• 作成日 : 2025年5月1日

法人登記情報の確認方法は?登記簿謄本の取得・閲覧方法を解説

法人登記情報の確認方法は多く、状況に応じて選択できます。一般的には法務局の窓口で確認しますが、オンラインで申し込んで郵送で取り寄せたり、登記情報提供サービスで閲覧したりすることも可能です。登記簿謄本の取得方法や閲覧方法、登記情報を無料で確認する方法をまとめて紹介します。

法人登記簿謄本(登記事項証明書)とは

法人登記簿謄本とは、法人の商号や所在地などが記載された登記記録(登記簿)から、一部の内容を記載した写しのことです。法人登記事項証明書や会社謄本とも呼ばれることもあります。

なお、登記簿謄本とはかつての呼び名で、現在では「履歴事項全部証明書」と呼ぶことが一般的です。登記簿謄本の提出を要請されたときは、記載する内容を特に指定されない限り、履歴事項全部証明書の写しを準備するようにしましょう。

登記簿の種類

登記簿の提出を要請されたときは、履歴事項全部証明書を提出すればほぼ間違いがないとされています。しかし、いつでも履歴事項全部証明書を提出すればよいというわけではありません。

登記簿には以下の4つの種類があり、そのうち3つはさらに「一部」と「全部」に分かれます。必要な書類を正確に準備するためにも、種類と記載内容を確認しておきましょう。

登記簿の種類記載内容
履歴事項証明書現在の登記事項と抹消された事項が記載された書類。一部と全部がある
現在事項証明書現在の登記事項が記載された書類。一部と全部がある
閉鎖事項証明書過去に閉鎖された登記事項が記載された書類。一部と全部がある
代表者事項証明書代表者に関する登記事項が記載された書類

法人登記簿謄本で確認できること

法人登記簿謄本には、法人の基本的事項が網羅されています。一般的な内容については以下をご覧ください。ただし、すべての情報を登記簿謄本に記載する必要はないため、法人によっては記載のない項目もあります。

項目記載内容
商号関連会社法人等番号、商号、本店所在地、公告方法、会社設立
目的関連事業内容、事業目的
資本関連発行可能株式数、株券発行会社かどうか、発行済株式総数・種類、資本金、株式譲渡制限に関する規定
役員関連取締役、監査役、代表取締役(氏名・住所)
会社関連取締役会設置会社か、監査役会設置会社かなど
登記記録関連登記記録をした事由、年月日
その他役員責任、新株予約権、企業担保などについて記載することもある

法人登記の確認が必要になる場面

法人登記簿謄本は、所定の手続きを踏めば誰でも閲覧・取得できる書類です。そのため、提出を求められたときに自社の登記簿謄本を準備するだけでなく、特定の法人の情報が必要になったときに、他社の登記簿謄本を確認することもあります。

法人登記簿謄本が必要になる主な場面を紹介します。該当する場面では、速やかに法人登記簿を確認しましょう。

取引先の検討にあたり情報が知りたいとき

新しく取引する企業があるときや、取引先の候補として検討している企業があるときは、当該会社の法人登記簿謄本を取得し、確認しておくほうがよいでしょう。必ずしも閲覧する必要はありませんが、法人登記簿謄本を閲覧することで、資本金や役員といったおおよその姿を把握できます。

また、法人登記簿謄本には、本店所在地や会社法人等番号といった基本情報も明記されています。相手企業が本当に存在し、企業として活動しているのか疑わしいときにも、法人登記簿謄本を確認しておくようにしましょう。

銀行の融資や補助金・助成金を受けるとき

銀行に融資を求めるときや、国や自治体などの補助金制度・助成金制度に申し込むときには、自社の登記簿謄本の提出を求められることがあります。特に指定されない限りは履歴事項全部証明書を提出し、融資審査や補助金・助成金の手続きが速やかに進むようにしましょう。

M&Aを実施するとき

合併や買収といったM&Aを実施するときは、相手企業の財務状況や組織構成などを知っておくことが必要です。また、財務や法務といった内部事情を精査するデューデリジェンスを実施するときも、相手企業の情報を入手することが必要になります。相手企業の法人登記簿謄本を確認し、M&Aを実施してもよいのか判断する材料として活用しましょう。

登記内容に変更事項があるとき

本店移転や役員の解任・新任など、登記内容に変更が生じたときは、まずは現状を確認することが必要です。自社の法人登記簿謄本を閲覧し、登記内容の変更が必要か調べておきましょう。

記載事項の変更が必要なときは、登記変更手続きが必要です。登記変更手続きは法務局でも実施できますが、代表取締役のマイナンバーカードとICカードリーダーがあれば、オンラインでも実施できます。

例えば、株式会社の役員変更登記は、以下の手順で進めていきましょう。

  1. オンライン登記申請の申請者情報を登録する
  2. オンライン登記申請の申請用総合ソフトをインストールする
  3. 申請用総合ソフトにログインし、申請者情報を作成する
  4. 申請者情報に電子署名を付与する
  5. 申請者情報を送信する
  6. 登録免許税を納付する

なお、役員変更など、登記事項に変更が生じたときは、登記変更手続きを2週間以内に実施しなくてはいけません。期間が経過すると、裁判所から100万円の過料に処される可能性があります。

また、登記変更手続きを実施する際には、登録免許税として3万円を納付することが必要です。電子納付にも対応しているため、速やかに納付し、変更手続きを期間内に完了させましょう。

参考:国税庁 登録免許税の税額表

特定の事業に携わるとき

事業内容によっては、許認可の取得が必要です。許認可の取得・申請の際には、法人登記簿謄本の提出を求められることもあるため、速やかに準備しましょう。

例えば法人が一般的な営業許可を取得するときは、営業許可申請書に加え、営業活動を実施する施設や設備を確認する図面や責任者の資格を確認する書類、法人登記簿謄本の提出が必要です。提出が遅くなると、事業活動の開始に影響を及ぼすこともあるため、早めに準備するようにしてください。

参考:厚生労働省 一般的な営業許可手続きの流れ

登記情報を無料で確認する方法はある?

自社や他社の登記関連の情報が必要なときは、登記簿謄本が必要なのか、登記情報が必要なのか確認しておきましょう。登記簿謄本と登記情報では、確認できる内容に差異はありませんが、情報の証明力が異なるため、利用できる場面も異なります。

登記簿謄本と登記情報の違い

登記簿謄本(登記事項証明書)とは書類のことです。現在では登記簿謄本はデータを指しますが、取得手続きを実施すると、データを印刷した書面(登記事項証明書の写し)を受け取れます。なお、取得した書面には法務局の認証印があり、場面を問わず、正式な書類として活用できます。

一方、登記情報とは法務局の登記情報提供サービスから閲覧できる情報のことです。閲覧中に写真や画像を撮影して書面化することは可能ですが、法務局の認証印がないため、正式な書類として活用できないことがあります。

例えば、登記変更手続き前に現在の登記事項を確認する場合なら、登記簿謄本ではなく登記情報で十分かもしれません。また、新しい取引先の会社法人等番号や本店住所を知りたいときも、閲覧するだけで十分なら登記簿謄本ではなく登記情報で問題ないと考えられます。

しかし、書面として提出することを求められるときは、法務局の認証印付きの登記簿謄本の写しを準備しましょう。登記情報を撮影したものでは、情報証明力がなく、再提出を求められる可能性があります。

登記情報を無料で閲覧する方法

法務局の登記情報提供サービスは、無料で利用できません。ただし、登記情報を調べる際の検索機能は無料で利用できるため、対象企業が本当に存在するのかどうかについては無料で確認できます。

また、国税庁の法人番号公表サイトでも、名称・所在地・法人番号から会社の存在を無料で調べることは可能です。照会できる情報には限りがありますが、閲覧だけで問題のないときには無料で確認を済ませましょう。

法人登記簿謄本を取得する方法

法人登記簿謄本は以下の方法で取得できます。

  • 法務局の窓口で取得する
  • オンラインで請求して郵送で取得する
  • オンラインで請求して窓口で取得する

取得方法によって手数料が異なるため注意が必要です。取得方法と手数料について解説します。

法務局の窓口で取得する

法務局の窓口で申請する方法があります。その場ですぐに受け取れるため、急いでいるときなどに適した方法です。また、自社・他社問わず、誰でも申請・取得できます。

法務局の窓口で申請・取得する場合の手数料は、1通に付き600円です。ただし、登記情報が多く、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに100円加算されます。

一部の登記内容のみを記した登記事項要約書を取得する場合は、1通に付き450円の手数料が必要です。要約書の情報が多く、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに50円加算されます。

ただし、登記事項要約書では正式な書類として利用できないことがあるため、登記簿謄本の提出を求められたときは登記事項証明書を取得するようにしましょう。また、登記簿謄本を窓口で閲覧する場合も、1通に付き450円の手数料が必要です。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き600円(50枚超過ごとに100円加算)
登記事項要約書の取得1通に付き450円(50枚超過ごとに50円加算)
登記事項証明書の閲覧1通に付き450円

参考:法務省 登記手数料について

オンラインで請求して郵送で取得する

オンラインで請求し、郵送で取得する方法なら、法務局に行かずとも登記簿謄本を申請・取得できます。ただし、受け取るまでに時間がかかるため、登記簿謄本をすぐに取得する必要があるときは法務局で受け取るようにしましょう。

登記簿謄本の請求は「かんたん証明書請求」もしくは「申請用総合ソフト」を利用して実施します。手数料は1通に付き500円で、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに100円加算されます。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き500円(50枚超過ごとに100円加算)

オンラインで請求して窓口で取得する

オンラインで請求し、法務局の窓口で取得する方法なら、法務局が混雑しそうなときでもスムーズに登記簿謄本を受け取れます。また、法務局で直接申請するよりも手数料が低い点も特徴です。

登記簿謄本の請求は「かんたん証明書請求」もしくは「申請用総合ソフト」で実施します。手数料は1通に付き480円で、1通あたりの枚数が50枚を超える場合は、50枚ごとに100円加算されます。

取得・閲覧する書類手数料
登記事項証明書の取得1通に付き480円(50枚超過ごとに100円加算)

法人登記簿謄本を閲覧する方法

法人登記簿を法務局の窓口で閲覧するときは、1通あたり450円の手数料が発生します。また、法務局に出向かなくとも、登記情報提供サービスを利用すれば登記簿謄本の内容を閲覧できます。

登記情報提供サービスを利用する

登記情報提供サービスとは、法務局の窓口に行かなくても、登記情報を閲覧・取得できるサービスです。登記簿謄本を閲覧する機会、写しを取得する機会が多い場合は、利用を検討しましょう。

取得する書類手数料
登記事項証明書331円(登記手数料320円+指定法人手数料11円)

ただし、別途、登記情報提供サービスの登録費用が必要です。個人が登録する場合は300円、法人は740円、国や地方公共団体が登録する場合は560円の手数料がかかります。個人はクレジットカードによる決済、法人は銀行口座からの引き落とし、国や地方公共団体は協会の指定口座への銀行振込により手数料を支払いましょう。

参考:一般財団法人 民事法務協会 登記情報提供サービス

法人登記簿謄本の取得・閲覧方法を確認しておこう

法人登記簿謄本は、金融機関に融資を申し込むときや補助金制度・助成金制度を利用するとき、許認可申請手続きを実施するときなどに取得する必要が生じます。取得方法や閲覧方法は多数あるため、手数料や利便性を検討し、適切な方法を選ぶようにしてください。

新しく取引を始めるときには、登記簿謄本を取得するか登記情報を閲覧し、相手企業についての情報を入手するようにしましょう。無料では登記情報を閲覧できませんが、企業の存在確認は可能です。必要に応じて、法務局や国税庁のサイトを閲覧し、取引に活かしましょう。


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