• 作成日 : 2020年7月7日

飲食業の会計・経理業務とは?

飲食業の会計は、レジで現金を預かる形式のほか電子マネーなど複数の決済方法があり、複雑になりがちです。しかし会計を適切に仕訳して分析することで、経理を経営判断に活かせます。
この記事では飲食業界の抱える課題や売上の計上タイミング、決算などにおける経理上の注意点についてご紹介します。
    

飲食業界とは?

飲食サービス業とは、日本標準産業分類において「主として客の注文に応じ調理した飲食料品、その他の食料品又は飲料をその場所で飲食させる事業所並びに、客の注文に応じ調理した飲食料品をその場所で提供又は客の求める場所に届ける事業所及び客の求める場所において、調理した飲食料品を提供する事業所」と定義づけられています。飲食サービス業には、レストランなどその場で酒類や料理を提供する飲食店だけでなく、その場所で調理した飲食料品を持ち帰る状態で提供する事業所、宅配ピザ・ケータリングサービスなどが含まれます。

飲食業は、経営判断すべき内容が多岐にわたります。たとえば従業員の労務管理をはじめレジや売上帳簿の効率化、新規顧客の獲得、リピーター化などは欠かせないものです。特に個人店における会計・経理業務は、大きな負担になることもあるでしょう。

新型コロナウィルスの影響を受けた現代では、飲食店の業態が大きく変わることが予想されます。店内に準備した座席だけで飲食物を提供していた店舗でも、今後はデリバリーをはじめ、物販やSNSなどを活用した新しい飲食サービスを提供する機会があるのです。

ここで説明するのは、いわゆる従来型の店内飲食における飲食業の経理方法ですが、手堅い土台を築いておけば、新たな商品提供が始まったとしても大いに役立つでしょう。

小さな飲食店における売上のタイミングについて

飲食店の多くは現金での売上が基本で、売上は退店、商品等引渡し時に計上されるのが原則です。飲食が終わった時点で顧客の注文やテーブル番号などを記載した「会計伝票」の情報をレジスタに打ち込み、代金を受取り、おつりやレシートを発行します。つまり、顧客の飲食終了後すぐに売上が確認できるということです。

当日のレジ締めでは「会計伝票」とレジスタの金額が一致していることを確認し、会計伝票と残金の不整合がないかを見極め会計ソフトに売上高を計上するのが一般的です。

なお、レジには翌日必要となる現金だけを残して、現金は金融機関の夜間金庫などで保管することもよく見受けられます。会計ソフトなどの売上管理と、それに伴う現金管理は飲食店の生命線ともいえるでしょう。

一方、キャッシュレス・ポイント還元事業の影響により、クレジットカードや電子マネー、QRコードに対応する店舗も増えてきました。

Airレジ、スマレジ、ユビレジなどのPOSレジシステムは、いくつかのクラウド会計システムと連動可能です。また、クレジットカードや電子マネー決済を利用するケースでは、POSレジシステムで管理する店舗も増えてきています。

しかし、単にシステムを導入しても、使い方に慣れなかったり管理が追いつかなかったりして負荷が増える可能性があります。導入にあたっては、移行時期や対応する電子マネーの種類、会計連携のタイミングなどをよく検討しなければなりません。

可能であればPOSレジシステムの無料プランを活用し、店舗の運用に合っているか検討するのもおすすめです。

飲食店における決算で気をつけることとは?

飲食店の財務諸表の傾向を見てみましょう。

飲食店の損益計算書は、売上原価として食材や飲料の仕入、販売費及び一般管理費として従業員の給与とそれ以外の経費が計上されます。

水道光熱費が多い場合には、水道、ガス、電気等と分けて計上するほうが繁忙期や季節性が分かりやすいこともあるでしょう。

販売費及び一般管理費の科目には、この例以外にも広告宣伝費通信費減価償却費等が発生する場合があります。

また、飲食店で提供する商品によっては、製造原価報告書を作成して、提供する商品の原価内容が分析できるようにしたほうがよい場合もあるでしょう。

損益計算書の元となるデータは、エクセル等で管理するほかPOSレジシステム、会計ソフトに実績値を入力する方法などがあります。

損益計算書はいわば飲食店の経営結果です。適切な経営判断をするには、売上計画や仕入計画をたてたうえで実績値と比較検討し、軌道修正しながら経営を進めることが望ましいでしょう。

決算が近づいたら、どのような決算書になるのかを予め予想しておくと問題点を見つけやすくなります。

飲食店における経理業務の注意点とは?

飲食業では、食材を仕入れて人を雇いながら切り盛りするのが一般的です。この状態を経理上の指標として表したものがFLコストで、F(食材費)とL(人件費)を合計して算出できます。さらにこのFLコストが売上のどれぐらいを占めているかをFL率といいます。

FL率 =((F:食材費) + (L:人件費)) ÷ 売上高

一般にFL率は60%前後が望ましいといわれています。

また、店舗の売上は立地に大きく左右されます。店舗の家賃を考慮する場合には、食材費、人件費に賃料(Rent)を加え、FLRコストやFLR率を求める場合もあります。

また、最終的に得られる利益として光熱費などの販売管理費を差し引き、営業利益率を算出する場合もあります。

営業利益率 = (売上高 - FLコスト - その他販売管理費 ) ÷ 売上高

経理業務そのものは申告等に直結する重要な業務ですが、それより前に店舗の存続にかかわるデータの元となることに注意が必要です。

飲食業の場合、経理業務は極力短時間で終わるようにシステムの導入等で工夫をし、経営に直結する数字の見える化をめざしましょう。

適切な会計・経理業務を経営判断に役立てよう

飲食業は店内飲食のほかテイクアウトなど新しい業態が増えてきています。それでも経理上大切なことは大きく変わりません。会計はレジや会計ソフトなどを用いていかに漏れなく、効率的に管理するかがカギといえます。まとめた情報は、経理業務申告等に直結するほか経営判断にも役立つ重要なものです。

そのため、もし特殊な販売方法や決済方法をとる場合には、あらかじめ税理士などの専門家に助けを求め、思い描く営業がスムーズにいくか点検してから進めたほうが無難でしょう。
   

※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:岡 和恵 (税理士 / フィナンシャルプランナー AFP)

大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。その後、システム会社に転職。
システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。
2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。

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