• 作成日 : 2024年11月7日

収入印紙が多い分には問題ないの?間違えて貼った場合の対応方法を解説

契約書や領収書などは、収入印紙を貼る機会が多い書類です。しかし、収入印紙を間違って必要な額より多く貼ってしまった場合はどうすればよいのでしょうか?

本記事では、収入印紙を多く貼ってしまった場合や不足した場合の対処法について解説します。経理担当者なら知っておきたい、収入印紙の取り扱い方について深掘りします。

収入印紙を多く貼ってしまっても問題はない

収入印紙とは、国が国民から印紙税や登録免許税などの税金や手数料等を徴収するために発行する証票のことです。郵便切手と同じく、必要な金額分の印紙を書面に貼り付けて使用します。

収入印紙の額面は1円や2円など安いものから、10万円といった高額なものまでさまざまです。なかには、収入印紙を必要な金額より、多く貼り付けてしまうこともあるでしょう。基本的に、収入印紙を必要な額より多く貼ってしまっても問題はありません。

収入印紙を多く貼り付けたパターンで考えられるケースは、以下の2つです。

  1. 委任契約書などの「印紙税の課税文書に該当しない文書」へ印紙を多く貼った
  2. 領収書や請負契約書などの「印紙税の課税文書」へ印紙を貼り過ぎた

収入印紙が未使用の場合や、白紙や封筒など明らかに「印紙税の課税文書でないもの」に貼り付けられた場合は、「収入印紙の交換制度」を利用可能です。なお、未使用の収入印紙とは、消印を押されていない収入印紙を指します。

収入印紙は領収書などに貼り付けただけでは、印紙税の納付には該当しません。消印が押されてはじめて印紙税を納付したものとして有効になります。

「収入印紙の交換制度」とは、郵便局で交換手数料を支払うことで、他の収入印紙と交換できる制度です。詳しくは「郵便局で収入印紙を交換することも可能」の項をご確認ください。

収入印紙を多く貼ってしまった場合も税務署で対応可能

「課税対象の書類」に誤って収入印紙を多く貼ってしまった場合は「印紙税過誤納確認申請書」を作成して税務署で対応してもらうことになります。詳しくは・「収入印紙を多く貼ってしまった場合は税務署で還付を受けよう」の項で解説しますので、そちらを参考にしてください。

なお、本来使用する額よりも高い額面の収入印紙を購入してしまった、といったような場合もあるかと思います。文書に貼付していない状態であれば、商品などと同じように返品すればよいだろう、と思われるかもしれません。

しかし、収入印紙は一般商品とは異なり、基本的に返品・払い戻しができません。前述したように、未使用の収入印紙や「印紙税の課税文書に該当しない文書」に多く貼った場合は郵便局の窓口へ、「印紙税の課税文書」へ印紙を多く貼った場合は税務署で手続きを行いましょう。

収入印紙の貼り忘れや不足の場合は過怠税がかかるので注意

領収書を書面で発行する際に収入印紙を金額に応じて貼り付け、印鑑などで消印をするのが通常の流れです。しかし、収入印紙を貼り忘れたり金額が不足したりする場合もあるでしょう。ここでは、それらのケースについて解説します。

仮に収入印紙を貼り忘れた(不足していた)場合、領収書は無効になるのでしょうか?収入印紙の貼り忘れでは、領収書の有効性に影響はありません。領収書自体は、売上代金や発行者、発行日などの必要事項が記載されたものであり、収入印紙の有無で事実が変化することがないためです。そのため、収入印紙がなくても領収書としての有効性は担保されます。

ただし、印紙を貼り忘れた(不足していた)場合にはペナルティ(過怠税)が生じるため注意が必要です。印紙税法によって、領収書などは印紙税を課することが定められており、収入印紙を貼り忘れて(不足して)発行した場合には、発行者が法律違反をしたことになります。

過怠税として化される額は、本来の納付額の3倍の額です(※過怠税の合計額が1,000円未満のときは1,000円を課税)。なお、故意に貼り忘れた(不足した)わけではなく、そのことに気づいて自己申告した場合には、1.1倍に軽減されます。

参考:e-Gov 印紙税法

収入印紙を多く貼ってしまった場合は税務署で還付を受けよう

前述したように、収入印紙を「課税対象の書類」に誤って収入印紙を多く貼ってしまった場合には、税務署で還付手続きを申請します。

印紙税の還付制度とは、印紙税の過誤納金が生じた場合に還付を受けられる制度です。ここでは、還付対象となるものや還付手続きの手順について解説します。

還付の対象となるもの

還付の対象となるものとしては、次のようなケースが挙げられます。

  • 課税文書に貼ったものの必要な税額を超える場合
  • 課税文書に該当しない文書に貼り付けた場合
  • 課税文書に貼り付けたものの、使用しなくなった場合

次に挙げるような場合は、還付の対象外ですので注意しましょう。

  • 契約書作成後に契約が解除となった場合
  • 印紙税の納付以外の目的で貼付した場合
  • すでに交付された手形や領収書の場合

還付対象となるのは、あくまで印紙税を納付する目的で収入印紙を誤って貼付した場合のみです。登録免許税の場合は、登録免許税法にもとづいて還付を受けることになるため注意しましょう。

参考:国税庁 収入印紙の交換と印紙税の還付について

印紙税過誤納確認申請書は税務署で用意されている

還付申請に必要なものは、次のとおりです。

  • 間違って貼った文書
  • 印鑑
  • 法人の場合は代表者印も
  • 印紙税過誤納確認申請書

印紙税過誤納確認申請書は税務署に用意されていますが、国税庁のホームページにも掲載されています。そのため、事前に必要事項を入力して印刷することも可能です。

なお、申請書に記載する項目は次のようなものです。

  • 申請者情報
  • 過誤納となった文書の名称
  • 納付年月日
  • 納付税額
  • 過誤納税額
  • 納過誤納となった理由
  • 還付金
  • 還付を受ける口座

1、2枚目の申請書を提出し、3枚目は保管用です。

還付までの流れは、次のとおりです。

  1. 印紙税過誤納確認申請書を記入する
  2. 税務署へ提出する
  3. 審査
  4. 承認後に印紙税が還付される

まずは、税務署の窓口に「印紙税過誤納付確認申請書」と「収入印紙を誤って貼った文書」を提出します(電子申告でも対応可能)。文書を提出後、過誤納の事実を確認して内容に問題がなければ還付を受けられます。申請書の提出から還付金の受け取りまでは、3ヶ月程度かかるため、注意しましょう。

参考:国税庁 D2-6 印紙税過誤納[確認申請・充当請求]手続

郵便局で収入印紙を交換することも可能

収入印紙が未使用の場合や収入印紙を「課税文書でないもの」に貼り付けた場合は、郵便局で「収入印紙の交換制度」を利用します。交換制度とは、ほかの額面の収入印紙に交換できる制度です。

<対象>

  • 使用していないもの
  • 課税文書でない文書に貼り付けたもの
  • 白紙や封筒に貼り付けたもの など

基本的には、その場で交換可能です(手数料5円が1枚あたりかかります)。

もし、収入印紙を多く買ってしまった場合は、収入印紙の金額をうまく調整することをおすすめします。1円、2円……10円、20円……100円、120円など、収入印紙には31種類の額面があるため、必要に応じて買い足して超過しないように調整すれば、余って未使用の収入印紙を次回以降に使用可能です。

参考:国税庁 収入印紙の交換と印紙税の還付について

収入印紙を多く貼っても問題ない

収入印紙を誤って多く貼ってしまうこと自体には問題はありません。一方で、収入印紙を貼り忘れたり、額面から不足していたりする場合には、過怠税がかかるため注意が必要です。

また、収入印紙を多く貼ってしまった場合の対処法には、税務署での還付と郵便局での交換の2つがあります。それぞれ対象となる条件が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。


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