- 更新日 : 2025年1月10日
ガソリンスタンドの開業に許認可は必要?揮発油販売業登録申請書の書き方も解説
ガソリンスタンドを開業する際は、揮発油等の品質の確保等に関する法律に基づいて、経済産業局の登録が必要です。
本記事では、 ガソリンスタンドを開業するにあたって必要な届出一覧や揮発油販売業登録申請書の書き方について解説します。あわせて、ガソリンスタンドを開業するときの注意点も紹介するので、参考にしてください。
目次
ガソリンスタンドの開業には経済産業局への届出が必要
ガソリンスタンドの開業など、揮発油販売業を営むときには、揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)に基づき、経済産業局(または経済産業省)の登録を受けなければなりません。
営む事業によって届出の種類が異なるため、注意が必要です。次項で必要な届出については解説します。
ガソリンスタンドの開業に必要な届出一覧
ガソリンスタンドの開業に必要な届出を紹介します。届出は営む事業によって次の2つがあります。
- 揮発油販売業登録申請書
- 石油販売業開始届出書
それぞれ詳しく見ていきましょう。
揮発油販売業登録申請書
揮発油販売業登録申請書は、一定規模を超える石油の販売を行う場合に必要な届出です。次の添付書類も一緒に提出する必要があります。
提出先は、次のとおりです。
- 1つの経済産業局の管轄区域内でのみ開業する:経済産業局長
- 2以上の経済産業局の管轄区域内で開業する:経済産業大臣
なお、審査に時間を要することもあるため、揮発油の販売を開始する2週間前までに申請書を提出するようにしましょう。
石油販売業開始届出書
石油販売業開始届出書は、揮発油以外の石油を販売する場合に必要な届出書です。上記の揮発油販売業登録申請書を申請して揮発油販売業者の登録を受けた場合でも提出が必要になるため、注意しましょう。
石油販売業開始届出が必要なケースは、次に該当する場合です。
- 初めて石油販売業を行う場合
- 自家用設備を転用し、一般販売を行う場合
- 法人が合併(承継)する場合(新設合併、吸収合併)(開始届出及び廃止届出の提出が必要)
- 石油の販売数量が規則で規定する数量を超えることとなる場合
- 組織を変更する以下の場合(開始届出及び廃止届出の提出が必要)
個人から株式・有限・合名・合資会社
株式・有限・合名・合資会社から個人
合名・合資会社から株式・有限会社(会社法施行前)
株式・有限会社(会社法施行前)から合名・合資会社
また、届出が必要な販売業者は次のいずれかに該当する事業者です。なお、潤滑油やアスファルト、グリース等については対象外のため届出は不要です。
(1)原油又は指定石油製品の販売を行う事業者:消防法第9条の4に規定する指定数量を超える場合
類別 | 品名 | 指定数量 |
---|---|---|
第4類 | 第1石油類(ガソリン他) | 200リットル |
第2石油類(灯油・軽油他) | 1,000リットル | |
第3石油類(重油他) | 2,000リットル |
(2)石油ガスの販売を行う事業者:使用するタンクの容量が5トンを超える場合
(3)当該年度の販売予定量や前年度の販売量のいずれか大きい数量が、規則で規定する数量を超える場合
油類 | 当該年度の販売予定量等 |
---|---|
原油 | 1,000キロリットル |
揮発油 | 2,400キロリットル |
灯油 | 60キロリットル |
軽油 | 1,800キロリットル |
重油 | 120キロリットル |
石油ガス | 360トン |
参考:経済産業省東北経済産業局 石油販売業の届出について(石油の備蓄の確保等に関する法律)
揮発油販売業登録申請書の書き方・記入見本
出典:経済産業省ウェブサイト 品確法(ガソリンスタンド)の各種申請・届出
氏名又は名称の欄では、法人の場合は登記上の名称・住所を登記事項証明書どおりに記載します。個人の場合は、氏名・住所を記載しましょう。
給油所の名称及び所在地には、給油所の名称と所在地を記載します。給油所ごとの給油設備の規模におけるタンク容量では、ハイオクとレギュラーそれぞれ記載するのではなく、合計容量の記載が必要なため注意しましょう。計量器の個数は、同時に給油できるノズルの数の記載が必要です。
業務を行う役員とは、揮発油の販売を担当する役員のことを指します。揮発油販売業を担当しない取締役などは役員に該当しないため注意しましょう。
揮発油販売業登録申請書は、経済産業省のホームページからダウンロード可能です。ぜひご活用ください。
参考:経済産業省ウェブサイト 品確法(ガソリンスタンド)の各種申請・届出
揮発油販売業登録申請書の添付書類
必要となる主な添付書類は、次の5つです。
- 事業計画書
- 誓約書
- 品質管理者の資格を有することを証する書面
- 揮発油の分析が可能であることを証する書面
- 法人の登記事項証明書
添付書類についても、以下からダウンロードできます。
参考:経済産業省ウェブサイト 品確法(ガソリンスタンド)の各種申請・届出
事業計画書
事業計画書では、以下の項目を記載します。
項目 | 記載内容 |
---|---|
給油所名 | 申請書と同じ給油所名を記載 |
事業開始予定年月日 | 登録申請者が実際に事業開始を予定している年月日を記入 |
揮発油の購入先 | 直近上位の仕入先を記載 仕入先が複数の場合は、それぞれを記載 |
品質管理者の氏名 | 選任を予定している人の氏名を記載 |
分析設備の種類又は登録分析機関の名称 | 大臣の登録を受けた分析機関に委託する場合は、その登録分析機関の名称を記入 |
所要資金の額 | 申請給油所の所要資金の額、調達方法については、それぞれの項目に分けて記入 |
誓約書
誓約書は、揮発油等の品質の確保等に関する法律の第6条第1項第1号から第4号までに該当しないことを誓約する書類です。個人の場合は、「第4号」の部分を「第3号」に置き換える必要があります。
品質管理者の資格を有することを証する書面
乙種4類以上の危険物取扱者免状(表・ 裏)の写しを添付してください。
氏名又は名称:法人の場合は登記上の名称・住所を登記事項証明書どおりに記載します。個人の場合は、氏名・住所を記載してください。
揮発油の分析が可能であることを証する書面
登録分析機関に揮発油の分析を委託する場合は、登録分析機関の発行する「揮発油分析受託証明書」を提出する必要があります。
法人の登記事項証明書
法人の場合は登記事項証明書が必要です。法人名や所在地、法人の役員名が記載されていることを確認しましょう。登記事項証明書は登記所の窓口や郵送、オンライン申請などで取得できます。また、個人の場合は住民票が必要です。
ガソリンスタンドを開業するときの注意点
ガソリンスタンドを開業するときの注意点を紹介します。主な注意点は、次の4つです。
- 「危険物取扱者」資格が必要になる
- ガソリン販売以外のサービスを提供する
- リピーターの獲得に注力する
- ガソリンスタンドに付加価値を付ける
注意点を把握して、事業を軌道に乗せましょう。
「危険物取扱者」資格が必要になる
ガソリンスタンドを経営する際には、危険物取扱者の資格も必要です。乙種危険物第4類取扱者の資格を誰か1人が取得していないとガソリンスタンドを経営できません。
有資格者を雇うか、オーナー自身が資格を取得することが一般的です。乙種危険物第4類は比較的取得しやすいため、オーナー自身で取得しておくと安定して事業を展開できるでしょう。
ガソリン販売以外のサービスを提供する
ガソリン販売以外のサービスを提供することも検討しましょう。ガソリン販売のみで利益率を上げることは難しいのが実情です。
オイル交換やタイヤ販売、洗車サービス、車検などのカーメンテナンス、カーシェアやレンタカーなどの車に関連するサービスなどをあわせて提供すると、競合との差別化につながります。また、今後増えるであろうEV車の充電や水素車の燃料供給など、ガソリン以外を原動力にするサービスの提供も有効です。
ただし、上記の業務には技術力が求められます。その場合は対応できる人材の確保も考えておきましょう。
リピーターの獲得に注力する
ガソリンスタンド事業で軌道に乗るためには、リピーターの獲得が欠かせません。ガソリンスタンドは地域に根付いたビジネスです。地域の顧客を獲得することで安定した経営につながります。
会員限定価格を設けたり、SNSを利用したキャンペーン施策を打ったりすることで、集客につなげましょう。
ガソリンスタンドに付加価値を付ける
ガソリンスタンドに付加価値を付けることも集客アップに有効です。最近ではガソリンスタンドに以下のような他業種の店舗を併設しているところも増えています。
- コンビニ
- カフェ
- コインランドリー
- レンタカー など
併設店で付加価値を付けることで、顧客単価の向上を狙えます。また、両店舗で人員を共有すれば、人件費を抑えて効率よく経営することも可能です。
ガソリンスタンドを開業する場合は忘れずに経済産業局への届出をしよう
ガソリンスタンドを開業する際には、経済産業局へ揮発油販売業登録申請書や石油販売業開始届出書などの届出が必要です。提出対象者はそれぞれで異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。
揮発油販売業登録申請書を提出する場合は、添付資料も提出する必要があります。何を書けばよいのか、どのような書類が必要なのかがわからない方は、経済産業局のホームページからフォーマットをダウンロードして記載しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
建設業で必要な許認可とは?種類や要件、申請方法を個人・法人向けに解説
建設業における許認可は、事業運営の基盤として重要な役割を果たします。個人や法人が建設業を営む際に必要な建設業認可の種類や要件、さらに具体的な申請方法について知識を深めることは、事業の信頼性を高めるために欠かせません。 本記事では、建設業認可…
詳しくみるコワーキングスペースで法人登記はできる?手続きや費用、選び方を解説
コワーキングスペースでも、運営会社の許可を受けることで法人登記は可能です。コストをかけずにビジネスをスタートでき、対外的な信用を得やすいというメリットがあります。ビジネスチャンスを広げることもできるでしょう。 本記事では、コワーキングスペー…
詳しくみる起業・独立・開業しやすい仕事とは?おすすめの職種や業種、成功のコツを解説
働き方改革や社会情勢の変化などの影響で、個人事業主として起業・独立・開業する人が増えています。 個人事業主にはネットショップやWebのビジネスなどの在宅でできる仕事や、飲食店のフランチャイズ経営など多くの職種があり、代行サービスなど女性が開…
詳しくみる45歳以上で独立起業に成功する方法は?使える助成金についても解説!
日本では、「歳を重ねるほど独立起業して成功する可能性は低くなる」と考える人が少なくないようです。歳を重ねると体力は落ち、持久力も低下し、若い時ほど無理がきかなくなる。何よりも、転職市場において需要が縮小する。45歳を過ぎると、確かに転職市場…
詳しくみるシリコンバレーに日本人起業家が多い理由とは?起業のメリットや方法も解説!
シリコンバレーは、アメリカ西海岸に位置し、数多くのIT企業が集積する「スタートアップの聖地」と呼ばれるエリアです。起業家だけでなく投資家や研究機関も集まり、強力なネットワークを築いています。そのため、シリコンバレーで起業を志す日本人も多いで…
詳しくみるコテージを経営するには?メリットや費用、許認可・資格、始め方などを解説
コテージの経営には、使用していない期間に収益を得られるというメリットがあります。しかし、始め方がわからない、経営にかかる費用やデメリットが気になるという人もいるでしょう。 本記事では、コテージ経営の始め方やメリット・デメリットを解説します。…
詳しくみる