- 更新日 : 2026年3月11日
発行可能株式総数とは?発行済株式総数との違いや決め方(4倍ルール)について解説
株式会社が定款で定めた、将来発行できる株式の上限数(授権枠)のことです。
- 公開会社は発行済株式数の4倍までという制限がある
- 非公開会社は上限設定なし(10〜100倍の設定も可能)
- 枠を超える発行には、株主総会の特別決議と登記が必要
非公開会社(譲渡制限会社)であれば、将来の増資や手続きコスト削減を見越し、設立時の10倍〜100倍程度に設定するのが一般的です。
株式会社を設立する際や資金調達を行う際に、必ず理解しておかなければならないのが「発行可能株式総数(授権枠)」です。
本記事では、発行可能株式総数の基礎知識から、公開会社・非公開会社によるルールの違い(4倍ルール)、適切な設定数の目安、そして定款変更から登記手続きまでの流れをわかりやすく解説します。
目次
発行可能株式総数とは?
発行可能株式総数とは、会社が発行することを認められた株式の最大数のことであり、いわゆる「授権枠」を指します。会社法第37条により、すべての株式会社は定款にこの総数を記載しなければなりません。
発行可能株式総数は、取締役会などが株主の承認なしに無制限に新株を発行し、既存株主の持株比率や権利が希薄化することを防ぐための防衛ラインとして機能します。将来的に増資(資金調達)を行う際、この枠内に余裕がなければ新株を発行できないため、経営戦略上重要な数字です。
参考:会社法|e-Gov法令検索、会社設立の際の決定事項のうち発行可能株式総数について教えてください。|J-Net21(中小企業基盤整備機構)
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発行可能株式総数と発行済株式総数の違いは?
発行可能株式総数と発行済株式総数の最大の違いは、「将来の枠(可能性)」か「現在の実数(実績)」かという点です。
- 発行可能株式総数:その会社が将来的に発行できる株式の最大枠(上限)
- 発行済株式総数:すでに発行され、株主の手に渡っている株式の実数
会社は定款で定めた上限(枠)の範囲内であれば、株主総会の煩雑な手続きを経ずに、取締役会の決議だけで迅速に新株を発行し、資金調達を行うことが可能です。
| 項目 | 発行可能株式総数(授権枠) | 発行済株式総数 |
|---|---|---|
| 定義 | 定款で定めた、発行できる株式の上限数 | 実際に発行され、存在している株式の総数 |
| 役割 | 将来の増資や資金調達への備え | 現在の資本構成や議決権の基礎 |
| 変更方法 | 定款変更(株主総会の特別決議)が必要 | 増資(新株発行)や減資によって変動 |
| 確認方法 | 会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書) | 会社の登記簿謄本 |
【会社形態別】発行可能株式総数を決めるルールとは?
発行可能株式総数の設定ルールは、会社が「公開会社」か「非公開会社」かによって明確に異なります。特に将来IPO(株式公開)を目指す場合、フェーズによって適用されるルールが変わるため注意が必要です。
非公開会社(譲渡制限会社)の場合:上限なし
非公開会社では、発行可能株式総数の設定に上限の制限はなく、自由に数を決めることができます。
非公開会社とは、発行するすべての株式に譲渡制限が付いている会社を指します。株主の変動が少ないため、経営陣がコントロールしやすい環境にあります。そのため、将来の大規模な増資や株式分割に備えて、発行済株式総数の10倍、100倍といった大きな枠を設定しておくことも可能です。設立当初は、設立時発行株式数の4倍〜10倍程度に設定するのが一般的です。
公開会社の場合:発行済株式数の4倍まで(4倍ルール)
公開会社においては、発行可能株式総数は発行済株式総数の4倍を超えてはならないという法的制限があります(会社法第113条)。
公開会社(譲渡制限がない株式を一株でも発行している会社)の場合、取締役会の権限で新株発行が行われることが一般的です。もし無制限に発行枠を設けてしまうと、既存株主が予期せぬ持株比率の低下(希薄化)を被るリスクがあります。そのため、株主保護の観点から上限が設けられています。
非公開会社から公開会社へ移行(IPO準備など)する際は、この4倍ルールに適合するように定款を変更する必要があります。
失敗しない!発行可能株式総数の決め方は?
設定における最大のポイントは、将来の資金調達計画(ファイナンス)を見越して余裕を持たせることです。
非公開会社の設立時は10倍〜100倍の余裕を持つ
非公開会社であれば、設立当初は設立時発行株式数の10倍〜100倍程度に設定するのが一般的です。枠を大きく取っておくことで、以下のメリットがあります。
- 将来の第三者割当増資に迅速に対応できる
- 株式分割の手続きがスムーズになる
- 定款変更の回数(および登記費用)を削減できる
既存株主への希薄化リスクを考慮する
枠を広げることは、投資家や既存株主に対し「将来、株式の価値が薄まる(希薄化する)可能性がある」と示唆することと同義です。 特に外部投資家が入っている場合、説明がつかない巨大な枠を設定すると警戒感を招くことがあります。事業計画に基づいた根拠ある数字を設定しましょう。
発行可能株式総数の変更が必要なタイミングは?
「未発行の残数(枠の余り)」が少なくなった時が、変更手続きの合図です。
具体的には、以下のイベントが発生する直前に定款変更(枠の拡大)を行います。
- 第三者割当増資:ベンチャーキャピタル等から出資を受ける際、現行の枠では新株が発行しきれない場合。
- 株式分割:株価を下げる等の目的で1株を複数株に分割する場合(発行済株式数が倍増するため、枠も比例して広げる必要がある)。
- ストックオプションの発行:役員や従業員へのインセンティブとして新株予約権を付与する場合、その行使に備えた枠の確保が必要。
発行可能株式総数変更手続きは?
発行可能株式総数の変更は「定款変更」にあたるため、株主総会の特別決議と法務局への変更登記が必須です。
1. 株主総会の招集と決議(特別決議)
定款を変更するため、株主総会で「特別決議」を行います。 特別決議とは、「議決権の過半数を有する株主が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成」を必要とする、厳格な決議です。
2. 議事録の作成
決議が成立したら、その内容を証明する「株主総会議事録」を作成します。これは登記申請時の最重要添付書類となります。
3. 法務局への変更登記申請
決議日(効力発生日)から原則2週間以内に、管轄の法務局へ登記申請を行います。
- 登録免許税:30,000円(申請1件につき)
※同時に本店移転などの他登記を行う場合、区分が異なれば別途費用がかかります。
- 変更登記申請書
- 株主総会議事録(変更を決議したもの)
- 株主リスト(議決権数上位10名の情報)
- 委任状(司法書士に依頼する場合)
参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁、商業・法人登記の申請書様式|法務局
発行可能株式総数についてよくある質問(FAQ)
最後に、発行可能株式総数についてよくある質問とその回答をまとめました。
発行可能株式総数を減らすことはできますか?
はい、可能です。 ただし、現在発行している株式数(発行済株式総数)を下回る数に設定することはできません。通常は枠を広げるケースが大半ですが、買収防衛策の一環として、あえて枠を狭める戦略をとることもあります。
自分で登記申請できますか?
可能ですが、司法書士への依頼が確実です。 法務局のWebサイトにある様式を利用して自分で申請することも可能ですが、株主総会議事録や株主リストの記載に不備があると受理されません。特に資金調達が絡む重要な局面では、専門家である司法書士に依頼することを推奨します。
適切な発行可能株式総数の設定で柔軟な経営を
発行可能株式総数は、単なる形式的な数字ではなく、会社の「資金調達の自由度」を左右する重要な経営指標です。
- 非公開会社:将来を見越して大きめの枠(10倍〜)を設定する。
- 公開会社:4倍ルールを遵守しつつ、希薄化に配慮する。
経営者や担当者は、現在の発行済株式数と上限枠(未発行残高)を常に把握しておきましょう。特にスタートアップ企業やIPOを目指す企業は、資本政策表を用いて、どのタイミングで枠を広げるべきか、専門家を含めて計画的にシミュレーションを行うことが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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