• 作成日 : 2025年3月21日

定款の事業目的の書き方15選!許認可が必要な業種の具体例と注意点

定款を作成する場合、事業目的の記載が必須です。これは会社がこれから展開する事業内容を記載する項目であり、許認可が必要な事業については記載時の注意点があります。本記事では、許認可が必要な15種の事業の例に挙げ、事業目的の適切な書き方について解説します。

許認可が必要な場合の定款の事業目的とは?

会社設立の際に、申請書類とともに定款を提出します。定款に記載する項目のうち、事業目的は、会社がどのような事業を行うのかを示す項目です。

定款の事業目的は、事業内容を示すものであれば自由に記載できます。しかし、許認可が必要な事業においては、適切な内容に記載しなければ、後から事業目的を変更が求められる可能性があります。事業目的の追加や変更によって、再度登録免許税の支払いなどが発生するため、最初から許認可を満たす適切な事業目的を記載しておくことが重要です。

許認可が必要な業種と定款の事業目的の書き方

法人設立の際に作成する定款には、以下の図版のとおり事業目的を記載する箇所(第2条の部分)があります。

株式会社の定款記載例2(中小規模の会社)

出典:株式会社の定款記載例2(中小規模の会社)|日本公証人連合会

許認可が必要な事業については、先述のように許認可に適合した事業目的の記載が必要です。では具体的にどのように記載していけばよいのでしょうか。ここでは許認可が必要な業種15種を例に挙げて紹介します。

飲食店

飲食店営業を含む食品衛生関連の営業許可は、取り扱う食品別に細かく許可が分類されています。また、飲食店といっても、酒類を提供する場合に一般酒類小売業免許、接待を伴う場合は風俗営業の許可が必要です。許認可を考慮し、飲食店の事業内容を記載する場合は、飲食店のジャンルがイメージできるように記載しましょう。

【記載例】

カフェの経営、居酒屋の経営、カラオケスナックの経営

リサイクルショップ

リサイクルショップは、中古品を事業として扱う業種であり、事業を営むには、古物営業法に基づく許認可が必要です。中古品を幅広く取り扱う場合は、以下のように記載するのが一般的です。

【記載例】

古物営業法に基づく古物営業

美容関連業

美容関係の事業では、美容師免許と理容師免許のいずれに基づく事業について明確に記載することが一般的です。特に、顔そりや髭剃りやカットを含む施術内容によっては、美容師と理容師の免許が異なります。そのため、事業目的の記載内容に相違があると許認可が難しいでしょう。また、美容室と理容室を併設する事業を検討している場合は、それぞれの免許に基づく業務範囲を詳細にまとめることがことが求められます。

【記載例】

美容室の経営、理容室の経営

エステ・マッサージ

マッサージを事業とする場合、あん摩マッサージ指圧師の国家資格の取得が必須です。また、マッサージと混同されやすいのが、エステサロンです。エステはあん摩マッサージ指圧師の資格が必要ないことから、誤解を防ぐために「マッサージ」と記載することが禁じられています。エステやマッサージ関連の事業を開業する場合は、細やかな表記を意識して事業目的をまとめてみましょう。

【記載例】

あん摩マッサージ指圧業の経営(国家資格所有者による施術)、エステサロンの経営

化粧品業

化粧品業で許認可が必要となる業務は、化粧品の製造や輸入です。そのため、許認可を踏まえ、化粧品業の中で具体的な事業目的を詳細に記載します。

【記載例】

化粧品製造販売業、化粧品製造業、化粧品の輸入・販売、化粧品の販売

旅館業・ホテル業

宿泊業は、ホテル営業許可、旅館営業許可、簡易宿所営業許可、旅館業(下宿)営業許可の4種、簡易宿所営業許可、旅館業(下宿)営業許可の4つに分けられます。事業目的を記載する場合、該当する種別について正確に確認し、明確な内容に整えて記載することが重要です。

【記載例】

ホテルの経営、簡易宿泊所の経営

旅行業

旅行業は、第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業、旅行業者代理業の5つに分けられます。旅行業の事業目的を記載する場合は、対応エリアや旅行内容の詳細など種別を意識した記載が必要です。

【記載例】

旅行業法に基づく旅行業、旅行業法に基づく旅行業者代理業

介護事業

介護保険法に定める介護サービスは多岐にわたります。大きく区分すると、居宅サービス(訪問介護や訪問リハビリテーションなど)、介護予防サービス(介護予防訪問介護など)、施設サービス(介護老人福祉施設や介護老人保健施設など)、居宅介護支援事業、地域密着型サービスなどに分類されます。それぞれの対応業務を確認したうえで、どのような介護サービスが提供されているかが把握できるよう記載するのがポイントです。

【記載例】

介護保険法に基づく訪問介護サービス事業、介護保険法に基づく施設サービス事業、介護保険法に基づく介護予防サービス事業

労働者派遣業

労働者派遣の事業を営む場合は、人材派遣事業であることが明確に分かるように記載します。特に、一般労働者派遣事業と特定労働者派遣事業といった、派遣対象となる業種・職種を明確に記載することがポイントです。

【記載例】

労働者派遣事業、労働者派遣法に基づく人材派遣業務

建設業

建設業関連の許認可は、全部で29種類あります。建設業者が事業目的を記載する際は、営業許可の下りた事業を意識して記載するのが一般的です。

【記載例】

大工工事業、電気工事業、水道施設工事業

薬局

薬局を開業する場合、処方箋に基づく調剤業務や医薬品の販売対応、販売方法などといった業務内容が明確に分かるよう記載することが重要です。

【記載例】

薬局の経営

医薬品製造・販売

医薬品の販売や製造には許可が必要です。販売の許可と製造の許可は異なるため、医薬品をどのように扱っているか把握できるよう記載します。

【記載例】

医薬品の販売、医薬品の製造

不動産売買・賃貸仲介業

不動産業に関して、宅地や建物の売買・交換のほか、売買・交換・賃借の代理や媒介を事業とする場合には、宅地建物取引業の免許が必要です。不動産業に関しては、免許を踏まえた事業内容がイメージできるように記載します。

【記載例】

不動産の貸付業、不動産の売買・賃貸の仲介、宅地建物取引業

先物取引業

先物取引業を営む場合は、商品先物取引業、商品先物取引仲介業、特定店頭商品デリバティブ取引業、商品投資顧問業、商品取引所などの種別に応じた許認可が必要となります。事業目的を記載する際には、該当する業務内容を詳細に記載することが重要です。

【記載例】

商品先物取引法に基づく商品先物取引業、商品先物取引法に基づく商品先物取引仲介業

産業廃棄物収集運搬業

産業廃棄物の収集や運搬および処理は許可制です。事業目的を記載する際には、産業廃棄物と一般廃棄物の取り扱いが異なる点を考慮し、一般廃棄物と混同しないよう適切な記載をすることが求められます。

【記載例】

産業廃棄物処理業、産業廃棄物運搬業

定款の事業目的を記載する際の注意点

定款の事業目的を記載する際に意識しておくべきポイントは、適法性・営利性・明確性の3つです。

まず適法性とは、記載した事業目的が法的に問題のないものであることを表します。公序良俗に反する内容や違法とみなされる事業目的の記載はできません。

次に営利性は、事業が営利目的であるかどうかを指します。株式会社や合同会社などの営利法人は、利益を得ることを目的とするため、営利性が認められない事業目的は認められません。

明確性は、事業目的が一読してすぐ理解できることです。曖昧な表現や造語を含めてしまうと、登記時に認められない可能性があるため最新の注意を払いましょう。

上記の2つのポイントを意識したうえで、重要なのは変更が少なくて済む事業目的を考えることです。許認可や明確性を意識したうえで具体的に記載することは重要ですが、今後新しい事業を展開していく可能性もあります。新規事業を立ち上げるたびに定款を変更するとなると、手間もコストもかかります。将来的に変更があることを想定し、幅広くカバーできるような事業目的にしておくのが適切です。

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定款の事業目的は許認可も意識して記載しよう

会社設立時に作成する定款には、事業目的の項目があります。事業目的とは、会社が行う事業の内容を示す項目です。基本的に事業の内容が分かる範囲であれば、ある程度自由に記載できます。ただし、許認可が必要な事業については、曖昧な表現などは認められないこともあるため、許認可を意識した記載が必要です。また、定款に記載されていない事業を行うことはできないため、将来的な事業展開も考えた記載を意識しましょう。

今回紹介した15種類の許認可を必要とする事業の記載例をご参考に、相手にも正しく伝わる表現を用いて事業目的を記載しましょう。


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