- 作成日 : 2024年2月1日
特許要件とは?特許出願時にまずチェックしたい項目を解説
特許を得るためには、産業上利用ができるものであって、新規性や進歩性などを備える発明であることなど、主に5つの要件を満たす必要があります。
特許出願をするときはこれら要件についてチェックする必要がありますので、ここで解説する各要件の内容を踏まえて手続きを進めていくようにしましょう。
目次
主要な特許要件は5つ
特許とは、発明を公開し、その一方で発明の実施について独占を認める制度のことです。特許の概要については下記記事で詳しく解説しています。
この制度に基づく「特許権」が認められることで独占的な実施が可能となるのですが、特許権を得るには様々な要件を満たさなくてはなりません。出願方法に係る手続き上の要件もありますが、特に主要なものとして次の5つがあります。
- 産業上利用ができること
- 新しいものであること
- 簡単に思いつくものではないこと
- 一番早く出願すること
- 公序良俗に反していないこと
以下でこれら各要件について解説をしていきます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド5選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ30選
業務委託契約書など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
導入で失敗したくない人必見!電子契約はじめ方ガイド
電子契約のキホンからサービス導入の流れまで、図解やシミュレーションを使いながらわかりやすく解説しています。
社内向けに導入効果を説明する方法や、取引先向けの案内文など、実務で参考になる情報もギュッと詰まった1冊です。
紙も!電子も!契約書の一元管理マニュアル
本ガイドでは、契約書を一元管理する方法を、①紙の契約書のみ、②電子契約のみ、③紙・電子の両方の3つのパターンに分けて解説しています。
これから契約書管理の体制を構築する方だけでなく、既存の管理体制の整備を考えている方にもおすすめの資料です。
自社の利益を守るための16項目!契約書レビューのチェックポイント
法務担当者や経営者が契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
弁護士監修で安心してご利用いただけます。
法務担当者向け!Chat GPTの活用アイデア・プロンプトまとめ
法務担当者がchat GPTで使えるプロンプトのアイデアをまとめた資料を無料で提供しています。
chat GPT以外の生成AIでも活用できるので、普段利用する生成AIに入力してご活用ください。
要件①産業上利用ができる
特許権を得るには、出願する内容が「産業上利用できる発明」でなくてはなりません。
産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。
例えば、物理法則などを新たに発見することは大きな功績ではあるものの、法則を見つけるだけでは産業上の利用可能性があるとはいえません。数学上の新たな公式を発見したようなケースでも同様です。
また、目的意識なく創作もしていない自然物を発見しただけでも、この要件を満たすことはありません。人為的に特定の化学物質を創出する場合は発明と呼べることもありますが、単に微生物を見つけただけ、鉱石を見つけただけだと、産業上利用できる発明と呼べません。
要件②新しいものである(新規性)
上の特許法第29条第1項柱書では、“次に掲げる発明を除き”特許が受けられると規定してあります。そして除外されるものは次のように列挙されています。
一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明
要は、発明に対して「新規性」を求めているのです。すでにある技術ではなく、新しい発明でなくては特許を受けられません。
これまでに特許が与えられた先行技術と一切の共通点がない発明であれば、新規性は満たすことができるでしょう。しかし先行技術と何らかの関連性があるケースも珍しくなく、この場合は「新たな発明と先行技術に基づく発明(引用発明)の相違点」に着目して審査が行われます。
そして両者に相違点があるのなら新規性はあると認めることができますし、相違点がないのなら新規性はないと評価されます。
要件③簡単に思いつかない(進歩性)
特許を受ける発明には「進歩性」も求められています。
特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
つまり、誰でも簡単に思いつくものについては特許が受けられません。このような発明について特許を与えても技術進歩に役立たないだけでなく、独占ができてしまうことによって技術進歩を妨げ、特許制度本来の趣旨に反してしまうからです。
そこで、当該発明に関連する技術について通常の知識を持つ者(当業者)が、容易にその発明に想到できたかどうかで審査が行われます。
もし、先行技術との関連性が高く、課題が共通している、作用や機能が共通しているなどの事情があれば、進歩性は否定されやすくなります。
一方で、先行技術と似通った作用や機能であったとしても、先行技術より際立って優れているようなケースだと進歩性は認められやすくなります。
要件④一番早く出願する(先願)
手続き上の問題でもありますが、誰より早く出願することも特許として認められるために必要です。
第三十九条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。
2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。
もし、同じ発明について複数の者から出願があったとしても、特許を受けられるのは最初の出願人のみです。これは「先願主義」と呼ばれる考え方に基づいています。
そもそも特許制度は、発明を公開する代償として独占権を与えるものですので、質の高い発明であったとしても複数の特許を許しては制度が意味をなさなくなってしまいます。そこで重複特許を排除するため、出願をした順番に応じて優先的に特許を受けることが可能な運用とされています。
なお、同じ日に複数の出願がなされたときは、各出願は同等に扱われます。朝方の早い時間帯に出願をした方が有利にはならず、「出願人による協議」で特許を受ける者を決めることとなります。
そして協議で決められないときは、どの出願人も特許を受けられません。
要件⑤公序良俗に反していない
仮に産業上の利用可能性や新規性、進歩性を備えて先願をすることができても、それが公益を害するような内容だと特許を受けることはできません。
三十二条 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。
「公序良俗に反していないこと」が必要です。道徳、倫理観に反することであったり国家社会に実害が及ぶような発明であったりするといけないということですが、特許庁は次の発明をその例として挙げています。
- 遺伝子操作から得られたヒトそのもの
- 専ら人を残虐に殺戮するためだけに使用する方法
考え方は時代により異なるため一概に公序良俗に反する・反しないを区別することはできません。
なお、審査においては公序良俗に反する使い方をされるかどうかなどの可能性まで探られるわけではありません。明らかな公序良俗違反がある場合にこの要件が問題となります。
特許出願の手順
特許出願の手順は基本的に次の流れに沿って進みます。
- 先行技術のチェック
特許の出願を行う場合、まずは先行技術が存在していないことの確認が必要。特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」から調べられる。 - 上記5つの要件の確認
出願しようとしている発明について上記5つの要件を満たすことも確認しておく。 - 特許願や明細書等の作成
発明が実施できるように書くこと、発明内容が理解できるように書くことも求められる。 - 特許印紙を貼付して特許庁に提出
受付窓口に直接持参するか郵送により提出する、あるいはオンライン上で出願することもできる。オンラインで行う場合は、電子証明書と専用のソフトを利用する必要がある。
- 先行技術のチェック
要件を満たさず、登録ができない理由が見つかると、拒絶の通知が送られてきます。その場合は意見書を提出するか明細書の補正をするなどして拒絶理由の解消に努めましょう。
特許要件をクリアして早めに出願対応をしよう
特許を受けるための前提条件は「産業上の利用可能性の存在」です。その前提のもと「新規性」「進歩性」を満たし、公序良俗を害さない発明を他社より早く出願しないといけません。
事業上有益な発明について特許を受けられると、競合他社より優位に立ちやすくなります。長期的に高い競争力を維持できるかもしれません。しかし、トレンドの技術・分野については他社も同時に研究開発を進めている可能性があり、その場合はスピード勝負となります。
特許要件を満たす発明ができたのなら、早めに出願手続に取り組むようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
契約書の甲乙表記とは?優劣はある?使わないほうがいい理由も解説!
契約を締結する際、契約書の「甲」「乙」といった表記を見たことがある方は多いでしょう。中には、日常的にこれらを使いこなして契約書を作成されている方もいらっしゃるかもしれません。 そもそも、「甲」「乙」とはいったい何なのでしょうか。甲と乙でなけ…
詳しくみる株式譲渡には取締役会の承認が必要?手続きの流れから議事録の注意点まで徹底解説
会社の株式を譲渡する際、特に非公開会社においては「取締役会」による承認が重要な法的手続きとなることがあります。この手続きは、会社にとって望ましくない人物が株主になるのを防ぐために不可欠です。 本記事では、株式譲渡における取締役会の役割、承認…
詳しくみる期間満了後の土地使用継続に対する異議通知書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
期間満了後の土地使用継続に対する異議通知書とは、一般的に借地権の契約満了後に更新しないことを借主に通知する書面のことです。借地権契約は、借主の権利を保護するために期間満了であったとしても正当事由がないと契約更新を拒否できません。 この記事で…
詳しくみる消費貸借契約とは?法的な役割や具体的な書き方をひな形つきで解説
消費貸借契約とは、借りたものを消耗・消費することを前提に、ものの貸し借りをするための契約です。一般的にはお金の貸し借りを目的として交わされる契約ですが、借りたお札や硬貨そのものを返すのではなくそれと同等の金額を返還する約束を意味する点で物品…
詳しくみるパッケージソフトウェア販売契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
パッケージソフトウェア販売契約書とは、パッケージソフトウェアの権利者が相手方にソフトウェアの利用を許諾する際に作成する契約書です。販売管理ソフトや会計ソフトを購入する場合に結ぶケースがあります。 本記事では、パッケージソフトウェア販売契約書…
詳しくみる転貸承諾書とは?ひな形や例文、書き方、承諾料の相場を解説
「転貸承諾書」は、賃借人が第三者に物件を転貸する際に賃貸人から得た承諾を文書化したものです。転貸の有効性を示すとともに、転貸の条件や各当事者の権利義務関係を明確にするために使われます。 本記事ではこの転貸承諾書について知っておきたい基礎知識…
詳しくみる


