• 更新日 : 2025年10月30日

経営計画書とは?作り方・記入例を解説!無料テンプレート・フォーマットつき

経営計画書は、ステークホルダーに会社の経営理念やビジョンを示し、全社員が何をすべきかを具体的かつ包括的にまとめた文書です。金融機関からの借入れや株主への説明、社員・取引先への情報開示など、様々な場面で活用されます。また、自社の現状と未来を客観的に描き、実際の経営に活かすためにも有効です。

この記事では、経営計画書の基本的な作成方法から、すぐに使える無料テンプレート、具体的な記入例までわかりやすく解説します。

経営計画書とは?

経営計画書とは、会社の進むべきビジョンとゴールを示し、そのゴールに到達するための具体的な方法を記した計画書です。これは、パイロットが使う飛行計画書(フライトプラン)や、登山家が用いる登山計画書に例えられます。どちらも最終目的地とそこへ至るルート、速度などの詳細情報が記載されており、不測の事態がありつつも基本的には計画通りに進みます。経営計画書も同様に、環境の変化に対応しつつ、企業の行動指針となります。

経営計画書と事業計画書の違い

経営計画書と事業計画書の違いは、経営計画書が会社全体を対象とした長期的・俯瞰的な計画であるのに対し、事業計画書は個別の事業に関する具体的な計画である点です。

  • 経営計画書
    会社全体の方向性を示す計画書で、経営理念や長期的な目標設定を含むため、事業計画書よりも俯瞰的・包括的な内容になります。
  • 事業計画書
    既存事業や新規事業の内容を文書や数値で整理した計画書で、主に社内管理や金融機関からの融資を受ける目的で作成されます。

経営計画書が重要な理由

経営計画書が重要な理由は、全社員を含むステークホルダーと共有することで、企業活動の効率が高まり、結果的に経営計画の実現可能性が向上するからです。

登山家が登山計画書をメンバー全員で共有し、ゴールとルートを周知することで登頂成功の確率を高めるように、経営計画書も企業という組織全体の成功確率を高める機能を持っています。また、進捗を確認し、必要に応じて軌道修正する基準としても活用できます。

経営計画書に必要な項目

経営計画書のフォーマットは様々ですが、経営理念から具体的な数値目標まで、体系的にまとめられているのが一般的です。

  • 経営理念
  • ミッション
  • ビジョン
  • 行動指針
  • 経営戦略
  • 売上計画(マーケティング計画を含む)
  • 投資計画
  • 経営数値目標(業績等収支計画)
  • 方針・施策詳細
  • 実施スケジュール

さらに、企業の状況に応じて、市場分析、競合状況、SWOT分析、資本計画、予測損益計算書(P/L)、予測貸借対照表(B/S)、予測キャッシュフロー計算書(C/F)といった、より詳細な分析や財務諸表を盛り込むことで、経営計画の説得力を高めることができます。

経営計画書のテンプレート【無料ダウンロード可能】

すぐに経営計画書の作成を始められるよう、マネーフォワード クラウドでは、無料でダウンロードできる経営計画書のテンプレートをご用意しました。Excel版とPowerPoint版があり、目的に応じて使い分けが可能です。

まずはExcelに経営計画の骨子となる情報を入力し、それをもとにPowerPointで詳細な説明やグラフを加えていくと、効率的に資料を作成できます。

経営計画書の書き方・記入例

経営計画書のテンプレートをダウンロードしたら、早速情報を入力しましょう。Excelのテンプレートは「会社概要書」「計画概要書」「計画方針書」「実施スケジュール」の4つのシートで構成されています。

会社概要書

会社概要書

会社概要書は、会社の基本的な情報と、経営の根幹となる理念やビジョンをまとめたものです。会社の土台となる部分なので、時間をかけて慎重に言語化しましょう。

会社情報
  1. 会社名:会社の正式名称を記載します。
  2. 代表者氏名:代表取締役の氏名を記載します。
会社概要
  1. 経営理念
    会社が最も大切にする価値観や存在意義です。「何のためにこの会社は存在するのか」という問いへの答えを簡潔に表現します。
    記入例:「革新的なテクノロジーを通じて、人々の生活を豊かにする」
  2. ミッション
    経営理念を実現するために、会社が果たすべき具体的な使命です。誰に、何を、どのように提供するのかを明確にします。
    記入例:「最高品質のプロダクトとサービスを、適正な価格で世界中のお客様に提供し続ける」
  3. ビジョン
    ミッションを果たした結果、将来的に実現したい会社の姿です。社員のモチベーションを高める中長期的な目標を示します。
    記入例:「5年以内に、業界のリーディングカンパニーとなり、市場シェア30%を獲得する」
  4. 行動指針
    経営理念やビジョンを実現するために、社員一人ひとりが日常業務で意識すべき具体的な行動や価値観です。
    記入例:「常にお客様の期待を超えることを目指す」「失敗を恐れず、新しい挑戦を続ける」など
  5. 経営戦略
    ビジョンを達成するための、会社全体としての具体的な方針や道筋です。どの市場で、どのような強み(独自性)を活かして戦うのかを明確にします。記入例:「国内市場でのブランド力を強化しつつ、アジア市場への進出を加速させる。そのために、既存事業の収益性を改善し、新規事業へ積極的に投資する。」

計画概要書

計画概要書

計画概要書は、当該事業年度の経営計画の全体像を要約したものです。具体的な数値目標に焦点を当て、計画の骨子を明確にします。

  1. 今期経営戦略の概要
    経営戦略に基づき、今期特に注力する戦略を簡潔にまとめます。
    記入例:「主力製品Aの販売強化と、新規顧客獲得のためのWebマーケティング施策に経営資源を集中投下する」
  2. 売上計画の概要
    具体的な数値目標を設定します。製品・サービス別、事業部別など、管理しやすい単位で目標を設定すると良いでしょう。
    記入例:「年間売上高10億円(前年比120%)を目指す。内訳は、製品A:7億円、製品B:3億円とする。」
  3. 経費計画の概要
    売上計画を達成するために必要な経費(人件費、広告宣伝費、研究開発費など)の見通しを立てます。
    記入例:「広告宣伝費として5,000万円、新規採用のための人件費として3,000万円を計上する。」
  4. 投資計画の概要
    設備投資やシステム導入など、将来の成長に向けた投資計画を記載します。
    記入例:「生産効率向上のため、最新の製造設備を1億円で導入する。」
  5. その他
    利益計画や資金繰り計画など、上記以外で重要な項目があれば追記します。
  6. 経営数値目標
    過去の実績(前々期・前期)を踏まえ、今期の計画数値を設定します。各項目について、なぜその数値目標になるのか「根拠・補足」欄に具体的に記載することが重要です。

この段階では、計画の骨子が記載されていれば十分です。後にパワーポイントのテンプレートに記載する際に肉付けして文章をまとめます。

計画方針書

計画方針書

計画方針書は、計画概要書で示した目標を達成するための、より具体的な方針と施策を定義するものです。各部門や担当者が何をすべきかを明確にします。

  1. 全社方針
    会社全体として今期取り組むべき大きな方向性を示します。
    記入例:「顧客基盤の拡大と収益構造の強化」
  2. 部門方針
    全社方針を受け、各部門が担うべき役割と方針を記載します。
    記入例:(営業部門)「新規顧客の開拓と既存顧客の満足度向上を両立させる」
  3. 方針・施策詳細
    「財務・収益性」「顧客満足」「業務改善」「組織強化」の項目に沿って、具体的な計画を立てます。

    • 財務・収益性の記入例
      • 重点方針:主力製品Aの利益率改善
      • 成果指標:製品Aの粗利益率
      • 前期実績:35%
      • 今期計画:40%
      • 具体的施策:①仕入先の見直しによる原価低減 ②生産プロセスの改善によるロス率削減
    • 顧客満足の記入例
      • 重点方針:顧客満足度の向上とリピート率の改善
      • 成果指標:顧客満足度アンケートの平均点、リピート率
      • 前期実績:3.8点、50%
      • 今期計画:4.2点、60%
      • 具体的施策:①四半期ごとの顧客満足度アンケート実施 ②購入者へのアフターフォロー体制の強化
    • 業務改善の記入例
      • 重点方針:業務プロセスの効率化による生産性向上
      • 成果指標:従業員一人当たりの売上高、残業時間
      • 前期実績:1,200万円/人、25時間/月
      • 今期計画:1,500万円/人、15時間/月
      • 具体的施策:①情報共有ツールの導入と定着化 ②定型業務を自動化するRPAの導入検討
    • 組織強化の記入例
      • 重点方針:次世代リーダーの育成と専門人材の確保
      • 成果指標:管理職研修の修了者数、中途採用における専門職の採用人数
      • 前期実績:0人、1人
      • 今期計画:5人、3人
      • 具体的施策:①階層別研修プログラムの策定と実施 ②リファラル採用制度の導入

それぞれの項目については、会社の業種や業態に合わせて変更しても問題ありません。例えばメーカーなどの場合、「製品開発」「調達購買」「サプライチェーン管理」など、アクションを起こすべき優先順位の高い項目に変更してもよいでしょう。

実施スケジュール

実施スケジュール

実施スケジュールは、計画方針書で定めた施策を、いつ、どの部門が実行するのかを時系列で具体的に示したものです。記入例は、以下の通りです。

  1. 財務・収益性
    • 実施目標:主力製品Aの利益率改善
    • 施策内容:仕入先の見直しによる原価低減
    • スケジュール:4月〜5月に相見積もりと交渉を行い、6月から新価格での仕入れを開始する計画
  2. 顧客満足
    • 実施目標:顧客満足度の向上
    • 施策内容:四半期ごとの顧客満足度アンケート実施
    • スケジュール:各四半期の最終月にアンケートを実施し、翌月の初めに結果を分析・共有する。
  3. 業務改善
    • 実施目標:業務プロセスの効率化
    • 施策内容:情報共有ツールの導入と定着化
    • スケジュール:上期にツールを導入し、下期で定着化を図る
  4. 組織強化
    • 実施目標:次世代リーダーの育成
    • 施策内容:階層別研修プログラムの策定と実施
    • スケジュール:上期でプログラムを策定し、下期から研修を開始する

このスケジュール表を定期的に更新・共有することで、計画の進捗管理が容易になり、目標達成の確度が高まります。

経営計画書は誰が作る?

経営計画書は、基本的には経営のトップである社長が主導で作るべきです。なぜなら、経営は社長の仕事であり、そのロードマップを作るのは社長自身であるべきだからです。

もちろん、社長自らが全ての資料を作成する必要はありません。しかし、計画の根幹となる会社のビジョンやミッション、経営戦略は、社長自身の言葉で語られなければなりません。

  • 小規模な企業の場合
    社長自らが作成する方がスピーディーに進むことがあります。
  • ある程度の規模の企業の場合
    管理部門などがチームを組んで作成する方が効率的な場合があります。その際も、社長をはじめとする経営陣への丁寧なヒアリングを行い、経営陣の意図を正しく計画書に反映させることが極めて重要です。

経営計画書を活用するメリットは?

経営計画書を作成・活用することには、企業の成長に必要な3つの大きなメリットがあります。長年下請けの仕事をしている中小企業や、系列企業からの仕事をメインにしているグループ企業にとっても、そのメリットは大きいものです。

メリット1. 経営計画の実現可能性が高まる

企業が経営計画書を活用する1つ目のメリットは、経営計画の実現可能性が高まることです。経営計画書は、登山家が用いる登山計画書と同様の効果をもたらすと上述しましたが、実際、適切に策定された経営計画書は、社員をはじめとするあらゆるステークホルダーの足並みをそろえ、想定したルートからの逸脱を防ぎ、正しく安全にゴールへ到達させる可能性を高めます。また、共通のゴールへ向かっていることを周知させ、モチベーションとモラルを向上させます。

メリット2. 金融機関から借入れがしやすくなる

企業が経営計画書を活用する2つ目のメリットは、金融機関から借入れがしやすくなることです。企業が融資を申し込む際、金融機関からチェックされるのが資金使途と返済能力です。特に返済能力については、担保や保証の有無に加えて、毎月の返済を可能にする十分な収益が見込めるかどうか厳しくチェックされます。経営計画書を適切に作成し、収益目標とそのためのアクションプランを明確に示すことで、金融機関に実現性のある事業としてプラスの心証を与えることが可能になります。

参考:融資制度を探す|日本政策金融公庫

メリット3. 投資家からの増資がしやすくなる

企業が経営計画書を活用する3つ目のメリットは、投資家からの増資がしやすくなることです。一般的にベンチャーキャピタルなどの投資家は、投資を検討する際、収支計画を含めた企業の経営計画書をベースに評価します。特に、将来の売上やキャッシュフローなどの実現可能性を厳しくチェックします。スタートアップ企業など、長期的なスパンで資金調達を計画している企業の場合は、経営計画書の作成が絶対条件になります。

無料テンプレートを活用して経営計画書を作成しよう

経営計画書は、企業の進むべき道を示し、目標達成の可能性を飛躍的に高めるための重要な書類です。

経営計画書がないまま経営することは、飛行計画書なしに飛行したり、登山計画書なしに山頂を目指したりするようなもので、リスクが高い行為と言えます。

経営上の様々なリスクを避け、企業の成長を確実なものにするため、ぜひこの記事で紹介した無料テンプレートを活用し、自社の未来を描く経営計画書を作成してみてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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