• 更新日 : 2025年7月28日

法人登記情報の確認方法は?登記簿謄本や附属書類の取得・閲覧方法を解説

法人登記情報の確認方法は複数あり、状況に応じて選択できます。一般的には法務局の窓口で確認しますが、オンラインで申し込んで郵送で取り寄せたり、登記情報提供サービスで閲覧したりすることも可能です。また、登記事項証明書(登記簿謄本)だけでなく、登記簿の附属書類や登記申請書類も閲覧することができます。

ここでは、登記事項証明書の取得方法や閲覧方法、登記簿の附属書類や登記申請書類などの登記情報を無料で確認する方法をまとめて紹介します。

法人登記情報とは

法人登記情報とは、法人の名前や住所など法務局に記録(登記)された法人の基本的な情報のことです。

会社は設立の際に、設立登記を行うことで法人格を得ることができます。詳しくは後に述べますが、設立登記では「商号(会社名)」「本店所在地」「事業目的」「資本金の額」「役員の情報」など法人の基本的な情報を登記します。法人登記情報は誰もが閲覧できます。

厳密にいうと、登記には株式会社などの会社が行う「商業登記」と、NPO法人など会社以外の法人が行う「法人登記」があります。しかし、一般的に法人登記といえば、どちらも含めた「商業・法人登記」を指し、法人登記情報とは「商業・法人登記」された情報のことをいいます。

法人登記情報の確認が必要になる場面

まずは、法人登記情報の確認が必要になる主な場面を紹介します。

取引先の検討にあたり情報が知りたいとき

新しく取引する企業があるときや、取引先の候補として検討している企業があるときは、当該会社の登記事項証明書を取得し、確認しておくほうがよいでしょう。必ずしも閲覧する必要はありませんが、登記事項証明書を閲覧することで、資本金や役員といったおおよその姿を把握できます。

また、登記事項証明書には、本店所在地や会社法人等番号といった基本情報も明記されています。相手企業が本当に存在し、企業として活動しているのか疑わしいときにも、登記事項証明書を確認しておくようにしましょう。

銀行の融資や補助金・助成金を受けるとき

銀行に融資を求めるときや、国や自治体などの補助金制度・助成金制度に申し込むときには、自社の登記事項証明書の提出を求められることがあります。特に指定されない限りは履歴事項全部証明書を提出し、融資審査や補助金・助成金の手続きが速やかに進むようにしましょう。

M&Aを実施するとき

合併や買収といったM&Aを実施するときは、相手企業の財務状況や組織構成などを知っておくことが必要です。また、財務や法務といった内部事情を精査するデューデリジェンスを実施するときも、相手企業の情報を入手することが必要になります。相手企業の登記事項証明書を確認し、M&Aを実施してもよいのか判断する材料として活用しましょう。

登記内容に変更事項があるとき

本店移転や役員の解任・新任など、登記内容に変更が生じたときは、まずは現状を確認することが必要です。自社の登記事項証明書を閲覧し、登記内容の変更が必要か調べておきましょう。

記載事項の変更が必要なときは、登記変更手続きが必要です。登記変更手続きは法務局でも実施できますが、代表取締役のマイナンバーカードとICカードリーダーがあれば、オンラインでも実施できます。

例えば、株式会社の役員変更登記は、以下の手順で進めていきましょう。

  1. オンライン登記申請の申請者情報を登録する
  2. オンライン登記申請の申請用総合ソフトをインストールする
  3. 申請用総合ソフトにログインし、申請者情報を作成する
  4. 申請者情報に電子署名を付与する
  5. 申請者情報を送信する
  6. 登録免許税を納付する

なお、役員変更など、登記事項に変更が生じたときは、登記変更手続きを2週間以内に実施しなくてはいけません。期間が経過すると、裁判所から100万円の過料に処される可能性があります。

また、登記変更手続きを実施する際には、登録免許税として3万円を納付する必要があります。電子納付にも対応しているため、速やかに納付し、変更手続きを期間内に完了させましょう。

参考:登録免許税の税額表|国税庁

特定の事業に携わるとき

事業内容によっては、許認可の取得が必要です。許認可の取得・申請の際には、登記事項証明書の提出を求められることもあるため、速やかに準備しましょう。

例えば法人が一般的な営業許可を取得するときは、営業許可申請書に加え、営業活動を実施する施設や設備の図面や責任者の資格を確認する書類、登記事項証明書の提出が必要です。提出が遅くなると、事業活動の開始に影響を及ぼすこともあるため、早めに準備するようにしてください。

参考:一般的な営業許可手続きの流れ|厚生労働省

法人登記情報が確認できる登記事項証明書(登記簿謄本)とは

登記事項証明書とは、法人の商号や所在地などが記載された登記記録(登記簿)から、一部の内容を記載した写しのことです。登記簿謄本や会社謄本とも呼ばれることもあります。

なお、登記簿謄本とはかつての呼び名で、現在は登記事項証明書の一種である「履歴事項全部証明書」と呼ばれるのが一般的です。もし登記事項証明書の提出を要請されたときは、記載する内容が特に指定されない限り、履歴事項全部証明書の写しを準備するようにしましょう。

法人の登記事項証明書(登記簿謄本)の種類

登記事項証明書(登記簿謄本)の提出を要請されたときは、履歴事項全部証明書を提出すればほぼ間違いがないとされています。しかし、いつでも履歴事項全部証明書を提出すればよいというわけではありません。

法人の登記事項証明書には以下の4つの種類があり、そのうち3つはさらに「一部」と「全部」に分かれます。必要な書類を正確に準備するためにも、種類と記載内容を確認しておきましょう。

登記事項証明書の種類記載内容
履歴事項証明書現在の登記事項と抹消された事項が記載された書類
一部と全部がある
現在事項証明書現在の登記事項が記載された書類
一部と全部がある
閉鎖事項証明書過去に閉鎖された登記事項が記載された書類
一部と全部がある
代表者事項証明書代表者に関する登記事項が記載された書類

法人の登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できること

法人の登記事項証明書(登記簿謄本)には、法人の基本的事項が網羅されています。一般的な内容については以下をご覧ください。ただし、すべての情報を登記事項証明書に記載する必要はないため、法人によっては記載のない項目もあります。

項目記載内容
商号関連会社法人等番号、商号、本店所在地、公告方法、会社設立
目的関連事業内容、事業目的
資本関連発行可能株式数、株券発行会社かどうか、発行済株式総数・種類、資本金、株式譲渡制限に関する規定
役員関連取締役、監査役、代表取締役(氏名・住所)
会社関連取締役会設置会社か監査役会設置会社かなど
登記記録関連登記記録をした事由、年月日
その他役員責任、新株予約権、企業担保などについて記載することもある

法人の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得する方法と手数料

法人の登記事項証明書(登記簿謄本)は以下の方法で取得できます。

  • 法務局の窓口で取得する
  • オンラインで請求して郵送で取得する
  • オンラインで請求して窓口で取得する

取得方法によって手数料が異なるため注意が必要です。取得方法と手数料について解説します。

法務局の窓口で取得する方法

法務局の窓口で取得する方法があります。その場ですぐに受け取れるため、急いでいるときなどに適した方法です。また、自社・他社を問わず、誰でも申請・取得できます。

法務局の窓口で取得する場合の手数料は、1通に付き600円です。ただし、登記情報が多く、1通あたりの枚数が50枚を超える場合には、50枚ごとに100円加算されます。

一部の登記内容のみを記した登記事項要約書を取得する場合は、1通に付き500円の手数料が必要です。要約書の情報が多く、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに50円加算されます。

ただし、登記事項要約書では正式な書類として利用できないことがあるため、登記簿謄本の提出を求められたときは登記事項証明書を取得するようにしましょう。また、登記事項証明書を窓口で閲覧する場合も、1通に付き500円の手数料が必要です。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き600円(50枚超過ごとに100円加算)
登記事項要約書の取得1通に付き500円(50枚超過ごとに50円加算)
登記事項証明書の閲覧1通に付き500円

参考:登記手数料について|法務省

オンラインで請求して郵送で取得する方法

オンラインで請求し、郵送で取得する方法であれば、法務局に行かずとも登記事項証明書(登記簿謄本)を申請・取得できます。ただし、受け取るまでに時間がかかるため、登記事項証明書をすぐに取得する必要があるときは法務局で受け取るようにしましょう。

登記事項証明書の請求は登記情報提供サービスの「かんたん証明書請求」もしくは「申請用総合ソフト」を利用して実施します。手数料は1通に付き520円で、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに100円加算されます。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き520円(50枚超過ごとに100円加算)

参考:登記手数料について|法務省

オンラインで請求して窓口で取得する方法

オンラインで請求し、法務局の窓口で取得する方法なら、法務局が混雑しそうなときでもスムーズに登記事項証明書を受け取れます。また、法務局で直接申請するよりも手数料が低い点も特徴です。

登記事項証明書の請求は「かんたん証明書請求」もしくは「申請用総合ソフト」で行います。手数料は1通に付き490円で、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに100円加算されます。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き490円(50枚超過ごとに100円加算)

参考:登記手数料について|法務省

登記事項証明書(登記簿謄本)を閲覧する方法と手数料

登記事項証明書(登記簿謄本)を取得せず、閲覧する方法もあります。

法務局の窓口で閲覧する

登記事項証明書を法務局の窓口で閲覧するときは、1通あたり500円の手数料が発生します。また、法務局に出向かなくとも、登記情報提供サービスを利用すれば登記簿謄本の内容を閲覧できます。

登記情報提供サービスを利用する

登記情報提供サービスとは、法務局の窓口に行かなくても、登記情報を閲覧・取得できるサービスです。登記事項証明書を閲覧する機会、写しを取得する機会が多い場合は、利用を検討しましょう。

取得する書類手数料
登記事項証明書331円(登記手数料320円+指定法人手数料11円)

参考:登記情報提供サービスの利用料金等一覧|法務省

ただし、別途、登記情報提供サービスの登録費用が必要です。個人が登録する場合は300円、法人は740円、国や地方公共団体が登録する場合は560円の手数料がかかります。個人はクレジットカードによる決済、法人は銀行口座からの引き落とし、国や地方公共団体は協会の指定口座への銀行振込により手数料を支払いましょう。

参考:登記情報提供サービス|一般財団法人 民事法務協会

登記簿の附属書類・登記申請書類を閲覧する方法と手数料

次に、登記簿の附属書類や登記申請書類を閲覧する方法と手数料について見ていきましょう。

登記簿の附属書類・登記申請書類とは

法人が登記をする際には、登録する情報の根拠となる書類を作成し、登記申請書に添付する必要があります。これが「登記簿の附属書類や登記申請書類」です。例えば、役員の変更をする場合には、株主総会議事録などを附属書類として添付します。

登記簿の附属書類や登記申請書類は、登記事項証明書のように交付を受けることはできませんが、法務局の窓口で閲覧することが可能です。

閲覧には、以下の書類等が必要です。

  • 附属書類閲覧申請書
  • 手数料(印紙の貼付)
  • 閲覧者等の本人確認書類(写しでも可)
  • 利害関係を証する書面(「正当な理由」があることを証明する書面)

登記簿の附属書類・登記申請書類を閲覧するための手数料は500円です。

取得する書類手数料
登記簿の附属書類・登記申請書類の閲覧500円

また、ウェブ会議で登記簿の附属書類や登記申請書類を閲覧することもできます。ウェブ会議を使って閲覧する際には、上記の必要書類に加えてウェブ会議による閲覧申出書が必要です(ウェブ会議による閲覧を行うにあたって、上記以外の手数料は発生しません)。

参考:ウェブ会議による登記簿の附属書類等の閲覧について|法務省

令和5年4月1日から利害関係人の要件が見直し

登記簿の附属書類や登記申請書類の閲覧を第三者が行うには、利害関係があることの要件が課されていました。

しかし、利害関係の有無には明確な基準がなく、2023年4月1日から基準の明確化や合理化を目的に利害関係人の要件が見直され、「正当な理由があること」が要件となりました。

閲覧には、訴状や当事者の陳述書など「正当な理由」があることを証明する書面の提出が求められます。

参考:令和5年4月1日から登記簿の附属書類(登記申請書及び添付書面)の閲覧請求の手続が変わります。|法務局

法人登記情報の閲覧に関してよくある質問

ここからは、法人登記情報の閲覧に関するよくある質問を見ていきます。

法人登記情報は無料で閲覧できる?

法人登記情報は、無料で閲覧できません。窓口で閲覧する場合は500円、登記情報提供サービスを利用する場合は331円の手数料が必要です。

法人登記情報の閲覧は相手の会社に知られる?

法人登記情報を閲覧したことが、相手の会社に知られることはありません。そもそも、法人登記情報とは公開されているものであり、誰でも確認できます。登記事項証明書を取得しても、所有者に通知されることはありません。

登記事項証明書(登記簿謄本)の取得・閲覧方法を確認しておこう

登記事項証明書(登記簿謄本)は、金融機関に融資を申し込むときや補助金制度・助成金制度を利用するとき、許認可申請手続きを実施するときなどに取得する必要が生じます。取得方法や閲覧方法は多数あるため、手数料や取得方法の違いを踏まえ、目的に合った手段を選ぶようにしてください。

新しく取引を始めるときには、登記事項証明書を取得するか登記情報を閲覧し、相手企業についての情報を入手するようにしましょう。無料では登記情報を閲覧できませんが、企業の存在確認は可能です。必要に応じて、法務局や国税庁のサイトを閲覧し、取引に活かしましょう。


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