- 更新日 : 2022年3月30日
契約書の保管期間は何年?法律で定められた期間を紹介!
企業において重要な役割を果たす契約書ですが、事業年度が長くなるほど管理が煩雑になるため、現在使用していないものを処分したくなるかと思います。しかし、契約書には会社法や法人法施行規則といった法律によって保管が義務付けられているものがあるため、誤って処分してしまわないように気を付けなければなりません。ここでは契約書の保管期間について、関連する法律と併せて解説します。
目次
契約書の保管期間は何年?
ここでは保管期間が5年、7年~10年の契約書とその関連法律を紹介します。
契約書によって、保管期間の起算日は異なります。保管期間内に処分してしまわないように、起算日についても正しく理解しておきましょう。
5年保管の契約書
保管期間が5年の契約書は、以下の通りです。
※第8条4項3号
産業廃棄物処理の委託契約書は、産業廃棄物の処理を第三者へ委託する際、廃棄物の種類や量、処理方法などを記載した文書です。起算日は契約締結日ではなく、契約終了日です。定められた期間は保管しておきましょう。
7~10年保管の契約書
法人の取引に関する契約書の保管期間は、通常7年です。契約書だけでなく、帳簿書類や取引で作成・受領した各種書類も7年間保管する義務があります。
申告書提出期限の翌日 |
※第59条1項・2項
【保管期間が7年の書類の例】
法人税法施行規則における保管期間は7年ですが、各事業年度の確定申告時に青色申告書を提出している法人は10年(平成30念4月1日前に開始した事業年度は9年)となることがあるため、注意が必要です。
各事業年度で青色申告書を提出している法人は、要件を満たせばその事業年度に発生した欠損金の繰越控除※が認められています。この制度は、該当する事業年度に欠損金が生じた場合、翌事業年度以降に生じた課税所得と相殺する際に利用できるものです。
※欠損金とは、法人税を計算する際の所得金額がマイナスの場合に生じる金額のことです。欠損金の繰越控除に関する詳細は、「金融庁 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」または税理士に確認してください。
欠損金の繰越控除の適用を受けている場合、欠損金が生じた事業年度の契約書の保管期間は10年間となります(平成30年4月1日以前に開始した事業年度に関しては9年間)。
また、株式会社の会計帳簿の保管期間も10年です(詳細は第2章「10年保管の書類」をご覧ください)。
契約書以外の書類の保管期間
契約書以外にも、法律で保管期間が定められている書類がいくつかあります。ここでは、保管期間が定められている書類を保管年数別に紹介します。
【書類の保管期間】
- 3~5年
- 10年
- 15年
- 永久保管
契約書と同様に書類によって起算日や関連法規が異なるため、それらも併せて紹介します。
3~5年保管の書類
保管期間が3~5年の書類は以下の通りです。起算日や関連法規と併せて確認してください。
労災保険に関する書類 | 請求が完結した日や徴収、納付などの日 | 労働者災害補償保険法 施行規則※1 | |
雇用保険の被保険者に関する書類 | 被保険者がその事業所に在籍しなくなった日 | 雇用保険法施行規則※2 | |
株式会社の事業報告(本店備え置き分) | 定時株主総会の日の1週間前※3 | 会社法※3 | |
有価証券届出書とその添付書類※4 | 提出日 | 金融商品取引法※4 |
※1:第51条
※2:第143条1項
※3:第442条1項(取締役会を設置している会社の場合は2週間前)
※4:第25条2項(例外もあるため、詳細は金融商品取引法の本文をご確認ください)
10年保管の書類
保管期間が10年の書類は、以下の通りです。
株主総会議事録 (本店備え置き分) | 株主総会の日 | 会社法※1 |
建築業者の営業に関する図書 | 目的物の引き渡し日 | 建設業法施行規則※2 |
株式会社の会計帳簿・ 事業に関する重要書類 | 帳簿閉鎖の日 | 会社法※3 |
※1:第318条2項
※2:第28条
※3:第432条2項
15年保管の書類
建築士事務所の業務に関する図書は、15年間の保管が義務付けられています。
建築士事務所の業務に関する図書 | 図書を作成した日 | 建築士法施行規則※ |
※第21条5項
平成17年に起きた民間建築工事における耐震偽装事件の再発を防止するため、平成19年6月20日以降、建築士事務所に関する図書の保管期間が5年から15年へ、大幅に延長されています。保管期間を守らなかった場合は罰金を科せられる場合があるため、注意が必要です。
永久保管の書類
以下の書類は法律で義務付けられていないものの、書類の性質上永久保管が好ましいと考えられる書類です。これらも併せて確認しておきましょう。
【永久保管が好ましいとされる書類】
- 効力が存続している契約書
- 特許、商標など知的財産権に関する書類
- 社内規則に関する書類
- 製品の開発、設計に関する重要書類
契約書の保管方法
ここまで紹介したように、契約書や各種書類には長期の保管期間が定められているものが複数あるため、保管スペースや管理の手間に関する問題が生じることもあるでしょう。このような問題を抱えている場合は、保管方法が自社に合っていない可能性があります。
ここでは、契約書の保管方法として以下の3つを紹介し、それらのメリット・デメリットを見ていきます。現在とは別の保管方法を検討している場合は、参考にしてください。
- 紙で保管
- マイクロフィルムで保管
- 電子データで保管
紙で保管する
契約書を紙で保管するメリット・デメリットは、以下の通りです。
【メリット】
- 特別なシステム等が必要なく、誰でも管理できる
- 書類が少ない企業では管理コストを抑えられる
【デメリット】
- 保管スペースが必要
- 探す際に時間がかかる場合がある
- 紛失リスクがある
- 経年劣化により解読が困難になる場合がある
マイクロフィルムで保管する
マイクロフィルムとは、契約書を微小サイズに縮小してフィルムに記録できるアナログ媒体です。マイクロフィルムによる保管には、以下のメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- 長期保存できる
- 見読性を維持できる
- 紙で保管する場合よりも保管スペースを節約できる
【デメリット】
- 電子データで保管する場合と比べると、広い保管スペースが必要
- 機器の購入や修理など、保守にコストがかかることがある
電子データで保管する
電子契約サービス等を利用して保管する方法です。電子データによる保管には、以下のメリット・デメリットがあります。
【メリット】
- 保管コストを削減できる
- 電子契約サービス等を利用すれば、検索の手間を削減できる
- 電子契約を導入する場合は、収入印紙代を節約できる
【デメリット】
- 電子契約サービスを導入する場合は、導入コストや維持費がかかる
- 契約の相手方によっては、利用できないことがある
- セキュリティ対策を万全にする必要がある
電子契約を導入する際の収入印紙や文書の電子化については、以下の記事で詳しく解説しています。
契約書の保管期間は起算日も要確認!
契約書や各種書類には、法律で保管期間が定められているものがあります。書類によって保管期間の起算日が異なるため、起算日も併せて確認しておくことが大切です。
事業年度が長くなるにつれて、保管する契約書や各種書類は増えていきます。業務効率化を図りたい場合は、早い段階で電子データでの保管を検討するとよいでしょう。
保管方法を変更する際は手間がかかるかもしれませんが、将来を見据えて自社に合った保管方法を検討してください。
よくある質問
契約書の保管期間は何年ですか?
契約書の保管期間は種類によって異なります。例えば、取引に関する契約書の保管期間は7~10年です。契約書によって保管期間の起算日が異なるため、併せて確認することが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。
契約書の保管方法について教えてください。
契約書の保管方法には、紙・マイクロフィルム・電子データによる保管があります。それぞれにメリット・デメリットがあるため、自社に適した方法を選択することが大切です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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