- 作成日 : 2025年8月29日
常務取締役とは?役割や立ち位置、専務・取締役との違い、役員ではないのかなどを解説
会社の役職で「常務取締役」という言葉を耳にしても、具体的な役割や立ち位置、他の取締役との違いを正確に説明できる方は少ないのではないでしょうか。常務取締役は、会社の経営方針を日々の業務に落とし込み、事業を円滑に進めるために不可欠な存在です。
この記事では、常務取締役の基本的な定義から、専務取締役や他の取締役との違い、社内での序列、具体的な仕事内容、そして常務取締役になるためのキャリアパスまでわかりやすく解説します。
目次
常務取締役とは
常務取締役は、取締役会に参加しながら、日常業務の統率・実行管理を担う役職です。経営陣の一員として会社の意思決定に関与しつつ、現場の従業員が行う日々の業務がスムーズに進むように指揮を執り、経営陣と現場の橋渡し役を担います。
常務取締役の業務範囲は広く、企業によっては特定の事業部門(営業、開発、管理など)の担当として、複数の常務取締役が置かれることも珍しくありません。
会社法における位置づけ
常務取締役という役職は、会社法で定められたものではありません。会社法で定められているのは「取締役」という役職のみです。「常務」や「専務」といった名称は、各企業が内部的に定めた序列や役割分担を示すための職制上の肩書きです。
したがって、法的な権利や義務(取締役会での議決権など)においては、他の取締役と違いはありません。
常務取締役の主な役割
常務取締役の主な役割は、大きく分けて二つあります。
- 経営陣として社長を補佐する役割
社長や代表取締役を補佐し、経営会議や取締役会において経営戦略の策定や重要事項の決定に参画します。 - 日常業務を統括する役割
取締役会で決定した経営方針に基づき、自身が担当する事業部門の日常業務を管理・監督します。いわば、担当部門における業務執行のトップです。
この二つの役割を両立させることで、会社全体の目標達成に貢献します。
また、一部の企業では、常務取締役以上の役員が参加する「常務会」を設けています。常務会は、取締役会に議案を提出する前に、重要事項を審議・調整するための会議体であり、迅速な意思決定を支える重要な役割を担っています。
常務取締役と混同されやすい役職
常務取締役の他にも、似たような名称の役職が存在します。ここでは、それらの役職との違いを明確にしておきましょう。
専務取締役との違い
専務取締役との最も大きな違いは、その担当領域にあります。
常務取締役が日常業務の執行に重点を置くのに対し、専務取締役は「専ら(もっぱら)任務にあたる」という意味合いから、より経営全体に関わる業務や社長の補佐役としての役割が強くなります。
一般的には、社長の補佐役として全社的な経営判断に関わるのが専務取締役、各事業部門の業務執行を統括するのが常務取締役と整理できます。
取締役との違い
取締役は会社法で定められた役員であり、株式会社に必ず置かなければならない機関です。一方で常務取締役は、その取締役の中で、会社が独自に定めた職位です。
つまり、すべての常務取締役は取締役ですが、すべての取締役が常務取締役というわけではありません。取締役という大きな枠組みの中で、平取締役の上に常務取締役というポジションが存在しています。
執行役との違い
執行役とは、指名委員会等設置会社において、取締役会から委任された業務を執行する役職です。常務取締役が取締役会の構成員であるのに対し、執行役はそうではありません。執行役が複数いればその中から代表執行役が選ばれ、会社の業務執行のトップとなります。常務執行役という役職が置かれることもありますが、会社法上の役員とは異なります。
常務執行役員は役員ではない
常務執行役員という役職もよく見られますが、役員という文字が入っているものの、常務執行役員は会社法上の役員(取締役・監査役・会計参与)ではありません。法律上の身分は、会社と雇用契約を結ぶ従業員です。
取締役会で決定された業務執行を担う重要なポジションですが、経営の意思決定を行う取締役会への出席義務や議決権はありません。
常務取締役の立ち位置・序列
会社組織における常務取締役の立ち位置や、他の役職との力関係はどのようになっているのでしょうか。
一般的な役員序列における偉さは?
多くの日本企業では、以下のような役職の序列が一般的です。
- 代表取締役(社長)
- 副社長
- 専務取締役
- 常務取締役
- 取締役
この序列に従えば、常務取締役は専務取締役の下、平取締役の上に位置づけられます。ただし、これはあくまで一般的な慣行であり、企業文化や組織体制によって序列が異なる場合があります。
常務取締役と取締役はどちらが上?
社内の役職序列では、一般的に常務取締役は平取締役より上位とされます。常務という肩書きは、取締役の中でも特に重要な日常業務を担っていることを示すためです。
ただし、会社法上はどちらも取締役であり、取締役会における一人一票の議決権の重さに法的な違いはありません。
常務取締役に関する実務知識
最後に、常務取締役と関わる上で知っておきたい実務的な知識をご紹介します。
常務取締役になるには?
取締役から常務取締役への昇格は、企業の成長や事業拡大への貢献、そして経営能力やリーダーシップが高く評価された結果です。一般的には、部長や事業部長などの管理職として顕著な実績を上げ、まず取締役に選任されることが第一歩です。
その上で、担当部門での実績はもちろん、全社的な視点を持ち、経営課題に対して的確な提案ができる能力、そして他の役員や従業員からの厚い信頼を得ることが、常務取締役への昇格の重要な要素となります。
常務取締役の年収はどれくらい?
常務取締役の年収は、企業の規模や業績、個人の経歴によって大きく異なります。従業員のような給与体系ではなく、役員報酬として株主総会で決定されるのが一般的です。企業の規模にもよりますが、数千万円から、大企業では1億円を超えるケースも存在します。
常務取締役の適切な呼び方は?
- 社内:「〇〇常務」や単に「常務」と呼ぶのが一般的です。
- 社外(自社):社外の相手に対しては、「常務取締役の〇〇」または「常務の〇〇」と呼びます。
- 社外(他社):相手方の常務取締役を呼ぶ際は、「〇〇株式会社 常務取締役 〇〇様」のように、会社名、役職、氏名を正確に記載・呼称するのがビジネスマナーです。
常務取締役の英語表記は?
常務取締役の英語表記として最も一般的に使われるのは「Managing Director」です。その他「Executive Director」と表記されることもあります。
日本の役職は海外の職位と完全に一致するわけではありませんが、名刺などに記載する場合はこれらの表現が広く用いられています。ちなみに、専務取締役は「Senior Managing Director」もしくは「Executive Managing Director」、代表取締役は「CEO」「Chief Executive Officer」と表記されるのが一般的です。
常務取締役は経営と現場の橋渡し役
本記事では、常務取締役の役割や立ち位置、他の役職との違いについて詳しく解説しました。常務取締役は、会社法で定められた役職ではないものの、企業の日常業務を統括し、経営陣と現場の橋渡しとなる重要な存在です。その職務内容は多岐にわたり、会社の成長を支える上で欠かせない役割を担っています。この記事を通じて、常務取締役という役職への理解を深め、今後のビジネス活動にお役立ていただければ幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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