• 作成日 : 2024年2月1日

特許要件とは?特許出願時にまずチェックしたい項目を解説

特許要件とは?特許出願時にまずチェックしたい項目を解説

特許を得るためには、産業上利用ができるものであって、新規性や進歩性などを備える発明であることなど、主に5つの要件を満たす必要があります。

特許出願をするときはこれら要件についてチェックする必要がありますので、ここで解説する各要件の内容を踏まえて手続きを進めていくようにしましょう。

主要な特許要件は5つ

特許とは、発明を公開し、その一方で発明の実施について独占を認める制度のことです。特許の概要については下記記事で詳しく解説しています。

この制度に基づく「特許権」が認められることで独占的な実施が可能となるのですが、特許権を得るには様々な要件を満たさなくてはなりません。出願方法に係る手続き上の要件もありますが、特に主要なものとして次の5つがあります。

  1. 産業上利用ができること
  2. 新しいものであること
  3. 簡単に思いつくものではないこと
  4. 一番早く出願すること
  5. 公序良俗に反していないこと

以下でこれら各要件について解説をしていきます。

要件①産業上利用ができる

特許権を得るには、出願する内容が「産業上利用できる発明」でなくてはなりません。

産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

引用:e-Gov法令検索 特許法第29条第1項柱書

例えば、物理法則などを新たに発見することは大きな功績ではあるものの、法則を見つけるだけでは産業上の利用可能性があるとはいえません。数学上の新たな公式を発見したようなケースでも同様です。

また、目的意識なく創作もしていない自然物を発見しただけでも、この要件を満たすことはありません。人為的に特定の化学物質を創出する場合は発明と呼べることもありますが、単に微生物を見つけただけ、鉱石を見つけただけだと、産業上利用できる発明と呼べません。

要件②新しいものである(新規性)

上の特許法第29条第1項柱書では、“次に掲げる発明を除き”特許が受けられると規定してあります。そして除外されるものは次のように列挙されています。

一 特許出願前に日本国内又は外国において公然知られた発明
二 特許出願前に日本国内又は外国において公然実施をされた発明
三 特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明

引用:e-Gov法令検索 特許法第29条第1項各号

要は、発明に対して「新規性」を求めているのです。すでにある技術ではなく、新しい発明でなくては特許を受けられません。

これまでに特許が与えられた先行技術と一切の共通点がない発明であれば、新規性は満たすことができるでしょう。しかし先行技術と何らかの関連性があるケースも珍しくなく、この場合は「新たな発明と先行技術に基づく発明(引用発明)の相違点」に着目して審査が行われます。

そして両者に相違点があるのなら新規性はあると認めることができますし、相違点がないのなら新規性はないと評価されます。

要件③簡単に思いつかない(進歩性)

特許を受ける発明には「進歩性」も求められています。

特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が前項各号に掲げる発明に基いて容易に発明をすることができたときは、その発明については、同項の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

引用:e-Gov法令検索 特許法第29条第2項

つまり、誰でも簡単に思いつくものについては特許が受けられません。このような発明について特許を与えても技術進歩に役立たないだけでなく、独占ができてしまうことによって技術進歩を妨げ、特許制度本来の趣旨に反してしまうからです。

そこで、当該発明に関連する技術について通常の知識を持つ者(当業者)が、容易にその発明に想到できたかどうかで審査が行われます。

もし、先行技術との関連性が高く、課題が共通している、作用や機能が共通しているなどの事情があれば、進歩性は否定されやすくなります。

一方で、先行技術と似通った作用や機能であったとしても、先行技術より際立って優れているようなケースだと進歩性は認められやすくなります。

要件④一番早く出願する(先願)

手続き上の問題でもありますが、誰より早く出願することも特許として認められるために必要です。

第三十九条 同一の発明について異なつた日に二以上の特許出願があつたときは、最先の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。

2 同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。協議が成立せず、又は協議をすることができないときは、いずれも、その発明について特許を受けることができない。

引用:e-Gov法令検索 特許法第39条第1項・第2項

もし、同じ発明について複数の者から出願があったとしても、特許を受けられるのは最初の出願人のみです。これは「先願主義」と呼ばれる考え方に基づいています。

そもそも特許制度は、発明を公開する代償として独占権を与えるものですので、質の高い発明であったとしても複数の特許を許しては制度が意味をなさなくなってしまいます。そこで重複特許を排除するため、出願をした順番に応じて優先的に特許を受けることが可能な運用とされています。

なお、同じ日に複数の出願がなされたときは、各出願は同等に扱われます。朝方の早い時間帯に出願をした方が有利にはならず、「出願人による協議」で特許を受ける者を決めることとなります。
そして協議で決められないときは、どの出願人も特許を受けられません。

要件⑤公序良俗に反していない

仮に産業上の利用可能性や新規性、進歩性を備えて先願をすることができても、それが公益を害するような内容だと特許を受けることはできません。

三十二条 公の秩序、善良の風俗又は公衆の衛生を害するおそれがある発明については、第二十九条の規定にかかわらず、特許を受けることができない。

引用:e-Gov法令検索 特許法第32条

「公序良俗に反していないこと」が必要です。道徳、倫理観に反することであったり国家社会に実害が及ぶような発明であったりするといけないということですが、特許庁は次の発明をその例として挙げています。

  • 遺伝子操作から得られたヒトそのもの
  • 専ら人を残虐に殺戮するためだけに使用する方法

考え方は時代により異なるため一概に公序良俗に反する・反しないを区別することはできません。

なお、審査においては公序良俗に反する使い方をされるかどうかなどの可能性まで探られるわけではありません。明らかな公序良俗違反がある場合にこの要件が問題となります。

特許出願の手順

特許出願の手順は基本的に次の流れに沿って進みます。

    1. 先行技術のチェック
      特許の出願を行う場合、まずは先行技術が存在していないことの確認が必要。特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」から調べられる。
    2. 上記5つの要件の確認
      出願しようとしている発明について上記5つの要件を満たすことも確認しておく。
    3. 特許願や明細書等の作成
      発明が実施できるように書くこと、発明内容が理解できるように書くことも求められる。
    4. 特許印紙を貼付して特許庁に提出
      受付窓口に直接持参するか郵送により提出する、あるいはオンライン上で出願することもできる。オンラインで行う場合は、電子証明書と専用のソフトを利用する必要がある。

要件を満たさず、登録ができない理由が見つかると、拒絶の通知が送られてきます。その場合は意見書を提出するか明細書の補正をするなどして拒絶理由の解消に努めましょう。

特許要件をクリアして早めに出願対応をしよう

特許を受けるための前提条件は「産業上の利用可能性の存在」です。その前提のもと「新規性」「進歩性」を満たし、公序良俗を害さない発明を他社より早く出願しないといけません。

事業上有益な発明について特許を受けられると、競合他社より優位に立ちやすくなります。長期的に高い競争力を維持できるかもしれません。しかし、トレンドの技術・分野については他社も同時に研究開発を進めている可能性があり、その場合はスピード勝負となります。

特許要件を満たす発明ができたのなら、早めに出願手続に取り組むようにしましょう。


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