- 作成日 : 2025年3月7日
女性起業家におすすめの資金調達方法は?成功のポイントやジャンルを解説
近年、女性起業家の割合は増加傾向にありますが、資金調達は男性に比べて障壁が高いといわれているのが現状です。ただし、日本政策金融公庫からの融資や国や地方自治体から支給される補助金・助成金の活用など資金調達方法は多く存在します。
本記事では、女性起業家におすすめの資金調達方法や成功するポイントについて解説します。
目次
女性起業家の資金調達は難しい?
女性起業家が直面する困難は多岐にわたりますが、資金調達においても構造的な障壁があるのが現状です。
日本政策金融公庫総合研究所の調査によると、1991年から女性起業家の割合は徐々に増えていることがわかりました。ただ一方で、資金調達の過程において大きな男女格差が存在しており、女性起業家は資金を調達しにくい傾向があります。
起業家間で男女格差が生じる背景には、未上場の新興企業に出資する投資会社や投資ファンドが男性中心であることが考えられます。男性起業家のビジネスアイデアのほうが評価されやすく、女性起業家は資金的な支援を得るのが難しい状況です。
参考:金融庁 スタートアップエコシステムの ジェンダーダイバーシティ課題解決に向けた提案
参考:日本政策金融金庫 2023年度新規開業実態調査
女性起業家の資金調達方法
女性起業家が利用可能な資金調達方法には、日本政策金融公庫等からの融資や国や地方公共団体から支給される補助金・助成金等があります。
それぞれの概要を詳しく見ていきましょう。
融資
融資とは、金融機関や公的機関等から事業資金を借りることを指します。
公的融資から民間融資まで種類が豊富にあり、状況に応じて申請可能です。ただし、融資を受けるには審査に通過する必要があります。なお、融資を受ける側は、元金に利息を加えて返済する義務はありますが、一般的には分割で返済できることが多いです。
公的融資 | 公的融資は、日本政策金融公庫や地方自治体等の公的機関から受ける融資のことです。民間金融機関では融資を受けにくい創業間もない企業でも利用できます。金利も比較的低く設定されているため、返済負担を抑えられるのも特徴です。 |
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民間融資 | 民間融資は、銀行等の金融機関や消費者金融から受ける融資のことです。金融機関からの融資には、信用保証付融資やプロパー融資等があります。公的融資に比べると審査にかかる期間が比較的短く、今すぐ融資を受けたいときに適しています。 |
代表的な制度例には、以下のものがあります。
- 新規開業資金
- 女性、若者/シニア起業家支援資金
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金
参考:日本政策金融公庫 新規開業資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)
補助金・助成金
補助金とは、国や地方自治体、民間団体から支給される資金のことです。募集上限があらかじめ決められており、選考が厳しい傾向があります。なお、補助金は事業費の一部を補助するものであり、全額を賄えないため自己資金を用意する必要があります。
代表的な制度例には、以下のものがあります。
- 小規模事業者持続化補助金(一般型)
- ものづくり補助金
参考:全国商工会連合会 小規模事業者持続化補助金(一般型)
参考:全国中小企業団体中央会 ものづくり補助金
助成金は、一定の条件を満たす事業を支援するために国や地方自治体が支給する資金です。要件をすべて満たせば受給できるため、補助金のように競争的な審査はありません。年度を通じて受け付けられており、比較的柔軟に申請できます。
代表的な制度例には、以下のものがあります。
- キャリアアップ助成金
- 両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
補助金・助成金は返済義務がありません。ただし後払いが原則のため、資金準備は必要です。
参考:厚生労働省 キャリアアップ助成金
参考:厚生労働省 両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネットを介して不特定多数の人々から資金調達する方法です。プロジェクト内容が興味・関心を惹くものであれば、多額の支援金が期待できます。資金調達が難しい女性起業家でも、比較的簡単に資金を調達可能です。
クラウドファンディングの主な種類には、以下のものがあります。
- 支援者がお金を支援する「購入型」
- 支援者がお金を寄付する「寄付型」
- 個人から集めた資金を融資する「融資型」
- 個人投資家から出資を募る「ファンド型」
また、市場に製品が出る前に消費者の反応を知れるため、マーケティングの場としても活用できます。ただし、クラウドファンディングを始めても、必ず目標金額に達するとは限りません。プロジェクトの成立確率を見極めることが大切です。
ビジネスコンテストやコンペティション
ビジネスコンテストやコンペティションは、新しいアイデアや事業計画を多角的な視点から評価して審査するコンテストのことです。
ビジネスコンテストやコンペティションの多くは、優秀な入賞者に賞金が準備されています。実際に、参加して資金調達を目指す起業家も少なくありません。ただし、賞金を得られるのは一部の参加者であるため必ず資金調達できるとは限りません。
代表的なビジネスコンテスト・コンペティション例には、以下のものがあります。
- 日本起業アイディア実現プロジェクト
- DBJ女性新ビジネスコンペティション
参考:一般社団法人日本起業アイディア実現プロジェクト 日本起業アイディア実現プロジェクト
参考:日本政策投資銀行 DBJ女性新ビジネスコンペティション
女性起業家の資金調達を成功させるポイント
起業を成功させるには、事業内容や規模に応じて資金調達することが必要です。ここでは、女性起業家の資金調達を成功させるポイントを解説します。
女性を対象にした優遇措置がある制度を活用する
国や地方自治体等の資金支援制度には、女性起業家を対象にした制度が多くあります。
これらの資金支援制度は、女性起業家の強みを生かして着実に資金調達することが可能です。ただし、資金調達を実現するには、要件を満たすだけでなく、審査を通過しなければいけません。説得力のある資金調達計画の作成にも力を入れましょう。
自分の住まいや起業予定の土地に密着した制度を探す
自治体が主導する補助金・助成金は、その地域で起業する事業者のみを対象にする制度が多いです。
対象者が限られている制度は、競合が少なく審査に通りやすい傾向があります。着実に資金調達したいなら、自分の住まいや起業予定の土地に密着した制度を探しましょう。申請期間が指定されている制度が多いため、早めに準備を始めましょう。
専門家やサポート機関に相談する
資金調達を成功させるために、専門家やサポート機関に相談するのもひとつの方法です。
融資に強い専門家やサポート機関に相談すれば、書類作成や面談のアドバイスなど資金調達に関するさまざまな支援を受けられます。とくに、事業内容や戦略、収益予測等を記載する事業計画書は、納得感のある内容でなければ審査は通過できません。
事業計画書に不備がある場合、その不備を修正して再提出する必要があります。修正を繰り返すと信頼を損ねて融資の成否に影響する場合もあるため、事業計画書の記載事項を確認してもらいましょう。
女性起業家の資金調達における注意点
女性起業家の資金調達は難しいといわれていますが、ポイントを押さえて準備を進めれば円滑な資金調達が期待できます。
ここからは、女性起業家が資金調達する際の注意点を見ていきましょう。
起業へのステップ
副業から始めて事業が軌道に乗ってから起業する方法もあります。
副業であれば起業より低コストで始められるため、リスクを最小限に抑えることが可能です。副業での経験は起業で融資を受ける際の強みになり、担当者との面談で有利になる可能性があります。融資担当者の信頼を得たいなら、副業での実績を作りましょう。
事業計画書の作成
事業計画書とは、事業内容や戦略、収支の見込みなどを記載した書類のことです。
事業の全体像や具体的な計画を把握するために、事業計画書の提出が求められます。事業計画書の内容が融資審査の可否に影響するため、実現可能な計画を立てることが必要です。
不備がある場合は再提出になるため、心配な方は融資に強い専門家に相談しましょう。
人脈の構築
起業して間もない頃は、実績の少なさから仕事や顧客を獲得できないことが多いです。
このような状態が続くと運転資金が底をつき、追加の融資が必要になる可能性もあります。早い段階から人脈を構築しておけば、仕事や顧客を早期に獲得できるかもしれません。
事業成長の可能性を広げるためにも、積極的に人脈を構築しましょう。
ブランディング
資金調達を成功させるには、効果的なブランディング戦略を実践することも重要です。
ブランディングとは、企業や製品等のブランド価値を高め、他社との差別化を図る取り組みです。ブランド価値を高められると、企業の信頼性が向上して信頼を得やすくなります。
ブランドの価値や信頼性の向上が優位に働き、資金調達が円滑に進む可能性があります。
女性起業家が資金調達しやすい分野・ジャンル
女性起業家が融資を受けるには、融資担当者に成功する可能性が高いと感じてもらうことが重要です。ここでは、女性起業家が資金調達しやすい分野・ジャンルを見ていきましょう。
美容・エステ関連
ヘアサロンやネイルサロンのような美容・エステ関連は、美容好きな女性の特性を生かせるため、資金調達しやすい分野といえます。
資格と一定のスペースがあれば、自宅でも気軽に始められるのも魅力です。ただし、美容・エステ関連の事業を始める際は、最低限の器具や設備を揃える必要があるため初期費用がかかります。資格を問われる業種も多いため、事前学習が必須です。
教室・セミナー運営
自分が持つスキルや経験を活かしたい方には、教室・セミナーを運営するのがおすすめです。
料理教室やヨガ、子育てアドバイザーなど選択肢が多く、幅広く活躍できます。自宅でオンライン開催することも可能であるため、工夫次第で費用を抑えて起業できます。
ただし、開業時は顧客獲得に時間がかかるため、ブランディングの知識が必要です。
Web関連事業
ノートパソコン1台で始められるWeb関連事業は、起業初心者におすすめの分野です。
具体的には、Webライターやアプリ制作、ネットショップ運営等が挙げられます。自宅にいながら仕事ができるため、子育てや家事と両立しやすいです。また、近年は企業と個人を結ぶクラウドソーシングが普及しており、起業初心者でも仕事を得やすい環境があります。
女性起業家の資金調達方法はさまざま!計画的に進めよう
資金調達の過程において大きな男女格差が存在しており、女性起業家は男性に比べて資金が調達しにくい傾向があります。ただし、近年は融資や補助金・助成金、クラウドファンディングなど、さまざまな資金調達方法が増えているのも事実です。
資金調達方法によって受給金額や条件等が変わるため、起業を考えているなら早めに要件を確認して計画的に準備を進めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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