- 作成日 : 2024年11月21日
事業継承と事業承継の違いは?使い分け方や意味を解説
事業継承と事業承継は、意味合いが異なります。それぞれどのような場面で使われるのでしょうか。
この記事では、事業継承と事業承継の意味の違いをはじめ、事業承継で引き継がれる経営資源、事業承継の種類、事業承継が注目されるようになった背景について解説します。
目次
事業継承と事業承継の違いは?
事業継承と事業承継は似ていますが、厳密には異なります。ここでは事業継承と事業承継の使い分けについて解説します。
継承の意味
継承とは、先代の権利や資産、義務などをそのまま引き継ぐことを指します。一般的に、伝統芸能を引き継ぐ場合などに「継承」が使われ、先代から仕事や身分などを引き継ぐことを指します。
法律や税制上は「事業承継」のほうが使われている
一方で承継とは、「事業継承」などの表現で使われ、後継者が経営権や経営理念などを引き継ぐことを指します。法律や税制において広く使われているのは「事業承継」です。
事業承継により引き継ぐ経営資源
ビジネスにおける引き継ぎは「事業承継」と表現されることが一般的です。事業承継により引き継がれる3つの要素は、「経営権」「財産」「無形固定資産」です。
経営権
経営権とは、会社の重要事項を決定できる権利のことです。法律上、経営権に明確な定義はなく、一般的に株式の議決権割合などから判断されます。
なお、経営権の取得は議決権のある株式の過半数を保有している場合です。後継者が経営権を承継することで、取締役としての地位や役割を引き継げます。
財産
ここでの財産とは、会社の有形資産のことです。財産を承継することは、自社株式や会社の土地、会社の設備、事業用の資金などを後継者が引き継ぐことを指します。前経営者の株式を後継者に変更することで、会社の財産は引き継がれたことになります。
無形財産
無形財産とは、形としては存在しない会社の財産のことです。なお、無形財産の承継とは、会社のブランド力や信用力、取引先との関係、顧客情報などを後継者に引き継ぐことであり、商標や著作物などの知的財産も無形財産に含まれます。
事業承継の種類
事業承継には、以下3つの種類があります。
- 親族内承継:経営者の子や兄弟姉妹などの親族に事業承継することであり、税法上の特例などが利用でき、会社の所有と経営を一体化して承継しやすい点が特徴
- 従業員承継:親族以外の社内から経営能力のある人材を後継者として選び、経営資源の引き継ぎをすること。
- 外部承継(M&Aなど):社外で事業譲渡や株式譲渡などの手段で事業承継することであり、経営者は株式や事業売却による利益を得られるメリットがある。
事業承継と混同しやすい言葉
事業承継と混同しやすい言葉とその意味について紹介します。
- 事業譲渡:会社の事業のすべてまたは一部を、他の会社に譲渡すること。
- 株式譲渡:株式譲渡とは、株式を売却して株式の所有権を移転する取引のことを指し、会社の経営権を第三者に移転させる場合などに利用されます。
- 事業再編:会社の構成を調整することであり、合併や分割、株式移転、株式交換などが該当。事業再編は事業承継の手法の一つとして活用されることがある。
- 相続:相続とは、亡くなった人の財産を相続人などの関係者が引き継ぐことであり、相続により事業承継が行われることもある。
- 贈与:財産を無償で相手に与えること、株式の贈与などが行われることもある。
事業承継が増加している背景
近年、事業承継の難しさが社会的な課題として認識されるようになり、事業承継に取り組む企業も増えてきました。事業承継が増加している背景にあるのが、後継者不足や高齢化などの問題です。
後継者不足
2023年の信用調査会社が独自に行ったアンケート結果によると、後継者不在率が61.09%という結果でした。ちなみに、60%を超えたのは調査を開始してから初めてのことであり、前年の2022年の結果(59.9%)と比べると2023年は1.19%の増加です。
後継者不足に悩む企業の増加が、事業承継が増えた要因の一つです。後継者不足の解決策として、社内承継やM&Aなどの取り組みもみられるようになりました。
高齢化
事業承継が増加している背景には、経営者の高齢化も挙げられます。信用調査会社の「全国社長の年齢」によると、2023年時点の経営者の平均年齢は63.76歳に達し、過去最高齢を更新しました。
事業継承と事業承継はニュアンスが違う
事業継承と事業承継は、同じような意味で使われることもありますが、公的によく使われているのは、会社の方針やビジョンなどを引き継ぐ「事業承継」です。事業承継は、経営者の高齢化や後継者不足の課題があるため注目されており、今後もさらに重要視されることになるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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