- 作成日 : 2025年5月15日
創業融資の自己資金にタンス貯金は使える?審査や注意点を解説
創業融資の自己資金としてタンス貯金を活用しようと検討している方もいるかと思います。しかし、創業融資の自己資金としてタンス貯金は使えないため注意が必要です。
本記事では、創業融資の自己資金としてタンス貯金が使えない理由や、タンス貯金を創業融資に活用する際のリスクなどについて解説します。
目次
タンス貯金で創業融資は受けられる?
結論からいうと、タンス貯金が創業融資の際の自己資金として認められることはほぼありません。それは、お金の流れを説明できないためです。
創業融資の際に自己資金として認められるのは、以下の条件を満たしたお金のみです。
- 出所がはっきりしているお金
- 借入金ではないお金
創業融資の審査においては、提示された資金がどういったものであるのか、お金の流れを通帳などで確認します。もし通帳だけでは出所や詳細のほか、借入金でないことの判断ができない場合、別の資料も必要です。そのうえで、出所がはっきりしたお金だけが自己資金とみなされます。
タンス貯金(タンス預金)とは、銀行口座などに預けず自宅で保管している現金の俗称のことです。金融機関に預ける預貯金との対比語として用いられます。自宅で保管してあるタンス貯金は、出所の証明やお金の流れを記録・証明できないため、自己資金とみなされません。
タンス貯金と自己資金の違い
自己資金とは、「自分の保有するお金」のことです。代表的な自己資金としては、自分名義の預金が挙げられます。
自己資金として認められるのは、以下のようなものです。
- 預金通帳に貯めたお金
- 退職金
- 贈与されたお金
- 資産を売却した資金 など
いっぽうで、自己資金として認められないものは以下の通りです。
- タンス貯金
- 借入金
- 売却していない有価証券 など
前述したように、お金の流れがはっきりしないお金と考えるとわかりやすいでしょう。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
補助金をまるっと理解!会社設立時の補助金ガイド
補助金の概要や各制度の内容に加え、会社設立直後の企業でも使いやすい補助金や実際の活用事例などについてまとめました。
「使えたのに知らなかった!申請が漏れてた!」といったことを防ぐためにも、会社設立時の資金調達方法の一つとしてお役立てください。
事業計画書完全ガイド
事業計画書を作成するメリットや記載すべき項目、数値計画、具体的な作成ポイントなど、実用的な計画書作成のコツをまとめました。
資金調達を検討されている方・事業を始めようとしている方に多くダウンロードいただいておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。
起業家1,040人への調査でひも解く!先輩起業家が一番困ったことガイド
マネーフォワード クラウド会社設立では、会社設立の経験がある方1,040名に対して、会社設立に関する調査を実施しました。
先輩起業家が悩んだ部分や、どのように会社設立を行ったかを、定量的に分析していますので、ぜひご活用ください。
会社設立時に決めることチェックリスト
「会社設立時に決めることチェックリスト」では、会社設立の基本事項や、株式会社・合同会社別の決めることチェックリストなどを、1冊にまとめています。
図解でカンタンにまとめており、完全無料でダウンロードいただけます。
タンス貯金を創業融資に活用する際のリスク
タンス貯金を創業融資に活用する際のリスクを紹介します。主なリスクは、以下の3つです。
- 「見せ金」と判断されるリスク
- 現金の出所が不明であるリスク
- 税務調査のリスク
リスクをしっかりと把握しておきましょう。
「見せ金」と判断されるリスク
タンス貯金を創業融資に活用するリスクとして、「見せ金」と判断されるリスクが挙げられます。見せ金とは、自己資金が多いように見せるために一時的に借り入れたお金のことです。
見せ金を目的とした入金は、通帳の取引をさかのぼることで不自然な入金であることがわかります。見せ金であることがバレるだけでなく、金融機関をだます行為としてとらえられてしまい、審査においてマイナスとなる可能性もあります。
また、場合によっては詐欺罪に問われる恐れもあるため、見せ金はしないようにしましょう。なお、見せ金は金融機関からの借入だけでなく、知人や友人からの一時的な借入も該当します。
現金の出所が不明であるリスク
タンス貯金を創業融資に活用すると、現金の出所が不明であるリスクがつきまといます。融資の際には、資金の出所をはっきりさせる必要があります。自宅に貯めていたお金は、貯金などと違って入金の履歴や出所を証明できないため、金融機関からすると親族や知人から借りた資金や金融機関からの借入の可能性も疑われます。
自己資金として使用したいのであれば、銀行や信用金庫などの預金口座に預けることが大切です。
税務調査のリスク
銀行口座に預ければいいのかというと、そういうわけでもありません。タンス貯金を銀行口座にまとめて入金すると、税務調査のリスクがあるためです。
まとめて入金した記録が税務当局に確認されると申告外の所得が発生したと疑われ、所得税の税務調査の対象となることがあります。もし入金によってタンス貯金が見つかり、そのお金の入手経緯を合理的に説明ができない場合、追徴課税を受ける可能性があるため注意しましょう。
タンス貯金を創業融資で自己資金として認めてもらうには?
タンス貯金を創業融資で自己資金として認めてもらうにはどうすればよいのでしょうか?前述したように、タンス貯金を自己資金として認めてもらうことはほぼ不可能に近いです。その際にできる方法としては、融資の申し込みを延ばしてもらう(4~6ヶ月)ことが挙げられます。
金融機関は創業融資の際に通帳を6ヶ月ほどさかのぼり、自己資金の過程を確認します。そのため、融資の申し込みを4~6ヶ月先延ばし、その期間は口座に入金される給与を自己資金として貯め、タンス貯金で生活費をまかなって申込日に備える方法が有効です。
この方法であれば6ヶ月間で通帳に給与が自己資金として貯まっていくことになり、結果的に自己資金として認められるようになります。
創業融資の審査を通過するためにできること
創業融資の審査を通過するためにできることを紹介します。
事前に金融機関へ相談する
まずは、事前に金融機関へ創業融資に関する確認・相談をしましょう。その際は、自分の保有する資産で自己資金として認められるものがあるかどうかを確認してください。あればそれを活用する方法が効果的です。
銀行預金を優先的に活用する
もし、銀行預金がある場合には、そちらを活用しましょう。毎月貯めている場合には、コツコツ貯めたという計画性も評価されます。認められる銀行預金は、以下のとおりです。
- 普通口座にある預金
- 積立定期預金
- 配偶者名義の預金
事業計画書を強化する
使える資金の目処が立ったら、事業計画書の作成も行いましょう。事業計画書とは、開業時にこれから行う事業内容を説明するために作る書類のことです。
どういったビジネスを行うのか、事業の売り上げや利益などどれくらいになるのかなどを記載します。融資の際にも事業計画書は必要となるため、金融機関の担当者を納得させられるだけの根拠のある内容が求められます。
創業融資をスムーズにする事業計画書のポイント
創業融資をスムーズにする事業計画書のポイントについて解説します。事業計画書は、事業の実現性を伝える重要な書類です。事業計画書に記載する内容に信憑性や具体性があるほど、融資審査の通過率も高められます。
事業計画書に記載する項目は、以下の通りです。
- 創業の動機
- 経営者の略歴
- 取扱商品とサービス
- 取引先と取引関係
- 必要な資金と調達方法
- 事業の見通し
融資につながる事業計画書を作成する際のポイントは、金融機関に評価してもらう目的から外れないことです。金融機関から評価されるには、以下のようなことに注意しましょう。
- 専門家以外の人でもわかりやすい内容になっている
- 具体的な数値などを用いて実現可能性の高さが証明されている
事業計画書は、金融機関の審査担当者だけでなく、決裁者などさまざまな立場の人が読む可能性があるものです。業界に詳しくない人でも理解できる内容に仕上げる必要があります。
また、金融機関は融資金額を回収できるかどうかを判断基準とするため、収支計画や資金計画においては実現可能性の高い数値を設定するようにしましょう。
もちろん、事業が最初から計画通りに進まないことも考えられます。それらのリスクを考慮した数値を設定することで、金融機関からの評価も高まります。
事業計画書・創業計画書のテンプレート一覧
事業計画書・創業計画書のテンプレート一覧は、以下からダウンロード可能です。事業計画書の書き方・記載事項などについても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
創業融資以外で検討したい助成金・補助金
創業融資以外で検討したい助成金・補助金について解説します。助成金・補助金は、融資とは違って原則的に返済不要なお金です。そのため、給付を受けることができれば大きなメリットとなるでしょう。
ここでは、以下の5つの助成金・補助金について解説します。
- 小規模事業者持続化補助金
- IT導入補助金
- 中小企業新事業進出補助金
- キャリアアップ助成金
- 創業助成事業(東京都)
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、制度変更への対応や販路開拓・生産向上に取り組む際にかかる経費の一部を補助する補助金です。
- 対象者:個人事業主や小規模企業の事業主
- 申請方法:原則電子申請
- 補助上限額:50万~5,000万円(申請枠で異なる)
実施期間が定められているため、まずは公式ホームページで確認するようにしましょう。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、生産性を上げるITツール導入に対して受けられる補助金です。
- 対象者:中小企業、小規模事業者など
- 申請方法:原則電子申請
- 補助上限額:5万~3,000万円(申請枠・類型、企業規模等で異なる)
製造業や建設業、運輸業においては、その他の要件もあるため、公式ホームページで確認するようにしましょう。
中小企業新事業進出補助金
中小企業新事業進出補助金は、2025(令和7)年から公募開始される補助金です。新規事業へ挑戦する際にかかる中小企業の設備投資を補助します。
- 対象者:新規事業へ挑戦する中小企業など
- 申請方法:原則電子申請
- 補助上限額:2,500万~9,000万円(申請枠・類型、企業規模等で異なる)
なお、公募開始時期は調整中です。上記に加えて、その他の要件もあるため申請する際はあらかじめ確認するようにしましょう。
キャリアアップ助成金
キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者(有期契約労働者や短時間労働者、派遣労働者など)のキャリアアップ等を促進するための助成金です。助成内容によって以下の6種類のコースから選べます。
- 正社員化コース
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 社会保険適用時処遇改善コース
対象者や申請方法は、以下の通りです。
- 対象者:要件に該当する事業主
- 申請方法:電子申請、管轄の労働局に申請
- 補助上限額:3万3,000円~(申請枠、加算措置の有無、企業規模等で異なる)
キャリアアップ助成金の申請には、各コース実施前日までにキャリアアップ計画の作成と提出が必要です。キャリアアップ計画とは、該当労働者や目標、取り組みについての計画のことです。
なお、キャリアアップ助成金の受給にはさまざまな手順が必要なため、1年ほど受給までにかかることはあらかじめ理解しておきましょう。
創業助成事業(東京都)
東京都では、創業5年未満または創業や起業を計画している方を対象とした創業助成事業を行っています。賃借料や人件費、広告費などについて、最大400万円の補助が受けられます。
- 対象者:創業から5年未満の個人、中小企業者など
- 申請方法:電子申請または郵送申請
- 補助上限額:上限400万円、下限100万円(助成率2/3以内)※対象経費によって異なる
なお、2025(令和7)年度の第1回募集の申請期間は、2025(令和7)年4月8日から17日となっています。
タンス貯金を創業融資に活用することはほぼ不可能
タンス貯金は出所がはっきりしないため、創業融資の自己資金として基本的に認められません。自己資金として認められるのは、預金通帳に貯めたお金、退職金、贈与されたお金などです。
タンス貯金を創業融資で自己資金として認めてもらうためには、融資の申込日を4~6ヶ月先延ばしして、その間にタンス貯金で生活しつつ給与を通帳に貯めるとよいでしょう。また、創業融資の審査を通過するためには事業計画書の作成も欠かせません。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
日本政策金融公庫の資本性ローンとは?対象・要件・申請の流れを解説
日本政策金融公庫の資本性ローンは、創業期や新たな事業展開を目指す中小企業・個人事業主に向けた、自己資本に近い性質を持つ融資制度です。元本据置型の返済方法や業績連動型の金利、無担保・無保証での利用が可能であるなど、他の融資制度にはない柔軟性を…
詳しくみる創業融資の7つのリスク!後悔しない借入のコツ、審査落ちの対策を解説
創業融資にはメリットだけでなくリスクもあります。この記事を読めば、「創業融資のリスクは?」「審査落ちの対策がわからない」という悩みを解決できます。 本記事で、創業融資で想定可能なリスクや、創業後にオススメの補助金などについて確認していきまし…
詳しくみる資金調達時の金利相場は?法人融資の金利を下げる方法も解説
資金調達時の金利は、融資先により異なります。同じ融資先でも、返済期間や返済能力、担保の有無などで金利は変わります。金利を抑えるためには、返済期間を短くするか、事業計画書を丁寧に作成するといった工夫が大切です。 本記事では、資金調達時の金利を…
詳しくみる日本政策金融公庫の融資の流れは?時間・費用・準備について解説
創業時の資金調達は、多くの起業家にとって大きな課題です。その中でも、日本政策金融公庫の創業融資は、無担保・無保証でも利用できる公的な融資制度として、はじめての創業者に広く活用されています。 本記事では、日本政策金融公庫の創業融資の概要から、…
詳しくみる創業融資の返済期間は何年がベスト?日本政策金融公庫の制度や返済方法についても解説
創業融資は、事業を軌道に乗せるための重要な選択肢です。創業融資の返済期間を適切に設定することは、事業のキャッシュフローを安定させ、健全な経営を持続させるための鍵となります。 この記事では、創業融資の返済期間に関するあらゆる疑問を解消し、あな…
詳しくみる資金調達コンサルティングとは?メリットや相場、おすすめの依頼先を解説
資金調達コンサルティングは、融資や事業計画の作成など、企業の資金調達に関する多岐にわたるサポートを提供するサービスです。適切な支援を受けることは資金調達の成功率を大きく左右するため、企業にとって重要な選択肢となります。本記事では、資金調達コ…
詳しくみる


