- 作成日 : 2025年3月3日
個人事業主に代表者印は不要!作成がおすすめの印鑑や購入費用の会計処理について解説
個人事業主の中には、代表者印を作るべきか迷っている人もいるでしょう。個人事業主の場合は法人登記しないため、代表者印の作成は不要です。
本記事では、個人事業主に代表者印が必要なのかについて解説します。あわせて、個人事業主が印鑑を利用する場面も紹介するので、必要に応じた印鑑を作成しましょう。
目次
個人事業主は代表者印の作成が必要?
まずは、代表者印についておさらいしておきましょう。代表者印とは会社印鑑のことで、法人印鑑とも呼ばれます。代表者印は法務局に登録された実印で、公文書や契約書の押印に使用するものです。
個人事業主は、法人ではありません。法人登記をしないため、会社印鑑(代表者印)を作成する必要はありません。個人事業主の場合は、基本的に個人で所有する実印を代表者印として用いることになるため、実印があれば問題ないと考えられます。
個人事業主は事業用の印鑑を作成したほうがよい?
前述したように、個人事業主の場合は個人の実印を代表者印として用いることになります。また、請求書や見積書への押印に関しても通常の認印で問題ないため、事業用の印鑑を作成する必要性は低いといえるでしょう。
ただし、屋号などがある場合は専用の印鑑を作成しておくと、ブランドや信頼感の向上につながります。取引先にビジネスを行っていることをアピールしたい場合や個人の印鑑と事業用の印鑑を使い分けたい場合には、屋号入りの印鑑を作成しておくとよいでしょう。
また、今は個人事業主としてやっているものの将来的に法人化を考えている場合も、事業用の印鑑を用意しておくことをおすすめします。それにより、法人化しても同じ印鑑を継続して使用可能です。
個人事業主が印鑑を利用する場面
印鑑には、丸印や角印、銀行印など用途に応じてさまざまな種類があります。印鑑の種類について解説します。
丸印
丸印とは、丸い形状をした印鑑のことです。丸印は、主に代表者であることを証明する書類に押印します。前述したように、個人事業主では代表者印がないことが多いため、丸印を押印することが一般的です。
また、丸印には個人名だけのものや屋号だけのもの、屋号と代表者の名前を刻印したものなどさまざまな種類があります。丸印を作成する際には、自分好みに応じた印鑑を作成するとよいでしょう。
角印
屋号が彫刻されており、四角い形状の印鑑が角印です。角印は法人が使用することが多いものですが、個人で作成する場合もあります。
一般的には認印として使用されることが多く、主に業務書類や請求書、領収書、社内文書などに押印されます。なお、角印は法的効力を持っていません。
個人事業主であれば、角印を作成しなくても問題ないでしょう。個人名を刻印したものや屋号を刻印した角印を作成しておけば、書類の見栄えもよくなります。
銀行印
銀行印とは、銀行で口座を作成する際に届け出る印鑑のことです。銀行印は口座開設時に登録され、登録後はその印鑑を用いて銀行取引を行います。
銀行印は、本人確認に使われることが多い印鑑です。そのため、取引する本人の名前が彫られていることが一般的といえます。個人事業主の場合、個人で使用している印鑑で問題ないでしょう。
住所印
住所印とは、名前・住所・連絡先などが印字された印鑑のことです。主に、チラシの作成や領収書、封筒の記入などに用いられます。
個人事業主の方でクライアントに書類を頻繁に郵送することが想定されるのであれば、住所印を作成しておけば効率よく発送作業をできるでしょう。
個人事業主は電子印鑑を準備したほうがよい?
個人事業主として働く場合は、実物の印鑑以外に電子印鑑も用意しておくことをおすすめします。近年、電子データで契約書や請求書などを発行するケースが増えているため、電子印鑑を押す機会も十分あり得るでしょう。
電子印鑑とは、印影を画像化したものです。JPGやPNGファイル形式になっており、ワードやPDFなどのファイルに電子印鑑の画像を配置することで書類に押印したことになります。
また、電子印鑑を用いることで大きなメリットもあるため、ここでは電子印鑑のメリットについて解説します。
なお、取引先によっては電子印鑑の使用を認めていない場合もあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
電子印鑑のメリット
電子印鑑のメリットは、次の2つです。
- 業務効率化になる
- 書類紛失リスクが減る
それぞれ詳しく見ていきましょう。
業務効率化になる
電子印鑑のメリットとして、業務効率化が挙げられます。電子印鑑は実物の印鑑よりもスムーズに押印できるだけでなく、印影の欠けやかすれを心配する必要がないため押印のやり直しも防げます。
また、書類が電子化されることにより郵送する必要がないため、書類の印刷や梱包といった作業に手間や時間を取られる必要もありません。
書類紛失リスクが減る
電子印鑑のメリットには、書類紛失リスクの低減も挙げられます。書類を電子化すると紙ベースで書類を保管する必要がないため、書類を紛失するリスクが低減します。
紙で管理している場合、いくら厳重に管理していても、火災や津波といった災害時にはどうすることもできません。クラウド上にデータを保存しておけば、パソコンが壊れても問題なくデータを引き出せます。
電子印鑑の作り方
ここでは、電子印鑑を作成する方法を紹介します。主な方法は次の2つです。
- 実際の印影から作成する
- Excelで作成する
<実際の印影から作成する>
手順は、次のとおりです。
- 真っ白な紙に印鑑を押す
- 画像をデータ化する
- 画像データをExcelに挿入する
- 挿入した画像を編集する
作業する際には、次のようなことに注意しましょう。
- 印鑑を押した紙に撮影者の影が入らないようにする
- パソコンに取り込む際は高解像度で取り込む
画像データをExcelに取り込む際は、Excelを新規で開いて「挿入」タブにある「画像」から「画像をファイルから挿入」をクリックし、作成した画像データを選択してください。
取り込んだ画像の編集が終わったら、画像を保存して電子印鑑の作成は完了です。
<Excelで作成する>
手順は、次のとおりです。
- Excelに電子印鑑の縁になる図を挿入
- 図の中心に会社名や苗字を入力
- 図を調整する
Excelを新規で開き、「挿入」から「図」を選択しましょう。作りたい電子印鑑の形に合わせて「円形」「角丸四角形」などを挿入してください。
挿入した図の中心に会社名や名字を入力します。実際の印鑑のサイズを参考にして枠の太さや文字サイズ、太さなどを調整し、問題なければ保存して完成です。
事業用の印鑑を購入したら経費になる?
事業用の印鑑を購入した場合は、経費計上できます。ただし、個人用と兼用する場合は、費用すべてを経費計上できず、按分という処理が必要になります。
按分とは、事業用・個人用それぞれの使用割合を元に事業経費と個人的支出を分ける方法です。使用割合に応じて経費計上しましょう。
勘定科目と仕訳
印鑑は、消耗品費として計上することが一般的です。仕訳例は、次のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 | 印鑑作成費 |
按分した場合の仕訳例は次のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
消耗品費 | 5,000円 | 普通預金 | 10,000円 | 印鑑作成費 |
事業主貸 | 5,000円 |
事業主貸とは、事業用のお金を個人支出として動かすときに使用する勘定項目のことです。事業主貸として処理した支出は、事業上経費としては計上されません。
個人事業主に代表者印は不要
個人事業主の場合、法人登記しないため、基本的には代表者印の作成は不要です。個人で所有する実印を代表者印として用いれば問題ありません。ただし、屋号などがある場合や個人の印鑑と事業用の印鑑を使い分けたい場合には、印鑑を別途用意しておくのも一つの手です。
また、個人事業主として働く場合は、電子印鑑の用意も検討しておくとよいでしょう。電子印鑑を作成する方法としては、実際の印影から作成する方法とExcelで作成する方法があります。本記事を参考に、電子印鑑を作成してみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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