起業家に利用されてきた「新創業融資制度」は2024年3月に廃止され、2024年4月からは「新規開業資金」として内容が拡充されました。その後、2025年3月より名称が「新規開業・スタートアップ支援資金」に変更されています。
「新規開業・スタートアップ支援資金」は、「スタートアップ支援資金」よりも幅広い層の起業家を対象とした制度です。今回の変更により、融資条件は以下のように拡充されています。
- 返済期間(運転資金):7年以内から10年以内へ延長
- 据置期間:2年以内から5年以内へ延長
このような融資条件の緩和により、より多くの起業家が活用しやすい制度となっています。
日本政策金融公庫のスタートアップサポートプラザを新設
シードラウンドやアーリーラウンドのスタートアップ企業を支援するための拠点、「スタートアップサポートプラザ」が2024年4月に新設されました。ベンチャーキャピタルや民間金融機関などとの連携を図りながら、スタートアップ企業向けの融資相談にきめ細かく対応することを目的としています。拠点は、東京・名古屋・大阪・福岡の4都市です。(※2025年2月時点)
また、各種セミナーの開催も行うなど、スタートアップサポートプラザの新設によって、スタートアップ企業に特化した支援体制が強化されています。今後、より専門的なサポートが受けやすくなるでしょう。
スタートアップ支援資金の申込みをする方法
スタートアップ支援資金の申込みをする場合は、資金調達に詳しい専門家を頼るか、日本政策金融公庫の窓口(各支店の中小企業事業の窓口)で直接相談することをおすすめします。
他の制度とも共通する一般的な流れは、次の通りです。
- 相談
日本政策金融公庫の中小企業事業窓口に相談。商工会議所でも相談の受け付けに対応。 - 申込み
申込書や事業計画書、提出を求められている各種資料を準備して提出。 - 審査
提出された資料を確認、または直接面談によって融資の検討が行われる。 - 融資実行
審査に通り融資が決まれば、貸付契約や担保の設定などの手続きを進め、送金。その後契約に従い返済を行う。
スタートアップ企業が活用できるその他の融資制度
創業間もない全ての企業が、スタートアップ支援資金を利用できるとは限りません。同制度は融資限度額が高額などの利点がありますが、その分、利用するまでのハードルも比較的高いと言われています。ここでは、以下で取り上げる手法も視野に入れながら資金調達を進めていきましょう。
信用保証協会を活用した銀行融資
基本的に銀行は創業者向けの融資に積極的ではないと言われています。一方で信⽤保証協会の創業制度融資を活用した融資として、スタートアップ企業を支援しているケースもあります。
経営者保証を不要とし、一定額以内であるなど、要件を満たせば無担保無保証で融資が受けられる制度もあるため確認しましょう。
また、銀行独自に創業者向けの仕組み、例えば、金利の優遇措置などを設けていることもあります。地方銀行なども含めて自社が利用できる支援制度を探してみましょう。
補助金を活用した資金調達方法も
融資とは異なりますが、スタートアップ企業は「補助金」や「助成金」のことも忘れずにチェックしておきましょう。特定の事業や取り組みで活用できる可能性があります。補助金は、融資のように返済をする必要がないため、事業展開や研究開発を行う際にも有効です。
「創業からの期間がまだ浅い」「企業の規模が小さい」といった状況にある事業者を優遇しているケースもあるため、特に社会的な課題解決に貢献する事業を始めるのであれば、詳細を確認しておきましょう。
ユニコーン企業を目指すならスタートアップ支援資金を活用しよう
スタートアップ支援資金は、日本を世界のイノベーション拠点とし経済を発展させることを目的とした創業融資制度です。
日本政策金融公庫では、複数の企業向けの創業融資を展開していますが、「他の企業にはない独創的で革新的な取り組みを始める」「ユニコーン企業として日本のビジネスを牽引するような組織を目指す」という考えであれば、スタートアップ支援資金の活用も視野に入れてみてはいかがでしょうか。
日本政策金融公庫の創業融資制度は、投資機関からの出資、あるいはJ-Startupプログラムに選定されることなど一般的な創業融資より要件が厳格ですが、その分、企業が得られる恩恵も大きいと言えるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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