- 作成日 : 2025年3月27日
法人登記には部屋番号やビル名の記載が必要?移転や削除したい場合の対応も解説
法人登記をする際は、住所に部屋番号やビルの名前まで記載するか、自由に決められます。本記事では、法人登記において部屋番号やビル名を記載するメリットとデメリットについて解説します。
また、部屋番号やビル名まで記載する際の注意点や登記後に削除したくなったときの対処法まで取り上げるため、ぜひ最後までご覧ください。
目次
法人登記にはビル名や部屋番号まで記載するべき?
法人登記とは、会社の概要を一般に公開し、法人として認めてもらうための公的な手続きです。法人登記の目的には、「会社の情報を公開することで取引先の信頼を勝ち取りビジネスを円滑に進めやすくする」「融資を受けやすくする」などが挙げられます。
法人登記の書類には会社名をはじめ、本店所在地や代表者住所などを記載する項目があります。その際、必ず書かなければならないのは本店所在地の番地までです。
たとえば、東京都新宿区△町1丁目2番3号いろはビル405号室に会社本店がある場合、「東京都新宿区△町1丁目2番3号」まで記載しなければなりません。番地以降のいろはビル405号室を記載するか否かは、完全に任意です。
なお、建物名のいろはビルだけ、または部屋番号の405号室だけ記載しても問題ありません。
登記簿にビル名や部屋番号まで記載するメリット
法人登記の際、登記簿にビル名や部屋番号まで記載するか否かは自由です。そもそも、ビル名や部屋番号を記載すると、どのようなメリットを享受できるのかわからない方も多いでしょう。
以下では、登記簿にビル名や部屋番号を記載するメリットについて解説します。
郵便物が確実に届く
メリットの1つとして、郵便物が確実に届くことが挙げられます。ビル内に所在地がある場合、配達員がどこへ郵便物を届ければよいかわからなくなることも少なくありません。
郵便物が確実に届かないと、業務に支障が出る可能性があります。たとえば、仕事で使用する道具が届かなければ作業を進められず、全体の工程に深刻な影響が出かねません。また、取引先から重要度の高い荷物を届けられたにもかかわらず、受け取りに失敗した場合、損害賠償請求にまで発展するリスクもあります。
郵便物にまつわるトラブルを避けたいのであれば、法人登記の際はビル名や部屋番号まで記載した方がよいでしょう。法人登記しない場合でも、会社の公式サイトや名刺には記載するのをおすすめします。
イメージアップにつながる
ビルの名前によっては、会社のイメージアップにつながります。会社を始めるにあたって、所在地を置く住所がどこかは重要なポイントです。
会社の所在地が一等地にあれば、それだけで一定の信頼の基礎となります。そのため近年は、銀座や丸の内、虎ノ門など、立地のよさを売りにしているレンタルオフィスやバーチャルオフィスなどのサービスも登場しています。
もし立地のみならず、ビルそのものにブランド力があれば、信用性やイメージが向上するでしょう。その場合は、ビジネスを有利に進めるためにも、積極的に法人登記の際にビルの名前を記載した方がよいです。
登記簿にビル名や部屋番号まで記載する注意点
法人登記の際、ビルの名前や部屋番号まで記載することで、さまざまなメリットをもたらします。しかし、もたらされるのはメリットばかりではありません。
以下では、ビルの名前や部屋番号まで登記簿に記載すると、どのようなデメリットが発生するかについて解説します。
プライバシーの問題
法人登記の際、ビルの名前や部屋番号まで記載するデメリットとして、プライバシーの問題が発生する点が挙げられます。登記の際に記録した情報は、不特定多数の人間に公開されますが、そのなかには、悪意を持って情報収集を行っている人間もいるかもしれません。
とくに自宅が事務所も兼ねている場合は、ビルの名前や部屋番号まで記載するのはおすすめしません。なお、2024年10月1日からは、プライバシー保護の観点から住所をはじめ法人登記した情報の一部を非公開にできるようになっています。
ただし、非公開にできるのは登記申請のタイミングのみ、対象となるのは株式会社の代表取締役のみなど、制限が多く設定されている点に注意しましょう。
会社のイメージが悪くなる可能性がある
場合によっては、会社のイメージが悪くなる可能性があるリスクがあります。すでに言及しているように、住所は会社の信頼性にもかかわる重要なポイントです。
もし会社の本拠地がとくにブランド力もないビルにあると判断されてしまうと、零細企業の烙印を押されかねません。一度ついてしまったイメージを払拭するのは容易ではなく、以降のビジネスに影響が出る恐れがあります。
ごく普通のビルの一室をオフィスとして利用している場合は、あえてビル名や部屋番号を記載しない方がよいかもしれません。
ビル内で移転する際にコストがかかる
同じビル内で移転した場合、コストがかかってしまう点も見逃せないデメリットです。部屋番号が変わってしまうと、同じビルに本店があっても本店移転登記をしなければなりません。
本店移転登記とは、登記している本店住所を変更するための手続きのことです。同じ法務局の管轄エリア内で移動する場合も、3万円の登録免許税がかかります。期限は、移転日から2週間です。
なお、本店移転登記が遅れてしまうと、100万円以下の過料の制裁が課される可能性があります。高確率で移転する場合は、ビル名や部屋番号の登記は避けた方がよいでしょう。
記載したビル名や部屋番号を削除したい場合の対応方法
登記簿にビルの名前や部屋番号を記載したものの、あとから削除したくなる方もいるでしょう。その場合は、法的な手続きが必要です。
具体的な手順は、以下のとおりです。
- 本店の変更登記申請の準備をする
- 書類を用意する
- 提出する
本店移転登記申請書は、法務局の公式サイトからダウンロードしましょう。記載する内容のうち、登記の事由や登記すべき事項でミスが発生しやすいため、書類を作成する際は注意してください。もし提出した書類に不備があった場合、修正や再提出のために法務局の窓口へ何度も足を運ばなくてはなりません。
書類の提出方法は直接法務局の窓口へ届ける、郵送、オンラインなどがあります。そのなかから、自分にとって都合のよい方法を選択しましょう。
同じビル内で本店が別の部屋に移転した場合の対応方法
もし同じビル内で部屋の移動が発生したときは、本店の変更登記申請をしましょう。基本的な流れは、記載したビル名や部屋番号を削除したい場合の対応方法と同じです。
なお、登記の際ビル名や部屋番号は記載していないのであれば、とくに特別な手続きをする必要はありません。ビル名や部屋番号を追加で記載したいときだけ、再度法人登記をしてください。
記載したビル名称が変更された場合の対応方法
オーナーの変更をはじめ、登記簿に記載したビル名が変わってしまうケースも多いです。その場合も、本店の変更登記申請で対応できます。
なお、本店の変更登記申請は、司法書士をはじめとする専門家に依頼することも可能です。ただし、専門家に各種手続きを任せるときは、委任状を用意しなければなりません。
メリットとデメリットを比較して部屋番号まで記載するか決定する
以上、法人登記における部屋番号の扱いについて取り上げてきました。部屋番号まで法人登記することで、荷物が確実に届く、住所次第で会社の箔がつくなど、さまざまなメリットが享受できます。
その一方で、個人情報の保護が困難になる、場合によっては会社のイメージが悪くなるなどのデメリットもあります。両者を比較したうえで、住所を記載するか否か決定しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
自宅の住所で法人登記できる?メリット・デメリットや住所のみ借りる方法を解説
自宅の住所を会社の所在地として法人登記することは可能です。自宅を所在地とすることで、コストを抑えられるなどのメリットがあります。しかし、賃貸や分譲マンションの場合は登記をするうえでのさまざまな注意点があります。 自宅を法人登記するメリットや…
詳しくみる佐賀県で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説
佐賀県で起業をする場合、特定創業支援等事業や補助金・助成金など様々な支援制度を利用することができます。この記事 では、佐賀県で起業を考えている方が利用できる様々な支援制度について、その内容や活用方法を詳しく解説します。 佐賀県の特定創業支援…
詳しくみる社内起業(社内ベンチャー)とは?メリット・デメリットや作り方・資金調達を解説!
大企業は、なぜ急激に変化するマーケットに柔軟に対応できるのでしょうか。それは、社内起業(社内ベンチャー)という仕組みがあるからです。社内起業とは、自社の中で独立した組織を立ち上げることです。 では、社内起業はどのような仕組みで機能しているの…
詳しくみる起業後に発生する税金は何か?
起業時には、個人事業主として開業するか、法人を設立して開業するかで、発生する税金と届出書類が異なります。それぞれの場合の具体的な内容について、確認します。 個人事業主として起業した場合にかかる税金と手続き 個人事業主として起業した場合にかか…
詳しくみる福井県で受けられる創業支援は?補助金や融資、相談窓口などを解説
福井県では、資金調達、相談体制、事業拠点の提供、専門家による支援など、起業を志す方々を後押しする多彩な制度や窓口が整備されています。これらの支援をうまく活用することで、創業の準備段階から事業展開、そして安定経営への道筋を描きやすくなります。…
詳しくみる必ず押さえておくべき起業のリスク一覧と対処法まとめ
個人事業主にせよ法人組織にせよ、新たに事業を始める際にノーリスクというわけにはいきません。事業が失敗して借金だけが残った、起業しただけで与信が通りにくくなった、などのリスクが考えられます。ご自身の家族を「起業のリスク」から守るためにも、覚え…
詳しくみる