ざわつく税理士業界… はれのひ元社長が言う「税理士のミス」はありえるのか

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「はれのひ」といえば、新成人にとってのまさに晴れの日にトラブルを起こして話題となった着物販売・レンタル会社ですが、現在捜査が進んでいる正式な事件としては「売上高を粉飾した決算書類で、銀行から融資を受けたとされる事件」、つまり銀行をダマして融資を受けた詐欺事件ということになるようです。

そして最近、その捜査に関して報道された内容で「税理士」が良からぬ形で登場したため、今度は私たち税理士業界が「ザワッ」としています。そこで、会計的な観点から事件を整理しつつ、新宿の片隅でひっそり仕事をしている税理士の立場から思うところを述べてみたいと思います。(執筆者:税理士 高橋創)

会計面からみた経緯

「はれのひ」では、融資を受けるため数年にわたり見栄えが良いように改変した決算書を金融機関に提出していたようです。世に言う粉飾決算ですね。2015年9月期の決算では架空の売上げを4,800万円計上とのことですので、なかなかの規模感です。

とはいえ粉飾を続けるにも限界があります。「はれのひ」に何があったのかはわかりませんが、2016年9月期の決算で過去の粉飾を修正することになり、帳簿上は突如巨額の赤字が発生することとなり、問題が発覚しました。

「税理士がミスをしていた」ってホント?


前年まで優良な状況だと思っていた顧客の決算書に突如現れた巨額の赤字。もちろん銀行は説明を求めるわけですが、それに対する元社長・篠崎洋一郎容疑者の説明は「税理士が仕訳ミスをしていた」というもの。前年以前までに税理士が間違えて処理をしていたものを修正したら債務超過になっちゃいました、というわけです。

税理士も人間ですからミスをすることはもちろんあります。お恥ずかしい話ですが、私も計算を間違えたまま決算をしてしまい、翌期に修正をしたことがあります(微々たる額でしたけど)。ですから「税理士がミスをしていた」という可能性がないと言い切ることはできません。

しかし、水増しされていた金額が少なくとも数千万円単位ということになると、さすがに「単純なミス」とは考えづらいところです。まして売上げに関しては税務調査でもチェックされやすいため私たち税理士は慎重になりますので、請求書や通帳といった複数の資料で内容や現状を確認するのが一般的です。

この点に関しては、元社長が「私が粉飾を指示して融資を受けていたことに間違いない」と言っているようですので、元社長が税理士ごとダマしたか、税理士と話し合いの結果そういう決算書を作成したかというところでしょうね。見抜けなかったとしたらもちろん問題ではありますが、話し合いの結果というのは共犯ですからもっとダメ。同じ税理士としては前者であることを祈るばかりです。

「会計事務所を毎年変更」の怪


もう一点、税理士が関係する報道内容がありました。それは「粉飾後は会計事務所を毎年変更していた」ということ。といっても2期分くらいの話ですが。さらにその期間は税理士による税務申告もされていなかったとのことで、粉飾決算が発覚しないよう最低限の仕事だけ依頼し、仕事が終わったら変更するという、ヒットアンドアウェイな手法だったようです。

税理士業はお客さんがいてなんぼの商売であることに変わりはありませんから、お仕事の依頼があれば嬉しいものです。場合によっては多少「ん?」と思うところがあっても受けてしまうこともあります。
私自身、他の税理士さんがあまり受けたがらない業種のお客さんのお仕事でも興味本位で受けてしまう傾向はありますが、さすがに「税務申告はしなくて良いです。ここ2年間は毎年税理士を変えています」という依頼があったら二の足を踏んでしまいます。

業種は怪しくて良いけれど、仕事の内容が怪しいのはさすがにちょっと怖い。そういう意味では依頼を受けさせた元社長が役者だったのか、会計事務所が「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」という“猪木イズム”に溢れていたのか。細かいことはちょっとわかりませんが、良くも悪くも保守的な業界ですので、こういった仕事を受ける税理士さんは少ないような気はします。

しかし、珍しく「税理士」という単語がニュースに出てきたと思ったらこういったお話。見出しだけ読むと、「税理士はミスもするし、こんな怪しい仕事を受けもする」というネガティブな感じの仕事に見えてしまいますが、この一連の話は普通のことではないですからね! くれぐれも、そこだけはよろしくお願いします。

次は粉飾やら脱税やら以外で、できればちょっと華やかな感じで話題になりたいものです。

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