- 更新日 : 2023年6月22日
どう決める? 発行可能株式総数・発行済株式総数
会社を設立するには、決めなければならないことがたくさんあります。中でも発行する株式数や発行可能株式総数、1株あたりの金額など、株式に関連する事項に頭を悩ませるかもしれません。そこで今回はこれらについて、わかりやすくご説明していきます。なお、ここでの記載は、株式に譲渡制限を設けている非公開会社が対象です。
目次
株式の意味
株式を所有している人のことを株主と言い、株主には一般に「株主権」と呼ばれる以下の2つの権利があります。
自益権
会社からの配当を受ける権利のことです。配当は1株に対してその金額が決められますので、所有株式数が多いほど配当金も多くなります。
共益権
株主が会社の運営に参加できる権利で、株主総会の議決権や取締役の違法行為の差止請求権などがあります。株主総会の議決権などは、所有株式数が多いほど株主総会で行使できる議決件数も多く、会社運営に大きな影響力を持ちます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
会社設立時に決めることチェックリスト
「会社設立時に決めることチェックリスト」では、会社設立の基本事項や、株式会社・合同会社別の決めることチェックリストなどを、1冊にまとめています。
図解でカンタンにまとめており、完全無料でダウンロードいただけます。
補助金をまるっと理解!会社設立時の補助金ガイド
補助金の概要や各制度の内容に加え、会社設立直後の企業でも使いやすい補助金や実際の活用事例などについてまとめました。
「使えたのに知らなかった!申請が漏れてた!」といったことを防ぐためにも、会社設立時の資金調達方法の一つとしてお役立てください。
法人成り手続きまるわかりガイド
初めて法人成りを考える方に向けて、法人成りの手続きや全体の流れ、個人事業の整理方法など、必要な情報をわかりやすくご紹介したガイドです。
多くの個人事業主の方にダウンロードいただいておりますので、ぜひお気軽にご利用ください。
起業家1,040人への調査でひも解く!先輩起業家が一番困ったことガイド
マネーフォワード クラウド会社設立では、会社設立の経験がある方1,040名に対して、会社設立に関する調査を実施しました。
先輩起業家が悩んだ部分や、どのように会社設立を行ったかを、定量的に分析していますので、ぜひご活用ください。
1株あたりの金額の決め方
1株あたりの金額をいくらにすべきか、という点について法律には規定がありません。額面株式1株の金額が5万円と決まっていた旧商法の影響で、いまでも1株5万円としている会社が多くありますが、基本的には発起人が自由に決めることができます。ただし、1株あたりの金額を決める際には、以下の点について注意が必要です。
既存株主が不利益をかぶらないようにする
例えば発起人Aが、1株あたり10万円で200万円を出資して会社を設立した場合、Aは20株を所有することになります。
その後、増資のため株式を発行する際、1株10万円では高すぎるため、1株1万円で募集をし、Bが100万円で100株を取得した場合には、BはAの半額の出資で、5倍の株式を所有してしまいます。
これではAが不利益をかぶることになりますので、1株あたりの金額を決める際には、設立後の株式の発行も念頭に置きましょう。
発行可能株式総数とは?
発行可能株式総数は、会社が発行できる株式数の上限という意味ではなく、株主総会の決議なしで発行できる株式の数のことです。発行可能株式総数に上限は決められていません。
会社設立時に定款で発行可能株式総数を決めておく理由
ただし、発行可能株式総数をあらかじめ決めておかなければならない理由が以下のように2つあります。
1.速やかな資金調達
資金調達の方法として株式の発行がありますが、株式を発行すると各株主の持株比率に変化が生じる可能性があり、これは会社にとって非常に重要な問題です。
そのため本来であれば、会社の最高意思決定機関である株主総会の決議によるべきですが、株主総会の開催には時間がかかり、急を要する資金調達の場合は間に合いません。そこで、発行可能株式総数をあらかじめ決めておくことによって、株式発行の権限を取締役会に与え、速やかな資金調達を可能にしているのです。
2.取締役の権利乱用防止
資金調達を素早く行いたいのであれば、上限など決めずに取締役会に株式発行の権限を与えれば良いということになりますが、その場合には別の問題が出てきます。
もし、取締役が際限なく株式を発行してしまうと、既存の株主の持株比率が大きく低下し、既存株主が大きな不利益をかぶることになります。そのため、発行可能株式総数を設定し、取締役の株式発行の権限を制限する必要があるのです。
発行可能株式総数の決め方
では、どのように発行可能株式総数を決めたら良いかを考えていきます。もし設立後に、どんどん株式を発行するというのであれば発行済株式総数の100倍や1000倍にすることも可能です。逆に一切株式を発行しないというのであれば、発行済株式総数と同じ数にすることもできます。
ただし通常は、将来予定している増資の金額が明確にあるなら、それにあわせて決めるようにします。明確でないなら、発行済み株式総数の10倍程度にするのが一般的でしょう。
変更が大変なため発行可能株式総数は多い方が良い
発行可能株式総数に余裕がないと、新たに発行できる株式数が少なくなり、それ以上に株式を発行したい場合には、発行可能株式総数を変更しなければならなくなります。
発行可能株式総数は定款記載事項であり、登記事項でもあるため、変更するには株主総会の決議と登記手続・費用が必要になります。したがって発行可能株式総数は少なくせずに、できるだけ余裕を持たせるようにした方が良いでしょう。
おわりに
1株あたりの金額は旧商法の影響で、今も5万円にしている会社がたくさんあるとお話ししましたが、持株数をわかりやすくするため、1万円に設定するのもおすすめです。
また今後、事業の拡大を視野に株式を発行する予定があるのでしたら、発行可能株式総数は、多めに設定しておいた方が良いでしょう。
設立しようとしている会社や行う事業について、将来的にどの程度の株式発行が想定されるのか、判断が難しい場合には専門家に相談することをおすすめします。
よくある質問
発行可能株式総数の決め方は?
将来予定している増資の金額が明確にあるなら、それにあわせて決めるようにします。明確でないなら、発行済み株式総数の10倍程度にするのが一般的でしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
1株あたりの金額の決め方は?
1株あたりの金額をいくらにすべきか、という点について法律には規定がありませんが、既存株主が不利益をかぶらないようにすることが重要です詳しくはこちらをご覧ください。
発行可能株式総数の決める上でのポイントは?
変更が大変なため発行可能株式総数にはできるだけ余裕をもたせておくと良いでしょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会社設立の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
株式会社の関連記事
新着記事
弁護士は儲からない・稼げない・食えないは嘘?年収の実態や業界の将来性も解説
「弁護士は儲からない」「稼げない」「食えない」——。かつて高収入の代名詞であった弁護士について、このような言葉を耳にする機会が増えました。司法制度改革による弁護士人口の急増や競争激化を背景に、「弁護士になって後悔した」という声すら聞かれるの…
詳しくみる不用品回収は儲かる?ビジネスモデルや儲からない理由、開業方法、年収・月収まで解説
不用品回収ビジネスが儲かると注目されています。しかし、その具体的なビジネスモデルや、開業後のリアルな収益について疑問を持つ方も多いでしょう。 この記事では、いわゆる廃品回収業で利益を生む儲かる仕組みから、必要な許可、フランチャイズの活用法、…
詳しくみる派遣会社設立は儲かる?経営者の年収や利益率、マージン率、儲かる仕組みまで解説
派遣会社設立は儲かるビジネスとして注目されることがありますが、その経営は容易ではありません。実際の平均営業利益率は約1.2%と低く、薄利多売になりがちです。加えて資金繰りリスク等もあり、高い収益を上げ、経営者として高い年収を得るには、緻密な…
詳しくみる珍しい野菜で儲かる仕組みを作る!品種選びや栽培方法、高付加価値な販売戦略まで解説
農業経営において高い収益を目指す際、珍しい野菜の栽培は競合農家との差別化を図る有効な手段です。しかし、ただ珍しいだけでは儲かるとは限りません。 この記事では、珍しい野菜で儲かる仕組みを作るために、その希少価値を付加価値に変え、ブランド化して…
詳しくみる竹パウダーは本当に儲かる?ビジネスモデルや作り方、粉砕機の価格なども解説
放置竹林の問題解決と新たな収益源を両立させる可能性を秘めた「竹パウダー」。しかし、「竹パウダービジネスは本当に儲かるのか?」「どうやって作るのか?」「デメリットはないのか?」といった疑問が、成功への第一歩を阻んでいるかもしれません。 この記…
詳しくみる太陽光発電は儲かる?実際の収支や利回り、やめたほうがいい理由まで解説
太陽光発電は本当に儲かるのでしょうか。実際、儲かったという声もあれば、やめたほうがいいという意見も存在します。 この記事は、太陽光発電投資を検討する方に向けて、収益性の実態、利益を生み出す仕組み、実際の収支シミュレーション(実質利回り)、そ…
詳しくみる


