• 更新日 : 2020年9月17日

「ヴィトン爆買い」経理女性の3億円横領疑惑 社長は気づかないもの?

会社のお金に関する事件が定期的に大きな話題になります。この原稿を書いているたった今もネットやテレビは日産のゴーンさんの話で持ちきりです。とはいえちょっと話が大きすぎて個人的にはあまり興味がわかないのが実際のところ。今のところ税金の論点でもないですし。

それに対して最近私の心に妙に引っかかったのが、会社から多額のお金を横領して“ヴィトンを爆買い”したと言われる経理の女性のお話です。(執筆者:税理士 高橋創)

経理に“お金を丸投げ”する社長はいる

税理士として様々な会社を見ていると、業種や規模の違いを超えたそれぞれの会社の個性が見えてきます。従業員の評価方法、情報の扱い方、金融機関からの借り入れについての考え方など、千差万別でとてもおもしろいところです。

その中でも個人的に一番興味深いのが、社長の「お金」についての考え方の違い。「金銭感覚」ではなく、お金そのものについての関わり方です。

振込から入金確認まで、会社のお金に関することはすべて自分でやらなければ気がすまない社長もいますし、経理担当者にお金関係を丸投げにしている社長さんも少なからずいます。

問題を起こした政治家が「お金関係は全部秘書が……」などと苦しそうに釈明をしているのを見て、昔は「ホントは知ってたんじゃないの?」という見方をしていたりもしました。でも、お金のことは人にまかせっぱなしの社長たちの存在を知った今は、似たような政治家であれば「何も知らない」ということもあるのだろうなと思います。

これはもう、どちらが良い悪いの話ではありません。それでうまく回っているのであれば「あの会社は社長がすべて管理しているから安心だ」ですとか「あの社長はスタッフを信頼している」といったように良いように解釈してもらえますし、何か問題があれば「だからダメなんだよ」と言われる。もう結果論ですよね。

3億円の横領疑惑…社長は気づかないもの?

さて、今回その「信頼」が完全に裏目に出てしまったのが神和商事という会社。経理担当の56歳女性が、会社の金2,900万円を着服したとして逮捕・起訴されたのです。同社社長は、実際の被害総額は3億円にも及ぶと訴えます。その経理女性はルイ・ヴィトンのバッグや時計、挙げ句は恋人と会うための一軒家など、相当な買い物をしていたようです。

こういう報道がされると当然のように「なんで社長は気づかなかったのか?」という疑問が頭をよぎります。そりゃそうです。3億ですから。普通に考えたら気づくのではないかと考えます。

ですが、経理担当者を絶対的に信頼してお金周りは任せるという会社のスタイルであったならば、気づかないことも充分にありえると個人的には思います。経営的にもうまくお金が回っていて、日常的に簡単な報告だけを聞くような形を取っていた場合、うまいことごまかした報告をされてしまっていたら見抜けないこともあるかもしれません。

筆者の事務所も「類似点がいっぱい」

人によっては「社長は無能なのでは?」と考えるかもしれません。しかし、そもそもそれだけのお金があること、3億円も横領されても経営ができていることなどを考えると、経営者として無能ということはなかったように個人的には思います。注力する部分が経理ではなかったというだけで。

どちらかというと「税理士は気がつかなかったのかな」とも考えてしまいますが、そこはもうこの女性が一枚上手だったんでしょうね。資料も説明も完全にアリバイ工作をされたら税理士としても気づくのは難しいんですよね。頑張らないといけないところではあるのですが。

と、ここまで書いてきて、なぜこの件が私の心を鷲掴みにしたのかわかったような気がします。私自身、細かいお金の計算が得意ではありませんので(税理士としてどうかと思いますが……)、事務所の金銭の管理は家内にまかせ、私は営業や申告書作成を頑張るスタイルです。

その結果、私は事務所の銀行口座のキャッシュカードは持っていますが、通帳はここ数年見たことがありません。何かあれば報告は受けているし、なんとなくお金も回ってるからいいんじゃないかと思っている。そう、類似点しか見当たりませんので気になったわけですね。とりあえず、家に帰ったら高そうなものが押し入れに潜んでいないか探してみようと思います。

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