- 作成日 : 2025年3月7日
指定介護事業者になるには許認可が必要?必要書類・手続きの流れのまとめ
指定介護事業者とは、在宅や施設で介護サービスを提供する事業者の中でも、介護保険の適用を受けるサービスを提供する事業者のことです。
指定介護事業者になるにはどのような許認可を取得する必要があるのでしょうか。本記事では、指定介護事業者になるために必要な許認可の種類や申請について詳しく解説します。
目次
指定介護事業者になるには許認可が必要?
介護報酬や予防報酬など介護保険適用を受ける介護サービスを提供する「指定介護事業者」を検討している場合、許認可の取得が必要です。許認可の申請場所や指定介護事業者の種類について確認しておきましょう。
都道府県知事や市町村長から指定を受ける
指定介護事業者になりたい場合は、都道府県知事や市町村長に申請書を提出します。
指定事業者の種類
指定介護事業者には、サービス内容ごとにいくつかの種類がありますので、押さえておきましょう。
- 指定居宅介護支援事業者
要介護認定者本人や家族の現状や生活環境、希望などから、ケアマネージャーがケアプランを作成する事業者のことです。また、ケアプランに沿って介護保険サービスを行う事業者との連絡調整も行います。施設所在地を管轄する市町村長が申請先です。 - 指定居宅サービス事業者
訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、リハビリテーション、通所介護などの居宅サービスを行う事業者のことです。指定居宅サービス事業者の申請先は、施設所在地を管轄する都道府県知事になります。 - 介護保険施設
指定介護老人福祉施設、介護医療院などを指します。介護保険施設の申請先は、介護保険施設所在地を管轄する都道府県知事です。
介護事業者の指定を受ける要件
介護事業者の指定を受けるために、満たしておくべき要件もありますので確認しましょう。
法人格の所有
指定介護事業者になるためには法人格を取得することが必須であり、個人事業主およびフリーランスとして介護事業を立ち上げることはできません。また、申請時は登記簿謄本が必要ですが、定款の目的に「介護保険事業を行う」ことが記載されていなければなりません。なお法人格は、社会福祉法人に限らず、株式会社などでも可能です。
人員基準
提供するサービスごとに、厚生労働省が定めた人員の基準を満たしておく必要があります。訪問介護事業の例を確認してみましょう。
業務 | 人数 |
---|---|
訪問介護員 | 介護福祉士や介護職員初任者研修など修了した者を常勤換算で2.5人以上 |
サービス提供責任者 | 利用者の数が40人またはその端数を増すごとに1人以上 |
設備基準
提供するサービスごとに設備基準が異なります。例えば、訪問介護・訪問看護・訪問入浴介護の場合、利用者の自宅でサービスを行いますが、事業所については以下のような基準が定められています。
- 事業を行うための専用の区画を設けているか
- 併設施設の場合、事業ごとに明確に区画されているか
- 新築や改修を行う場合、建築関係部署、消防署と事前に協議を行っているか
- 感染症予防に必要な設備・備品を備えているか
- 非常口は利用者が避難できるようになっているか
通所介護になると、利用者が施設に滞在することになるため、設備基準はより厳しくなります。以下で主な基準を確認してみましょう。
- 併設する施設がある場合、事業専用の設備を設置し、サービス提供に支障がないものとなっているか
- 建築関係部署、消防署と事前に協議を行っているか
- 認知症対応型通所介護を同一の時間帯に実施する場合は、パーテーションなどで間を仕切るなど、職員・利用者およびサービスを提供する空間を明確に区別しているか
- 感染症予防に必要な設備・備品を備えているか
- 清潔・不潔の区別がなされているか、動線が重ならないか(例:食堂、機能訓練室、台所を通らずに汚物を搬出できるよう配慮しているか)
- 汚物流しを設置する場合は、利用者が誤って利用しないように配慮しているか
- 汚物流しを設置する場合は、天井まで区画し、清潔・不潔が区別されているか
- 50食以上提供する場合、調理室について、保健所の検査を受けているか
- 非常口は利用者が避難できるようになっているか
など
入所生活介護サービスの提供の場合は、通所介護施設よりもさらに厳しくなり、廊下の幅やスロープまたはエレベーターの設置、居室の定員についての基準も設けられています。
運営基準
指定介護事業者になるためには、介護保険法で定められた運営基準を守らなければなりません。在宅介護サービスの運営基準を抜粋してご紹介します。
- 介護サービスの提供に際し、あらかじめ利用申込者またはその家族に対し運営規定の概要、その他サービスについての重要事項を記した文書を交付し説明を行い、サービス開始について同意を得なければならない。
- 指定居宅介護支援事業者は、正当な理由なく指定居宅介護支援の提供を拒んではならない。
- 指定居宅介護支援事業者は、当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員に身分を証する書類を携行させ、初回訪問時および利用者またはその家族から求められたときは、これを提示すべき旨を指導しなければならない。
過去5年以内に指定取り消し処分を受けていない
過去5年以内に指定介護事業者の指定取り消し処分を受けている場合、再度の指定は不可です。また、申請者や法人の役員が以下の事項に該当する場合も指定は不可となります。
- 禁錮以上の刑を受けて、その執行を終わるまでの者
- 介護保険法その他保健医療福祉に関する法律により罰金刑などを受けて、その執行が完了するまでの者
- 5年以内に介護保険サービスに関し不正または著しく不適当な行為をした者
指定介護事業者の許認可申請の流れ
指定介護事業者の許認可申請までの流れを押さえておきましょう。
①事前相談と研修の申込み
指定介護事業者の申請の前に、申請する自治体へ事前相談をしてください。その際に指定前研修を申込みましょう。事前相談は申請準備の初期段階で進めておき、自治体のスケジュールを確認したうえで指定前研修を申込むのが適切と言われています。そのため、研修を申込んだ時点で介護事業所開設に関する具体的な目途を立てておきましょう。
②研修受講
予約した日に指定前研修を受講します。受講義務があるのは法人の代表者、事業所の管理者です。指定前研修では、法令や規定についてだけでなく、申請書作成時の注意点についても講習があります。
指定前研修は、許認可申請の1カ月前までには受けましょう。ただし、自治体によっては「申請の○カ月前までに受講」など定められている場合があるため、抜け漏れなく確認します。
③許認可の申請
指定前研修を受けたら許認可申請を行います。申請内容などが確認できたら指定介護事業者と認められます。指定介護事業者の指定の有効期間は6年となっているため、その後は更新申請が必要です。
指定介護事業者の許認可にかかる期間と費用の目安
指定介護事業者の許認可にかかる期間と費用の目安を確認しておきましょう。
期間
事前相談から事前研修、申請、そして許認可を得るまで、4カ月~半年程度と言われています。自治体によっては「申請の〇カ月前までに研修を受けること」など定められている場合がありますので、事前に期間に関する詳細情報を確認しておきましょう。
例えば、東京都の指定介護事業者の許認可の場合、9月半ばに申請すると許認可を得られるのが翌年1月とされています。
費用
介護サービスの種類によって申請費用は異なります。また、自治体によっても異なりますので、各都道府県の公式ホームページなどで確認しましょう。ここでは、大阪府の例を一部ご紹介します。
対象サービス | 費用 | |
---|---|---|
申請 | 更新 | |
| 1件につき3万円 | 1件につき1万円 |
介護老人福祉施設 | 1件につき3万円 | 1件につき1万6,000円 |
介護老人保健施設 | 1件につき6万3,000円 | 1件につき1万6,000円 |
指定介護事業者の許認可申請をスムーズに行うポイント
指定介護事業者の許認可申請をスムーズに進めるために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。
申請前に法人を設立し事務所を準備する
指定介護事業者になるには、法人であることが必須です。法人ではない場合は、事前研修申込までに法人設立に向けて動き始めましょう。また、設備基準・運営基準に合った事務所を準備することも重要です。
早めに採用活動を行う
指定介護事業者には人員基準も定められています。基準を満たすために早めに採用活動を進めましょう。
申請から指定までの期間を把握しておく
指定介護事業者の事前相談から許認可まで半年~4カ月程度かかるのが一般的です。スムーズにサービス開始できるよう期間を把握し、余裕を持って申請するようにしましょう。
指定介護事業者を目指すならば申請の流れを確認しておこう
指定介護事業者になるには、都道府県や市町村などの許認可を得る必要があります。許認可を得るまでに、事前相談、事前研修、申請が必要になりますので、時間に余裕を持って計画的に手続きを行いましょう。
また、申請内容に不備があった場合、修正が必要になるため許認可が遅くなります。設備基準や人員基準、運営基準をよく確認し、不備がないように申請してください。
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