• 更新日 : 2024年1月15日

管理会計とは?財務会計の違いから企業会計を解説

管理会計とは?財務会計との違いや企業会計の基礎知識をわかりやすく解説!

会計とは、経済活動による収支を認識して記録し、利害関係者に対して報告をするまでの行為全般を指します。会計は管理会計と財務会計の2つに大きく区分されており、会計の目的に応じて処理方法が異なります。

管理会計は経営者などが企業をマネジメントするための会計、財務会計は利害関係者に財務状況を報告するための会計です。法律上の義務から、すべての会社は財務会計を行う必要がありますが、管理会計は義務ではないため、会社によって導入状況ややり方が異なります。

今回は、管理会計と財務会計の違いから、管理会計を取り入れるメリット、管理会計の業務について見ていきましょう。

管理会計とは

管理会計は英語で「Management accounting」といい、経営者が企業をマネジメントするために必要な情報をまとめた会計を指します。ここでいう「経営者」とは、社長・取締役などの役員や、管理者(管理責任のある従業員)のことを指します。

管理会計では、現在の会社の状態把握や将来の変化予測を会計を通じて行います。経営においてどのような情報を重視するかは経営者によって異なりますので、管理会計には画一化された形式はありません。取り入れる情報の種類や精度、期間などは企業の任意によって決定されます。

管理会計の目的と必要性

管理会計の目的は、経営者の意思決定に必要な情報提供を行うことにあります。管理会計における代表的な資料には、過去の実績から未来の予算を策定するための「予算管理」、予算と実績を比較し、経営上の問題を洗い出す「予実管理」、経営状況を数値で表し、企業の状態を客観的に判断する「経営分析」などが挙げられます。管理会計により行われる管理や分析は、過去と未来の比較から会社の方針を見極めるために必要です。到達できると思っていたところまで実際に到達できたのか、できなかったなら何が原因なのかと、過去から現在までの過程の中に潜む課題を会計的な観点から洗い出し、改善に向けたアクションを起こすための材料とするのです。

管理会計を導入するメリット

管理会計の導入は任意ですので、全く取り入れなくても法的な罰則はありません。それでもなお、多くの企業は積極的に管理会計を取り入れているのでしょうか。管理会計を導入する4つのメリットを紹介します。

セグメントごとに評価できる

会社やグループ会社の売上、利益、財務状況などを、事業単位別などに区分した情報をセグメント情報といいます。上場企業においては、情報開示のためにセグメント情報を開示していますが、このようなセグメント情報は管理会計においても活用できます。

管理会計による分析は事業単位以外にも、部門別、サービス別、製品別などにセグメント情報をまとめ、分析していくことが可能です。

セグメント分析を行うことで、財務諸表からは見えてこなかった、サービスや製品別の利益状況や売上の伸び、債権の回収状況などが見えてきます。既存のサービスを拡大あるいは縮小すべきか、どの分野に力を入れていくべきか、今後の会社の方向性を決定するのにも大いに役立つでしょう。

経営状況を定量的に評価できる

管理会計では、財務諸表などの数値を用いた指標を通じた経営分析が行われます。

経営分析に活用される代表的な指標には、自己資本の割合から企業の安全性を見る自己資本比率営業利益に対する売上の割合を見る売上高営業利益率、資本の活用度合いを見る総資本回転率などがあります。

これらの指標は、財務諸表などの数値から抽出して算出されますので、経営状況を客観的かつ定量的に評価できます。

コスト管理がしやすくなる

セグメント情報などを活用することで、製品やサービス別の予算の設定や予算の達成具合を把握できるようになります。製品の開発やサービスの運用それぞれにかかったコストが明確になるため、コストの投入量や費用対効果といった判断がしやすくなり、コスト管理やコスト削減にもつながります。

資金繰りを把握し経営に役立てられる

管理会計の手法としては、資金繰り表の作成などによる資金繰り管理もあります。資金繰り管理とは、会社の資金の流れを重点的に管理し、財務諸表の数字だけでは追えない資金繰りの状態を把握することです。

管理会計で資金繰りを常に把握できるようにしておけば、資金調達などの経営判断に役立つほか、会社の資金が大きく不足してしまうことによる黒字倒産の防止にも役立ちます。

管理会計の業務

管理会計の主な業務には、経営分析、予実管理、資金繰り管理、原価管理があります。それぞれの業務の内容について見ていきましょう。

経営分析

経営分析とは、財務諸表や調査報告、特殊調査などの情報をもとに経営状態を把握するために行われる分析です。経営分析では、自己資本比率などのさまざまな指標を用いて会社の状態を分析し、あらゆる角度から経営の状況を把握していきます。

経営分析で使われる指標の大まかな区分は、収益性の分析、安全性の分析、生産性の分析、効率性の分析、成長性の分析、損益分岐点の分析、債務償還能力の分析の7つです。

経営分析を行うことで、自社がどのくらいの収益を上げ、どのくらい安全に資産運用をできているか、といった自社の状況を客観的に把握でき、強みになる部分や課題を抽出できます。

予実管理

予実管理とは、経営目標に合わせて設定した予算と、それに対する実績を把握する管理方法です。予実管理表などの資料を作成して予算と実績(予実)の比較が行われます。

予実管理を実のあるものにするには、適正に設定された予算値に対し、実績の変化をリアルタイムに追えるような管理の仕方が理想的です。実際の管理会計の現場では、予算に対して会計ソフトなどのデータを紐づけて予実比較が行われることもあります。

予実管理を行うメリットは、予算と実績を把握することで、予算の未達となった原因を分析して、次の目標達成に向けて軌道修正を行える点にあります。この予実差は実績の低迷にあるだけでなく、過剰な予算設定が原因となる場合もありますので、予実差の比較はあらゆる角度からの分析に有効であるといえます。

資金繰り管理

資金繰り管理とは、会社の入出金の流れを把握し、会社の運転資金に不足が出ないようにする管理を指します。

財務諸表上は利益が計上され、資産も十分にあるように見えても、売掛金や未収金など、即座に現金化できない債権が多く、自社の支払時に必要な現預金が確保できないというケースもあり得ます。

資金繰り管理は、債権の現金化のタイミングや支払債務の存在を明確にし、会社の現預金の流れと照らし合わせることで、今後の資金調達の調整に役立てられます。

原価管理

原価管理とは、製品やサービスを提供するためにかかっているコストの適性を判断し、コストの改善を行うための管理です。原価計算表などを使用し、原価の目標値と実績値の管理を行います。

例えば、製造業では製品を作るのに必要な原料や部品、製造に関わった人員の人件費、製品を作る工場の水道光熱費や機械などを製造コストとして計算し、管理しています。

財務会計とは

財務会計における決算報告書
財務会計とは、企業外部の利害関係者(投資家・債権者・税務署など)に対して、企業の財務状況を報告するために行う会計のことです。
報告にあたっては会計基準に準拠した決算報告書を作成し開示します。

財務会計の目的

財務会計の目的は、企業外部の利害関係者(ステークホルダー)に企業の財政状態と経営成績を開示することにあります。

財政状態とは、決算日においてその企業の所有する資産や負債などの状況のことで、経営成績とは決算日が含まれる会計期間内に生み出した利益による影響を指します。

財務状況の開示にあたっては、企業が決算報告書を作成しなければなりません。決算報告書は財務諸表ともいわれ、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書などが含まれます。

貸借対照表は、決算日(会計期間末)時点における企業の資産、負債、純資産額が示す財政状態を示すものです。

損益計算書は、期首から決算日までの収益と費用を示し、差額を経営成績として明示する書類です。

キャッシュフロー計算書は、期首から決算日までの資金の出入とその理由を示し、企業の資金の流れと決算日時点の現預金の額を示すための書類です。なお、キャッシュフロー計算書は上場企業の決算では作成が義務付けられていますが、中小企業の決算では提出の義務はありません。
財務諸表について詳しく知りたい方は以下のリンクをご参照ください。



財務会計が持つ2つの機能

情報提供機能

情報提供機能とは、利害関係者に対して、投資の意思決定のために有用な情報を提供する機能です。

例えば、ある企業に投資家が投資するかどうか判断する際、何も情報がない状態では投資判断はできないでしょう。しかし、財務諸表などの情報があれば企業の分析を行えるため、投資判断を行うことができます。

もう1つの例として、ある企業へ銀行が融資(貸付)するかどうかの判断をする際、銀行は企業の財産や返済能力、収益力などを把握するために、財務諸表から情報を把握します。

利害調整機能

利害調整機能とは、利害関係者間の利害を調整する機能です。

考えられる利害には、利害関係者の立場によってさまざまなものがありますが、その中から具体例を2つ解説しましょう。

1つ目は株主と経営者の利害です。

株主は、自分が企業に投資した資金が適切に運用されることで、配当を得たり株が値上がりしたりすることを期待しています。

一方の経営者は、株主が投資したお金を、自分の役員報酬を上げる目的や交際費として使ってしまうことがあるかもしれません。

これらの利害について株主に財務諸表を開示することによって、経営者が適切に資金を運用したことを報告でき、結果として利害を調整します。

2つ目は株主と債権者(企業の仕入先や銀行)の利害です。

株主は、会社の資金を少しでも配当してほしいという期待を持っています。

それに対して債権者は、もし会社の資金が無くなり、返済されなければ困ってしまうでしょう。

そこで、株主と債権者へ財務諸表を開示することにより、株主はどの程度の配当を期待できるか、また債権者は返済を受けられるかどうかを確認でき、結果として利害を調整します。

管理会計と財務会計の違いとは

管理会計と財務会計の違いは、以下の通りです。

  • 管理会計:経営者が経営管理をするための社内向けの会計
  • 財務会計:財務状況を伝えるための社外向けの会計

さらに管理会計と財務会計を比較すると、以下のようになります。

管理会計
財務会計
利用者
社内
経営管理者(経営者・管理責任のある従業員など)
社外
利害関係者(投資家・債権者・税務署など)
目的
経営管理に役立つ財務状況を伝える
内容
企業の任意で取り入れる会計基準に準拠する
書式
任意の資料やレポートなど財務諸表
集計単位
金額・kg・ℓなど任意金額
対象期間
任意の期間
(1年・1カ月・週など)
会計期間
(原則として1年。上場企業は四半期ごとに開示あり)

管理会計は任意で取り入れるもので、経営者が経営管理をする目的で行うため、企業によって詳細は異なります。
一方の財務会計は基本的にすべての企業で取り入れます。財務会計は企業の財務状況を外部に伝える目的があるため、会計基準に準拠した財務諸表を作成しなければなりません。
また、管理会計と財務会計には、扱う情報によって以下の違いがあります。

  • 管理会計:未来の情報
  • 財務会計:過去の情報

管理会計はこれからの計画や予算を見積もり、経営管理するための未来の情報を扱います。財務会計では、それまでの取引や事象といった、過去の情報を会計として記録・集計します。

企業会計は財務会計と管理会計に分かれる

冒頭でも述べましたが、企業の財産や経営成績を算出するための手続きを企業会計といいます。企業会計は目的によって、財務会計と管理会計に分かれます。
以下では、財務会計の前提である企業会計原則について簡単に解説します。興味のある方はこちらも参考にしてください。

企業会計原則とは

企業会計原則とは、企業会計(財務会計)の実務の中から一般に公正妥当と認められるところを要約し設定したもので、財務会計を行うにあたってすべての企業が従うべき規範です。
企業会計原則には7つの一般原則と、一般原則に準ずるもの(以下の8番目)があります。

  1. 真実性の原則
  2. 正規の簿記の原則
  3. 資本取引・損益取引区分の原則
  4. 明瞭性の原則
  5. 継続性の原則
  6. 保守主義の原則
  7. 単一性の原則
  8. 重要性の原則

この中でもとりわけ重要なのが真実性の原則です。これによって、粉飾決算や虚偽記載のような偽りの会計をしてはいけないと定められています。

管理会計と財務会計は違う!目的や誰向けかを理解しよう

管理会計と財務会計は、目的が異なります。管理会計は、経営者など企業内部の人がマネジメントを行うにあたり、役立つ情報を提供するためのものです。経営層向けの会計になるため、すべての会社に管理会計の義務はなく、それぞれの会社が経営の目的に合わせて導入できます。

一方の財務会計は、利害関係者向けに情報を提供するためのものです。株主や投資家、あるいは会社にお金を融資している債権者が、会社の経営状況を適切に把握できるようにするために行われます。法律により規定されている財務会計(財務会計のうち制度会計に該当するもの)については、すべての会社が対応していく必要があります。

このように、管理会計と財務会計は同じ会計という括りですが、目的などが大きく異なります。違いに注目するとそれぞれの特徴や意義も把握しやすいでしょう。

よくある質問

管理会計とは?

管理会計は、経営者がマネジメントを行う際に役立つ情報を提供するための会計です。詳しくはこちらをご覧ください。

管理会計と財務会計の違いとは?

財務会計は利害関係者に財務状況を報告するための会計、管理会計はマネジメントに活用するための会計で、その目的が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。


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