- 更新日 : 2023年9月15日
経営指針とは?企業事例5つも紹介
経営理念や経営方針といった「経営指針」を定めている企業は数多くあります。会社を設立するにあたって、絶対的登記事項である「目的」とは別に経営指針を謳う理由とは何でしょうか。今回は、経営指針の読み方や、経営指針の実例を紹介しながら解説していきます。
目次
経営指針とは?
経営指針とは、企業活動を行うにあたって目標とすべき思想や行動指針、計画などを示したものです。経営指針はその内容に応じて「経営理念」「経営方針」「経営計画」などがありますが、はじめにそれぞれが意味するものについて解説します。
①経営理念
「経営理念」とは、経営にあたって企業が持ちたいと願う思想や価値観を表したものです。経営を行う際の実務的な手法とは異なり、行動を決定する際の判断基準のガイドラインのようなものです。人間が生きていくために持っている人生哲学の企業版であると考えれば理解しやすいでしょう。
企業はこの「経営理念」に基づき次に解説する経営方針や経営計画といった行動を決定していきますので、全ての企業活動の根幹となる経営指針であるといえます。
②経営方針
「経営理念」で定めた思想をベースに、企業をどの方向に進めるのかを定めたのが「経営方針」です。「経営理念」が抽象的なものであるのに対し、「経営方針」は企業がどのような行動を取るかを具体的に定めたものです。自身の人生哲学に基づき、進路を決定していくといったイメージです。
③経営計画
「経営方針」を受けて、その方針を実現するために必要な準備を行うのが「経営計画」です。当然ですが、企業は営利を求めて活動する集合体ですから「経営理念」や「経営方針」を定めるだけでは成立しません。
それらの経営指針を形にするためには、経営方針に沿った緻密な計画や目標を立てなければなりません。進路が決まった後、それを実現するために勉強したり資格を取得したりするのに似ています。
経営指針書とは?
前章で解説した「経営理念」「経営方針」「経営計画」の3つを1つに纏めたのが「経営指針書」です。企業が継続して事業を行うにあたって常に規範としなければならないものであり、企業の「経営バイブル」であるといえます。
最初に「経営指針書」の策定を提案したのは、全国の中小企業者が集う中小企業家同友会です。1969年に結成された中小企業家同友会の主な活動は、企業が抱える課題や取り組みを全国規模で支援し合うことですが、そのなかの1つが、企業を健全に成長させていくために必要な経営指針策定の支援です。同友会では「経営指針書」策定の支援を目的としたセミナーを開催するなど、積極的な活動を行っています。
経営指針を設定するメリット
先にも述べましたが、企業は利潤を追求するための集合体ですので、単純に利益を獲得すればよいのではないかと考える方もいるかもしれません。しかし、企業を取り巻く環境も年々変化しており、企業活動に倫理や良心を求められるケースが多くなっています。このような状況で「経営指針」を定めるメリットについて解説します。
「コーポレートガバナンス」の向上
「コーポレートガバナンス(corporate governance)」とは、経営活動を企業自らが管理統制し、その内容が正しいものかを監査する仕組みを指します。「経営指針」を定めることで、その活動が企業理念に適うものなのか、方針や計画に沿ったものなのかを判断基準とすることができます。
「コンプライアンス」の実現
最近よく耳にする「コンプライアンス(compliance)」というキーワードが示す通り、企業に法令遵守が求められるケースが年々増加しています。「経営指針」があれば、法令を遵守しなければならないという企業自身の抑制効果が期待できます。また「経営指針」を公開することで、法令を遵守する企業としてのイメージアップにもつながります。
企業内部の組織力向上にも役立つ
企業は様々な思想や価値観を持つ社員で構成されています。1人ひとりが自分自身の思想に基づき行動していれば、やがて会社組織はバラバラになってしまいます。「経営指針」という道筋を立て社員が指針に基づき行動すれば、統一された意思のもと経営活動を行えるので企業内部の統括にも役立ちます。
経営指針の企業事例
最後に、様々な企業が実際に掲げる「経営指針」をいくつか紹介します。ご自身の企業で「経営指針」の策定を検討している方は是非とも参考にしてみてはいかがでしょうか。
コクヨ
事務用品や文房具などを扱うコクヨでは、2022年に「サステナブル(持続可能な)経営指針」を策定しています。「自律協働社会の実現に向け、ワクワクする未来のワークとライフをヨコクし、事業を通じて持続可能な社会を牽引していく」「地球・社会課題を解決し、活き活きとした働く学ぶ暮らすの実現にむけて活動し、 社会価値と経済価値の両立を目指していく」という指針を掲げ、環境問題や社会貢献に積極的に関与していくという内容になっています。
引用:サステナブル経営指針 | サステナビリティ | コクヨサステナビリティ
メットライフ生命
生命保険会社であるメットライフ生命では「ともに歩んでいく。よりたしかな未来にむけて。」を経営指針としています。顧客との信頼関係を第一に、常に変化や新たなチャレンジに取り組んでいくことを宣言しており、社員一人一人に責任と自覚を持たせることにもつながる内容となっています。
カプコン
ゲーム機器メーカーとして有名なカプコンは、「ゲームというエンターテインメントを通じて『遊文化』をクリエイトし、人々に感動を与える『感性開発企業』」を目指すことを経営理念に掲げています。世界を視野に「ダイバーシティ(多様性)」を取り入れ、組織構築やリスクコントロールに積極的に取り組むという意思を読み取ることができます。
引用:経営指針 | 経営方針 | 株式会社カプコン (capcom.co.jp)
四電工
電気工事をはじめ、設備工事全般を手掛ける四電工では、「進化する総合設備企業として人と社会と未来をつなぎます」を経営理念としています。インフラ整備を通して社会の維持発展に貢献していくことを謳い、実現のために社員には「熱意」「自律」「協働」「感謝」の4つを心得るよう求めています。
アサヒサンクリーン
訪問介護や居宅介護支援といった社会福祉活動全般を行うアサヒサンクリーンでは「私たちは感謝と思いやりの心でお客様に幸せと安心を提供します」を経営指針に掲げています。サービスの利用者はもちろんのこと、従業員に向けた経営指針もあり介護業界らしい「人と人のふれあい」を意識した内容となっています。
引用:経営指針・代表メッセージ|訪問入浴介護のアサヒサンクリーン株式会社
将来を見据えた経営指針の策定を
「経営指針」は、将来企業が向かうべき方向を示す大切な「標識」のようなものです。ただ漠然と企業活動を行うより、「経営指針」を定め社員一団となって取り組めばより素晴らしい結果が生まれるかもしれません。
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