- 更新日 : 2023年3月3日
メルマガ配信の際は特定電子メール法を理解しておこう
顧客獲得や商品・サービスのPRのためにメルマガを発行されている事業者も少なくないかと思います。しかし、顧客にメールを送る際には法律に従わなければならず、違反した場合は刑罰が科せられるおそれもあります。
今回はメルマガ配信時に守らなければならない「特定電子メール法」について説明します。
目次
メルマガ配信時に知っておくべき法律「特定電子メール法」
特定電子メール法の正式名称は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」で、2002年に施行されました。当時は携帯電話からインターネットに接続できるようになり、メールの利用者が大幅に増えた時期でした。それにともなって顧客へメールを送ったり、今回のテーマとなっているメルマガを配信したりするなど、企業においてはメールが新たな集客ツールとして活用されるようになったのです。
一方で不特定多数に対して大量に広告や勧誘メールを送りつける、いかがわしいサイトに誘導するようなメールを送りつける、送信者を偽ってメールを送りつけるなどの、いわゆる「迷惑メール」が社会問題化しました。
そこで、電子メールの利用環境の改善と情報通信社会の健全な発展を目的として特定電子メール法が制定されたのです。
特定電子メール法はどのようなメールに適用される?
特定電子メール法は「特定電子メール」の送信について定めた法律です。特定電子メールについては、特定電子メール法第2条2項に定義がなされています。
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
二 特定電子メール 電子メールの送信(国内にある電気通信設備(電気通信事業法第二条第二号に規定する電気通信設備をいう。以下同じ。)からの送信又は国内にある電気通信設備への送信に限る。以下同じ。)をする者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。以下「送信者」という。)が自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信をする電子メールをいう。
引用:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律|e-GOV法令検索
ただし、上記を読んだだけではどのようなメールが特定電子メールに該当するかがわかりにくいです。そこで、総務省と消費者庁が発行している『特定電子メールの送信等に関するガイドライン』では特定メールの例が挙げられています。
ます挙げられるのが営利団体(企業)もしくは営業を営む個人(個人事業主や自営業者)が、自分もしくは他人の商品やサービスなどを宣伝する意図が含まれるメールです。
具体的には商品やサービスを宣伝するメール、商品やサービスを宣伝する営業目的のウェブサイトに誘導するメールなどです。
一方で、取引条件を案内する事務連絡、料金請求の通知のみが記載されていて広告や宣伝目的のウェブサイトに誘導しないもの、時候の挨拶のみで広告や宣伝目的のウェブサイトに誘導しないものに関しては特定電子メールには該当しません。また、政治団体や宗教団体、NPO法人、労働組合などの非営利団体や個人が送信するメールも特定電子メールの対象外です。
参考:特定電子メールの送信等に関するガイドライン|総務省総合通信基盤局消費者行政課 消費者庁取引対策課
メルマガ作成時の注意点
上記のとおり、商品やサービスを宣伝するメール、商品やサービスを宣伝する営業目的のウェブサイトに誘導するメールも特定電子メールに当たります。したがって、商品やサービスの情報を記載している、あるいは宣伝目的で自社サイトや商品ページのリンクが記載されているようなメールマガジンも特定電子メール法の対象となりますので、法令等を遵守して配信しなければなりません。ここからはメルマガを配信する際に注意しておくべきことについてご説明します。
オプトイン方式で受信者からの合意を得る
メルマガを配信する際にまず重要なのは受信者からの同意する旨の通知を得ることです。
特定電子メール法は、あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信することに同意する旨を送信者又は送信委託者に対し通知した者に対し、特定電子メールを送信できないと規定しているためです(特定電子メール法第3条第1項第1号)。
同意を得た上で配信する方式を「オプトイン方式」といいます。
同意を得る方法としては、たとえば申込フォームや商品ページにラジオボタンを挿入することが考えられます。
フォーム内に「メルマガ配信を希望しますか?」「新製品やキャンペーンに関する情報をメールで送信してもよろしいですか?」といったメッセージをつけて、ラジオボタンで希望するか希望しないかを選択できるようにすることで、合意を得ることができます。
メルマガの配信を希望しない人に対して一方的にメルマガを送ると迷惑メールとみなされてしまいますので注意しましょう。
オプトイン規制の例外
同意する旨を通知されなくても、特定電子メールが送れる場合があります。「電子メールアドレスの通知をした人」「取引関係にある人」「自己の電子メールアドレスを公表している団体又は営業を営む個人」に対しては、特定電子メールを送信することが可能です。
配信停止の申し出ができて、すぐに対応できる体制を整える
オプトイン規制に対応しメルマガを配信する場合であっても、受信者から配信停止の通知(オプトアウト)があった場合には、メルマガの配信はできません(特定電子メール法第3条第3項参照)。
第三条 送信者は、次に掲げる者以外の者に対し、特定電子メールの送信をしてはならない。
3 送信者は、第一項各号に掲げる者から総務省令・内閣府令で定めるところにより特定電子メールの送信をしないように求める旨(一定の事項に係る特定電子メールの送信をしないように求める場合にあっては、その旨)の通知を受けたとき(送信委託者がその通知を受けたときを含む。)は、その通知に示された意思に反して、特定電子メールの送信をしてはならない。ただし、電子メールの受信をする者の意思に基づき広告又は宣伝以外の行為を主たる目的として送信される電子メールにおいて広告又は宣伝が付随的に行われる場合その他のこれに類する場合として総務省令・内閣府令で定める場合は、この限りでない。
引用:特定電子メールの送信の適正化等に関する法律|e-GOV法令検索
表示義務を遵守する
特定電子メールを送信する場合、送信者は以下のような一定の項目を表示するよう義務付けられています(特定電子メール法第4条)。
- オプトアウトの通知ができること
- 送信者の氏名もしくは名称
- 送信者の住所
- 苦情や問い合わせ等を受け付けるための電話番号・メールアドレス・URL
- 送信者のメールアドレスなどの連絡先
- 受信解除ができることを通知する文言
以下のような署名をメールに記載することで、表示義務を満たすことができます。
【このメールの送信者】●●株式会社
【配信停止はこちらから】
http://www.●●.teishi.html
・URL
http://www.●●.teishi.html
・メールアドレス
haishinteishi@XXXX
【送信者へのお問い合わせはこちらから】
〒●●●-●●●●
●●県●●市●●
TEL:XXX-XXXX-XXXX
メール:XXX@XXXX
特定電子メール法に違反した場合の罰則は?
特定電子メール法に違反した場合、総務大臣や消費者庁長官から送信者に対して是正措置を講じるよう命じられる可能性があります。
この命令に従わず改善を行わなかった場合、あるいは送信者情報を偽って特定メールを送信した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金、法人の場合は行為者にこの刑罰を科すほか当該法人に対して3,000万円以下の罰金が科せられることになります。
メルマガ活用の際は特定電子メール法を遵守して適正に配信を
特定電子メール法に違反した場合、非常に重いペナルティが科せられるおそれがあります。メルマガは事業者にとっては身近な集客方法の一つですが、法律については「知らなかった」では済まされません。特定電子メール法をしっかりと理解し、遵守して、適正にメルマガを配信しましょう。
よくある質問
メルマガを配信する際に気をつけるべき法律はありますか?
メルマガは特定電子メールに該当する可能性があります。特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)を遵守した上で配信する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
特定電子メール法はどのようなメールに適用されますか?
営利団体(企業)もしくは営業を営む個人(個人事業主や自営業者)が、自分もしくは他人の商品やサービスなどを宣伝する意図が含まれるメールが対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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