- 更新日 : 2024年4月9日
発起人の決定書とは?書き方や記入例、押印について解説
株式会社の設立にあたり準備が必要な事項や書類のうち、「発起人の決定書」は設立に直接携わる人(々)の意思表示を明記するための書類の一つです。
会社設立における発起人の決定書の意義や作成方法、ケース別の記載例やフォーマット、設立に必要な他の書類などについて以下に詳しく紹介します。
目次
発起人の決定書とは?
まずは「発起人」および会社設立時の発起人決定書の意義についてしっかり理解しましょう。
そもそも会社設立における「発起人」とは?その役割は?
当然ながら、会社は設立しようとする誰かの意思がなければ成立しません。その意思を持ち、株式会社設立に必要な手続きを行う人(一人でも複数であっても)が「発起人」です。
発起人は会社設立後そのまま取締役として会社経営にも関わる場合と、経営とは一線を置き、自身は株主として会社の意思決定のみに携わる場合とがあります。ただし、設立する会社が小規模であれば、通常、発起人は経営と株主の双方を兼ねることが多いでしょう。
発起人の主な役割は、「定款の作成」と「資本金の出資」そして「設立時取締役の決定」です。
発起人は株式会社を設立するため、まずは定款を作成しなければならず(会社法第26条)、発行株式数や株式と引き換えに払い込む金銭の額、資本金額などを決めねばならず(同32条)、引き受けた株式にかかる金額を払い込まねばならず(同34条)、出資履行後速やかに設立取締役等を選任しなければなりません(同38条)。
定款とは、設立する会社がどういう会社であるかを説明する書類です。会社の商号、本店所在地、どんな事業を行うか、会社の組織形態、株主総会の方法、事業年度など、定款には一定の必要記載条項があります。
なお、株式会社の定款は公証人の認証を受けなければ効力が発生しません(同30条)。忘れないようにしましょう。
資本金は発起人が複数であれば、誰がどれだけ出資するかを話し合って決めます。出資には発行株式と引き換えに現金を出資する方法と、不動産などの金銭以外の財産を出資する「現物出資」の方法があります。
取締役は、設立する会社の規模に応じ1名以上、もしくは3名以上選任します。監査役や会計参与を設置する場合はそちらの選任も必要です。
「発起人の決定書」とは?
前項で挙げた事項をはじめとした発起人の役割がつつがなく遂行されれば、法務局に設立の登記を申請します。発起人の決定書とは、この登記申請の際に提出が求められることがある書類です。
設立会社の詳細については定款作成時に発起人が決定しますが、発起人の決定書は、その中でも特に重要な基本事項を記載し、これらを発起人が決定したことを証明する書類となります。
会社を設立する時に必要な書類
株式会社は設立登記を完了して初めて公的に「株式会社」として存在することになります。
株式会社は原則として利益を追求するために経営を行うため、自ずと第三者との「取引」が存在することになります。この取引を安全かつ迅速に行うための、株式会社としての証明を登記することにより得るのです。
したがって、会社設立の登記申請時には、さまざまな書類が必要になります。
株式会社であれば、既に挙げた「認証済みの」定款、発起人決定書以外にも
- 払い込んだ出資金の保管証明書
- 株式申込書
- 設立時取締役の就任承諾書
- 設立時取締役の調査報告書(監査役設置会社の場合は設立時監査役が調査を行う)
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
などを登記申請書の添付書類として提出します。
また、代表者の本人確認証明書や、会社印の印鑑証明書も必要となります。
発起人の決定書の書き方、記載例
発起人の決定書の作成方法と記載例
発起人の決定書は、決定事項ごとに別々の決定書を作成する方法と、全ての決定事項をまとめて1通作成する方法があります。
どちらであっても効力は変わらないので1通にまとめる方が楽ですが、別々の作成だと、項目ごとに発起人がより丁寧に再確認できるという利点があります。
一般的な記載例を紹介します(発起人が複数の場合)。
と明記したうえで、決定事項を列記します。
決定書に記載する内容は、
- 商号
- 本店所在地
- 発行可能株式数、設立時発行株式数、1株当たりの金額
- 資本金の額
- 設立時取締役の人数と氏名
- 電子公告の場合、サイトのURL
などです。
この他、事業の目的や、取締役の報酬に関する事項などを記載する場合もあります。
発起人決定書が必要なケース
このように、発起人の決定書においては必要記載事項が定められているわけではありません。しかし、定款で具体的に定められていない内容については決定書で記載しておく必要があります。
例えば会社の所在地です。定款においては「当会社は、本店を〇〇市に置く」のように本店所在地は最小行政区画である市町村までの記載で足りますが、その場合、必ず発起人決定書で本店の番地まで(登記申請書とおりに)記載しなければなりません。
また、設立取締役を定款で定めていない場合にも、やはり発起人決定書での記載が求められます。
逆に言えば、上記事項を定款に明記している場合、発起人決定書は不要となります。
とはいえ、株式会社の一般的な定款の様式としては、所在地を市町村までに留め、設立時取締役名まで記載しないものがほとんどですから、通常は発起人決定書を作成することになるでしょう。
発起人の決定書作成日付
発起人の決定書作成時に最も注意しなければならないのは、「決定書作成日付を定款の認証日よりも前の日とすること」です。
発起人として会社の基礎となる定款の内容を定めることを第一に行い、発起人の決定書は登記申請のために後から作成するということも実際にはあるでしょう。しかし、発起人の意思決定を行い、定款を作成するのが順番として正しい流れになるのです。
発起人が一人の場合、複数の場合の発起人の決定書
発起人が一人の場合、話し合いの場を設ける必要がないため、単に「発起人〇〇は次のとおり決定した。」として決定事項を記載すれば足ります。
一方発起人が複数の場合は、記載事項の決定が、全発起人が話し合い、同意を得たうえでなされたことを証明する必要があるため、発起人会議事録としての体裁が必要になります。
したがって、書類のタイトルとしては、発起人一人だと「発起人決定書」でよいのですが、発起人が複数だと「発起人会議事録」となります。
発起人の決定書に押印は必要?不要?
発起人の決定書は、設立会社の内容に関し、発起人が記載のとおり決定したという意思表示の証明です。通常の契約書でも署名押印が求められることが多いことを考えれば、ましてや株式会社設立の際法務局に提出する発起人決定書(発起人会議事録)には押印は不可欠といえそうです。
しかしながら、現在は発起人決定書に押印は不要となっています。
令和3年1月に法務省通達により押印に関する規定が見直されました。自治体への申請書への押印は原則不要となり、委任状も委任者の氏名の自著があれば押印がなくとも受け付けてもらえるようになりました。
そして、発起人決定書においても押印はなくて構わない、ということになったのです。
もっとも、発起人会議事録においては、全発起人自身のための意思表示の証明として、署名押印をした書類を作成しておく方が安心かもしれません。
また、もちろん申請時に押印をした発起人決定書を提出しても問題ありません。
なお、電磁的記録をもって作成される決定書(議事録)の場合は、署名または記名押印に代えて、電子署名を行います。
発起人決定書は発起人の意思表示の証明書
発起人決定書は、設立する会社に関する重要な基本事項のうち、定款に記載のない項目があれば必ず作成し、設立登記申請時に提出しなければならない書類です。発起人が複数の場合は、全員の同意により記載事項を決定したことを証明するため、「発起人会議事録」として作成します。
会社の設立に必要な手順における発起人決定書の役割をよく理解し、正しく作成するようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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