• 作成日 : 2025年5月1日

建設業許可が必要な工事とは?不要なケースや許可取得の流れを解説

建設工事を行う際には、通常、建設業許可の取得が求められます。ただし、すべての工事が対象となるわけではなく、規模や工種によっては許可を受けずに施工できる場合もあります。本記事では、許可が不要とされるケースや、取得にあたっての手続きの流れについて、詳しく解説します。

建設業許可とは

建設業許可は、建設工事を請け負うために必要な法的許可です。これは建設業法に基づき、工事の適正な施工と発注者の保護を目的として定められています。

原則として、建設業を営む者は国土交通大臣または都道府県知事の許可を受けなければなりません。無許可で工事を請け負うと建設業法違反となり、罰則が科される場合があります。一方で、軽微な工事など特定のケースでは、例外的に許可不要とされています。

大臣許可と知事許可の違い

大臣許可と知事許可の違いは、営業所を複数の都道府県にまたいで設置するかどうかという点にあります。2つ以上の都道府県に営業所を構える場合は「国土交通大臣許可」が必要で、1つの都道府県内のみで営業所を設ける場合は「都道府県知事許可」が該当します。

なお知事許可の場合、特定の都道府県でしか工事を請け負えないわけではありません。知事許可、大臣許可を問わず、日本全国で建設工事を請け負うことが可能です。

この許可の違いはあくまで営業所の所在地による区分であり、工事現場の範囲を縛るものではありません。そのため、事業展開の仕方を見据えつつ、実際の営業所数や所在地を考慮してどちらの許可を取得すべきか判断するといいでしょう。

一般建設業と特定建設業の違い

一般建設業と特定建設業は、下請けに発注する金額の大きさによって区分されます。発注者から直接請け負った工事において、4,500万円以上(建築工事業の場合は7,000万円以上)を下請業者に発注する場合は「特定建設業」の許可が必要です。それ以外の工事規模であれば「一般建設業」の許可を取得することになります。

特定建設業の許可を取得する場合は、一般建設業よりも要件が厳しく設定されています。特に専任技術者の要件や財産的基礎の要件などが一般の場合より高度になるため、あらかじめ必要書類や人材を十分に整えておくことがポイントです。

建設業許可が必要な工事は29種類

建設業許可には、大きく分けて「一式工事」と「専門工事」の2つのカテゴリがあり、それらを合わせると合計29種類の業種があります。事業者は、行う工事の種類ごとに許可を取得する必要があり、「土木一式工事」や「建築一式工事」のようにまとめて施工を行う一式工事と、大工工事や電気工事のように特定分野に特化した専門工事に分かれています。

どの工事業種に該当するのかは、施工内容によって判断します。一式工事の許可を持っている場合でも、専門工事を単独で請け負うときには、その専門工事の許可を別途取得することが原則必要です。

実際には工事内容が複数の業種にまたがるケースもあり、正確な業種区分を把握しておかないと、無許可営業とみなされるリスクが生じます。

以下に、一式工事と専門工事について解説します。

一式工事(2種)

一式工事とは、複数の専門工事を組み合わせて一つの施設を建設する工事のことを指し、「土木一式工事」と「建築一式工事」の2種類があります。

土木一式工事

橋梁や道路、下水道などの土木工作物を総合的に建設する工事を指します。公道の新設や下水処理場の敷地造成など、大規模な土木プロジェクトが主な事例です。複数の専門工事を組み合わせ、計画立案から全体管理までを担う包括的な工事形態となります。

土木一式工事とは、道路・橋・ダム・下水道など、土木工作物の建設に関わる工事を総合的に管理・施工する工事を指します。

単一の専門工事ではなく、複数の専門工事(とび・土工工事、コンクリート工事、鋼構造物工事など)を統合し、工事全体の計画から完成までを一貫して担う点が特徴です。いわば「土木工事の総合請負業務」であり、公共インフラ整備の現場では欠かせない存在です。

道路建設を例に挙げると、地盤の掘削・盛土から舗装、排水設備の整備までが含まれ、橋梁工事では橋脚や橋桁の構築、基礎工事、仮設構造物の設置など、多岐にわたる作業が必要です。これらを全体として統括・管理するのが土木一式工事です。

建築一式工事

建築一式工事とは、複数の専門工事を総合的に取りまとめ、建築物全体を完成させる工事のことを指します。

建物を新築する、増築する、または大規模に改修するといった工事が該当します。このような工事は、大工工事、電気工事、内装仕上工事など、さまざまな専門工事の組み合わせによって成り立っていますが、それらを一括で管理・調整しながら建物全体を完成させるのが建築一式工事です。

そのため建築一式工事を請け負うには、単なる施工技術だけでなく、工事全体の計画・設計・調整・管理に関する知識と能力が求められます。工事内容の複雑さや規模に応じて、発注者との折衝、各下請業者の手配と調整、安全管理など、広範な業務を担う必要があります。

専門工事(27種)

専門工事(27種)とは、建設業における特定の分野に特化した工事のことで、工事ごとに独立した専門技術や知識を必要とするものです。

建設業法では、これら専門工事を27業種に分類しており、それぞれの工事を請け負うには、その業種ごとの建設業許可が必要です。たとえば、大工工事業を営む場合には、大工工事業としての許可を取得しなければなりません。

以下は、専門工事として分類されている27業種です。

  • 大工工事業
  • 左官工事業
  • とび・土工・コンクリート工事業
  • 石工事業
  • 屋根工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • タイル・れんが・ブロック工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 鉄筋工事業
  • 舗装工事業
  • しゅんせつ工事業
  • 板金工事業
  • ガラス工事業
  • 塗装工事業
  • 防水工事業
  • 内装仕上工事業
  • 機械器具設置工事業
  • 熱絶縁工事業
  • 電気通信工事業
  • 造園工事業
  • さく井工事業
  • 建具工事業
  • 水道施設工事業
  • 消防施設工事業
  • 清掃施設工事業
  • 解体工事業

これらの専門工事は、それぞれに独自の施工技術や施工管理の方法があり、建設業の中でも分野ごとに高度な専門性を要します。一式工事の許可を持っていても、専門工事を単独で請け負う場合には、その専門工事の許可が別途必要です。

なお、2016年に「解体工事業」が新設されたことで、従来は「とび・土工・コンクリート工事業」に含まれていた解体工事は、現在では独立した業種として扱われています。これは安全性や適正施工の確保が特に重要視された結果であり、今後も施工内容によって業種区分が見直される可能性があります。

建設業許可が不要な工事

建設業許可は原則としてすべての建築工事に必要ではあるものの、例外的に許可不要とされている工事もあります。建築業許可が不要な工事は、軽微な建設工事、附帯工事、完成を請け負わない工事の3種類です。

以下で、詳しく見ていきましょう。

軽微な建設工事

建築業許可が不要な工事として、まず「軽微な建設工事」が挙げられます。軽微な建築工事とは規模の小さい工事を指し、以下の条件を満たす工事は建設業許可が必要ありません。

  • 建築一式工事:1件あたりの請負金額が税込1,500万円未満の工事、または請負金額に関わらず、木造住宅で延べ床面積が150平方メートル未満の工事
  • 建築一式工事以外の工事:1件あたりの請負金額が税込500万円未満の工事

ただし、一つの工事について契約が複数に分かれていても、合計金額が上記の基準を超える場合は許可が必要になります。また、請負金額には材料費も含まれるため、注文者が材料を支給する「手間請け」の形式をとった場合でも、その材料の市場価格や運送費などを請負金額に加えた金額で判断される点に注意が必要です。

附帯工事

附帯工事とは、主たる建設工事を施工するために必要を生じた他の従たる建設工事、または主たる建設工事の施工により必要を生じた他の従たる建設工事であって、それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものを指します。

建物を新築するための仮設施設の設置や、建物本体の工事を進めるうえで付随的に行われる小規模工事などが付帯工事にあたります。

附帯工事は建設業許可がなくても請け負えますが、附帯工事の工事価格が税込500万円以上の場合は、建設現場にその附帯工事の種類に応じた専門技術者の配置が必要です。

完成を請け負わない工事

建設工事において「完成」という成果物を請け負わないケースは、建設業許可の対象外です。ここでいう「完成を請け負わない」ケースとしては、以下の2種類に大きく分けられます。

  1. 自分で使う建築物を自分で建てる場合
  2. 土砂運搬や除草作業などの外部委託が可能な業務

個人が自分の住宅をDIY形式で建築する場合などは、他人から報酬を受け取って施工を行うわけではないため、建設業法でいう「請負」にはあたりません。そのため建築業許可は不要です。

また、建設現場で発生した土砂の運搬や植栽物の除草・剪定などの作業は、建設工事の成果物そのものを完成させる業務ではないため、許可の必要はありません。

いずれも「工事そのものの完成」を引き受けていないため、建設業法上の許可対象外です。

建設業許可取得までの流れ

ここでは、実際に建設業許可を取得するまでの手順を解説します。許可を取得するためには、法令で定められた要件を満たしたうえで、事前準備から書類作成、申請手続き、審査まで一連の流れをスムーズに進める必要があります。

要件

建設業許可を取得するためには、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 経営業務の管理責任者がいること
  • 専任技術者がいること
  • 財産的な基礎が安定していること
  • 誠実に契約を履行すること
  • 欠格事由に該当しないこと

特に経営業務の管理責任者と専任技術者の要件は重要であり、これらの要件を満たす人材がいない場合は許可を取得できません。また、特定建設業の場合は一般建設業よりも下請け工事の金額規模が大きいこともあり、専任技術者や財産的基礎の要件が厳しくなります。

事前準備

建設業許可の申請には、以下の事前準備が必要です。

  1. 許可区分や許可業種を決める
  2. 許可要件を満たしているか確認する
  3. 許可申請書の手引きを入手する
  4. 必要な添付資料や確認資料を集める

特に添付資料については、登記簿謄本や納税証明書など有効期限のある書類が多いため、計画的に収集する必要があります。残高証明書は1ヶ月以内、登記簿謄本や登記されていないことの証明書などは3ヶ月以内という有効期限があるため注意しましょう。

手続きの手順

建設業許可の申請手続きは、以下の手順で進めます。

  1. 申請先を確認(知事許可は都道府県庁、大臣許可は国土交通省地方整備局)
  2. 許可申請書と添付資料を作成
  3. 申請書類を都道府県庁の建設業課窓口に提出、手数料の支払い
  4. 審査
  5. 許可決定後、許可通知書が交付される

書類に不備があると申請を差し戻され、改めて提出する必要が生じ、許可が下りるまでに時間がかかることになりかねません。申請準備段階で入念にチェックすることが非常に重要です。

手数料や所要期間

建設業許可の申請には、手数料が必要です。

  • 都道府県知事許可:新規許可申請9万円
  • 国土交通大臣許可:新規許可申請15万円
  • 業種追加または更:知事許可・大臣許可のいずれも5万円

特定建設業と一般建設業を同時に申請する場合は、それぞれの許可について別々に手数料が発生します。なお、許可申請を取り下げたり、虚偽申請などの理由で許可が下りなかったりした場合でも返金されないため、手続きは慎重に行いましょう。

許可が下りるまでの所要期間は地域によって異なりますが、一般建設業の場合は申請後2ヶ月程度、特定建設業の場合は3~4ヶ月程度かかるのが一般的です。書類の不備があった場合などはさらに時間がかかることになるため、事前準備などの期間も含めてスケジュールを考えておきましょう。

建設業許可の有効期限

建設業許可は、有効期限が5年間と定められています。この期間が過ぎると許可が失効するため、継続して工事を請け負う場合は更新手続きを行わなければなりません。更新手続きは、有効期限の30日前までに行うことが望ましいとされています。

更新申請では、新規取得時と同様に基本的な書類を提出する必要がありますが、すでに提出されている情報のうち変更のない項目については一部省略できるケースもあります。

更新期限を過ぎて許可が失効すると改めて新規申請時と同じ手続きが必要になり、手間もコストもかかるため注意しましょう。

無許可や虚偽申請が発覚した場合の罰則

建設業法では、無許可営業や虚偽の申請に対して厳格な処分が規定されています。法律違反が確認された場合は、刑事罰のほか行政上の処分も科される可能性があるため注意が必要です。

罰則

建設業許可を受けずに、先述した軽微な工事を超える建設工事を請け負った場合(無許可営業)や、虚偽または不正の事実に基づいて建設業許可を受けた際の罰則は、以下のとおりです。

  • 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(情状により懲役と罰金が併科される場合もある)
  • 法人の場合は1億円以下の罰金

無許可営業は建設業法違反の中で最も重い罰則が科せられる行為であり、実際に逮捕されるケースも存在します。

許可申請書やその添付書類に虚偽の記載をして提出した場合、変更届出書類の提出無し、もしくは虚偽内容記載での提出の場合などの罰則は以下です。

  • 6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金

その他、専門技術者を置かなかった場合や主任技術者又は監理技術者を置かなかった場合などは100万円以下の罰金です。さらに廃業などの届出を怠ることや、建設業許可の標識を掲げないなどの場合は10万円以下の過料が科される場合もあります。

監督処分

刑事罰とは別に、違反の程度に応じて行政による監督処分が行われることがあります。

  • 指示処分(業務改善命令に相当)
  • 営業停止処分(1年以内の期間で営業の全部または一部の停止)
  • 許可取消処分

営業停止処分は行政処分としては比較的重い部類に入り、事業継続に大きな支障をきたすケースも少なくありません。また、最も重い処分である許可取消処分の場合、一定期間は再申請も困難となるケースが多く、事業存続が危ぶまれます。

建設業許可について正しく理解しておこう

建設業許可は、工事の安全かつ適正な施工を確保し、発注者を守るための制度です。大臣許可と知事許可の違いや一般建設業と特定建設業の区分を理解し、自社がどの業種の許可を取得する必要があるのかを正確に把握することが大切です。軽微な工事や附帯工事など許可不要のケースもありますが、それらの要件を誤解すると無許可営業とみなされるリスクがあります。

無許可営業や虚偽申請は罰則・監督処分ともに厳しく、場合によっては事業継続が難しくなるほど大きなリスクを伴うでしょう。最新の建設業法や行政ガイドラインを確認しつつ、許可取得や更新に関して不明な点があれば、早めに専門家へ相談しておくと安心です。


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