- 作成日 : 2025年4月25日
海外で資金調達するには?クロスボーダーローンなどの方法やリスクを解説
海外での資金調達は、事業拡大や子会社の設立、スタートアップ企業が海外進出をする際に、必要となるケースがあります。
本記事では、海外の銀行からの融資以外の手段を解説し、海外進出の際に検討できる主な資金調達方法を紹介します。
目次
海外での資金調達が必要とされるケース
海外進出は、事業規模拡大の期待が持てる一方で、リスクも存在します。また、海外事業を円滑に進めていくには資金の準備も必要です。ここでは、海外で資金調達が必要なケースを紹介します。
海外事業の拡大
海外事業を拡大するメリットは、新しい顧客層の開拓です。すでに海外展開を行っている企業が、海外事業をより拡大させるために資金調達を必要とするケースが考えられます。海外のパートナーと協業して事業を拡大する手段もありますが、いずれにしても販路を広げるにはまとまった資金が必要です。
海外子会社(現地法人)の設立
コスト削減に加えて、事業の現地化や市場参入の加速といったメリットを踏まえたうえで、企業が海外子会社といった現地法人を設立するケースがあります。子会社を設立する国や地域によっては、経済活性化の一環として税制優遇の対象となる場合があるでしょう。さらに、原材料や労働力のコストが比較的安価という地域を選ぶことで、全体的なコスト削減にもつながります。
ただし、海外子会社を設立するには、さまざまなコストが発生し、現地法人の設備投資や人材採用にかかる費用が発生します。そのため、現地での資金調達が求められる場合もある点を、視野に入れましょう。
スタートアップ企業の海外進出
スタートアップ企業が急成長する方法の一つとして、国内での大きなシェアの獲得や海外市場への進出が考えられます。
海外進出は、短期間で大規模な市場シェアを獲得するのに有効です。早期に海外進出を図り、市場を開拓していくことで、世界をけん引するユニコーン企業への成長も目指せる可能性が生まれるでしょう。
国内でも、日本の競争力を強化するため、海外進出を支援する施策が打ち出されるようになりました。スタートアップ企業が海外での急成長を実現するには、多額の資金が必要です。そのため、海外での資金調達は、資金面での海外進出の課題をクリアするのに役立ちます。
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海外進出での代表的な資金調達方法
ここでは海外進出による主な資金調達方法を紹介します。
親子ローン
親子ローンは、日本にある親会社が金融機関から融資を受けて、海外の子会社に資金を貸し付ける方法です。海外で資金調達をするなどといった他の方法と比較すると、事務手続きをスムーズに進めやすいメリットがあります。
親子ローンはグループ間の資金融通ですが、海外子会社から受け取る利息の適正な設定が必要です。適正な金利を下回る低い金利でやり取りをした場合、親会社側に移転価格税制が適用され、移転価格課税が行われるリスクがあります。なお、適正な金利の設定については、親会社側の調達金利に基づきます。
なお、親子ローンは基本的に日本円で貸し付けることから、海外子会社において現地通貨に交換する際の為替リスクが生じる可能性があります。子会社への貸し付けや子会社からの返済時には送金コストも必要です。
スタンドバイ・クレジット
スタンドバイ・クレジットとは、融資の保証を目的とした信用状(スタンドバイ・クレジット)を活用する資金調達方法です。日本政策金融公庫や銀行などで提供されています。
日本の親会社は、金融機関に信用状の発行依頼を行い、金融機関より審査を受けます。同時に、海外にある法人は、提携する現地の金融機関で融資の申込みをします。審査完了後、信用状をもとに現地の金融機関から融資を受けられる仕組みです。
信用状は債務不履行になったときの保証を約束しているため、現地でのスムーズな融資に役立ちます。基本的に現地通貨での融資となるため為替リスクの回避になるほか、現地での融資の実績を積めるというメリットがあります。ただし、現地での借入利息の支払いに加え、保証契約を締結した親法人側にも保証料が発生することに注意しましょう。
クロスボーダーローン
クロスボーダーローン(現地貸付)とは、日本国内の親会社が借入を申込み、その信用情報をもとに日本の金融機関が海外の現地法人に直接融資する方法です。親会社には、連帯保証人の義務が生じます。
クロスボーダーローンの主なメリットは、親会社の財務バランスに影響が生じないことです。借入と返済は金融機関と現地法人との間で行われるため、親会社の財務バランスの悪化を免れます。一方、デメリットは、他の資金調達方法と比べて手続きが煩雑になりやすいことです。対象地域も限られているため、クロスボーダーローンを利用できない場合もあります。
海外リース
海外リースは、現物の調達をする際に有効な方法です。日本国内の親会社は、海外リースサービスを提供するリース会社、または現地にある日系リース会社と提携している金融機関からリース物件を紹介してもらう仕組みとなっています。
海外にある現地法人は、リース会社の現地法人または提携先の日系リース会社とリース契約を結び、対象の物件や設備をリースします。これは、現地法人での機械の導入などを検討している場合に利用できる方法です。リース会社や金融機関によっては、リースバックによる資金調達に対応していますが、対象の国や地域などが限られるという注意点もあります。
海外の銀行からの融資
現地法人が現地の銀行から直接融資を受けるのも、選択肢の一つです。ただし、現地の銀行と契約を締結する場合、言語などのコミュニケーション面での課題が生じる場合があります。現地の銀行の中には、日本企業向けの融資に対応できるよう日本語対応スタッフを採用しているケースもあるため、日本企業向けのサービスの有無を確認しておきましょう。
現地法人が現地の銀行を利用するメリットは、現地通貨で融資を受けられるため、相場によっては為替リスクを回避できる場合があることです。ただし、現地に十分な担保がない状態で申込むと、融資を断られるリスクがあるため、あらかじめ現地の金融規制や法改正の情報も把握することが重要です。
海外投資家からの資金調達
海外投資家から出資を募る、または海外投資家向けに社債を発行する方法もあります。各国市場に上場して出資を募る場合は市場の規制を受けるため、私募の形で資金調達をするのが一般的です。
海外投資家から資金調達をするメリットは、国内では難しい大規模な資金調達の可能性があることです。ただし、日本の親企業が海外投資家から出資を受ける場合、外為法により事前届出審査が必要になることがあります。
海外での資金調達の流れ
海外進出での資金調達として、日本国内または海外の金融機関を利用する、海外から出資を募るといった2つの方法があります。海外で資金調達をする場合、一般的には以下のような流れで資金調達を行います。
- 現地の政治の動向や規制を確認しておく
- 投資家動向など現地の金融市場の情報を集める
- 資金調達のパートナーを選定する
- 契約に関して現地の法務・会計事務所を活用する
- 自社に適した資金調達を実行する
海外での資金調達で注意しなければならないのは、日本とは異なる法令や慣習、市場動向です。進出する国や地域によって、政治的なリスクや為替リスクが事業に大きな影響を与える可能性もあるため、その点を見据えて動くことが大切です。
海外進出での資金調達を成功させるポイント
海外進出で資金調達を成功させるための主なポイントを2つ紹介します。
現地の法規制や税制を理解する
海外の国や地域と日本の法令または税制は異なります。資金調達をスムーズに実行するためにも、現地の法規制や税制などを必ず理解しましょう。現地で資金調達のサポート役になるパートナーやプロフェッショナルを選定して、資金調達の準備を進めます。
また、日本の親会社から現地の子法人に出資などをする際にも注意が必要です。日本の親企業は現地では外国資本となるため、投資規制や外国資本比率の制限を受けることがあります。海外に子会社を設立する方法だけでなく、委託販売やフランチャイズなどといったいくつかの海外展開の方法があるため、法規制や資金調達のしやすさなども踏まえて自社に適した方法を選択しましょう。
為替リスクに注意する
為替リスクとは、為替相場が変動することによって生じる外貨取引のリスクです。例えば、現地法人に日本円で送金を行い、現地法人が現地の通貨に交換する場合などに、送金時よりも資産が減少することがあります。特に、政治的な不安などが影響して為替リスクが高いとされている国や地域では、為替リスクが生じる資金調達を慎重に検討することが必要です。
海外進出での資金調達は計画的に
海外進出に伴い海外の子会社に資金を集めたい場合、現地の法規制や税制などが絡むことがあるため、必ず法制度の確認を行いましょう。また、国内での資金調達とは異なる手順を踏むことも理解しておきましょう。海外進出を本格的に検討する際には、資金調達まで見据えたうえで、入念な準備を進めることが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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