• 更新日 : 2023年9月21日

本店所在地とは?会社設立時にどこの住所を本店所在地として法人登記すべき?

会社設立時にどこの住所を本店所在地として法人登記すべき?

会社設立時は、本店所在地を定款に記載したり、法人登記をしたりする必要があるため、事前に本店所在地として申請する住所を決めておく必要があります。事務所の住所のほか、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィスなどの住所を本社所在地として申請することも可能です。

この記事では、会社設立時の本店所在地はどこにすればよいのか、本店所在地を決める際の注意点や住所変更の注意点などを含めて解説します。

本店所在地とは?

本店所在地とは、会社を設立する際に必ず定めるものです。登記簿上での会社の本拠の事を指します。設立前に必ず決めておく必要があります。本店所在地の場所は制限されておらず、自由に設定することができます。

会社設立時の住所はどこにする?

会社を設立する際は住所(本店所在地)を決める必要がありますが、法的な制限は特にありません。事務所としての利用が認められていない物件の住所は登記できませんが、さまざまな物件を本店所在地として設定できます。例えば、以下のような場所を本店所在地として申請・登記できます。

  • 自宅
  • 賃貸事務所
  • レンタルオフィス
  • バーチャルオフィス

本店所在地には制限がありませんが、本店所在地は会社の信用力やブランドに影響します。また、許認可が必要な業種の場合は、事務所に条件が付与されていることがあるため注意が必要です。

ここからは、自宅や賃貸事務所などを本店所在地として登記することのメリット・デメリットを紹介しますので、比較しながら本店所在地をどこにするか決めましょう。

自宅の住所を本店所在地として法人登記する場合

まず、会社を設立する人の自宅を本店所在地として登記するケースを見てみましょう。

メリット

自宅を本店所在地にすることのメリットは、すぐに住所を用意できることです。自宅を本店所在地として登記する場合は、事務所を契約するといった手続きが不要です。手続きだけでなく、新たに事務所を借りるための資金や、毎月支払う家賃も不要です。

自宅を本店所在地として登記する方法は、設立当初の負担を軽くしたい人や、Web関連の仕事や整体など、必ずしも事業所を借りる必要がない業種に向いています。

デメリット

デメリットは、自宅の住所が登記事項として公開されるため、プライバシーの面で問題があることや、取引先や金融機関などからの信用を得にくいことです。自宅が本店所在地だと、会社としての実態がないように見えることもあります。

また、賃貸住宅を本店所在地として登記する場合は、トラブルに発展することもあります。借りている住宅を会社の本店所在地として登記することに法的な問題はありませんが、賃貸住宅は契約書に「居住用」あるいは「事務所としての利用不可」と記載されているケースが少なくありません。

契約書に事務所として利用できないことが明記されている場合、契約を無視して登記すると、貸主とトラブルになるおそれがあります。場合によっては強制的に退去させられる可能性もあるので、事前に確認を取るなど慎重な対応が求められます。

許認可が必要な事業については、事務スペースを明確に設置する必要があるなど、事務所に条件が設定されていることもあります。条件に合わないと許認可を受けられないため、許認可が必要な事業の場合は、事務所の条件もよく確認しておきましょう。

賃貸オフィスの住所を本店所在地として法人登記する場合

自社オフィスや自社ビルを本社所在地とすることも可能ですが、会社設立当初は資金の大部分を事業に回す必要があるため、始めから自社オフィスや自社ビルを持つケースは少ないでしょう。多くの会社は、事務所用として貸し出されている賃貸オフィスを利用しています。

メリット

賃貸事務所を契約することのメリットは、取引先などから信用を得やすいことです。賃貸事務所の契約には審査があり、その審査を通過したという事実によって会社の信用力が高まるからです。特に信用力が重視される法人向けの事業を行う場合や、融資を受けて事業拡大を考える場合は、賃貸事務所を本店所在地として登記するとよいでしょう。

オフィスビルは1室だけを借りることも、複数のフロアを借りることもでき、事業規模に応じてさまざまな契約が可能です。執務スペースだけでなく、応接間などを設けて事務所内で接客や打ち合わせを行うこともできます。さまざまなレイアウトができることも、賃貸事務所のメリットといえるでしょう。

デメリット

賃貸事務所のデメリットはコストです。まず、敷金や保証料、仲介手数料などの初期費用がかかります。住居用の賃貸物件でも敷金や礼金がかかることがありますが、賃貸事務所は家賃の3~12ヵ月分など、契約時にまとまったお金が必要です。例えば家賃が月額30万円のオフィスを借りた場合、12ヵ月分だと敷金だけで360万円を用意しなければなりません。賃貸事務所で多額の初期費用がかかるのは、資金力があるかどうかを見られるからです。

また、賃貸事務所は住居用の賃貸物件と比べて、月々の家賃が高額になることケースが多いです。会社を設立して事務所を借りる場合は、資金繰りを良好に保つためにも、予想する売上に対して家賃が高すぎないかどうかを確認しましょう。

さらに、賃貸事務所では事務所を借りるための費用以外に、オフィス用の机や椅子、パーティション、パソコン、応接間のテーブルや椅子などの費用もかかります。事務所を借りるのに必要な金額だけで判断せず、什器・備品や家具などの費用も計算に入れておきましょう。

レンタルオフィスの住所を本店所在地として法人登記する場合

レンタルオフィスは、必要最低限のスペースを貸し出す小規模事業者向けのオフィスです。仕事用のスペースとして、1人から数十人など人数に応じて専用スペースが貸し出され、利用者はオフィスとして利用できます。会議室や給湯設備などは他の利用者との共用です。

メリット

レンタルオフィスのメリットは初期費用を抑えつつ、自宅以外の場所を事務所にできることです。賃貸事務所と異なり、1人用など小さい専用スペースの貸し出しもあり、従業員数に合わせて省スペース・低コストで事務所を運用できます。

共用スペースを設けることで、より多くの利用者がオフィスを利用できるようにしていることから、月々の家賃も賃貸事務所ほど高額にはなりません。スペースやエリアにもよりますが、月額数万円程度で借りられるところもあります。

初期費用についても賃貸事務所ほど高くはなく、敷金なしで借りられるケースもあります。レンタルオフィスによっては、電話機やインターネットなどオフィスに必要なものの貸し出しもあり、すべてを用意する必要がないこともメリットです。小規模ビジネスとしてスタートする人に向いています。

デメリット

デメリットは、レンタルオフィスを法人の住所として登記できないケースがあることです。本社所在地として登記することを禁止しているところもあり、この場合はレンタルオフィスの住所を登記できません。レンタルオフィスを検討する場合は、契約の前に登記できるかどうかを確認しておきましょう。

また、レンタルオフィスは賃貸事務所と違って、必要最低限のスペースの貸し出しです。従業員が増えた場合は、レンタルオフィスの規模では対応できなくなることがあるため、事業拡大が予想される場合、レンタルオフィスは避けたほうがよいでしょう。

バーチャルオフィスの住所を本店所在地として法人登記する場合

バーチャルオフィスは「仮想のオフィス」という意味で、住所のみを借りられるサービスです。あくまで借りるのは住所のみであり、事務所や実店舗は存在しません。住所のほか、電話番号を借りられるサービスや、住所地に届いた郵便の転送や電話対応を代行してくれるサービスもあります。

メリット

バーチャルオフィスのメリットは、低コストで自宅以外の住所を取得できることです。前述のとおり、自宅の住所を登記することもできますが、プライバシーの問題があります。バーチャルオフィスはプライバシーを守りつつ、低いコストで住所を取得したい人におすすめです。スペースを借りるわけではないため、賃貸事務所やレンタルオフィスよりも費用を大幅に抑えられます。

バーチャルオフィスの場所によっては、信用を得やすい一等地などに事務所があるように見せることができます。

デメリット

バーチャルオフィスは住所のみを貸し出すという性質上、同じ住所で登記している会社が他にも存在する可能性があるため、Web検索では同じ住所で何社もヒットすることがあります。したがって、差別化を図りたい場合やWebを使って認知度を高めたい場合には向いていません。また、その住所に事業所が存在しないため、許認可が必要な業種では認められない可能性が高く、注意が必要です。

さらに、バーチャルオフィスは金融機関での法人口座開設の面でも問題があります。業務を行う場所と住所地が一致しない場合、口座の開設を認めない金融機関があるからです。金融機関の口座を開設できないと取引に支障が出るため、事前に法人口座開設の条件などの情報を収集しておきましょう。
バーチャルオフィスで法人登記する際の注意点については、こちらの記事もご参照ください。

法人登記後に本店所在地の住所変更は可能?

法人登記後に、本店所在地の住所変更は可能です。ただし、本店所在地の住所変更は、登記が必要な事項となるため、本店移転登記をする必要があります。

本店移転登記は法務局で行いますが、法務局の管轄が異なる住所地に変更する場合は、注意が必要です。法務局の管轄が同じ住所地への移転であれば、法務局への登記申請はひとつで済みますが、法務局の管轄が異なる住所地に変更する場合は、変更前と変更後の法務局それぞれで登記申請を行う必要があります。

また、本店移転登記が完了したら、税務署や都道府県、市区町村(県税事務所や市税事務所)、年金事務所にも登記簿の写しなどを添付して、住所変更の届けを出す必要があるので、注意しましょう。

会社設立時の住所は融資や助成金にも影響する

本店所在地を決める際に注意したいのは、本店所在地によっては金融機関などからの融資や助成金に支障が出る可能性があることです。

助成金は助成金を出す自治体が指定するエリア内、融資は金融機関の事業所や本店などがあるエリア内の企業が対象になるケースが多いからです。

例えば会社のイメージアップを目的として、実際に事業を行う場所とはまったく関係のないバーチャルオフィスを借りた場合、住所地を理由に融資や助成金の対象にならない可能性があります。

会社設立後に助成金や融資を受けたい場合は、対象エリア内で本店所在地を考える必要があります。金融機関によっては、融資審査の際に業務を行っている場所と本店所在地から事業の実態を確認することもあるため、そのことも踏まえて本店所在地を決めなければなりません。

会社設立時は住所を慎重に選びましょう

会社設立時は、本店所在地を決めて登記しなければなりません。本店所在地に関しては特に制限はなく、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなど、さまざまな選択肢があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、十分に比較検討した上で決めましょう。

よくある質問

会社設立にあたって本店所在地にできるのは?

会社設立で定款に記載する本店所在地には制限がなく、自宅や賃貸事務所、レンタルオフィス、バーチャルオフィスなどの住所を登記できます。詳しくはこちらをご覧ください。

会社設立前の事務所は法人名義で契約できる?

会社設立前は会社としての実体がないため、法人名義では契約できません。一旦個人名義で契約し、会社設立後に名義を法人に変更することは可能です。詳しくはこちらをご覧ください。

本店所在地が融資や助成金に影響するのは本当?

融資や助成金を受けられるエリアに法人の住所がないと対象にならないため、本店所在地は融資や助成金に影響します。詳しくはこちらをご覧ください。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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