• 作成日 : 2024年10月25日

契約書のまき直しとは?タイミングややり方、文言をわかりやすく解説

契約書のまき直しとは、すでに交わした契約書の内容を見直し、新たな内容で契約を締結することをいいます。不動産業界で慣例的に使われる用語で、その他業界でも使用されることがあります。

この記事では、契約書のまき直しをするタイミングや注意点、まき直しの方法について解説します。

契約書のまき直しはなぜ発生する?

契約書のまき直しとは、契約書の内容を変更する場合に新しく契約書を作成したり、契約書を破棄せずに覚書などで変更したりすることです。

契約書を交わしたが、契約締結後に契約金額や引き渡し方法、契約期間などの変更が生じた場合は新たな条件で合意し契約を締結する必要があります。この場合、契約書のまき直しが必要となります。

具体例の1つとして、不動産の売買契約の際があげられます。最初は仮の内容で契約を交わし、その後打ち合わせを重ね、改めて正式な内容で契約を結ぶという場合において、契約書のまき直しを行うことになります。

一方で、契約書の内容を変更するといっても、相手方の合意なく勝手に変更することはできません。

契約書のまき直しには、まき直すタイミングやまき直しをする際のルールがあります。

契約書をまき直すタイミング

契約書をまき直すタイミングは、契約内容の変更が必要な場合または仮契約の締結後に具体的な内容を定める時などがあります。

このタイミングでないとまき直せないと決められているわけではありませんが、双方の合意が必要となります。単に「気が変わった」などの理由では一般的にまき直しは行われません。

契約内容の変更が必要な時

契約内容の変更が必要な場合は、契約書のまき直しを行うことになります。当初契約を締結後、当事者間で事情が変わりこのままだと不利益が生じるような場合です。

主な例としては契約金額や契約期間、引き渡し方法や納期などに変更が生じる場合が想定されます。

また、売買や取引契約だけではなく、従業員との労働契約が変更になる場合も考えられます。勤務時間や業務内容などが変更される場合は、労働者の同意を得たうえで労働条件を変更します。

仮契約の締結後に、具体的な条項を定める時

最初の契約を締結する時点では、具体的な条項を決めずに仮契約を交わし、のちほど細かな内容を決定することがあります。その場合も、契約書のまき直しが必要になります。

新築住宅などを購入する際に、最初は売買契約を締結し、のちほど建物の間取りや仕様など細かな点を決めていき、契約の内容を変更する場合などが該当します。

ただし、「仮契約」という名称であったとしても内容によっては何らかの義務を負うこととなる場合もあるため、仮契約を締結する際には注意が必要です。

契約書をまき直す方法

契約書のまき直しを行う際には通常、変更契約書、原契約書、覚書という文書を使用します。

契約内容の変更に伴って新たに作成する契約書のことを変更契約書といい、変更するもとになった既存の契約書を原契約書といいます。

覚書とは、原契約書をもとに変更する箇所のみを新たに記載した文書です。覚書は変更の内容が契約書の一部分で変更箇所が比較的少ない場合に用いられます。

なお、覚書とよく似た表現で「念書」という文書があり、契約変更で用いられる覚書や念書などをまとめて「変更契約書」と呼ぶこともあります。

これらは名称は違っても各書面に明確な違いはなく、法的な効力は通常の契約書と同等とされています。

実際に契約書のまき直しを行う場合は、覚書を交わす方法と新たに契約書を作成する方法があります。

覚書を交わす

契約書の変更内容が比較的軽微であり、内容の一部分のみを変更するような場合は覚書を交わすことで契約書のまき直しを行います。

覚書を交わすことで契約書をまき直す場合は、まず相手方と変更内容と変更箇所について確認をする必要があります。その後、相手方と協議を行い、合意した後に覚書を作成します。

覚書は適切に作成することにより契約書と同等の効力をもち、トラブルを未然に防げます。

契約内容の変更が軽微な場合は、覚書により契約内容を変更することで時間や手間などのコスト削減が可能です。契約締結後に事情が変わり、内容の一部が変更されることはよくあります。そのような場合は、覚書によって契約のまき直しを行うほうが効率的といえるでしょう。

新たに契約書を作成する

契約の変更内容が多岐にわたる場合や、内容そのものに大幅な変更が加わる場合は、新たに契約書を作成することで、契約内容を変更できます。

新たに契約書を作成する場合は、変更後の契約内容について確認・合意したうえで新たな契約内容で契約書を作成します。

新たに契約書を作成する場合は、原契約書を失効させなければなりません。原契約書を失効させずそのままにしておくと、矛盾した内容の契約書が複数存在することとなり、トラブルの原因になります。

トラブルを防ぐためには、変更契約書にどの契約をどの時点で解除するのかという旨の記載をするか、合意解約書を作成するといいでしょう。覚書により契約内容を変更する場合と比べると手間はかかりますが、双方が契約内容について細かな内容までチェックすることになるため、見落としなどのリスクを防止できます。

大幅な契約内容の変更や、覚書では対応できない内容の変更の場合は、契約書を新たに作成することも検討しましょう。

契約書のまき直しに文言のきまりはある?

覚書を作成して契約書のまき直しを行う場合は、表題で「〇〇に関する覚書」などと記載し、前文で誰と誰が合意するかを記載、本文で変更内容を明確にし、当事者が署名捺印するという形で作成すると良いでしょう。

原契約を失効させるには、「◯年◯月◯日に締結した〇〇に関する契約書は失効するものとする」などの文言を記載します。

覚書や変更契約書に記載する項目

覚書や変更契約書などまき直しを行う際は、必須事項を正しく記載する必要があります。これらの項目が記載されていないと思わぬトラブルが発生するリスクがあるため注意が必要です。

変更前の契約書の名称や締結日

覚書や変更契約書には、変更前の契約書の名称やいつ締結された契約書なのかを記載します。

いつ締結されたか、どの契約書についての変更なのかを明確にしましょう。

変更箇所

どの箇所が覚書や変更契約書により変更されたのかについても、重要な記載事項です。

覚書の場合、変更箇所のみを記載しますが、この際に変更内容が明確になるように記載することが必要です。

また、契約の変更に伴い他の項目にも影響が生じると考えられる場合は、影響を受けるであろう項目すべてについて記載しましょう。

変更の効力発生日

契約のまき直しでは、変更の効力発生日も重要なポイントです。

基本的に契約の変更は将来に向かって効力が生じますので、いつをもって契約の変更とするのか、具体的な日付を定めておく必要があります。

例として、「変更の効力は◯年◯月◯日から効力を発生するものとする」などと記載するとわかりやすいでしょう。

契約者双方の署名・捺印

すべての箇所を記載し、書面が完成したら変更箇所や内容が間違いないか確認のうえ、契約者双方が署名・捺印をもって変更契約が締結されます。

紙の契約書であれば直筆で署名・捺印、電子契約書であれば電子署名を行います。署名・捺印後の変更契約書は双方で保管しておきます。

契約書をまき直す流れ

契約書のまき直しには、記載必須項目に加えて、一定の手順を踏んで行う必要があります。

契約書のまき直しの手順は以下の通りです。

変更条件を双方で確認し合意を取る

契約書のまき直しを行うには、まずどの項目について変更するのかを確認する必要があります。この場合、どの契約書のどの項目について変更するのか、変更後の契約内容はどのような内容なのかを明らかにし、双方で合意する必要があります。

変更内容に双方どちらかが合意できないような場合や内容に疑義がある場合は、再度相手方との交渉や内容についての確認を行うことが必要です。

変更契約書を作成する

変更後の内容について確認が取れ、双方が合意したら変更契約書を作成します。

覚書または変更契約書を作成する際には、どの契約書について変更するのかを特定し、変更箇所や効力発生日などを記載します。

この際に、内容に不備や法的問題がないかは必ずチェックを行うことが必要です。また、変更契約書の内容に誤解を招いたり疑義が生じたりする文言がないか、適宜見直しましょう。

契約の当事者全員で書面を確認し、署名・捺印を行う

変更契約書の作成が完了したら、当事者全員で書面を確認します。

内容に問題がなければ双方で署名・捺印を行います。署名・捺印により、書面に記載した日から契約変更の効力が発生します。

この場合、紙の契約書であれば直筆で署名・捺印を行いますが、電子契約の場合は署名欄の表記を電子署名で行う必要があります。

契約書をまき直す際の注意点

契約書のまき直しの際にはいくつか注意すべき点があります。

課税文書は収入印紙の貼り付けが必要な場合がある

契約変更において、原契約書の「重要な事項」を変更した場合は課税文書に該当し、収入印紙の貼り付けが必要です。

収入印紙を貼る必要があるのは、印紙税法で定められた課税文書です。文書の名称が「覚書」であったとしても、契約の変更内容が「重要な事項」に該当する場合は、収入印紙の貼り付けが求められます。

具体的にどのようなものが「重要な事項」に該当するのかは印紙税法基本通達別表第2で例示されています。

例えば、原契約書の契約金額や契約金額の支払方法、請負金額や単価などは「重要な事項」に該当し、これらを変更した場合は収入印紙の貼り付けが必要です。

収入印紙の金額は、原則として変更後の契約金額に合わせます。ただし、変更前の契約書が作成されていることが明らかな場合とそうでない場合や、変更前と変更後で金額が増加したか減少したかなどで、どの金額を契約金額とするかで取り扱いが異なるため、注意が必要です。

新旧対照表を作成して変更点をわかりやすくする

新旧対照表とは、契約書の変更点をわかりやすく表にしたものです。新旧対照表により変更箇所が一目でわかるため、見落としを防げます。

新旧対照表を作成するには、変更前と変更後の内容がわかりやすく作成されていることが重要です。表を作成し、左側に変更前、右側に変更後の内容を記載し、変更箇所にアンダーラインを引いてわかりやすく示すと良いでしょう。

また、変更前の契約書にない文言を追加した場合は「(追加)」、変更前の契約書にあった文言を削除した場合は「(削除)」などと表記することで、変更箇所の見落としのリスクを軽減できます。

新旧対照表は必ず作成しなければいけないものではありませんが、契約当事者間の勘違いやトラブル防止のため、作成しておくことが望ましいでしょう。

マネーフォワード クラウド契約は契約書の作成・変更やバージョン管理に対応

マネーフォワードのクラウド契約は、契約書の作成、管理、保管などを一元管理できるシステムです。

マネーフォワード クラウド契約

契約書の作成はもちろん、契約内容の変更を行う際の覚書の作成も可能です。

契約書の作成から承認、保存までの契約業務を一括管理

マネーフォワードのクラウド契約は、契約書の作成から承認、保存、管理といった契約業務を一元管理できます。

これまで多くの手間と時間を要していた契約関連業務を大幅に効率化でき、時間やコストの削減につながります。

契約書の承認に必要な添付書類も添付して申請ができ、すばやい申請、承認が可能です。

また、同じ内容の契約書を複数の相手方に一括送信したり、一括送信された契約書を1クリックで承認したりすることもできます。

各種電子署名にも対応

マネーフォワードのクラウド契約は、電子署名にも対応しています。

電子署名とは、紙で行っている署名や捺印をすべて電子上で行うことです。紙での署名・捺印と違い、すべてが電子上で完結するので、印刷の手間やコストを削減できます。

また、書類をファイリングして整理する手間もなくなり、書類の保管スペースの削減にもつながります。

マネーフォワードのクラウド契約で付与される電子署名は、すべてタイムスタンプ付き電子署名となっており、すべての電子契約に10年間の長期署名が付与されます。

テンプレート機能で書類をすばやく申請、送信

マネーフォワードのクラウド契約には、契約書や覚書を作成する際のテンプレートが豊富に用意されています。複数のテンプレートの中から自社の用途にあったものを選択できるため、一から契約書を作成するよりもはるかに効率的です。

また、電子契約で使用するテンプレートを事前にPDFでアップロードし、押印位置や入力項目を設定しておけば、契約書類をすばやく申請、送信することが可能です。

契約書のまき直しは、双方の同意を得て手順を踏めば可能

契約書のまき直しは、当事者双方の同意を得たうえで必要な手続きを行えば可能です。実際にまき直しを行う際には、覚書や新たに契約書を作成するなどの手順で行いますが、内容の確認や署名・捺印、場合によっては印紙の貼り付けが必要なことがあります。

これらの、契約業務全般を効率的に行うには契約管理システムの導入が効果的です。契約書のまき直しが効率的になるだけではなく、変更前後のバージョン管理もでき、変更内容もすぐに確認ができるので、トラブル回避にも有効です。

 


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