- 作成日 : 2016年11月28日
中小企業の新たな攻めの一手! 海外進出のメリットや課題とは?
グローバル化の波が押し寄せる中で、日本の市場にも多くの海外企業が進出してきました。その一方で、逆に海外へ進出していく中小企業の数も増えてきています。
そこで今回は中小企業が海外進出する上でのメリット・デメリット、さらに海外進出するタイミングやそれまでに準備しておくべきことなどについてご紹介していきます。
目次
中小企業の海外進出のメリット・デメリットとは?
グローバル化や交通輸送技術の進歩によって、企業の海外進出は、もはや当たり前の選択肢になってきました。それは、大企業に限らず、独自の強みを持った中小企業も同じことが言えます。
人口減少に伴い、日本国内のマーケットが減少し、さらに外資系企業が参入してくる中で、攻めの一手として海外進出というのは現実的にも考えてみましょう。
その海外進出という選択肢を取るか否かという意思決定にあたって、まずは海外進出することのメリットとデメリットを押さえておきましょう。
メリット1:人件費や原材料費が抑えられる
まず、海外進出の大きなメリットとしては、人件費や原材料費などの生産コストを削減することができるという点が挙げられます。
かつて、中国を中心にして発展途上国に多くの企業が海外に進出した理由としては、この人件費が押さえられるという点がほとんどでした。しかし、途上国の経済的な発展により賃金は上昇し、人件費を抑えられるというメリットは薄れてきています。
メリット2: マーケットが拡大する
これまでマーケットを国内に絞っていた中小企業の場合は、海外進出により世界中を対象として、マーケットが広がります。たとえ生産拠点を海外へ移すだけであっても、その現地での認知度も上がり販路拡大につながります。
メリット3: 税率が低い(外資優遇制度)
最近では、日本に比べて税率が低く、外資企業向けの優遇制度などが充実している国に進出する企業が増えてきました。
デメリット1: 海外進出コスト
海外進出にあたって、設備・人材などの莫大なコストが発生します。また、事前の調査費用などの海外進出の意思決定に関するコストも必要になります。中小企業にとって、この進出コストが大きな壁になることが多いです。
デメリット2: 政治的なリスク
発展途上国などについては、政治的には安定していると言えない国や地域も多いです。現地政府による立ち退きの強要が行われるといったケースもあり、政策等の変更が事業へ影響するリスクがあります。
デメリット3: 税務・法務の複雑さ
税務や法務については、国や地域によって大きく異なります。特に税務に関しては、認識不足により、多大な追徴課税が発生することもあります。
デメリット4: マネジメントの負担増
国内事業に加えて、海外事業に関しても管理が必要になりますので、マネジメントの負担がかなり増加します。
中小企業の海外展開のタイミングとは
企業の海外進出には、多くのメリットがある反面、その企業の存続が危うくなるほどのリスクも存在するため、海外進出にあたっては事前の調査と多くの準備が必要になります。
まずは、海外進出の目的を明確化する必要があります。「どうして海外進出を行うのか」という事がはっきりしていない場合は、これから起こる様々な事象に対しての対応が曖昧になり、海外事業のスピード感が損なわれます。
海外事業の目的がはっきりしたら、海外事業の詳細な計画の立案を行います。この計画には、海外事業の各フェーズにおける動きを確認するという事も大切ですが、特に収支の面でしっかりと採算が合うのかについてしっかりと見通しを立てて下さい。
図1:中小企業の海外拠点の撤退・移転の理由(「海外展開成功のためのリスク事例集」中小企業海外展開支援関係機関連絡会議より抜粋)
(出典:海外展開成功のためのリスク事例集|中小企業海外展開支援関係機関連絡会議)
上図は、中小企業の海外拠点の撤退の理由を示しています。この図から分かるように、受注先、販売先の確保に苦戦している企業が圧倒的に多かったです。
このことから、過去に撤退した企業の海外進出の意思決定を行う際、売上の見通しの甘さも否定できません。
現状で商品が売れていたり受注があったとしても、数年~数十年にわたって需要があるのかについて、しっかりとした見通しを立てておく必要があります。(もちろん、長期的な人件費などのコストの上昇についても精査する必要があります。)
そして、「海外展開のタイミングをいつにするのか」ということが大きな問題になります。
資金・人材がしっかり用意できていることはもちろんのこと、国内事業が安定していること、(海外事業に注力できる状態である)、法務や税務が任せられるビジネスパートナーがいること、さらに知的財産の登録などを行っているなどの準備がしっかりと整うまでは、まだその時ではありません。
これらの”目的・計画・企業体制”がすべて揃った時が海外進出のタイミングということになります。
まとめ
最後に、今回のポイントについてまとめておきましょう。
・海外進出のデメリットとして、海外進出に係るコスト(資金と人材)・政治的リスク・管理マネジメントの負担増などが挙げられる。
・海外進出にあたっては、目的と計画をしっかりと立てて、あらゆる準備を整える必要がある。
中小企業の海外進出という大胆な一手には、今回確認したメリット・デメリットを踏まえた綿密な計画と準備が成功の鍵と言えそうです。
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