- 更新日 : 2025年7月11日
印鑑登録は法人登記と同時に行う?印鑑証明書を取得するまでの流れを解説
法人の印鑑登録とは、会社の実印となる代表者印を法務局に届け出て登録することを指します。原則として法人登記の際に代表者印を提出する必要があるため、法人の設立登記とあわせて印鑑登録を済ませることが一般的です。
この記事では、印鑑登録を法人登記と同時または後から行う手順や、印鑑証明書を取得するまでの流れを解説します。
目次
法人の印鑑登録とは
法人の印鑑登録とは、会社の実印となる代表者印を法務局に届け出て登録することです。法務局に「印鑑(改印)届書」を提出することで手続きできます。
原則として法人登記の際に代表者印(会社実印)を提出する必要があるため、法人の設立登記とあわせて印鑑登録を行うことが一般的です。
また、ビジネスシーンにおいては「印鑑証明書」の提出を求められることがあります。印鑑証明書とは、法人の代表者印が本物であることを証明する公的な書類のことです。印鑑証明書を取得するためには、印鑑登録を行い、印鑑カードの交付を受ける必要があります。
法人の印鑑登録から印鑑証明書を受け取るまでの基本的な流れは、以下のとおりです。
- 印鑑登録を行う(あわせて法人登記を行う)
- 印鑑カードの交付を受ける
- 印鑑証明書を取得する
なお、登録できる印鑑は、商業登記規則第9条で定められています。一辺の長さを1cmから3cmの正方形に収める必要があるほか、必要印鑑は照合に適していなければなりません。
印鑑証明書を利用する場面
ビジネスにおいて法人の印鑑証明書が必要になる主な場面は、以下のとおりです。会社登記事項証明書(登記簿謄本)とあわせて印鑑証明書の提出を求められるケースが多いでしょう。
- 取引先と重要な契約を締結するとき
- 銀行口座を開設するとき
- 行政官庁に届出を行うとき
- 名義登録が必要な資産(不動産・有価証券・車両など)を購入するとき
一般的に、個人の本人確認には免許証やマイナンバーカードなど顔写真付きの書類が用いられます。
一方、法人には同様の書類が存在しません。そのため、法人が実在することを証明する会社登記事項証明書(登記簿謄本)とともに、印鑑証明書の提出が求められるケースがあります。
印鑑登録を法人登記と同時に行う方法
印鑑登録を法人登記と同じタイミングで行う方法には、法務局の窓口またはオンラインによる手続きの2種類があります。
それぞれ詳しく解説します。
法務局の窓口で印鑑登録の手続きをする場合
法務局の窓口で印鑑登録と法人登記の手続きをあわせて行う場合、「印鑑(改印)届書」に法人の実印を押印し、必要事項を記載して提出する必要があります。提出書類の様式は法務局の公式サイトからダウンロードできるほか、窓口でも入手可能です。
「印影が欠けている」「印影が不鮮明」などのケースでは再提出が求められるため、押印の仕方には注意が必要です。
会社設立前であれば、「印鑑(改印)届書」の「会社法人等番号」欄は空欄で問題ありません。
なお、届出人欄に押印する「市区町村に登録した印」とは、法人の実印を届け出る「代表者個人の実印」のことを指します。様式の下部にある「作成後3ヶ月以内の本人の印鑑証明書を添付してください」という注意書きについては、会社設立登記申請書に印鑑証明書を添付すれば対応不要です。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
オンラインで印鑑登録の手続きをする場合
法人登記のオンライン申請と同時に行う場合に限り、印鑑登録をオンラインで行うことが可能です。法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用し、「印鑑(改印)届書」のPDFファイルを添付して手続きを行います。印鑑登録のみを単独でオンライン申請することはできないため、注意が必要です。
オンライン申請には以下のような注意事項があるため、事前に確認してから手続きを行いましょう。
- 専用の様式を使用する(拡大・縮小印刷は不可)
- 原寸大かつ600dpi程度の解像度で様式をスキャンしPDFデータ化する
参考:法務省 オンラインによる印鑑の提出又は廃止の届出について(商業・法人登記)
印鑑登録を法人登記の後に行う方法
オンラインによる法人登記申請とあわせて印鑑登録を済ませていないケースでは、原則として代表者が法務局の窓口で印鑑登録手続きを行います。
具体的な流れや準備のポイントを見ていきましょう。
オンラインで法人登記した後に、法務局の窓口で印鑑登録の手続きをする
法人登記を済ませてから印鑑登録する流れは、「法人登記と同時に法務局の窓口で印鑑登録を行う場合」と大きく変わりません。「印鑑(改印)届書」という書類に法人の実印を押印し、必要事項を記載して法務局の窓口に提出します。様式は法務局の公式サイトからダウンロードできるほか、窓口でも入手可能です。
必要な持ち物は、以下のとおりです。
- 法人の実印(代表印)
- 代表者個人の印鑑証明書(作成後3ヶ月以内のもの)
- 代表者個人の実印
- 代表者の本人確認書類
代表者個人の印鑑登録が完了していなければ、地方自治体の窓口で申請し、事前に印鑑登録証明書を準備しておきましょう。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
印鑑カードの交付を受ける方法
法人の印鑑証明書を取得するために必要となる「印鑑カード」は、法務局で発行してもらえます。
ここでは印鑑カードの交付を受ける方法について、以下のケースに分けて解説します。
- 法務局の窓口で申請する場合
- 郵送で申請する場合
法務局の窓口で申請する場合
法務局で直接印鑑カードの交付を申請するケースでは、窓口に「印鑑カード交付申請書」を提出します。様式は法務局の公式サイトからダウンロードできるほか、窓口でも入手可能です。
また申請の際は「登記所に提出した法人の実印の押印」が必要です。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
郵送で申請する場合
法務局の公式サイトからダウンロードできる「印鑑カード交付申請書」を法務局に郵送して、印鑑カードの発行を申請することも可能です。印影が不鮮明な場合、受理されない可能性があるため注意が必要です。
申請が受理されれば、後日、印鑑カードが送付されます。交付申請書とともに、切手や着払いの宅配伝票などを貼った返信用封筒を同封したうえで郵送しましょう。書留や宅配便の着払い伝票などを利用し、返信用封筒を追跡できるようにしておくと安心です。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
印鑑証明書を取得する方法
印鑑証明書は、以下の方法で入手できます。
- 法務局の窓口
- 郵送
- 証明書発行請求機
- オンライン
各手数料は、以下のとおりです。非課税取引に該当するため、消費税はかかりません。
取得方法 | 手数料(1通) |
---|---|
法務局の窓口 | 500円 |
郵送 | |
証明書発行請求機 | |
オンライン | 窓口での受取:420円 郵送受取:450円 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法務局の窓口で取得する場合
法務局の窓口で印鑑証明書の交付を受けるためには、「印鑑証明書交付申請書」に必要事項を記載して提出します。代表者以外による手続きも可能です。申請書に収入印紙または登記印紙を貼り、割印せずに法人の印鑑カードを添えましょう。
様式は、法務局の窓口または公式サイトから入手できます。印紙は現地で入手できるため、事前準備は不要です。
印鑑証明書とあわせて登記事項証明書も希望するときは、「印鑑証明書及び登記事項証明書交付申請書」という様式でまとめて申請しましょう。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
証明書発行請求機を利用する場合
法務局によっては、タッチパネル方式で証明書を請求できる「証明書発行請求機」という端末が設置されています。
証明書発行請求機を利用して印鑑証明書を取得する場合、機械の指示に従って入力し、手数料を納付します。機械に印鑑カードを挿入することで、請求情報の入力を省略することが可能です。
郵送で取得する場合
郵送で印鑑証明書を受け取ることも可能です。
法務局の公式サイトからダウンロードできる「印鑑証明書交付申請書」に必要事項を記載し、収入印紙または登記印紙を申請書に貼りましょう。印鑑カードと、切手を貼って返信先を記入した返信用封筒とあわせて法務局へ郵送します。
印鑑カードを同封するため、往復ともに普通郵便ではなく、追跡可能な書留や宅配伝票などを利用したほうがよいでしょう。
印鑑証明書が手元に届くまでに時間がかかるため、急ぎの場合は郵送以外の手続きを選ぶことをおすすめします。
参考:法務局 登記事項証明書(商業・法人登記)・印鑑証明書等の交付請求書の様式
オンライン申請して取得する場合
平日21時まで利用できる「申請用総合ソフト」を通じて印鑑証明書の交付を受けることも可能です。ほかの方法と比較して、手数料が安いメリットがあります。初めて利用する際は、ソフトをインストールしておきましょう。
必要項目の入力や電子署名はオンラインで完了でき、手数料も電子納付となります。証明書は紙で交付されるため、郵送または窓口交付のどちらかを選びましょう。窓口交付を希望する際は、印鑑カードを持参してください。
印鑑登録は法人登記と同時に手続き可能
会社の実印となる代表者印を法務局に届け出て登録する法人の印鑑登録は、法人登記と同時に手続きできます。また、法人登記の後に行うことも可能です。原則として法人登記の際に代表者印を提出する必要があるため、法人の設立登記とあわせて印鑑登録を行っておくとよいでしょう。
ビジネスシーンでは、法人の印鑑証明書の提出を求められるケースがあります。本記事を参考に、印鑑証明書を取得するまでの流れや手続き方法を把握しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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