- 更新日 : 2024年6月12日
契約解除通知書とは?ひな形付きで具体的な書き方を解説
契約解除通知書とは、当事者の一方が取り交わした契約を何らかの理由で解除したい場合に相手方へ送る文書のことです。
この記事では、まず契約解除通知書の概要や作成される主なケース、解除通知書と解除合意書の違いなどを説明し、実際の契約解除通知書の書式・書き方をひな形付きで解説します。
目次
契約解除通知書とは
契約は、基本的に当事者間の意思の合致によって成立します。売買や賃貸借、贈与など、日常生活において契約行為は多数存在します。
契約が成立しても、その後の事情の変化などによって契約の継続が困難になり、契約そのものを終わらせる必要が生じることがあります。
そこで民法は、当事者の一方が解除権を有するときは契約解除を認めるという規定を置いています(民法540条)。解除権は法律に規定があるもの(法定解除・相手方が債務を履行しない場合(民法541条)などのほか、契約によって当事者間で定める(約定解除)こともできます。
民法540条では、解除は「相手方に対する意思表示」で行うとしていますが、契約時に契約書を作成している場合は、相手方に自分の意思を確実に伝えるために書面で解除を通知するのが一般的です。その際に作成する書面を契約解除通知書といいます。
契約解除通知書を送っても、相手方が「そんな通知は受け取っていない」と言い張って、収拾がつかなくなるおそれがあります。それを避けるために利用されるのが「内容証明郵便」制度です。
内容証明郵便とは、「〇年〇月〇日、どのような内容の文書が誰から誰に差し出されたか」ということを第三者である 日本郵便株式会社(郵便局)が証明してくれる郵便のことです。
書面の写しは郵便局に保存されるため、相手方に配達されれば解除の通知をしたことを証明できます。次章でも説明しますが、解除通知が送られた日付(確定日付)が証明されることも、契約の種類によっては重要な意味を持ちます。
内容証明郵便は取り扱う郵便局が限定されており、また、特殊な書式で作成することを求められるため少々面倒ですが、契約解除通知においてはメリットも大きいため、よく利用されています。
契約解除通知書を作成する主なケース
契約を解除するケースはさまざまですが、契約解除通知書を作成する主なケースは以下のとおりです。
賃貸における家賃の滞納
賃貸住宅を借りる際、貸主と借主の間で賃貸借契約を交わします。賃貸借契約書の主な内容は、貸主は契約書記載の建物を借主に使用収益させる債務、借主は貸主に賃借料(家賃)を支払う債務を負うというものであり、借主の家賃滞納は債務の不履行として契約解除の理由となります。
ただし、いきなり契約を解除することはできず、貸主はまず相当の期間を定めて借主に家賃の支払いを求める催告を行う必要があります。(民法541条)
契約書に「1回でも支払いがなければ貸主は契約を解除できる」とあっても、実際には滞納期間が3ヵ月を超えたあたりが、判例上は解除通知ができる目安となっています。(実際には目的物の性質や賃料などにより通知ができる時期が3ケ月以上と判断される場合もあるのであくまでも目安です。)
したがって、滞納が3ヵ月を超えてから相当の期間(一般的には1~2週間)内に支払うことを催告し、それでも支払いがない場合は家賃滞納による契約解除が可能になります。通知書で相当の期間を提示し、「期間内に支払いがなければ契約を解除する」と解除の意思表示をしておけば、催告と解除を1通の書面で行うことができます。
また、賃貸の解約通知・退去届について、詳しくは以下の記事で確認できます。
クーリング・オフ制度
クーリング・オフは契約を締結した後、一定の期間内であれば無条件、すなわち解除理由不要で契約を解除できるという、消費者を保護する目的で作られた制度です(特定商取引法9条など)。どのような契約形態であればクーリング・オフができるかについても特定商取引法に規定されており、キャッチセールスや電話勧誘、また昨今問題になっている訪問購入(押し買い)などが対象です。
解除可能期間は契約書面を受け取ってから8日間というものが多く、その期間内に契約解除通知書を発することで効力が生じます。丸1週間あれば、「頭を冷やして」(「クーリング・オフ」の由来)冷静に解除の判断ができるということでしょう。
期間が設定されているので、相手方が「通知を(期間内に)受領していない」という言い逃れができないように、特定記録付き内容証明郵便で通知を送るようにしましょう。
請負契約の解除
家の建築、会社のシステム開発など仕事の完成・結果によって報酬が発生する請負契約は、仕事が完成するまでは注文側がいつでも解除できることになっています(民法632条・641条)。しかし、請負側に非がなく、解除までに一定の仕事の結果が出ている場合は、そこまでの報酬を払わなければならないため(民法634条)、請負人に契約義務違反などがあって解除する場合は契約解除通知書に解除理由をしっかり記載すべきです。
契約解除通知書のひな形・テンプレート
賃貸借契約における家賃滞納による契約解除の場合の契約解除通知書のテンプレートを紹介します。書式を内容証明郵便用にしていますので、「1枚で収めるために必要事項をどのように記載するか」についても参考にしてください。
賃貸借契約解除通知書のテンプレートは下記のリンクからダウンロードできます。
契約解除通知書と契約解除合意書の違い
契約解除は一方当事者が一方的に行うとは限らず、双方が協議した上で現在の契約関係を終わらせることもあります。契約当事者双方が契約の解除に合意・納得した場合に作成するのが、契約解除合意書です。
契約解除通知書は一方当事者が他方当事者に送るものであり、原本は1通しかないのが原則ですが(もちろん控えはあるでしょうが)、契約解除合意書は通常2通作成し、双方が1通ずつ保管します。
契約を解除することに対して双方の意思が合致したという新たな「契約」の締結ともいえ、法律的には「当事者の一方的な意思表示のみで相手の同意なしに行える」という解除の定義に当てはまらないものとなります。
合意解約であっても、確かに契約が解除または解約されたことを証明し、その後のトラブルを防ぐために解除合意書を作成しておくことをおすすめします。
契約解除通知書の書き方・例文
契約解除通知書には特に決まった書式がありませんが、内容証明郵便で送るケースが多いです。内容証明では1枚に書ける文字数が最大520字(紙媒体の場合)に制限されており、1枚増えるごとに料金が加算されるため、いかに少ない文字数で必要事項を記載できるかがポイントとなります。
契約解除通知書に最低限記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 契約当事者の特定
- 契約内容の特定
- 契約締結日
- 解除理由
- 催告が必要であれば催告期間を明示し、期間終了後ただちに契約解除をする旨
解除理由はクーリング・オフの場合は不要ですが、通常の契約であればどの契約義務に違反したか(約定解除)、どの法律のどの条文に違反したか(法定解除)をしっかり記載しておきましょう。
契約解除通知書は確実に相手に届くように!
契約解除は一方当事者の意思表示のみで行うことができますが、解除の意思を相手方に示したことを証明するため、契約解除通知書を送付しておくことをおすすめします。相手に契約解除通知書が届いたことを証明したい場合は、配達証明付き内容証明郵便を利用しましょう。
参考:民法|e-Gov法令検索
よくある質問
契約解除通知書とは?
契約の一方当事者が他方当事者に当該契約を解除する意思を伝えるために作成し、送付する書面のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
契約解除通知書と契約解除合意書の違いは?
契約解除通知書は当事者の一方が解除の意思表示を通知する書面で、契約解除合意書は契約当事者間で解除に合意した旨を記載し、双方が保管しておくために作成する書面です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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