- 更新日 : 2022年1月13日
中小企業数の推移から見える課題
この記事では、政府統計から中小企業の数の推移をご紹介します。中小企業の数の推移を見ると、中小企業が直面している課題も見えてきます。
中小企業の数の推移を見る
中小企業の数は長期的に減少傾向にありますが、業種別にみると、近年は医療・福祉の企業数が増加しています。
中小企業数は長期減少傾向で推移
グラフは、1999年以降の中小企業数の推移を示しています。2006年以前と2009年以降では調査方法が異なるため単純比較はできませんが、中小企業の数は長期にわたって減少する傾向が続いています。

(出典:平成27年度(2015年度)の中小企業の動向|2016年版中小企業白書)
しかし、2012年から2014年の推移を見ると、2009年から2012年の推移に比べて、減少のペースは緩やかになっています。また、小規模事業者が9.1万者減少した一方で、中規模企業の数は4.7万者増えています。
なお、この記事での「中小企業(中小企業者)」と「小規模事業者」の定義は下の表のとおりです。「中規模企業」とは、「中小企業(中小企業者)」のうち「小規模事業者」以外の企業をさします。
| 業種 | 中小企業者 (下記のいずれかを満たすこと) | 小規模事業者 | |
|---|---|---|---|
| 資本金の額又 は出資の総額 | 常時使用する 従業員の数 | 常時使用する 従業員の数 | |
| ①製造業、建設業、運輸業 その他の業種(②~④を除く) | 3億円以下 | 300人以下 | 20人以下 |
| ②卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
| ③サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 | 5人以下 |
| ④小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 | 5人以下 |
商業では減少、医療・福祉では増加
2012年から2014年の中規模企業数の推移を原因ごとにみると、開業が廃業を2.4万者上回っています。この期間の中規模企業数の増加(4.7万者)に、開業が大きく寄与していることがわかります。(残り2.3万者は小規模事業者との区分変更または産業分類の変更などによるものです。)
開業と廃業の差による企業数の増減を業種別にみると、サービス業で約2万者増加しています。サービス業のなかでも、宿泊業・飲食サービス業と医療・福祉の増加が目立っています。医療・福祉の増加は、高齢化による介護サービスの需要の高まりに応えたものと推測されます。
一方、同じ期間の小規模事業者数の推移をみると、廃業が開業を17.1万者上回っています。この期間に小規模事業者は9.1万者減少しており、廃業が大きく影響していることがわかります。(約8万者の差は中規模企業との区分変更または産業分類の変更などによるものです。)
ほぼすべての業種で廃業が開業を上回り、小規模事業者の数は減少しています。特に、商業(小売業・卸売業)の企業者数は6.2万者減少するなど顕著な傾向がみられます。唯一企業数が増加した業種は医療・福祉(0.5万者)で、中規模企業の場合と同じく、介護サービスの需要が影響していると推測されます。
(出典:平成27年度(2015年度)の中小企業の動向|2016年版中小企業白書)
中小企業数の減少の背景
前の章では、中小企業の数は長期的に減少傾向で推移していることをお伝えしました。この章では、中小企業の数が減少している背景を分析します。
需要不足と競争の激化
まず、中小企業の数が減少している背景を、中小企業が直面している問題点から考えます。
グラフは、中小企業の減少が著しい商業(卸売業・小売業)とサービス業について、企業が直面している経営上の問題点を聞き取った結果を示しています。
全般的に需要の停滞を問題点としてあげた企業が多く、売上高の伸び悩みで事業環境が厳しくなっている様子がうかがえます。
小売業では、大型店・中型店の進出による競争の激化や、購買力の他地域への流出をあげた企業も目立ちます。大型ショッピングセンターやコンビニエンスストアの出店が、既存の商店の存続を危うくしていることからも裏付けられます。
中小企業数の減少は、これらの課題に有効に対応できていない企業が多いことを反映していると考えられます。

(出典:平成27年度(2015年度)の中小企業の動向|2016年版中小企業白書)
経営者の高齢化
中小企業の数が減少している背景としてもう一つ考えられるのは、経営者の高齢化です。
グラフは中小企業経営者の年齢分布を5年ごとに示したものです。
中小企業経営者の年齢で最も多い層は、1995年では50~54歳でしたが、2015年では65~69歳となっています。20年の間で中小企業経営者の年齢層もほぼ同じ年数だけ高齢化していることがわかります。
中小企業、とりわけ小規模事業者の場合は、経営者個人の能力や経験に経営が左右されます。経営者が高齢になって引退を考えるとき、有力な後継者がいなかったり、事業に将来性がなかったりすれば、事業の存続を断念することも多いと考えられます。

(出典:経営者年齢と稼ぐ力|2016年版中小企業白書)
まとめ
中小企業の数は、業種ごとに違いがみられるものの、長期的に減少傾向で推移していることがわかりました。
要因としては、日本経済の構造の変化がもたらす経営上の問題点に有効に対応できていない企業が多いことや、経営者の高齢化が考えられます。
以上のことから、企業の存続のためには、外部環境の変化に対応する経営力と、適切なタイミングで後継者に事業をバトンタッチすることが重要であることがわかります。
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