- 作成日 : 2025年2月20日
開発には許認可が必要?要件や手続きの流れのまとめ
土地開発を行う際には、都市計画法に基づく許可が必要なケースがあります。無秩序な開発を防ぎ、計画的な都市環境の形成を目的とした制度であり、許可が必要になる条件は地域や開発規模によって異なるため、許認可が必要かどうか悩むこともあるかもしれません。
本記事では、開発における許可の必要性や手続き方法を解説します。
目次
開発に許認可は必要?
土地開発を行う際、建築物の建築や、特定工作物の建設を目的とした土地の区画形質の変更には原則として開発許可が必要です。これは都市計画法に基づく制度で、無秩序な開発を防ぎ、計画的な都市環境の形成を目的としています。
開発許可の要否は、開発区域の場所や規模によって判断されます。この制度により、道路や排水設備などの都市基盤が適切に整備され、安全で快適な街づくりが実現されているのです。
なお、開発行為の具体的な定義や、地域区分ごとの許可要件については、以降の項目で詳しく解説します。
開発行為とは
都市計画法において、開発行為とは「主として建築物の建築又は特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更」と定義されています。この定義には、区画の変更、形状の変更、性質の変更の3つの要素が含まれており、いずれか一つでも当てはまる場合はする場合は開発行為に該当します。
区画の変更
区画の変更とは、土地の分割や統合、または道路や水路など公共施設の新設・廃止・付け替えによって土地の利用形態を変える行為を指します。
新たに住宅地を開発する際に道路を新設したり、既存の水路を移動させたりする場合がこれに該当します。ただし、単なる土地登記簿上の分筆や合筆は区画の変更には含まれません。
形状の変更
傾斜地を平坦化するために土砂を削ったり盛ったりする造成工事など、土地の物理的な高さや形状を変える行為が形状の変更に該当します。
ただし、建築物の基礎工事に伴う掘削や根切り、植栽など軽微な作業は含まれません。
性質の変更
性質の変更とは、土地自体の用途や性質を変える行為です。農地や山林など、宅地以外の土地を宅地として利用するために転用する場合が該当します。
例えば、水田を埋め立てて住宅用地にするようなケースです。このような性質変更も開発行為として扱われます。なお、すでに建築物の敷地になっている土地に住宅などを建築する場合は性質の変更とはみなされません。
開発許可の取得が必要なケース
開発許可が必要となるかどうかは、開発行為を行う土地の区域や面積によって異なります。都市計画法では、地域区分ごとに許可が必要な条件が定められており、これに基づいて申請の要否を判断します。
ここでは、それぞれの地域区分における許認可が必要なケースについて、詳しく見ていきましょう。
都市計画区域内の場合
都市計画区域内では、市街化区域と市街化調整区域に分かれており、開発許可の要不要はそれぞれ基準が異なります。
市街化区域では、原則として1,000平方メートル以上の土地を開発する場合に許可が求められますが、一部例外もあります。一方、市街化調整区域では面積に関係なく開発行為全般に許可が必要です。
これは計画的な市街地形成が目的であり、市街化調整区域では原則として新たな市街地開発を抑制する方針が取られています。
このほか、非線引き都市計画区域では3,000平方メートル以上の開発行為に許可が求められます。非線引き都市計画区域は市街化区域や市街化調整区域のように明確な区分がないため、土地利用の状況に応じて柔軟な対応が求められます。一部自治体では、条例によって基準が変更されることもあるため、事前確認が重要です。
準都市計画区域内の場合
準都市計画区域は、将来的に市街地として整備される可能性がある地域を指します。この区域では、3,000平方メートル以上の土地を開発する場合に許可が必要です。都市計画区域外であっても一定の開発規制が必要な区域として指定されており、無秩序な開発を防ぐための規制が設けられています。
都市計画区域外の場合
都市計画区域および準都市計画区域以外の区域では、10,000平方メートル以上の開発行為に許可が求められます。この規制は都市計画区域外であっても大規模な開発については一定の規制を行う必要があるとの考えに基づいています。
なお、これらの面積要件は、地方公共団体の条例によってより厳しい基準が設けられている場合もあるため、実際の開発計画時には各自治体の基準を確認しておくとよいでしょう。
開発許可の申請にむけた準備
開発許可を取得するためには、事前の準備がきわめて重要です。計画段階で必要な調査や関係者との協議を行い、適切な手続きを進めることで、許可取得までのプロセスを円滑に進められるでしょう。
以下で、詳しく説明します。
事前相談
開発許可申請を行う前には、必ず自治体の担当部署と事前相談を行います。この相談は、計画している開発行為が都市計画法上許可対象となるかどうかを確認し、必要な手続きや書類について具体的な指示を受ける重要なプロセスです。
相談時には位置図、公図の写し、土地登記簿などの資料が必要です。この段階で計画内容が適合しているかどうかを確認することで、その後の手続きがスムーズになります。
公共施設管理者の同意
都市計画法第32条に基づき、開発行為に関連する公共施設(道路、水路、公園など)の管理者との協議と同意取得が求められます。既存の公共施設に変更や廃止が伴う場合や、新たに公共施設を設置する場合には、その管理予定者とも協議を行わななければなりません。
案件の内容や地域によって異なりますが、公共施設管理者との協議には1ヶ月~1ヶ月半程度かかることが多いとされているため、スケジュールにはある程度余裕を持たせておきましょう。
地権者等の同意の取得
開発許可申請を進める際には、開発区域内外の関係者から適切な同意を得なければなりません。都市計画法第33条第1項では、「妨げとなる権利を有する者」の同意取得が義務付けられており、土地所有者、地上権者、賃借権者、抵当権者、水利権者などが該当します。
これらの権利者から、3分の2以上の同意を得ることが一般的な基準とされています。
さらに、開発区域周辺の支所や町内会長、水利権者、隣接地権者への説明も必要です。説明内容としては開発区域の位置や面積、着工時期、予定建築物の用途や高さなどが含まれ、開発行為による影響を事前に周知し、トラブルを未然に防ぐために行われます。
同意取得や説明は時間を要する場合が多いため、計画段階から早めに取り組むことが大切です。また、誤解や反対を防ぐためにも丁寧な対応と信頼関係の構築が求められます。
開発許可の申請に必要な書類や図面
開発許可を申請する際には、都市計画法に基づき、さまざまな書類や図面を提出する必要があります。以下では、必要になる主な書類を3つのカテゴリに分けて説明します。
基本書類
開発許可申請には、開発行為許可申請書を基本として、委任状(代理人申請の場合)、設計説明書(自己居住用は除く)が必要です。
開発区域が1ヘクタール以上の場合は、設計者の資格に関する書類や工事施工者の能力に関する書類も必要になります。また、自己用途以外や1ヘクタール以上の開発では、資金計画書や事業経歴書なども求められます。
必要図面
主要な図面として、以下のものが挙げられます。
- 土地利用計画図
- 開発区域位置図
- 開発区域区域図
- 造成計画平面図
- 造成計画断面図
- 排水施設計画平面図
- 土地公図の写し
なお、こうした図面は開発区域の境界や計画内容を明確に示すため、一定の縮尺と記載事項が定められています。また、必要書類は自治体によって異なるケースもあるため、申請前に確認が必要です。
権利関係書類
権利関係書類としては、土地の登記事項証明書(申請前3ヶ月以内のもの)、開発行為の妨げとなる権利を有する者の同意書が必要です。
同意書には権利者の印鑑証明書の添付が求められ、法人の場合は資格証明書も必要になります。また、農地転用など他法令の許可が必要な場合は、その証明書類も添付しなければなりません。
開発許可の申請手続きの流れ
開発許可の申請から許可取得までの基本的な流れは、以下のとおりです。
- 事前相談の実施
- 開発予定標識の設置
- 住民説明と同意取得
- 申請書類の提出
- 審査と現地調査
- 手数料納付と許可取得
- 工事着手と完了検査
- 工事完了の公告
開発予定標識は周辺住民へ向けて開発行為の実施を周知するもので、申請14日前までに設置しなければなりません。
工事完了後は完了検査を受け、検査済証が交付されると開発行為完了です。
開発許可の取得にかかる期間と費用の目安
開発許可の取得には、事前相談から許可までの期間と、申請手数料や専門家への依頼費用など、様々な時間と費用が必要となります。具体的な内容は地域や案件によって異なりますが、計画段階から十分な準備が重要です。
期間
開発行為許可申請の標準処理時間は1ヶ月程度とされていますが、書類の修正などがあればさらに日数が必要です。
事前相談から許可取得までの全体で考えると、早くて3ヶ月、工事内容によっては半年~1年以上かかることも。特に、埋蔵文化財包蔵地許可や農地転用許可などが必要になる複雑な案件の場合は、より長期間を要することを想定しておく必要があります。
費用
開発行為関係手数料は自治体や面積、用途によって異なります。例として、東京都の都市計画法に基づく開発許可申請等手数料を紹介しましょう。
【自己居住用の住宅の場合】
- 0.1ヘクタール未満:13,000円
- 0.1〜0.3ヘクタール未満:39,000円
- 0.3〜0.6ヘクタール未満:76,000円
- 0.6〜1ヘクタール未満:149,000円
- 1〜3ヘクタール未満:225,000円
- 3〜6ヘクタール未満:305,000円
- 6〜10ヘクタール未満:370,000円
- 10ヘクタール以上:497,000円
【自己業務用の建築物・特定工作物の場合】
- 0.1ヘクタール未満:21,000円
- 0.1〜0.3ヘクタール未満:51,000円
- 0.3〜0.6ヘクタール未満:113,000円
- 0.6〜1ヘクタール未満:204,000円
- 1〜3ヘクタール未満:340,000円
- 3〜6ヘクタール未満:457,000円
- 6〜10ヘクタール未満:567,000円
- 10ヘクタール以上:795,000円
【その他の場合】
- 0.1ヘクタール未満:141,000円
- 0.1〜0.3ヘクタール未満:215,000円
- 0.3〜0.6ヘクタール未満:320,000円
- 0.6〜1ヘクタール未満:379,000円
- 1〜3ヘクタール未満:573,000円
- 3〜6ヘクタール未満:654,000円
- 6〜10ヘクタール未満:808,000円
- 10ヘクタール以上:1,081,000円
また、開発行為の変更許可申請が必要な場合は、別途手数料が発生します。行政書士などに手続きの代行を依頼した場合は、その費用も必要です。
開発許可の取得をスムーズに行うポイント
開発許可の取得には様々な手続きが必要で時間もかかるため、ポイントを押さえてできるだけ滞りのないように進めることが大切です。
事前準備の徹底
開発許可申請には、入念な事前準備が欠かせません。特に事前相談は重要であるため、できるだけ早期に事前相談を実施し、土地利用計画や必要書類について具体的な指示を受けることで、後の手続きがスムーズになります。
また書類に不備があると許可までの時間が長くなるほか手間も増えるため、細心の注意を払って書類作成を行いましょう。
余裕を持ったスケジュールの設定
許可の受理そのものにかかる標準的な処理期間は1ヶ月程度ですが、事前準備から工事完了までを含めると3ヶ月~1年以上かかることもあるため、余裕を持ったスケジュール設定が大切です。
また、シビアな期限管理も求められるでしょう。
専門家の活用
開発許可申請には、専門的な知識と経験が求められます。書類手続きの不備はスケジュールが大幅に後ろ倒しになるリスクとなりえます。そうなるとさらに追加の手続きが発生し、悪循環に陥ります。
行政書士などの専門家に依頼することで、書類作成や手続きの進行管理、関係機関との交渉まで効率的に進められるでしょう。特に複雑な案件の場合、専門家のサポートは不可欠です。
開発許可申請には専門知識と入念な準備が必要
開発許可申請は、土地活用や建築計画を実現するための重要な手続きです。申請に必要な書類の作成から、関係者との調整、技術基準への適合まで、多岐にわたる対応が求められます。
初めて申請を行う方にとっては複雑で難しく感じる手続きかもしれませんが、事前相談や専門家への相談を活用することで、スムーズに進めることができます。開発計画の実現に向けて、早めの準備と計画的な対応を心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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