• 更新日 : 2025年2月20日

アメーバ経営とは?特徴やメリット・デメリット、失敗例をわかりやすく解説

アメーバ経営とは、企業を独立採算の小集団(部門)に分割する経営手法のことです。アメーバ経営により、経営者意識を持ったリーダーの育成や市場の変化に迅速に対応できる組織の構築が期待できます。

本記事では、アメーバ経営の特徴や目的、メリット・デメリット、導入方法、アメーバ経営成功のポイントについて解説します。

アメーバ経営とは

アメーバ経営とは、組織を部署ごとに細分化し、各部署が経営者の視点で企業活動を行うことで経営効率を高めようとするものです。組織をアメーバ(細胞)の集合体と見立て、アメーバが個々に活躍することを目的としていることから、アメーバ経営と呼ばれます。

最初に、アメーバ経営の誕生と現状について解説します。

京セラ創業者 稲盛和夫による経営手法

アメーバ経営とは、京セラの創業者である稲盛和夫氏による経営手法のことです。稲森和夫氏が設立時に会長を務めたKDDI(当時の第二電電)など、多くの企業で導入されています。

企業内の各部門をアメーバと見立て、各部門が独立して意思決定し活動することで組織の活性化を目的とした経営手法です。

京セラはアメーバ経営をすでに見直し

京セラから始まった経営手法ですが、現在の京セラではアメーバ経営の見直しを行っています。100人を超える部門(当初は10名程度の小集団で運営)ができて小集団で経営者意識を持ってもらうという目的が果たせない、部門ごとの壁ができる、などの弊害が目立つようになったからです。

従来の小集団(部門)を分割・統合により再編成し部門ごとの「壁」を取り払うとともに事業部門の再編を図り、アメーバ経営のリニューアルに取り組んでいます。

アメーバ経営の目的

アメーバ経営の主な目的は、次の3つです。

  • 市場に直結した部門別採算制度を確立する
  • 経営者意識のある人材を育成する
  • 全員参加経営を実現する

各目的について解説します。

市場に直結した部門別採算制度を確立する

アメーバ経営の目的の1つは、市場に直結した部門別採算制度を確立することです。たとえば、さまざまな商品を販売する販売部門の中でA商品販売課を1つのアメーバとした場合、部門全体の判断を待たずに、市場の変化に迅速に対応してタイムリーで適切な経営判断が可能となります。

経営者意識のある人材を育成する

アメーバ経営によって、経営者意識のある人材の育成も期待できます。細分化された部門のリーダーが部門収益を上げるために自主的に組織を牽引することにより、経営者意識を持ったリーダーとして成長します。

また、細分化によって多数の従業員にリーダー経験の場を提供し育成することによって、多数の幹部候補生を輩出することも狙いの1つです。

全員参加経営を実現する

従業員の全員参加経営を実現することも、アメーバ経営の目的です。独立採算の小集団で活動するため、部門内の全員が目標や価値観を共有できます。また、経営数字をオープンにすることにより、部門業績が会社に貢献していることが明確になり経営への参画意識が高まることも期待できます。

アメーバ経営のメリット

アメーバ経営の主なメリットは、次の3つです。

  • 従業員が経営者視点に立って利益を追求できる
  • 事業の問題解決スピードを加速できる
  • 幹部候補の育成ができる

各メリットについて解説します。

従業員が経営者視点に立って利益を追求できる

アメーバ経営のメリットの1つ目は、従業員が経営者視点に立って利益を追求できることです。独立採算制であるため、各従業員が部門の収益や目標を強く意識するようになり、経営者視点に立って物事を判断できるようになります。

また、達成感や経営への参画意識が生まれモチベーションの向上も期待できます。

事業の問題解決スピードを加速できる

メリットの2つ目は、事業の問題解決のスピードを加速できることです。部門リーダーが意思決定できるため、発生した問題や変化に対して現場で迅速・適格な判断が可能でしょう。市場の変化に迅速に対応することは、収益の向上にも貢献します。

また、現場判断が求められるため、部門内のメンバーに当事者意識が生まれるなどの効果も期待できるでしょう。

幹部候補の育成ができる

メリットの3つ目は、幹部候補生の育成ができることです。リーダーが部門の経営計画や実績管理、メンバーの育成を行うことにより、経営者としての経験を積むことができます。組織を細分化することにより、リーダーの人数が増えて多数の幹部候補が育成できるでしょう。

アメーバ経営のデメリット

アメーバ経営の主なデメリットは、次の3つです。

  • 部署間の関係が悪化するリスクがある
  • ワークライフバランスが崩れる可能性がある
  • 制度を導入するまでのハードルが高い

各デメリットについて解説します。

部門間の関係が悪化するリスクがある

アメーバ経営のデメリットの1つ目は、部門間の関係が悪化するリスクがあることです。独立採算制であるため所属する部門の収益を上げることを優先し、部門間の関係が悪化するかもしれません。

部門同士が刺激し合って好結果が生まれることもありますが、競争の激化やトラブル発生を避けるために部門間の調整も必要でしょう。

ワークライフバランスが崩れる可能性がある

デメリットの2つ目は、ワークライフバランスが崩れる可能性があることです。部門の収益や目標を強く意識するあまり、オーバーワークとなってしまうこともあります。

行き過ぎると健康状態の悪化や業務効率の低下などの悪影響も考えられるため、部門リーダーや人事部門などによる労務管理の徹底も必要でしょう。

制度を導入するまでのハードルが高い

デメリットの3つ目は、制度を導入するまでのハードルが高いことが挙げられます。アメーバ経営の導入には、リーダーやメンバーの意識改革や制度導入による業務内容の変更(独立採算制の導入や部門の経営計画策定、実績管理など)が必要です。

アメーバ経営導入による業務量の増加をどのように抑えるか、どうやって制度の定着を図るか、などについても事前に検討する必要があります。

アメーバ経営を導入する方法

アメーバ経営は、次の方法で導入します。

  • 組織をアメーバに細分化する
  • 経営状況の数字を可視化する
  • リーダーに権限を委任する

各方法について解説します。

組織をアメーバに細分化する

最初に、組織を細分化して10人程度の小集団を編成し、各小集団のリーダーを決めます。組織が果たすべき目的や役割を明確になるように、小集団を編成しましょう。また、組織の運営や人材育成を考慮して、リーダーを選定することも重要です。

経営状況の数字を可視化する

次に、部門の経営状況を数字で可視化してメンバーに情報提供しましょう。数字の可視化によって、メンバーはリアルタイムで経営情報を把握・共有できます。部門の収支や目標の達成状況がわかる数字を毎日公表することなどが考えられます。

部門収支をわかりやすくメンバーに伝える数字が、「時間当たりの付加価値」です。部門単位と個人単位で公表することが、迅速な問題解決や業務改善に役立ちます。

リーダーに権限を委任する

組織の体制が決まったら、リーダーに経営計画の作成や実績管理、部下の育成などの権限を委任します。委任された権限を活用して、リーダーとメンバーが協力して部門内で意思決定できる体制を作りましょう。

権限委任により上司などの許可を省略して現場で意思決定できるため、市場や部門内の状況に応じた迅速な対応が可能となります。

アメーバ経営を成功させるためのポイント

アメーバ経営を成功させるための主なポイントは、次の3つです。

  • 企業のフィロソフィを徹底する
  • 従業員のモチベーション維持を大切にする
  • 従業員のワークライフバランスも重視する

各ポイントについて解説します。

企業のフィロソフィを徹底する

アメーバ経営を成功させるためのポイントの1つは、企業のフィロソフィ(※)を徹底することです。アメーバ経営では各部門が独立して経営判断するため、全従業員が企業のフィロソフィを共有しないと、企業としての統一性が図れないからです。

※企業のフィロソフィとは、各企業それぞれの行動規範のことです。京セラ創業者の稲盛和夫氏は、企業フィロソフィを「人間として正しい判断基準」と定義しています。

自社の企業フィロソフィを定めて従業員に徹底することで、各部門リーダーに権限を委任しても、企業が目指す方向に沿った判断ができます。

参考:稲盛和夫オフィシャルサイト どのような考え方なのか | 思想 | 稲盛和夫について

従業員のモチベーション維持を大切にする

ポイントの2つ目は、従業員のモチベーション維持を大切にすることです。従業員が積極的にアメーバ経営に参画し経営者意識を持って自主的に行動してもらうためには、従業員のモチベーション維持が大切であるからです。

部門の収益や目標達成への貢献(実績)だけでなく、アメーバ経営への取り組み姿勢なども適切に評価するなど、モチベーション維持のための工夫も必要です。

従業員のワークライフバランスも重視する

ポイントの3つ目は、従業員のワークライフバランスも重視することです。前述の通り、部門の収益や目標を達成するために残業が増えると、従業員の健康状態の悪化や業務効率の低下、モチベーションの低下などが懸念されます。

メンバー個々の労働時間を適切に把握・管理して健康状態に気を配るとともに、ストレスや睡眠不足によるメンタル不調などにも配慮しましょう。

アメーバ経営のメリット・デメリットを理解して導入検討しよう

アメーバ経営とは、企業組織を独立採算の小集団に分割する経営手法のことです。アメーバ経営には、経営者感覚を持つ幹部候補の育成などのメリットがありますが、部門間の壁ができるなどのデメリットもあります。

本記事で紹介したメリットとデメリットを理解した上で、導入を検討してみましょう。導入時には企業のフィロソフィの徹底や従業員のモチベーション維持に注意を払い、アメーバ経営を成功させましょう。


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